PandoraPartyProject

シナリオ詳細

カボチャのアチャチャ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カボチャ畑に潜むカボチャ
 ルカン町長は悩んでいた。
 理由はこの世界なら単純明快というもので、モンスターの襲撃というものである。
 といっても、幻想国に在るこの小さな街が襲われた過去は一度も無い。
 一度も無いからこそ、未知の恐怖には余計に不安になるのかもしれない。
 歴代の町長も、そんな民衆の不安を和らげたいと思ったのだろう。
 年に一度、この時期に、とある祭りに則った催しが開かれている。
 その為か街は準備に向けて活気が満ちているし、ルカンの目の前を走り去っていった女の子も奇抜に尖った鍔付きの黒い帽子を被っている。
 もう少しだけ待てば帽子よりもっと不思議で凄い魔法が掛かるというのに、気が逸って何処かで買って貰ったのか。
「ハハ、元気が良いな。子供は」
 魔女や悪魔にも変われる三日間。
 混沌世界の、つまりはファントムナイトだ。
 他と一風変わっているところは、この街では住民の大部分が怪物のような姿に変わる事。
 そうする事で『この街は大量のモンスターの縄張りだ』『街に近寄ったら痛い目を見て追い返されるぞ』という恐怖感を周囲のモンスター達に与えて近寄らせないようにしている。とされている。
 故に姿はより強そうな、より大きいものが好まれたりした。昨今では拡大解釈が進んでゴリラになった町民が屋根からぶら下がって居たり、何処かの人造人間よろしく頭の縫い目とネジがトレードマークの巨体も現れたりしたが、まぁ元の趣旨を辿れば間違ってはいないのかもしれない。ルカンに言わせればどちらもゴリラだった。
 あぁ、ルカン町長の悩み事とはこういったものではなく。
「町長、今年も大通り埋まってるッスねぇ!」
 街の通りを埋めているのは洒落た外見の屋台達だ。
 というのもこの行事、ただ変身して練り歩くだけではない。
 やるからにはモンスター達にアピールせねば意味が無い。
 ならばどうする。
 騒ぐ。
 ならばどうする。
 祭りだ。
 果たして意味が有るのか無いのか、むしろ逆にモンスターの的になっていたりしないだろうかとも思うが、襲撃の被害が無い事を考えると効果は有る、と信じたい。
「あぁ……だが……」
 しかし、今年は祭りに少しばかり足りない物が有った。
「やはり、アレが何処も少ないな……上手く収穫出来れば良いんだが」
「うーん……やっぱりどっかの獣に食べられてるんスかねぇ。あの畑の……」
 アレとは。
「カボチャ」
 カボチャである。
 街より少し離れた場所に在るカボチャ畑。年に一度のこの時期の為に育てていると言っても良い。
 祭りではカボチャを使ったジュース、お菓子、煮込み料理までズラリと並んだものだった。
 それが、今年はどうも畑の様子がおかしい。
 昨年とは明らかに実る数も質も劣ってしまっている。
 一体何が原因なのか。畑の柵を強化してみたは良いが、効果は無い。それに柵が壊された形跡が無い。
 とすれば畑の中に問題が有るのだろうか?
 今日は最後の収穫日。無くて街が滅ぶ訳でもないが、いつもの名物が無いとやっぱり何か寂しい。
 街の前に広がるカボチャ畑を見ながら溜息を吐きそうになる町長の元に、収穫に向かった青年がすぐに駆け込んで来た。
「ちょっ、町長ー!」
「何だ、何か見つかったのか? ……というかお前その服どうした! 焦げてないか!?」
「カボチャが!」
「カボチャが!?」
「火を!」
「火を!?」

●それはそれとして、ね?
「こんにちは! 何か寒くなってきたのです……こんな時は暖かい料理とか食べたいのです」
 手元のコルクボードを整理しながら、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は話し始めた。
 途中、何枚か紙が落ちたようだが大丈夫だろうか。
「幻想国からの依頼なのですが……皆さん、今年のファントムナイトにご予定は有りますか? あ、いや! 別に個人的なお誘いをしてる訳じゃなくてですね!」
 慌てふためいた手元からもう二枚、資料が床に舞う。
 ユリーカは再度慌ててそれらを拾い集めると、依頼内容を続けた。
「ファントムナイトに向けて準備をしている街があるのです。で、そのお祭りにある食材が使われるのですが、食材の採れる畑でモンスターが出没したのです」
 ここまで言った辺りで、何人かのイレギュラーズは納得したように頷くだろう。
 そう、依頼の目標はそのモンスターの討伐だ。
 して、そのモンスターとは?
 と一人のイレギュラーズが問うた。
「カボチャ、なのです」
 カボチャ。かぼちゃ。南瓜。
 恐らく皆の頭に思い描いたそれに間違いないだろう。
 様子を伺っていたユリーカは、少し唸って続ける。
「カボチャの化け物なのです。ファントムナイトをご存じの方は、眼と口の形にくり抜いたカボチャの形を見た事ありますか? 見た目はアレなのです。どうやら、畑のカボチャに魂が宿ってしまったみたいです」
 畑のカボチャが減った理由はここに有るようだ。減った、というより、本来採れる筈のカボチャが変質してしまったというのが正しいだろうか。
「カボチャなのですが、火を吹いて攻撃してくるようなので住民さんたちにはどうする事もできず……畑が街に近いというのもあって、討伐の依頼が来たという訳なのです。それと……」
 ユリーカはもう一度資料に目を通し、改めてイレギュラーズに向けて顔を上げる。
「対応に当たってた何人かの住民さんが、カボチャまみれになったらしいのです。何でも、離れた所から石を投げ続けてたら突然爆発したとか……幸い、離れてたからその人は全身カボチャだらけになっただけで済んだそうなのですが、気をつけて下さい!」
 あ、それと。とユリーカは最後に付け足した。
「依頼が無事に終わったらの話なのですが、お祭りに行ってみても良いんじゃないでしょうか。皆さん、大変な依頼が続いてる人も居るでしょうから、小休止なのです!」
 街では祭りの準備が進められている。
 現在、過去、そしてこれから。様々な来歴を持つイレギュラーズ。
 討伐は討伐として最重要だが、たまには何かを思い出して息抜きをしてみるのも良いかもしれない。

GMコメント

●目標
カボチャのモンスター、パンプキンヘッドとランプキンの討伐

●敵情報

・ランプキン×9

目と鼻、笑い型の口にくり抜かれたカボチャの見た目をしたモンスター。
カボチャ畑に巣くっており、くり抜かれた穴は何かが宿っているように明かりが灯っている。
攻撃方法は体当たり、火炎系のブレス。
体当たりは転がりながらぶつかり、ブレスは扇状に範囲が有る。

石をぶつけていたところ突然爆発したらしい。
近距離で受ければ割と痛い衝撃かもしれない。あと全身がカボチャまみれになる。

・パンプキンヘッド

畑の中で一番大きなカボチャ。体長(?)2メートル。
見た目も攻撃方法もランプキンと変わらないが、もしこいつが爆発しようものなら離れていてもそれなりの衝撃が返ってくるかもしれない。
あとカボチャまみれにはなるだろう。

●ロケーション
街近くの畑。戦闘をするには充分な広さが有る。
時刻は昼間。夕方から夜に掛けて始まる祭りに向けて討伐したいところ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●祭りについて
討伐終了後であれば、街で祭りが行われます。
小さな街ですが街中にカボチャの飾りつけや屋台が並んでいるので、ご参加されたい方はプレイングに書いて頂いて大丈夫です!

街の住人達の大半は悪魔やゴリラや怪物の見た目をしてますが、中には魔女や鉄仮面の騎士風の何かなど、人間じみた変身に留まった住民も居ます。
祭りは変身しなくても参加出来ますので、依頼終わりでお腹が減っていたらどうぞご覧ください。

屋台ではカボチャのお菓子、飲み物、家庭料理など、カボチャの飲食物が名物です。
カボチャに関するものなら大抵なんでも揃っています。
カボチャポタージュ、クッキー、甘く溶かしたジュース、カボチャの串焼きとかも有ります。
カボチャ以外のものもありますし、料理が得意な方は腕を振るってみると喜ばれるかもしれません。
今年はカボチャが獲れなかった時の代わりにと、最後に花火を打ち上げる予定も有るそうです。

  • カボチャのアチャチャ完了
  • お祭りがしたかったGMから生まれた祭りっぽい何かです。
  • GM名夜影 鈴
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
來・凰(p3p010043)
機械仕掛の畜生神
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス
アリカ(p3p011038)
お菓子の魔法使い
ププ(p3p011339)
ベスト・オブ・パンプキン

リプレイ

●……居るじゃん!
 幻想国の街。ちょっと北西。
 曰く。
 世の中には悪いパンプキンと良いパンプキンが在るという。
 曰く。
 前者は討伐対象であり、後者は……。
「この私という事で御座いますね」
 自信に満ちた表情で『ペポカボチャ』ププ(p3p011339)はカボチャ畑の前に鎮座する。
 いわゆる一つのジャック・オー・ランタン。
 まさかカボチャ討伐にカボチャが来るとは思わなかった。一番ビックリしているのはこの記録を残す筆者だ。流石は混沌世界。
 失礼、少し素が出てしまった。
「ぱぱっと倒して、住民の皆さんが安心してお祭りを楽しめるようにしないといけませんね!」
 その隣で『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)は早速、畑への結界を発動させる。
 これ以上の被害を増やさない為の術。これで安心して戦えるというもの。
 恐らくはププと見知った仲であろうアリカ。カボチャの知り合いが居るなら変な誤解も生まれないだろう。
 ……カボチャの知り合いって何だろう。
 いや、我に返ってはいけない。字数が足りなく……ではなく、問題はこれから解決しなければならないのだから。
「やっぱり、カボチャ畑にジャックオーランタンは似合うねえ」
 そう和やかに畑を眺めるのは『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
 スカイウェザーである彼からしても、ファントムナイトに怪物に変身という風習には興味を惹かれる様子だ。
 ただ、まぁ、今年は運が悪かった。
「カボチャの化け物、か」
 ふむ、と一つ息を吐いて、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は落ち着いた様子で二匹の鳩を召喚する。
 ある星では、収穫祭には死者が帰ってくると聞く。今回で言うと、ファントムナイトの期間だ。
 人々に忘れられ、お参りする者も居なくなる……帰る場所が無くなった霊が誰かに気付いて欲しくて、寂しさを埋める為に悪戯をしに来る。
 ただ、ウェールは感傷的な考えが浮かぶのだ。
 鎮魂の想いを込めるぐらい良いよな。と、そう思うからこそ、召喚した鳩達を静かに見送ったのかもしれない。
「黄昏れてるわね」
 空へと舞い上がった鳩を見上げると、ウェールの背中に声が一つ。
 ウェールは振り返る、と同時に視線を下げた。
「カボチャは苦手?」
 金の瞳に狐耳。同じく金色に属する髪は日光の下で小麦に近く照らされて、それに見栄えの劣らない尾が象徴的。
 まるで狐のお姫様が社からそのまま抜け出して来たかのような出で立ちで、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は彼に言葉を投げる。
「いや、そういう訳では……」
「冗談よ。無事なの、残ってそうかしら」
 八人が停止しているのには意味が有る。何事も、準備が必要なのです。
「端側がまだ採れそうだな。逆に中央部分は期待出来ない」
 鳩達との五感を共有したウェールは、その視点から畑内部の情報を皆へと共有した。
「中央、ですか……」
 日光を遮るように額に片手を当てて、『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は彼の示した位置を眺めた。
 そして「うん……」と何処か納得したように手を下ろす。
 その理由はどう考えても畑のど真ん中に居座っている奴だろう。
 メンバーでも高身長なトールや『機械仕掛の畜生神』來・凰(p3p010043)をもってしてもまだ顔を上げる必要があり、ウェールでやっと黒い空洞の眼と水平に視線を合わせる事が出来る。
「いやぁ、デカいね~」
 何処か怪し気にも思える笑みを絶やさずに『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)も同じ方向を見ては言った。
 それに、と凰は地面に視線を落とす。
 巨大な南瓜、パンプキンヘッドの周りにも、ププと同じような背丈のカボチャ達がじっとこちらを睨み付けている。
 表情など誰が判るのだと思うだろうが、カボチャに空いた両目の端が吊り上がっているから多分そうだ。
「周囲にも多数確認。迂闊に侵入すれば囲まれると推察」
 凰は対話用の人格、リオウと合わせ続けて一歩踏み出した。
『寄れば動くが威嚇だけ、か。こっちの攻撃に反応するタイプか?』
「ふむ、しかし野菜は襲撃してくるものなのだな」
 切り替わって凰はしみじみと言う。
「即座に……」
「いや、基本そんな事は無いけどね?」
 更に踏み込む凰の足を、まさに即座にアクセルの一言が止めた。
「そうではないのか。なら……そうか」
「折角のお祭りなら、ご馳走が沢山じゃないと盛り上がらないよね~」
 意気込むユイユの口内で玉が転がる音が鳴る。
 その通り。街の祭りは盛り上がってこそ意味を成す。
「準備は良い?」
 言いながら、ユイユは歩みを進める。
 トールはそれに頷いた。
「えぇ。あの場所なら、充分に剣を振るえる広さかと」
「中央に固まって戦う、という事で?」
 ププが正面の柵を越え、問いに答えるのはウェール。
「というより、そこが畑の被害を最小限に抑えられる……という事だな」
 彼の背に隠れて左右に別れたのは二つの影。
 内一つ、イナリは強気に笑みを見せると短機関銃に指を絡める。
「良いわね。それでいきましょ」
 もう一つ、アリカの小柄な体躯がひょこっと現れると、前傾姿勢で濃ゆいミルクとイチゴのエプロンドレスを揺らした。
「悪いカボチャさん達はお菓子にして……!」
「食べ……!」
 続け様に口を開いたアクセルは一瞬悩んだ上で。
「……られたら良いなぁ!」
 両翼を宙に広げた。
「機能、良好。回復支援を開始する」
『んじゃ……』
 我が物顔のカボチャ達に立ち塞がったのは堂々と並ぶ八人の姿。
『カボチャ退治といきますか!』

●散開
 対峙したパンプキンヘッド達に届けられたのは、アクセルの音の波動。
 その指揮棒から奏でられる音がカボチャ達に降り注ぐ。
「軽っ……中身入ってるのかな」
 まるで小動物を相手にしているかのような手応えにアクセルが呟くと、トールは皆より少し前へと詰め、無我の果てまで己を高めつつ左右を見渡す。
「見た目は意外と可愛いですが」
 自分の元へ群がるカボチャ達を見渡して、トールは宣戦を混ぜて切っ先を向ける。
 被害が出ている以上、敵は敵。
「やり過ぎなイタズラにはアメではなくムチを差し上げましょう!」
 釘付けになったカボチャ達に、再び歌が降り注ぐ。
 だけど、今度の歌は少々重い呪いの歌。ユイユが呼び起こす魔性の歌。
 その背後で、電気の弾ける音がした。
 まばらだったその音は、次第に高く、強く、ウェールの周囲で昂る。
「悪戯するなら迷惑かけるもんより、こんな風に楽しめるもんにした方がいいぞ!」
 カボチャ達に放たれる煌びやかな電飾、それを纏うように電光の中に佇むイナリは、一旦瞳を閉じた。
 本当に、瞳を閉じただけではあった。
 瞬間、不意の一撃がイナリから放たれる。ウェールの雷撃に混じったそれは、ランプキン達に避ける暇も与えない。
 そんな奴らもタダではやられない。あまりのやられっぷりに身体を震わせて怒っている。
 見て欲しい。あの吊り上がった空洞の眼。ギザギザに開いた笑い顔の口。うーん、言う程変わってないかな。
 ただその口元からは確実に害をなす火炎の息が放たれる。
 狙いは前面に出ているトール。
 というかイレギュラーズ達より機動力に難が有るせいか、そこくらいにしか届かない。南無三である。
 では同じような体格のププはどうなのか?
 勿論違うに決まっているでしょう。
 そんな違いを見せつけんばかりにププから放たれるのは魔力の弾丸。
 確実な遠方からの狙撃。卑怯? いやいや、これも戦略。
 パンプキンヘッドを見上げ、ププはふうむ、とその体躯を眺める。
「それにしてもご立派なカボチャですね。私もこれくらい成長したかったものです」
 これが至近距離で爆発されたら互いに粉々になりかねない。そうなったら誰がププを判別出来るのだろう。
「これ以上、壊さないように!」
 この人物、アリカなら可能かもしれない。
 至近距離まで一気に詰め寄ったアリカは、鉄帝仕込みの筋肉魔術をランプキンへと叩きつける。
「えいやー!」
 至近距離なのも相まって、気分はなんとか危機一髪です筆者は。
 だが当の本人は「カボチャの破片はあとで綺麗にすればいいだけですので!」と嫌そうにしながらも割り切っている。逞しい。
 そんな彼らに凰から掛かる、アンコール。
 これも神の御業と言えようその後光がユイユの攻撃を後押しする。
 トールはそれらを全て自身の圏内に収めて立ちはだかり。
「乱撃、いきます!」
 慎重、且つ大胆な騎士の一振りを、ランプキン達へと浴びせた。

●カボチャ頭を叩いてみれば
 景気の良い音がする。
「身体が……」
「粘つく……」
 トールとアリカは、互いにカボチャの破片を装飾していた。
 まぁ落ち着いて経緯を聞いて欲しい。せめて石を投げるのは待って貰えると有難い。
 まず素早くカボチャの群れに先制打を浴びせ続けたのはアクセル。
 空奏が織り成す神秘的な術がランプキンだけと言わず、パンプキンヘッドにまで脅威をもたらす。
 それが出来る理由がトールによる挑発の誘導。
 畑の空いたスペースに誘き寄せ、彼が振り上げた剣からは多分カボチャ相手には過剰な暴力的を秘めた一閃。
 まるでスイカ割りのように真っ二つに両断されたランプキン。そして気付く。
「一気に倒せれば……」
「爆発はしない、か」
 アクセルとウェールの二人がそれを確認し、それならとユイユは呪いの歌を奏でながら皆へ伝える。
「左二体! 温度が上がってるよ!」
 よし、と炎を吐くランプキンに放たれるウェールの炎。その火炎ごとランプキンを押し返す。
 二人の間を縫って飛び出すのはイナリの死と深淵を纏う二発の凶弾。超遠距離からの射撃。
「カボチャと火、ね?」
 炎のせめぎ合いを見て出た感想が、そのまま口にも出る。
「……焼きカボチャを食べたいわね……」
 お腹、減ってます?
 焼きカボチャをご所望ならウェールの炎でこのまま焼いてしまうのが効率的だろうか。
『いや効率とかじゃねーのよ』
 なんて声も聞こえて来そうだが、そんなリオウ、もとい凰のアンコール支援もまだまだ健在だ。
 カボチャ達を吹っ飛ばす戦法も見事だった。現にユイユ、アクセル、ウェールがそれぞれ放つ攻撃は、的確にランプキン達を味方、カボチャの被害が及ばない方向へと飛ばしていく。
 ププが内一体に魔力を撃てば、弾ける音がまた一つ。
「見事な割れっぷりです。あぁ皆様、見た目が似ているからとお間違え無きようお願い致します」
 私を割っても中身は出ませんよ、と。そんな貴方に朗報です。敵味方を識別出来る種類が有り……もうご存じ? 大変失礼致しました。
 ともあれ。
「残りひとり……ひとつ?」
 と衝撃波を撃つアクセルが言う通り、残すはあの巨大なパンプキンヘッドのみ。
 矢鱈めったらデカイ図体だが、それだけにただ転がるだけでも岩の圧と変わりない。
 パンプキンヘッドは得意の火炎を吹き出すも、対象のトールには火傷など何処へやら。
 反撃にお見舞いされたトールの絶氷剣、加えて。
「外さないよー?」
 ファントムナイトにユイユから届けられる悪戯心の弾丸は、最早悪意となって続け様にパンプキンヘッドを穿つ。
 そこへ飛来するのはウェールの雷、ユイユより一瞬後に撃った筈だが、ほぼ同時にカボチャに到達している。
 イナリの凶弾が更に追い打ちを掛けたところに、アリカが突っ込んだ。
 ぶつけるはお馴染み鉄帝式筋肉魔術。馴染んでいるかは正直判らない。
「えいやー! ……あ」
 唐突ですがタイミングと運というのが有りまして。
「……赤くなった! 離れて!」
 ユイユが急いで避難通知を出す。
 咄嗟に地面に伏せるアリカ、身構えるトール。
 その瞬間。
 風船が爆発したかの勢いで、パンプキンヘッドが見事に爆発四散した。
 凰は飛んできた破片の一粒を手で払い、ププは魔力の弾にてそれを撃ち落とす。
 そんな爆風を近距離で受けた二人。
「身体が……」
 で、この章の冒頭に戻る。もう石投げても良いですよ。
 幻想国の街。ちょっと北西。ちょっとお昼過ぎ。
 ファントムナイトに現れた凶悪な南瓜達は、これにて全滅したのであった。

●幻想国、怪物通り
 戦闘後、ユイユのロバ・ロボットも手伝い、カボチャの残骸が続々と集まる。
 パンプキンヘッドも含めてその量、イレギュラーズ達ではないと運べないかもしれない。
「カボチャの欠片を集めて……」
「アリカさん」
「あっ、ここにまだ無事なカボチャが……」
「アリカさん、それはカボチャではございません。私です。ププです」
「……と思ったらププさんでした!?」
 帰路途中、ユイユの手配していた馬車の中、アリカ、イナリの両名によって行われた査定の結果「……イケる!」と二人の脳内に電撃が走る。
 元々畑の養分を吸っていた上、アリカとアクセルによる食材の付加があったのもあるだろう。
 という事は。
「私は食用ではございませんので、食べても美味しくありませんよ」
「わーん! ごめんなさいププさん! 大丈夫ですよププさんは食べませんから!」
 違ったようだ。
 そんな彼らに待ち構えていたのは、何とも怪しく煌びやかな街並み。
 灯りはそこかしこに。紫に近い空の下、何とも良い匂いが漂っている。
 街行く人々は怪物へと変われば、次第に賑わう大通り。
「うわー! 町にもモンスター!?」
「ファントムナイト、ですよ。ユイユさん」
 変貌ぶりに驚くユイユに、微笑しながらトールが応える。
「し、知ってたし!」
「本当かしら?」
 と笑うイナリは近くの台にカボチャの欠片をどかっと乗せる。
 何気に狐と狸のコンビの横に、街並みを眺めるのは人造神。
『あと祭りを楽しむのも目的な。楽しむってのを体験していけ』
 と出立前のリオウの言葉に頷いた凰は、ウェールの具現する動物達のパレードに集まる子供達を見ては脳内で小首を傾げ。
「このような格好は礼儀なのだろうか?」
 と自身を吸血鬼の姿に投影させ、その中に混じっていく。
「出来たよ! オイラ特製、カボチャカレー!」
 と調理組のアクセルが鍋を一混ぜすれば、一際空腹感を誘う匂い。腹も膨れて温まる。
「こっちも出来たわよ。グラタンにしてみたけど、どうかしら」
 言いながら、イナリは既に屋台で手に入れた串焼きカボチャを頬張りながら「意外と負けてないと思うけど」と尾をしならせる。
「うん、これも中々……!」
 アクセルの味見によれば、このまま売りに出しても悪くない。
 うんうん、とイナリは頷きながら串焼きをもう一口。
 ところでイナリさん、この前カニも食べようとしてませんでした?
 因みに変質の影響からか、種の発見には至らなかった模様だ。
「それにしても、濃い味付けばかりになりましたね」
 グラタンを食べながら、トールは並んだ料理を見ながら言った。
「材料がアレだったからな」
 そう答えたのは小さな姿に変身したウェール。
「なるべく味付けで違和感を無くしてみた。こういうのも有るぞ」
「小さい欠片はペーストにしてパンに入れてみました!」
 そう言うウェールとアリカが持つのはパンケーキにタルト、マフィンといったお菓子である。
 その匂いに釣られたか、彼らの元に集まった子供達。
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」
 と例の言葉を紡げば、それに混じって凰とそれに並ぶ式神はまた疑問を持つ。
「何だ、その呪文は」
「お決まりの文句というヤツさ。ほら、出来立てだ。落とすんじゃないぞ」
 動物達の幻影の中に消えゆく子供達を見ては、ウェールはまた想う。
 結局我が子とは行けなかったその光景。
 彼もこうやって、飽きず見つめては菓子を頬張っていたのだろうか。
 疑問は終わる事を知らない。それはファントムナイトにも似た、夢の話なのだから。
「あ、あれ!」
 ユイユは、屋台の食べ歩きをしながら目先にあるものを見つけた。
 祭りといったらやっぱりこれ。打ち上げ式の大花火。
「ね、ね、良いでしょ?」
 花火好きの彼が詰めよれば、化け物扮する町民は笑いながら席を譲るだろう。
 ユイユによって着火された音を聞いたか、離れた場所でトールの脳内に本日三人目の電撃が走る。
(レベルアップの予感がする……!)
 そんなの、もう祝うっきゃないじゃん!
「さて、困りました。屋台の屋根にでも登ってモニュメントのフリでもしていましょうか」
 と自身の容姿に悩むププと。
「大丈夫です! なんならあたしが抱きかかえていれば誰かに誘拐されたりはしないはずなのです!」
 とププをひょいと持ち上げるアリカ。
 そんな二人の周りにいつの間にか急接近する三体の人形達。
 ユイユが打ち上げた盛大な花火の下。
「レベルアップおめでとうございます! ワッショーイ!!」
 とトールが一声上げれば。
「ワッショーイ!!」
「ワッwwショーイ!!www」
「えっ、えっ!?」
「今、何かが走り去っていきましたね……」
 とその影からまた一つ。
「良いワッショイね……」
「誰!?」
「私でなければ見逃してるわ」
「ホントに誰!?」
 彼のワッショイトール人形達もまた盛大に祝ってくれるだろう。
 こうして今年のこの街のファントムナイトはこれまでにない盛大なワッショイ……じゃなかった、盛大な祭りとなったのだった。
 レベルアップに間に合ってなかったら?
 その時は……何か……ごめんなさいね……!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼完了、お疲れ様でした!
皆様、今年のファントムナイトは如何お過ごしでしたでしょうか?
私はエアコンが壊れて震えながら執筆しております!

それはそれとして、GM参加して初めて季節もののリプレイを書くにあたって、いつもより少し砕けてます。
皆さんランプキン達を食べたがってましたけど、もしかして流行ってます……? モンスターグルメ。
お楽しみ頂ければ幸いで御座います。
ではでは、またの機会に!

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