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シナリオ詳細

狼を従える首狩りウサギ?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●そのウサギはただのウサギにはあらず
 幻想付近のとある集落。
 主要街道から大きく離れたその場所では、数百人ほどの人々がのどかに暮らしている。
 その集落からほぼ隣接した位置にある林は、集落民にとって薬草や木の実などを集める生活に密接した場所だ。
 そんな林へと、ふらりと現れた魔物達。
 狼のような姿をした四本足の魔物は、自分達よりも強い者達から身を隠す為の場所としてこの林を縄張りとして選んだらしい。
 ただ、運が悪かったというべきか、この林には先客がいた。
 狼達が見つけたのは、一匹の白いウサギ。
 草食のウサギなど狼にとっては獲物でしかない。そう考えた彼らは、取り囲んだウサギを狩ろうと動く。
 ……だが、獲物と思われたウサギは素早く刃を一閃させ、瞬く間に1体の狼の首を刎ねてしまった。
 返り血を浴びたウサギは赤い瞳でギロリと睨むと、狼達は一斉に平伏してしまう。
 それに気を良くし、ウサギは口元を小さく吊り上げたのだった。

●はじめましてからの初依頼
 幻想、ローレット。
 依頼を探しに訪れたイレギュラーズはそこで、見慣れぬ少女から声をかけられる。
「あ、あなたは、イレギュラーズで間違いありませんか?」
 水色のウェーブヘアに、蒼い瞳を持つ海種の少女。
 彼女は、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)と名乗った。
「本当にありがとうございます。わたし、もう少しで売られるところだったもので」
 海種、売られる。そんな言葉に、すでに中に詰めていたイレギュラーズの中からああという声が上がる。
 先日、海洋においてイレギュラーズがとある奴隷商人を摘発する事件があった。
 その後、海洋の貴族や政府が動き、奴隷商人や人さらいなどを捕まえることができたのだろう。
 その最中、売られる寸前であるこの少女の姿があり、解放に至ったらしい。
「私、皆さんにお礼がしたくて」
 そこで、あちらこちらで情報収集している『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に話をして、ローレットを紹介してもらったらしい。
 さて、そんなアクアベルの初仕事であり、初依頼。
 たどたどしい口調で彼女が話すのは、幻想のとある集落が魔物の影に怯えているという話だ。
 なんでも、集落そばの林に獣の群れが住み着いたと言う。
「どうやら、狼のような魔物がやってきたようなのですが、それがウサギに引き連れられているようでして」
 狼を率いるウサギ。それ逆だろうという声もイレギュラーズから出るが、ここは無辜なる混沌。何が起きても不思議ではない世界だ。
 アクアベルは間違いないと念を押して。
「集落民は、返り血を浴びたウサギを怖がっています」
 林に近づく人々を狙い、ウサギは狼をけしかける他、自らも相手の首を狙って攻撃してくるのだという。
 この林は集落民の生活に密接した場所なので、近づかずに生活していくのは難しい。
 まして、いつ集落を襲ってくるかも分からぬ魔物。ならば、その排除をローレットに依頼しようとなったらしい。
 魔物の情報については、アクアベルは詳細として参加を決めたメンバー達へと手渡す。
「くれぐれも、ご注意ください。皆さんのお帰りをお待ちしていますね」
 そう説明を締め、彼女はイレギュラーズ達をローレットから送り出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。
 GMのなちゅいと申します。
 NPCアクアベルの初登場依頼です。よろしくお願いいたします。

●目的
 全ての魔物の討伐

●敵……魔物8体
◎首狩りウサギ×1体
 体長60~70cmほど。
 一見毛並みの白いウサギですが、
 その体は他の獣などの返り血で、ほのかに赤くなっています。
・ドロップキック(物近単)
・首狩り(物至単・必殺)
・殺気(神中域・不吉)
・嘲笑(神遠扇・怒り)

◎狼×7体
 体長120~30cmほどの黒ずんだ色をした狼の姿をしており、集団で行動しております。
・噛みつき(物近単・出血・HP吸収)
・飛び掛り(物中単)
・遠吠え(神中域・足止)

●状況
 とある集落からほとんど距離を置かない場所にある林へと入り、魔物達の討伐を目指します。
 普段から集落民が入っている林なので、地面はある程度踏み固められている場所も多いですが、茂みも少なくありません。
 群れる狼はともかく、ウサギの奇襲には十分警戒が必要です。
 事後は集落で木の実のパンや、ジュースを振る舞ってもらえます。
 それらを口にしながら、集落民やイレギュラーズ同士で交流を深めてみてはいかがでしょうか。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 狼を従える首狩りウサギ?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月24日 23時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)
勝利の足音

リプレイ

●危険な首狩りウサギ
 幻想のとある集落を訪れたイレギュラーズ一行。
 彼らは集落民との挨拶もそこそこに、人々の生活を脅かす魔物討伐の為、集落そばの林へと向かっていく。
「アクアベルさんの初依頼を失敗させてはいけませんね!」
 女性ばかりのメンバーの中、唯一の男性である『驟猫』ヨハン=レーム(p3p001117)だが、可愛らしいメイド服姿が非常に似合っている。
 彼は初々しい情報屋の少女が集めた情報をしっかり活かし、頑張らせていただくと張り切っている。
「そして、仕事帰りにはオレンジジュースを頂きましょうっ!」
 ヨハンが言うように、集落民はささやかながらに食べ物やジュースを用意してくれているはず。
「人の生活を脅かしたとあっては、見逃すわけにはいきません」
 金髪ポニーテールの人間種、『特異運命座標』リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)は今回の魔物討伐に意欲をみせるその相手とは。
「兎が狼を引き連れるとは、珍妙な」
 天神の直系を自称する『アマツカミ』高千穂 天満(p3p001909)が言うように、討伐すべき魔物は狼を引き連れたウサギである。
「ヴォーパルバニーとは、よく言ったものなのです!」
「首狩り兎の伝承なら、私の世界にもありましたが。よもや、本物が出てくるとは……」
 狐獣人族の旅人の少女、『偽装職人』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)が叫ぶと、『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)も同じような話に記憶があるものの、それが実在することに驚きを隠せない。
「外来種で生態系が崩れることは間々あるけれど、従えて勢力拡大するのは、中々知恵が回りそうな兎だね?」
 小柄な少女の姿をした旅人、『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)は一定の評価を相手に示すが、そうして退治されそうになるのはご愛嬌と皮肉も口にする。
「食物連鎖の下剋上をするなんて素敵……と言いたいところですが、人を脅かす動物は速やかに排除しなくてはいけませんっ」
 それは人間のエゴかもしれないが、放置しておくと危険に違いない。
 ルルリアはウサギ狩りに全力を尽くす所存だ。

 イレギュラーズ達は、集落そばの林へと入っていく。
 基本的には集落民が入っている場所であり、地面が踏み固められた場所が道となっている。
 どうやら、狼は集団で行動しているらしいので、近づけば目に付くだろうが、首狩りウサギは茂みに隠れている可能性が高い。
 この為、メンバー達は極力ウサギが早期発見できるよう、各自注力する。
 鼎はファミリアーで小鳥を操り、風下の方に飛ばす。
 また、彼女はハイセンスを駆使して感覚を研ぎ澄まし。特に物音、そしてウサギについているはずの血の臭いを探る。
 ヨハンは聞き耳を立て、怪しげな物音に気を配る。彼は超視力で広く視覚を確保した『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)と連携をとっていた。
 鶫も同じく超視力を使い、レイチェルと連携をとる。
 また、彼女は足元にも気を配り、獣が通った道や、排泄物の跡などをチェックしていく。
「比較的、新しい痕跡を見つけました。そろそろかもしれません」
 それらを確認した鶫は仲間に注意を促し、自らも警戒を強める。
 仲間の忠告を耳に、天満も慎重に歩を進めていた。
 ギフトとスキル、忍び足と気配を消すルルリアも、周囲へと聴覚のアンテナを張る。気分は凄腕の泥棒の気分だ。
(や、ルル義賊さんですけどね!)
 そんな中、ヨハン、レイチェルがほぼ同時に何か反応を示す。
「茂みが不自然に揺れたりしたら、そりゃ怪しいよなァ」
 男装した眼鏡の医者といった風貌のレイチェルが小さく告げると、大きなアホ毛を揺らす『仲間を信じて!』ヒィロ=エヒト(p3p002503)がそこに向けて飛び込む。
 彼女も狐の獣人だが、こちらは混沌の獣種。
 己の直感を信じたヒィロは率先して奇襲を仕掛けていくが、それを察した敵も後方へと宙返りして避けてみせた。
 明らかに苛立ちを見せるウサギが聞こえよがしに近場の枝を踏み鳴らすと、遠方から狼の群れが姿を現す。
 しかしながら、すでにイレギュラーズ達は身構えていて。
「血濡れの兎とは物騒だ。狼を従えて満更でも無さそうだしな」
 赤く染まったウサギの腹を目にしたレイチェルは、血塗れの医者が言えたことじゃねぇけどと、多少の自虐めいた呟きをして。
「どう考えても、普通の兎じゃないよね……」
「ふふ、ホラーチックで愛嬌はあるね? もっとも、街中の可愛いマスコットなら愛でたけど」
 ヒィロ、鼎の言葉に、ウサギは鋭い視線を投げかけてきた。
 とても、野生のウサギにしてはありえない殺気だ。
「凶暴なら、倒すしかないね」
「うん、兎の姿をしたナニカって思って、用心していこーね!」
 ナイフと盾を手にする鼎は相手と距離を取り、逆にヒィロは曲刀と大盾を手に前へと進み出る。
 狼達が多少ウサギに萎縮しながらも、じりじりと前に出る。ぼやぼやしていると、自分達の首が切られそうだと感じているのかもしれない。
「これは放っておくわけにはいかぬであろう。お痛をした兎にはきついお灸をすえねばな」
 両手で鉾を握る天満。敵も徐々に距離を詰めてくる。
「ふっ……、ウサギさんは所詮小動物……」
 自信ありげに、ルルリアは白黒2丁の銃を抜いて。
 ウサギさんの食物連鎖の上位にいる狐さんであるルルが華麗に狩りとって見せましょう!」
 ルルリアが言い放つと同時に、魔物達はイレギュラーズ達へと飛び掛ってきたのだった。

●ウサギを抑えつつ……
 8体いる獣達は爛々と目を輝かせ、イレギュラーズ達を狩る気でいる。
 特に、首狩りウサギは今にもこちらの首を刎ねてやるとばかりに殺気を放っていた。
 そのウサギの正面にヨハンが移動していき、莫大な雷エネルギーを放電して相手の攻撃に備える。
「……食い止めてみせますっ! これもメイドのお仕事(?)ですねっ!」
 ウサギはにやりと目尻を吊り上げ、嘲笑していたようだ。
 その他のメンバー達は、群がってくる狼の駆除へと当たる。
 後方にいた鼎は小鳥のファミリアーを上空に飛ばせたまま、敵の逃走に警戒をさせる。
「ふふ、野生の連携は厄介だね。生きる為の本能かな?」
 その上で、鼎自身は回復に回る心積もりだが、彼女は群れを成す狼達を見て。
「でも、こちらの連携も負けてないよ?」
 初手はオーラで作った縄を放ち、狼1体の動きを制していた。
 他にも、天満もまた狼からできるだけ離れつつ、破壊のルーンを宙に描く。
 直後、敵陣へと雹が降り注ぎ、狼達の身体を打ちつけ、その身を凍らせていった。
 同じく、レイチェルもまた敵から距離を保つ。
「兎の嘲笑や殺気は特に厄介だからなァ」
 そうして、ウサギには警戒するレイチェルは自身の心の内にある悪意を殺傷の霧として展開し、狼どもの身体を傷つけていく。
 また、鶫もできる限りウサギから距離を取り、仲間と違う方向から錬成変形型重狙撃銃『蓮角』で狼を撃ち抜いていた。
 一方で狼に近づき、攻撃を仕掛けるメンバーの姿も。
「狼達の引き付け役として、頑張って皆を守るよ!」
 ヒィロは前に出て、狼の噛みつきや跳びかかりを率先して受け止める。
 ただ、やはりウサギだけは怖い相手。相手がにやりと笑うと、それだけで感情を逆撫でされ、ウサギに引き寄せられてしまう。
「ボクが相手だよ!」
 なるべく、ウサギの攻撃範囲に入らないようにしつつ、その上でできるだけ多くの狼を引きつけるべく、迸る闘志を狼どもへとぶつけ、自身へと強く注意を引く。
「兎に頭下げてる狼なんて、狐なボクの敵じゃないよ!」
 ルルリアは逆に、ウサギに近い狼を狙っていた。
 自身の回避能力に自信を持つ彼女は、ウサギの視線からも逃れようと立ち回りつつ『魔銃・黒猫』と『魔銃・白猫』から次々に炎の弾丸を浴びせかけていく。
 そんな中、1体の狼が遠吠えをし、イレギュラーズ達の足を止めようとする。
 ただ、狼の近場にいたリリアーヌはスキルで対策をしていた。
 遊撃に回る彼女はヒットアンドアウェイで狼の動きを乱そうと、衝撃波を伴う拳を叩きこんでいく。
 リリアーヌの一撃を受けた狼は体にショックを受け、僅かに痙攣している。
 そこを、遠方にいた鶫が逃さず、狼を纏めて狙撃銃で撃ち抜く。
 1匹の狼が頭を射抜かれて崩れ落ちたのを確認し、彼女はさらに魔弾で動き回る狼を狙うのである。

●狼どもをけしらせ!
 その後も、ケルベロス達は連携をとりつつ、狼の数を減らす。
 殺傷の霧にまみれた1体を完全に沈黙させていたレイチェル。
 狼度どもがあちらこちらへと動き回り、乱戦になってきたことで彼女は範囲攻撃を避けて攻撃を始めていた。
 レイチェルは見えない悪意を狼単体へと差し向けてどこまでも追い詰め、木々と挟み込むようにして相手の頭を貫き、絶命させる。
 そうして、仲間が狼を減らす間、ヨハンはウサギの牽制に注力していた。
 べっとりとこびり付いた血によって、腹部を赤く染めたウサギ。
 そいつの笑みに感情を逆撫でされることも多かったヨハンは、相手のドロップキックに合わせてモップでカウンターを叩き込む。お星様が見えるほど強烈な一撃に、彼自身も目を回していたようだ。
(フリーの狼が万が一、ヨハン君に向かったら大変だよね……)
 主として、狼をひきつけていたヒィロ。
「どうしたの? かかってきなよ!」
 防御体制をとる彼女はできる限り、狼の襲いかかりに耐えていた。
「盾になるくらいしかボクにはできないから……。せめてその役目だけは、どんなに痛くても怖くても最後まで果たすんだ!」
 仲間を信じ、ヒィロは狼を自身へと引き付け続ける。
 そんなヒィロの要望もあり、他メンバーは彼女が引き付けられなかった狼を優先的に狙っていたのだが……。
「気をつけてください!」
 敵の不穏な動きに気付いた鶫が叫ぶ。
 遠方からハガルのルーンを使って攻撃していた天満が2体の狼に距離を詰められ、絡まれてしまっていた。
 遠吠えに足を竦ませ、さらに噛み付かれた彼女はやや動きが冴えない。癒しの光で自らの回復にも当たるが、狼どもはこぞって天満へと襲い掛かる。
 それに気付いた鼎が回復支援のできる召喚物で援護をするが、身体を思いっきり噛み砕かれた天満は運命の力を使い、倒れることを拒む。
 それもあって、鼎は再度彼女の傷を塞ごうと、ヒールオーダーで癒しへと当たっていく間、仲間の不利に気付いた鶫が2体の狼を纏めて魔弾で貫通する。
 それによって手前の1体が崩れ落ちると、もう1体にはリリアーヌが仕掛けて。
「すみませんね。これも仕事なんですよ」
 リリアーヌは敵の側面から近づき、捨て身の攻撃で殴りかかっていく。
 狼もさすがに隙だらけのリリアーヌへと一撃を与えたものの、反撃もそこまで。
 胸部を激しく殴打された狼は弱々しい声を上げ、その身を草むらの中へと横たえてしまった。
 リリアーヌはそのまま、ヨハンの状態を察して彼をサポートすべく、ウサギの方へと反転していく。
 その後は狼が減ってきたことで、イレギュラーズ達が徐々に数で押し切ることになる。
 ウサギの周囲で狼を翻弄していた彼女は毒属性の魔力弾を発砲し、狙った相手の体力を徐々に弱らせていく。
 しかしながら、彼女は相手が弱るのを待たず、再度異能の炎を込めた弾丸でそいつの身体を炎に包んで止めを刺してしまう。
 残る1体の狼は、ヒィロが抑え続けていた。
 駆けつけた天満がそいつを聖なる光で撃ち抜いて倒してしまえば、ヒィロは全身の傷によるダメージにも気力を振り絞り、ヨハンの援護へと向かうのである。

●ウサギが文字通り狩られる時
 首狩りウサギは殺気を放ち、嘲笑し、ヨハンを牽制し続けていた。
 その上で、執拗にヨハンの首を狙って喰らいついてくる。
 元々赤い瞳のウサギだが、このウサギだけはその瞳ですら不気味に思えてくる。
 ヨハンとて、その猛攻にいつまでも耐えられるはずもない。
 彼の足が震えて倒れそうになる前に、自由なる攻勢に備えたリリアーヌが跳躍して援護に入る。
 さらに、ヒィロが駆けつけ、彼の横につく。
「ヨハン君、今まで頑張ってくれてありがと!」
 そうして、ヒィロはヨハンの代わりとなり、ドロップキックを繰り出すウサギの抑えに回る。
 さらに、ある程度他メンバーの癒しに当たっていた鼎も、召喚物によって傷つくヨハンへと癒しをもたらしながら、ウサギを見つめて。
「手下が居なくなって、お怒りかな?」
 愛嬌すらある顔の敵へ、鼎が問いかける。
 敵はきょろきょろと周囲を見回しているが、鼎はそんな可愛らしい一面も見せる敵に一言。
「逃しはしないよ?」
 鼎の言葉の直後、レイチェルは気力の減少もあって神弓「アルテマ・ルナティック」を引き、神秘の力を込めた矢と飛ばす。
 そのレイチェルの矢に気を取られていた敵へ、リリアーヌが攻め入り、拳を叩きこんでいく。
 さらに、ルルリアが火炎と致命毒の弾丸を撃ちこみ、天満も遠距離術式を飛ばしてウサギを少しずつ追い込む。
 素早いウサギもこれだけのメンバーから集中して狙いを定められれば徐々に逃げ場を失い、その身体を傷つけていたようだ。
「そろそろ、自分の血で染まって頂きましょうか?」
 鶫は遠方から相手の首を狙い、銃弾を貫通させていった。
 まさに致命傷を負ったウサギは自らの血で身体を濡らし、逃げようとする。
 だが、ここまで抑えてきたヨハンが逃がすことなく、モップを手に十字に光の斬撃を浴びせかけていく。
 ウサギという生物は声帯を持たない。
 その為、そいつは叫び声すら上げることなく、林の中へと散っていったのだった。

●脅威の去った集落で
 無事、全ての獣を撃破したイレギュラーズ一行。
 天満は多少怪我を負っていたものの、大事には至らぬ様子。
 事後処理をしていたメンバー達だが、ヒィロが獣達の死骸を見つめて。
「この兎や狼の肉とか皮、集落で活用してもらえないかな」
「倒したウサギさんのお肉とか、貰っていってもいいですかっ?」
 ヒィロが何気なく呟いた言葉に、ルルリアがすぐさま挙手する。どうやら、彼女は相当お腹がすいていたらしい。

 そんなわけで、メンバー達は獣の死骸を運んで集落へと戻っていく。
 獣の姿に集落民は多少面食らっていたようだったが、直にその死骸を確認したことで、脅威が去ったことを実感していたようだ。
 交流の場は苦手なリリアーヌ。
 今後の仕事に繋がるかもと考えて直接集落民と応対していたのだが。
「はっ……。はい、今後もなにきゃありましたら、ご依頼を……」
緊張の為か噛んでしまって。
(戦闘より、余程緊張しますね。こういう場は……)
 彼女は恥ずかしさもあって、顔を真っ赤にしてしまっていたようだ。
 そんなリリアーヌを含め、イレギュラーズ達へと集落民はクッキーにジュースを振る舞ってくれる。
 ヨハンが早速それを頂いて口にしていると、横では鼎もその甘さにほっこりとして。
「なんて、お酒は飲めないけど良いジュースだね」
 疲れた時に、飲む一杯はなんとも格別なものに感じるものだ。
 傍では、ルルリアは焚き火で獣のお肉を焼き、もぐもぐと美味しそうに食べていた。
 鶫はオレンジジュースを使ったクッキーやケーキを作る。
 魔力で動く冷蔵庫のような物があれば、ゼリーやムースが作れただろうが、それでもメンバーや集落民も喜んでいたようだ。
「何はともあれ、これで一安心ですね」
 鶫は人々の笑顔を、微笑ましげに見つめていた。
 少し離れた場所にいたレイチェルは集落民と楽しげに語らう仲間達の様子を見つめて。
「……ま、平和なのが一番だ。この村に血の臭いは似合わンだろうさ」
 一言呟いた彼女は、木の実のジュースで喉を潤すのだった。

成否

成功

MVP

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

状態異常

なし

あとがき

魔物退治、お疲れ様でした。
首狩りウサギの猛攻に耐え続けた貴方にMVPを。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!

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