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シナリオ詳細

<伝承の旅路>ヒーローは死なない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●爆炎無限
 豪腕が唸り、大剣が空を裂く。
 それは魔王軍のモンスターコボルトナイトの腕を切り落とし、激しい血しぶきをあげさせた。
 それ以上のダメージから逃れるべく走り出したコボルトナイト。
 しかし大剣を振り下ろしたゼロ・クール『イグニス』は慌てない。
「そっちへ行ったぞ、メイヤ!」
 逃げた方向で待ち構える鵜来巣 冥夜(p3p008218)に視線を送ったのだ。
 それだけで、全てが伝わった。
「承知」
 冥夜は走ってきたコボルトナイトに慌てる様子も無くアプリケーションjuinを起動。近接術式を高速発動させると、どこからともなく現れた魔法のナックルを握りこんでコボルトナイトを殴り飛ばした。
 きりもみ回転して宙を舞い、バウンドし、そして動かなくなるコボルトナイト。
 周囲からあがる歓声。
「またひとつ村を救ったな、相棒」
「ええ。なにせ私達は――」
「「爆炎無限(ばくえんインフィニティ)!」」
 二人並びポーズをとるイグニスと冥夜。
 彼らの心は、ヒーローとして深く深く通じ合っていた。

 ここは異世界プーレルジール。
 魔王が人類を支配せんとし、勇者のいないIFの世界。
 この世界の四天王をはじめとした存在は、なんと終焉獣が寄生した存在であったという。
 彼らの目的はイレギュラーズたちを利用して混沌世界へとわたること。
 そんな彼らが混沌へ渡れば滅びのアークの大量流出という恐ろしい事態が巻き起こることになってしまうだろう。それはなんとしても止めなければならない。
 そんな一方で、プーレルジールで出会った心なき人形ゼロ・クールたちとの交流もまた深まっていた。
 そんな彼らを襲う恐るべき存在、寄生型終焉獣。
 これに完全に寄生されたゼロクールはコアを破壊しなければとめることができない。つまり殺すしかないのだ。引き剥がそうと試みた者もいたようだが、それも失敗に終わっていた。
 だがそんな中で星の少女ステラから齎されたのは『死せる星のエイドス』。イレギュラーズであっても奇跡を起こすことがとても難しいこの世界において奇跡を助けるこのアイテムの顕現は、寄生されたゼロ・クールを救う希望となったのであった。
 そしていまここにも、新たな寄生者が現れる……。

「ぐ、ぐおおおおおおおおおお!?」
 突如として『イグニス』は苦しみだし、体中から滅びの気配と共に黒い炎を燃え上がらせた。
「イグニス!? どうしたのです、イグニス!」
「まずい、や、やられたみたいだ……一人で斥候に出てた時か、くそ……!」
 ぐあああ! と叫ぶイグニスはやがてぐったりと両腕を下ろし、頭をもたげさせる。
 その様子は、もはや別モノ。人形に糸をつけて操ったかのような、ぐちゃぐちゃとした動きで大剣を持ち上げる。
「これは……寄生終焉獣による寄生……!」
 暴れるイグニスを一人でははねのけられない。だからといって殺してしまうわけには……。
 などと考えている間にも、周囲には次々と終焉獣が姿を見せ始めた。人型をしたそれは闇で作り出した武具を装備し、冥夜へと遅いかかる。
「待っていて下さいイグニス! すぐ助けを呼びます! そして……必ず……!」
 それ以上は言葉にせず、冥夜は走り出した。
 仲間たちの元へと。

●寄生されたゼロ・クール
「皆さん! 至急救援を!」
 慌ててアトリエ・コンフィーへと飛び込んできた冥夜に、ローレット・イレギュラーズたちは一時騒然となった。
 が、彼の続く言葉にすぐに事態を把握する。
「イグニスさんが……仲間のゼロ・クールが寄生型終焉獣に寄生されました!」

 場所は近くにあるルネカ村。軽いモンスター退治の依頼があったので向かった最中、それは起きたという。
「お前たちも見たはずだ。寄生されたゼロ・クールはコアを破壊……つまり殺すしか方法はないと」
 情報屋の言葉に、冥夜はグッと奥歯をかみしめる。
 が、方法がそれしかなかったのは過去の話だ。今彼の手元にあるのは『死せる星のエイドス』。奇跡の可能性を上昇させるアイテムだ。
「これが……奇跡の力があれば……イグニスさんから寄生型終焉獣だけを引き剥がすことは可能でしょうか?」
「かも、しれないな」
 確証をもって語らないのは、それが奇跡だからだ。
「だが相手をある程度弱らせる必要もあるだろう。願いを込めている間にも戦闘は続くはずだ。それなりに強力な相手を押さえ込みながら奇跡に願いを込めるというのは簡単なことじゃない。それでも……」
「できます」
 冥夜は、あえて断言した。
「必ず、イグニスさんを救って見せます! なのでどうか皆さんも、一緒に戦って下さい!」

GMコメント

●シチュエーション
 イレギュラーズと共に幾度か冒険を共にしたゼロ・クール『イグニス』。彼が寄生型終焉獣によって寄生されてしまいました。
 どうやら寄生は完全ではないらしくコアは無事なようですが……。

●エネミー
・イグニス寄生体
 寄生終焉獣によって寄生され、闇の炎を全身から燃え上がらせています。
 大剣による格闘の他、闇の炎を放つことで攻撃を行ってくるでしょう。
 一応コアはまだ無事ですが、通常こうなった状態から寄生型終焉獣を引き剥がすことはできません。
 救う為には『携行品・死せる星のエイドス』の持ち込みとそれによる奇跡が必須となります。

・人型終焉獣×複数
 寄生型終焉獣を守るように配置された終焉獣たちです。
 まずは彼らを倒さなくては救うことすらできないでしょう。
 彼らは闇で作り出された武具を着用し、防御や抵抗に優れたスペックを持っているようです。

●死せる星のエイドス
 星の少女ステラによって齎された奇跡の可能性を上昇するアイテムです。
 持っているからといって必ず発動するものではありませんが、思いを込めて願うことで奇跡を引き寄せることもあるいは可能かもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <伝承の旅路>ヒーローは死なない完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
斉賀・京司(p3p004491)
雪花蝶
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
無限ライダー2号
三國・誠司(p3p008563)
一般人
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて

リプレイ

●ヒーローは死なない
 仲間たちが走る。走る。走る。
 その中に、自分の姿もまたあった。
 同じように走りながら、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は思う。
(イグニス――そういえば、この世界の最初のお使いで世話になったのだったわね。
諦めなさい、せめてラクに……。
 なんて、言ってあげない連中がここに何人も揃ってるのよ。
 諦めなさい、かなりキツくなるけど、どうにかするわ)
「『神がそれを望まれる』」
 いつもの文句を述べると、『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)が横に並んだ。
「敵に乗っ取られた体は人質も同じ、惑わされても不利になるよりは
 死んだものとして一思いに――というのが常道ではあるのですが。
 諦めないんですよねえ……どなたも」
「当たり前だ」
 『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が苦笑してみせた。
「相も変わらず、寄生して手駒にして襲わせる。
 人の神経を逆撫でにするのも大概にしとけってもんだ終焉獣の野郎ども。
 だが俺達ぁ救う手立ても届かせるのに必要な力もある
 だから、邪魔するなら真正面から叩き切ってやる」
 だろう? そう尋ねるようにライフルのセーフティーを解除するバクルド。
 応えるように、『覚悟の行方』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が並んで走る。
「イグニスがひとりのところを狙うなんて向こうも頭を使うね……。
 でも、絶対に助けるって最初から決めてる以上、相手の手強さなんて関係ない!
 もう少しだけ待っててね、イグニス!」

 旅の仲間としてこれまで戦ってくれていたゼロ・クール、『イグニス』。
 彼が終焉獣に寄生されてしまったことをうけ、何人ものイレギュラーズたちは走り出した。
 そんな中に、『一般人』三國・誠司(p3p008563)の姿も混ざっていた。
(通りすがったら偉い所に出くわしちゃったなぁ。
 まぁでも見ちゃったからには無かったことにはできないしね。
 一般人だからね)
 一般人を自称する彼にとって、ヒーローもイグニスも一応は他人事だ。他人事だけれど。
「ま、それでも……気に食わないよね」
「その通り。イグニスさんに取り憑いて彼の意思を押さえ込んで意のままに操る所業は、例え魔王が認めても僕は認めないよ」
 『陽空のヒーロー』山本 雄斗(p3p009723)は鍛えられたフォームで走ると、全く荒げない息で続けた。
「それに、冥夜さんには以前お世話になったからね、彼の相棒を助ける為なら僕の力でよければ幾らでも貸すよ」
 そう、相棒。
 イグニスは……彼の相棒なのだ。
 『無限ライダー2号』鵜来巣 冥夜(p3p008218)はぎゅっと拳を握りしめる。
(相棒を置いて退くのは、身を切る様な思いだった。
 俺はまた繰り返すのか? 魔種になった兄上を、戦いの果てに殺めた時のように。
 いいや、諦めてなるものか! 必ずイグニスさんを、寄生終焉獣から救い出す!)
 いつまでも救えない自分じゃない。
 救える力は、その可能性は受け取った。あのステラという星の少女から。
 なら、今ならできるかもしれない。
(僕の恋人があんなに熱いんだ、イグニス、本来の君もきっとそうなのだらうな)
 恋人の姿を横目に、『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)は思う。
(僕にはそこまで造型の深くない分野でわかり合う姿は少し妬くでもないが。だからこそ、その彼から自由を奪う様に腹が立つ)
 想いはひとつ。願いはひとつ。
「退いて貰おうか、そのボディから。意思から」
 イレギュラーズたちは、終焉獣の一団へと、遅いかかる。

●終焉獣
 滅びの体現にして、獣。その名も終焉獣。
 彼らは駆けつけたイレギュラーズたちに対して素早く警戒の構えを見せた。
 まだイグニスの寄生は完全に終了していない。邪魔をされてはかなわない。
 人型終焉獣たちはその不格好なフォルムをぶんと振って、駆けつけた彼らを迎撃すべく動き出したのだった。

「さて――バクルド! 誠司! 一気に片付けるわよ!」
 イーリンの初撃は決まっている。『紫苑の魔眼・織式』による【怒り】の付与だ。
 魔眼の力を解放した彼女につられ、終焉獣たちが次々と殴りかかっていく。
 初撃を戦旗で受け止めた直後、サイドからの蹴りが直撃。更に終焉獣のパンチがイーリンのボディをとらえる。
 が、イーリンとて無防備にやられ続けるつもりでは勿論ない。
 幻想福音を自らに発動させ、痛む身体からその痛みを消し去っていく。
「イグニスを助ける時に横槍なんて入れさせてやるもんですか、根こそぎ狩ってやるわ……! さあぶっ放して!」
「はいよ。前は任せたよ、イーリンちゃん。さーて、薙ぎ払いますかぁ……!」
 御國式大筒『星堕』を構え、スコープを展開。
 誠司は終焉獣たちを貫通する魔力砲撃をぶっ放した。
 大砲から放たれる魔力の渦が終焉獣を穿ち、そのまま後続の終焉獣にまで次々に打ち込まれていく。
「バクルド、そっちからも行ける?」
「ああ、任せろ!」
 バクルドはガウス・インパクトを発動。義腕に仕込まれた機構によって磁力的衝撃を発生させて瞬発的な移動と強烈な吹き飛ばしを実現させた、いわゆる彼の得意技だ。
 終焉獣たちを纏めて突き飛ばしていったその末に、イグニスの前に躍り出る。
「お前さんはちとばかし其処らで呆けてな」
 至近距離から義手を叩きつけ、衝撃を与えるバクルド。
 【封殺】をくらったイグニスがよろめき、更なる攻撃をバクルドは叩き込む。
 が、その様子を観察していた誠司が叫んだ。
「バクルド、気をつけて! イグニスの抵抗値が徐々に上がってる。そのうち封殺戦法が通じなくなるよ!」
「構わねえ、それまでに雑魚を片付けといてくれ!」
「ま、そういうことなら任せといて!」
 誠司の更なる砲撃が終焉獣を吹き飛ばす。

 封印状態を振り払い、黒い炎を剣に乗せて放つイグニス。
 対抗するように前に出たのは、冥夜だった。
「目には目を、炎には炎を! イグニスさん。俺達は二人で一つ。どんな悪も吹き飛ばす正義の炎――爆炎無限だ! どうか、思い出してくれ!!」
 黄金・炎雨乱雨を発動させ黒炎に叩きつける。
 相殺した二人の攻撃は互いを巻き込み爆発を起こし、イグニスと冥夜はそれぞれ吹き飛んだ。
 間を阻むようにザッと展開する人型終焉獣たち。彼らは腕を剣の形に変え襲いかかる……が、そこへ瑠璃の放つ忍者刀が突き刺さった。更にいくつもの火花が上がり終焉獣が吹き飛ばされる。
「イグニスさんへアプローチするには、やはりどうしてもこの終焉獣たちが邪魔ですね」
 ワイヤーで手元に戻ってきた忍者刀をぱしりとキャッチして、瑠璃はやれやれと首を振った。
「大丈夫か」
 冥夜の様子を心配しつつ側へとよる京司。手を差し出し、彼を引っ張り起こした。
 そして京司は拳銃に専用の弾頭を装填すると、終焉獣の群れへと突きつけた。
「そこを退いて貰う」
 シムーンケイジ弾頭が着弾と同時に炸裂。熱砂の嵐が吹き荒れ、そこへ更にライトニング弾頭が着弾。雷撃が終焉獣を貫いていく。
 そこから的確に『悠久のアナセマ』『光翼乱破』と続けて打ち込んでいく京司の手際はさすがに百戦錬磨のそれである。
 終焉獣の一体が腕をムチのように変形させ京司の首に絡みつかせる――が、直後に魔術弾が終焉獣の腕を貫通。ムチごと崩壊させる。
 振り返って見れば、それは手をかざしたイーハトーヴによるものだった。
 彼の手には木漏れ日の指輪。マントイド・ガーネットの原石から生まれたというその指輪は、暖かな光を手に溢れさせている。
 先ほどの一撃によって激しく痺れさせた終焉獣とその周囲に集まってきた終焉獣たちに向けて、イーハトーヴは更なる攻撃に出た。
 パッと手を振ると光のワイヤーがあちこちに張り巡らされ、終焉獣たちを絡み取っては切り裂いて行く。
 そこへ突っ込んでいったのは雄斗だ。
「フォームチェンジ! 烈風!」
 ヒーロースーツ・烈風を瞬間的に装着すると、雄斗は両手に持った剣で次々と終焉獣を切り裂いていった。
 繰り出される終焉獣の腕の剣を受け止め、もう一本の剣で斬り付ける。あがる火花の嵐のその中で、雄斗は豪快な回転斬りを繰り出し終焉獣たちを纏めて爆散させた。
「さあ、早くイグニスさんのところへ!」

●イグニス
 ぐったりと意識を失ったイグニスを、スライム状の終焉獣が鎧のように包み込んでいる。
 持っている大剣とあわせて、まるで屈強な騎士のようだ。
 誠司が顔をしかめて言う。
「抵抗値がかなりあがってる。こっちの好きにさせない気だ。けど、足止め程度にはなるはずだよ」
 そう仲間に呼びかけ、イグニスめがけて砲撃。
 しかし、誠司の放った砲撃はイグニスの大剣によって切り裂かれ、彼の背後で大爆発を起こすのみとなってしまった。
「流石に強い……!」
 誠司は『芒に月』を自らに付与すると、破式魔砲をとにかく連射しまくった。
 大砲から放たれる強烈な砲撃に、イグニスの剣が耐えきれずに直撃を受ける。
 そんな中で、誠司は思う。
 自分のエイドスは、きっと発動しなければいい……と。
(正直見ず知らずの人を助けたいと強く思えるほどお人よしじゃない。
 けど、助けたいと思う人をみて何も感じないほど大人にもなり切れない)
 胸の内に溢れた想いは、言葉となって漏れ出した。
「もし何も起きなければ、助けたいという思いはどうなる。
 誰が値踏みしてるのか知らねぇけど。そんなこと…あってたまるかよ。
 だから手を伸ばす、このクソみたいな今をひっくり返す。その為に。
 この想いを、嘘だなんて言わせない。誰にも……!」
 それに応えるかのように、イグニスが剣を振り抜き激しい黒炎を吹き上げた。
 大量の炎が爆発となって仲間たちを襲う。
 その中を、イーリンは治癒魔法を唱えながら駆け抜けた。
「私は奇跡ってあんまり信じて無くてね。そういうのは全力で掴み取るものだと思うの。そして、その資格がある人間を、ヒーローって呼ぶのよ。行ってきなさい、なってきなさい! ヒーロー!」
 イグニスから炎の斬撃が飛んでくる。狙いは冥夜たちだ――が、させない。
 イーリンは間に割り込んで戦旗を翳し、攻撃を受け止めた。
 ざりっと地面を踵が擦り、数歩分後退させられる。
 それでもなんとか耐えきって、斬撃をイーリンは振り切った。
 とんでもない攻撃だ。とんでもない攻撃だが……。
「まだもう暫くはもつわ。抑えてる間に早く」
 まかせた――とばかりに京司はイグニスめがけシムーンケイジ弾を放った。
 一発は終焉獣による装甲によって弾かれるが、二発三発と撃ち続ければ違う。やがてイグニスを包み込んでいた装甲が剥がれ、どろどろと溶けるように抜けていく。
「抵抗を引き上げてるのはあの終焉獣の装甲だ。あれをブレイクする」
 協力してくれと言われた雄斗は頷き、『システム・雷霆』を発動。ヒーロースーツに組み込まれた対暴徒鎮圧用の無力化システムだ。
 スーツのエネルギーを右手から電撃として流し、握っていた剣へと纏わせる。
「僕が連撃を叩き込んで隙を作る。その隙に打ち込んで装甲を剥がすんだ!」
 雄斗の連続攻撃。それをイグニスは大剣で防御することで受け止める。
「イグニスさん!僕は貴方と面識はないけど、ここまで全力で貴方を助けようとしてくれる人がいるのにこのまま終焉獣何かに乗っ取られていいわけがない!だから最後まで全力で抗ってよ!ヒーローは不可能を可能にするからね」
 だが雄斗は諦めずに連続攻撃を当て続けた。そして最後の一発が、イグニスの剣をがちりと止める。
「今だ……!」
 瞬間。京司はシムーンケイジ弾を発射。とめられた剣の隙間を通って装甲へと打ち込まれたそれは、終焉獣の装甲を爆破、破壊する。
「僕はそこまで詳しいわけではないがね、バディヒーローが相棒と戦う時は物語として美しくいて欲しいのがファンの心。──そう、つまりは恋人が妬くくらい熱い絆で互いを助け合ってみたまえよ。君の叫びを響かせろ、イグニス!」

「う、ぐ、ああああ……!」
 それまで意識を閉ざしていたイグニスが呻き始める。
「ほう、まだ意識があるのですね」
 瑠璃がソニック・インベイジョンによって凄まじい斬撃を加えていく。
 イグニスは終焉獣に抵抗しているようだが、動きはしかしこれまでのままだ。瑠璃の鋭い攻撃をイグニスはその剣で撃ち払ってしまう。
「今ならこいつも効くか――!」
 バクルドが飛び込み、『ブルーフェイクIII』を叩き込んだ。
「貴様らが多少硬かろうが意味がねぇってことを叩き込んでやる!」
 防御によってバクルドの攻撃を受け止めたイグニスに、そのまま激しい衝撃が走った。終焉獣の装甲によって阻むはずだったそれは、【封殺】の衝撃だ。
「ヒーローは待たせてなんぼだとよく言われてるのかもしれねぇが、お前さん相棒はそう待たせるもんじゃあねえぜ」
「みんな、離れて!」
 叫ぶイーハトーヴは『葬送曲・黒』の術式を発動。イグニスを中心に無数の呪鎖が彼へ襲いかかり、縛り付ける。
「イグニス! 聞こえてるよね!
 君はヒーローだもの。きっと今も自分を支配しようとするものと戦ってる。そうでしょう?
 俺達が助けるから。絶対に助けるから。だから、君も負けないで!
 君はキラキラのヒーローなんだから、相棒に心配かけちゃ駄目だよ!」
 そこでついに、冥夜が動いた。
 イグニスに絡みついている終焉獣を掴み、引きちぎりにかかったのだ。
「届け、届け!正義の想い!
 同じ志を持つ相棒と、ようやく巡り合えたんだ。
 俺達はこんな所で終われない。…そうだろう?
 艱難辛苦が俺達を阻もうと、この世の悪と戦う限り――ヒーローは死なない。絶対にだ!」
 『死せる星のエイドス』が輝きを増し、光が爆発するように広がっていく。
 そして光は……イグニスたちを包み込んでいった。

 白く霞む世界の中で、イグニスがゆっくりを目を覚ます。
「ここは……? 俺は、一体……」
「イグニスさん!」
 声が。呼ぶ声が聞こえた。
 ただの人形である自分を呼ぶ声が。
 ――ユニット名を考えましょうイグニスさん!
 声が聞こえた。ただの人形である自分を、相棒と認めてくれた声が。
 ――そうです。その名も。
 そうだ。
 俺は。
 俺たちは。
 ――爆炎無限(ばくえんインフィニティ)!
 記憶は炎のように燃え上がり白く霞む世界の中を埋め尽くす。
 ただの人形だった自分を、『ヒーロー』にしてくれた思い出が。

●ヒーローは死なず
「はっ……!」
 目を見開き、起き上がる。
 イグニスは自分が生きていることに、まず驚いた。
「何が……あったんだ……?」
「強いて言うなら奇跡、かしらね」
 腕組みをして眺めていたイーリンが言う。その隣では瑠璃がどこか複雑そうな顔をしていた。
「終焉獣の気配はもうないみたいだ。大丈夫だよ」
 誠司が言うと、ほっとしたようにバクルドたちが寄ってくる。
「全く、心配かけさせやがって」
 ぽんと肩を叩いてくるバクルド。京司はといえば、ホッとした様子で一部始終を眺めている。
「イグニスさん、大丈夫? 痛む所はない?」
 イーハトーヴが尋ねてくるので、イグニスは自分の身体をぽんぽんと叩いてみた。
 おかしなところは、どうやらないようだ。
「大丈夫そうだね」
 変身を解いた雄斗が満足そうに頷き、そして振り返った。
 壊れ、消えていくエイドスを見送ってから、冥夜がゆっくりとイグニスへと歩み寄ってくる。
「あなたを見捨てるはずがないでしょう、相棒。これからも、一緒に戦いましょう」
 差し出した手。
 それを、イグニスは強く握った。
「おう!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――イグニスの救出に成功しました!

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