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シナリオ詳細

バイオレンス・ヤキニク・バー
バイオレンス・ヤキニク・バー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鉄帝でよく見る暴れ牛はここから来ている
「暴れ牛が逃げたぞー!」
 ぶもーという雄々しい咆哮。肉感たくましき暴れ牛は、ブラックカラーの毛皮を傷だらけにしながらも鉄帝の大通りを暴走する。
 常人であればひとつきにされただけで死にかねない角が馬車を、ホットドック露天を、たまたま通りかかったトラックを撥ね飛ばす。
 これでは町は大パニックではないのか!?
 人々に危険が及ぶのでは!?
 そんな風に考えるユーはまだニュービーテッテイヘッズと言わざるを得ない!
「フッ、今日も牛が走っていやがるぜ」
「焼き肉屋が繁盛してる証拠だ」
「縁起がいいねえ」
 鉄帝蕎麦屋も鉄帝うどん屋も鉄帝カフェも鉄帝ピザ屋も、にっこり笑顔で暴れ牛を見送った。
 そう、鉄帝とは闘う者たちの国。
 強き王の国。
 特にここナガヤ・ストリートの鉄帝マンたちはちゃきちゃきの鉄っ子である。
 店に牛が突っ込めば縁起がいいやと笑い、ブロック塀がぶっ壊れればすぐにでも直してしまう手際の良さだ。負けるのは弱いからであり、被害者たるは劣りがゆえと、今日も彼らは笑って生きる。
 そんな彼らが週イチで訪れるのが……そう、ナガヤ・ストリートの風物詩『バイオレンス・ヤキニク・バー』である!

「「ヘイ・ラッシェイ!」」
 ノコギリ状の処刑斧を担いだブラックフルメイルの店員がオシボリとチャを持ってやってくる。
 ここはナガヤ・ストリートのバイオレンス・ヤキニク・バー。
 戦士たちがごちそうを食らう店である。
 チャを一口すすった客は、目をきらりと光らせて一本指を立てた。
「牛をたのむ」
「ヘイ・牛一丁!」
 店員が振り返ると、同じく斧を持った店員がドリャアと言いながら巨大な綱を切断した。
 店の奥に備え付けられた強固な扉が開き、傷だらけの暴れ牛が現われる。
「ブモー!」
 人を何十人と殺していそうな牛! むろんただの牛ではない。
 真っ黒な毛皮は剣や銃弾を弾き、角はダイヤの如く硬く、突進の威力はダンプカーの直撃にも似た殺人的バッシュである。
 客はすらりと刀を抜くと、暴れ牛へと飛びかかる。
「ハアアアアアアアアアアアアアア――イタダキマスッ!」

●全部の鉄帝がこうだとは思わないでいただきたいな!
「我が店は繁盛しているが、いかんせん鉄帝のファイターしか訪れない。ここは一つ宣伝を打つべきだと俺は考えた」
 身の丈3メートルのゴリラがごとき男、暗黒怪獣デスゴリラ(本名、27歳新婚、焼き肉屋経営)は腕組みをして言った。
「名付けてローレットキャンペーン! ローレットは色んな国のファイターたちが在籍しているんだろう? それに魔種をぶん殴ったナイスマッスルの持ち主たちだ。彼らが暴れ牛を喰う様を見せつけることで、鉄帝マンだけものものじゃないとアピールするのさ」
 白い歯を光らせて笑う暗黒怪獣デスゴリラ。
「何? 『バイオレンス・ヤキニク・バー』を知らない?
 確かにこういう店は鉄帝にしか無いかもしれんからな……よく見ておけ」
 暗黒怪獣デスゴリラがパチンと指を鳴らすと、店の奥から暴れ牛が現われた。
「奴はライトメニュー。最も弱い牛だ」
 ぶもーと言いながら殺人的バッシュを仕掛けてくるライト暴れ牛を、暗黒怪獣デスゴリラは真正面からの正拳突きで受け止めた。
 脳天にパンチを食らったライト暴れ牛は目を回して倒れ、その脇腹やらなにやらを専用のナイフでがりがり削って皿へと盛っていく。次に暗黒怪獣デスゴリラは更に盛られた肉を炭火焼き網で焼いていくのだ。
「当店はこのようにセルフサービスとなっている。
 暴れ牛を殴り倒し、好みの部位をはぎ取り、焼く。ここまでやってこそのヤキニクさ!
 おっと心配はいらないぞ。この暴れ牛たちは俺の育てた屈強な戦士。この程度で死にはしない。一時間もすれば気合い(自己再生能力)で傷だって元通りさ。ま、たまに店から逃げるのが玉に瑕だがな! ハーッハッハッハァ!」
 肉を食らいウマイと叫ぶと箸を置いた。
「勿論肉は奢り、ギャラも出す。どうだ、一発やってみようじゃないか! ハッハーァ!」

GMコメント

 他人の金で焼き肉が食いたい。(暴れ牛を殴り倒してそぎ落とし焼いた肉を食いたい)

【オーダー】
 バイオレンス・ヤキニク・バーの宣伝ショーとして、この店のシステムに乗っ取り焼き肉を食います。
 先程説明されたように、強力な暴れ牛を殴り倒して好みの肉をとり、炭火で焼きます。
 肉をとるのが苦手だなって方は店員に言うと代わりにとってくれます。あの担いでる処刑斧で。このとき『おまかせ盛り』もOKです。
 大雑把に言うと『暴れ牛と戦う』『好みの部位をとる』『肉を食う』の三段階です。

【暴れ牛】
 鉄帝の牛は、っていうかこの店の牛は強いので手加減とかしなくても大丈夫です。必殺技を容赦なく叩き込んでください。
 多少のダメージを受けると暴れ牛は一時的に気を失って倒れます。この間に好みの肉をとり、店員に下げて貰います。
 (厳密には暴れ牛は死んでおらず、気合いで回復して一時間もすれば元気に走り回ります。動物疎通すると『沢山戦えてオレ満足!』みたいなこと言ってるので心配はいらなそうです)

 一人一頭ずつ用意されるので、好きな難易度をお選びください。
 暴れ牛は『ライト』『ヘビー』『ナイトメア』の三段階があります。もちろん後に行くほど強いです。
 戦闘方法はタックル重点。とにかく得意の攻撃をぶち込んで倒し(≠殺し)ましょう。
 なお、ナイトメアはなんかもうおかしな特殊能力がついています。ビームとか撃つし。バリア張るし。たまに飛ぶし。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • バイオレンス・ヤキニク・バー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月24日 23時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
エリシア(p3p006057)
鳳凰
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ジャック(p3p006666)
マンイーター

リプレイ

●人の金で焼き肉が食いたい(ついでに報酬も貰える!)
 『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)はオシボリでてをぬぐうと、ワリバシをぱきんと割った。
「肉。それは身体を作るのに不可欠な食べ物であり、たんぱく質の宝庫。豊富な鉄分は血を生み出すのにも有効で、免疫能力の向上も促せる」
 オトーシのガンモをつまみ、もぐもぐと満足げに咀嚼する。
「ニク。それは魂を震わす言霊であり、焼ける姿は神にも匹敵する偶像である。迸る肉汁と芳醇な香りは我々の心をつかんで離さず、永遠の虜とする。」
 両手を合わせ、祈るように目を閉じた。
「NIKU。それは夢。それは愛。それは希望」
 同じく手を合わせる『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
 鋼の右手をかちんと鳴らした。
「ふっふっふ、お肉こそ正義! お肉こそ真理! 不肖ヴァリューシャ、奢りと聞いて駆け付けましたわー!」
 わーいといって両手を掲げるヴァレーリヤ。
「……ハッ、うまい話と見せかけてチャージ料(目に見えないお金)が発生する案件では? 私、ぼったくりは許さなくてよよっ!?」
「安心してください」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が鋼の手でぽんと肩を叩いた。
「暗黒怪獣デスゴリラさんはこんな見た目と名前ですが真面目ないい人ですよ」
「まさかのお知り合い!?」
「結婚式に招待されるほどの」
 ビッと親指を立てるエッダ。
 その親指になんか血がついていたし暗黒怪獣デスゴリラさんが軽く鼻血を流していたけど気にしないでおいた。深く突っ込むと鉄帝の沼に沈みそうだった。
 一方、この雰囲気にもはや慣れ親しんだ『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)が悠長にお茶をすすっている。
「深く考えずにその場の勢いを受け入れると楽ですよ。今回もとても鉄帝らしいお店ですが、奢りで報酬は別とは気前がいいですね」
「酔狂な連中もいたものだな……」
 『鳳凰』エリシア(p3p006057)も同じくお茶をすすりつつ、こほんと咳払いをした。
「まあ、我には損にならぬ話。ありがたく受けようか」
「いや……暴れ牛に負けたら普通に死にかねないので、損があるといえばあるんですけれどね」
 ヒモのないバンジージャンプ体験チケットをプレゼントされたようなもんである。たまにいるよね、そういう自殺行為みたいなアトラクション作って遊ぶ人。
「ハハッ、最近の若者は血気盛んでいいね。おじさんである僕には中々出せない熱があるよ」
 『マンイーター』ジャック(p3p006666)がからから笑っていた。
「しかしヤキニクか……僕は生食派なんだけどなあ。牛肉を焼いて食べるのは本当に久しぶりだなあ」
 深く突っ込むといいことなさそうなのでスッと顔を背けるエリシア。
 そのかわり『アイのミカエラ』ナーガ(p3p000225)がにっこり笑った。
 この子がにっこり笑うと普通に人とか喰いそうな見ためになるが、中身は純粋ないい子である。
「ナーちゃん、オニクだーいすき! しかもウシさんとアイ(殺)しあえるなんて、すごくうれしい!」
 けど中身のさらなる深淵にヤバい獣をかっている子だった。
 ぎょいんと目が赤く光るナーガ。
 そんな二人に挟まれて平気な顔をする『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)。
「運動して肉を食べて報酬をもらう! うん、良いね!」

●下手したら死ぬ焼き肉
 章は区切れど時間は止まらず、すっくと立ち上がったランドウェラは大きなプロレスリングのコーナーにいた。
 見渡す限りに集まったのはちゃきちゃきの鉄帝マン。リングを包囲する処刑斧とブラックメイルのエグゼキューターたちなどまるで気にしない、イベント大好きバトル大好きな連中である。
 バイオレンス・ヤキニク・バーがローレットを招いて焼き肉ショーをするというので集まったようだ。
 クレーンでゆっくりとつり下げられてくる檻の中には暴れ牛が息も粗く閉じ込められている。
 椅子をさげられ、ランドウェラはゆったりとロープに身を預ける。
 斧で鎖を断ち切られ、固定されていた折の扉が開放される。
 落下してきた暴れ牛がずどんとリングの床を鳴らし、ランドウェラをにらみ付けた。
 ライトメニューとはいえなかなかに危険そうな暴れ牛だ。
 ランドウェラはまず赤の熱狂を用いて彩りの鼓舞を始めた。
「皆テンション上げていこうぜ?」
 握り込んだ大鎌を翳し、突っ込んでくる暴れ牛の角を受け止める。
「早めに切り上げさせて貰おう。なんせ僕の体力は心許ない!」
 一度引いて再びの突撃をしかけようとした暴れ牛を、ランドウェラは斜めに飛び退くことで回避。地面を転がって立ち上がり、リングの中央まで走って行く。
 ロープにぶつかった暴れ牛はターンして今度こそ突き飛ばしてやろうと地面をかくが、ランドウェラは素早く印を結んで魔術を発動。放出した魔力を暴れ牛へ叩き付け続けていく。
 暫くは耐えていた暴れ牛ではあったが、しだいによろめき、その場にどっさりと倒れてしまった。

 一方こちらのリングはジャック。
 手をぱたぱたと降って柔軟運動をするジャックの眼前に、ライトメニューの暴れ牛が降り立った。
 ぶもーとたかく叫んで地面をひっかく暴れ牛。
 先制攻撃で放ったマジックロープを飛ぶようにかわし、暴れ牛が飛び込んでくる。
 直撃をよけるべく斜めに転がるジャック。
 走って距離をとり、再びマジックロープを放つ。
 オーラの縄が今度はしっかりと足へ巻き付いた。
 ジャックはすぐさま接近をしかけて逆再生の魔術を発動。
 直撃をうけた暴れ牛は身体をゆすって麻痺状態を解くと、すぐ近くまで迫っていたジャックを突き飛ばした。
 派手に吹き飛ぶジャック。地面をバウンドしてロープへぶつかるが、暴れ牛ははねる暇もあたえずさらなる突撃を仕掛けてきた。
 すぐそばまで迫ってきた暴れ牛にエクスプロードの魔術で対抗するジャック。
 爆発に巻き込まれた暴れ牛がよろめき、それでも更に突撃を仕掛けようとするのを逆再生魔術の連打によって無理矢理に黙らせた。
 ぐったりと倒れる暴れ牛。ジャックはスタッフを呼ぶように手を振った。
「申し訳ない。正直どこでもいいから適当に『おまかせ盛り』してくれないか?」

 ライトメニューの暴れ牛でもこれだけの迫力。
 これがヘビーメニューになればどんな激戦になるのか。それは今からナーガが証明してくれるだろう。
「ウシさんウシさん、いっぱいアイしあおうね!」
 可愛らしい声でそう唱えると、ナーガは血の付いたスコップを地面に突き立てた。
 きわめて頑丈な石の特設リングの中央に、トゲのついた檻が落下してくる。
 トゲの存在など構わぬとばかりに暴れ檻の壁をへし折りかけていた暴れ牛が、今まさに檻をへし折って外へ飛び出してきた。
「アハッ――!」
 両目と口を大きく開いて、ナーガは『突撃』した。
 暴れ牛とナーガが正面衝突。
 頑丈な頭が激突し、石のように皮の硬い両手と人を殺しかねない角が激突する。
 あまりに強引な正面衝突であるがゆえに両者の足下にエネルギーが逃げ、石の床に放射状のヒビをおおきく広げる。
 一瞬遅れて砕け散り、ずんと足場が数センチえぐれた。
 両者のパワーが一瞬だけ宙に浮く。
 今度こそ眼前の人間をミンチにしてやろうと目を剥く暴れ牛。
 対するナーガは退かず避けず防ぎもせず、右手で拳を作って暴れ牛の顔面を強引に殴りつけた。むろん一度や二度ではない。
 左手と両足でがっちりと暴れ牛にしがみつき、右腕だけで幾度も幾度も殴りつける。
 頭蓋骨にヒビが入ろうが眼球が潰れて飛ぼうがしったことではなかった。
 その間に暴れ牛はナーガを石壁に幾度となく叩き付け、ナーガの背骨は軽く粉砕しかけ体格が変わるほどいびつにひしゃげていた。
 が……。
「アイ……アイ……アイだぁ……!」
 ナーガは暴れ牛の頭にがちりとかじりつくと、左手を暴れ牛の喉にそえ……ぐしゃりと握りつぶした。
 あまりにも強引な、あまりにも直接的な、そしてあまりにも暴力的な殺害に……。
 いつしか拍手が巻き起こっていた。
「ナイスファイト!」
「アウトラバイオレンス!」
「粋だねェ!」
 ナーガはにっこりと笑って、牛の肉を素手で引きずり出して掲げて見せた。
 そう、ここは鉄帝。力ある者が賞賛される国。

 思ったより大変な環境に身を置いてしまったものだ。
 フロウはそんな風に想いながらも、しかしゆだんなく冷静に武装を展開した。
 シルバーリングから展開した圧縮魔法壁をカイトシールドの形状にひろげると、ずどんと落ちてきたヘビー級暴れ牛に身構えた。
「大丈夫。準備は済んでいます」
 先手はおそらく相手側。
 なればこそカウンターがものをいう。
 凄まじい衝突。に足をもっていかれ、石壁に背中をぶつける。
 呼吸がとまるほどの衝撃だったが、盾でうけながしたエネルギー分の余裕と咄嗟に呼吸を整えたフロウの機転で呼吸困難を回避。
 魔法壁に聖なるエネルギーを流し込むように『ことば』を述べると、まるで激しい電流がはしったように魔法壁がスパークを起こした。
 聖なるエネルギーが接触によって流し込まれた暴れ牛は軽くはじき飛ばされたが、首を振って再び突撃。
「タフな牛のようですし……遠慮は無用、ですね!」
 フロウは魔法壁を縮小。グローブ状に拳に纏わせると、暴れ牛めがけて殴りかかった。
 突撃とパンチが幾度かわされたことだろうか。
 あちこちを血まみれにしたフロウの前には、ずずんと音を立てて倒れる暴れ牛があった。
 深く深く、息をつく。

「な、ナイトメアにしなくて正解だったかもしれませんわね……」
 ヴァレーリヤは胸に手を当てて息をついた。トライしている二人中二人がボロッボロになっていたからだ。
 その理由はナーガの潔い防御棄てっぷりやフロウの専門外の殴り合いにあえて付き合った粋さにあるのだが、傍目に安心できる光景ではなかった。
「ですがこちらも鉄騎。目には目を、パワーにはパワーを、ヘビー級一丁、お願いしますわ!」
 注文に応じて大ジャンプでリングへ飛び込んでくる暴れ牛。
 もう檻なんて蜘蛛の巣みたいに突き破ったらしく残骸が角にひっかかっていた。
 メイスを翳し、柄の聖句を親指でなぞるヴァレーリヤ。
「かかってきなさい――!」
 聖なる光がメイスを包み、炎のように燃え上がる。
「どっせえーーい!!!」
 突っ込んでくる暴れ牛の攻撃をさけることなく正面から殴りつけて対抗する。
 メイスと牛が激突したとは思えないドカンという音が周囲の石壁をゆらす。
 衝撃に吹き飛ばされそうになるヴァレーリヤだが、なんとか踏みとどまってさらなる打撃を繰り出す。
 直撃――と、直撃。
 暴れ牛の顔面をとらえたメイスの一方、ヴァレーリヤの肉体は暴れ牛の角に直撃して大きく天へ突き上げられていた。
 空中を舞う。
 スローになる世界。
 風景がモノクロなのが、血が流れすぎたがゆえとは気づかず、ヴァレーリヤは聖なることばを口にした。
「『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを――』」
 メイスが炎をまとい、一度閉じた目が再び開く。
「『憐れみ給え』!」
 衝撃が暴れ牛を、大地を、打ち貫いていく。

 エリシアは呼吸を整え、『いつでもいいぞ』と身構えた。
 美しくもまがまがしい装飾の杖を水平に翳し、魔術の炎を纏わせる。
 石壁をぶち破る勢いで飛び込んできたヘビー級暴れ牛に、エリシアは先手をとった。
 相手の突撃に先んじて一気に距離を詰め、10メートル距離からの焔式。
 暴れ牛を包む炎がより大きなものへと膨らむ。その奥にある目を、エリシアは見逃さずに飛び退いた。
 なぜなら、暴れ牛は相手の攻撃など知ったことでは無いという風に突撃を仕掛けてきたからだ。
 一瞬おくれ、角がかする。
 だがそのわずかな衝撃だけでエリシアは自身が派手に回転するのを自覚した。
 風景が引き延ばされる。
 どこにぶつかったかも分からないような衝撃。
 壁にぶつかったことで、自分がバウンド&ロールしていたことに気がついた。
「なんというパワーだ……」
 エリシアは自らに癒やしの炎を纏わせると、ターンして戻ってくる暴れ牛に向けて杖を翳した。
 防御――しきれはしない。
 派手に押し込まれ、石の壁にぶつかる。
 が、それでいい。
「神の雷ぞ! 刮目せよ!」
 エリシアは至近距離から、膨大な炎を噴射した。

●メインディッシュ
「うむ、中々美味である。これは持ち帰れぬのか? そうか……」
 これっきりなのが残念といった風に焼き肉を食べるエリシア。
 ナーガもジャックも、どこかありがたそうに肉の刺身を食べている。
「苦労して倒しただけあって美味しいですね。店主の拘りを感じます」
 フロウがふと顔を上げ、黄金のリングへと視線を向けた。
 視線の意味を察して、ランドウェラとヴァレーリヤも顔を上げる。
 そう、本日のメインイベント……もといメインディッシュがこれから始まるのだ。

「……いただきます」
 下呂左衛門が両手を合わせ、リングへとやってくる。
 その正面に現われたのはただの暴れ牛。
 しかし下呂左衛門にはその正体が見えていた。
「貴殿……さては」
『然様』
 暴れ牛は突如として黄金の闘気を吹き上がらせると、シュオンシュオンと燃えるような音をたてながら肉体をばきばきと変異。身の丈2メートルオーバーの巨漢の姿をとると、漲る筋肉でなぜか着ていたシャツを内側から粉砕した。
『此、戦士、なり!』
 シュンと音をたてて消える。
 否、背後に回っていたのだ。
 観客がそれに気づいた時には既に放たれた回し蹴り。下呂左衛門は弾丸のごとく飛び黄金リングの壁にめり込んだ。
 が、よくみれば下呂左衛門は既に身を反転させ刀で蹴りを防御していた。
 どこどか、下呂左衛門は壁に足をつき今まさに反撃の跳躍をしかけんとしていたのだ。下呂左衛門の肉体を闘気の鎧が包み込む。
 手を翳し闘気の壁を生み出すナイトメア暴れ牛。
『――!?』
 しかし、直後に目を見開く。
「この間似たような技を使う獣を斃したところでな。悪いがその技、見切ったでござる!」
 壁ごと刀で切り裂く下呂左衛門。
 直撃――したその時既に、暴れ牛はもう一方の手を翳していた。
 下呂左衛門の至近距離にそえられる手。そして放たれるナイトメアビーム。
「ぬおお……!?」
 回避は間に合わない。
 あまりの衝撃にオーラの鎧ははぎ取られていく。
 が、下呂左衛門はギリギリのところで相手の腕につかまり、刀を突き込んでいた。

 地響きのような音と共に、下呂左衛門と暴れ牛が倒れ伏す。
 エッダはそんな現場にゆっくりと入っていく。
 鋼の右手と左手を、がしんとぶつけて見せるエッダ。
「さあ、ビビッてねーでかかってこ――」
 キュンという音と閃光。
 一瞬遅れて爆風。
 更に遅れて逆向きの爆風。
 気づけばエッダの姿などそこになく、ナガヤ・ストリートの数件さきの路上を黄金のナイトメア暴れ牛によってさらわれている最中であった。
 無数の壁や柱をぶち抜きながら進む。
 エッダはそのなかにあってもがっちりと暴れ牛の身体を掴み、自らに走る衝撃の一部を暴れ牛に流し込んでいた。
 大きくターンして焼き肉屋へと戻ってきた黄金ナイトメア暴れ牛。
 突き飛ばされたエッダが空中を回転し、大地を掴み大きくえぐるようにしてブレーキ。
 一方の暴れ牛はジェット噴射で飛翔し、天空から急降下爆撃アタックを仕掛けてきた。
 常人なら死ぬやつだ。
 だが、エッダは祈りの姿勢で待った。
 直撃の一瞬。
 エッダの振り上げた拳。
 交わされるラストショットは、エッダの腕を粉砕骨折させたかわりに、黄金ナイトメア暴れ牛の額を粉砕させた。
 ずずんと沈む暴れ牛。
 エッダは血を吐き、その場へうつ伏せに倒れた。

 歓声が響き渡る。
 やるじゃねえかローレット。
 そんな声の中、肩を貸されたちあがるエッダと下呂左衛門。
「やはり、こうでなくては……」
 死にかけの顔で、エッダは口の端一ミリだけをつかって笑った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

河津 下呂左衛門(p3p001569) [重傷]
武者ガエル
エッダ・フロールリジ(p3p006270) [重傷]
フロイライン・ファウスト

あとがき

 ――mission complete!
 ――Good Job!

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