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シナリオ詳細

<クロトの災禍>紅き憤怒のアルミシェン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●巫女サルエラと霊樹の憤怒
 霊樹の巫女サルエラにとって、集落の中心である霊樹に祈ることは欠かされざる日課であった。
 カラン、カラン――とウッドベルという特別な鈴を鳴らしながら、静かに祈り歩くその姿は、まさに霊樹の巫女そのものだ。
 そんなサルエラの眉間に、強く皺が寄る。
「どうなされた、サルエラ殿」
 年若く見えるハーモニアの男性がそう問いかけると、サルエラは不思議で仕方ないという様子で首を振る。
「森が……植物たちの様子がおかしいのです」
 おかしい、と聞けば誰とてその話を聞こうとするだろう。
 ましてや自分達が暮らす生活の中心にして恵みの象徴、霊樹とそれに連なる森のこととなれば。
「どう、おかしいのです」
 尋ねる男に続いて、他のハーモニアたちも集まってくる。
 が、彼らの表情には疑問と同時に驚きの色もあった。
 そう、気付いている者もいるからだ。
「植物と疎通してみなさい。木々が、草花が、森が憤怒の声を上げているのがわかるはずです」
「おお、なんと」
 同じく植物疎通を使った男は困惑に声をあげた。
「霊樹は、霊樹はどうなさっておられるのです」
 ハーモニアの一人が悲鳴のように叫ぶと、サルエラは首を振った。
「霊樹もまた、強く怒りを表しています。それどころか、何か強大な力の波動が――」
 と、その時である。
 霊樹よりぶわりと炎があがった……ように見えた。
 それは炎ではなく、紅の焔をその身に纏った精霊的存在。かつて彼らが『大樹の嘆き』と呼んだ存在によく似たそれは、サルエラたちへと無差別に遅いかかり始めたのだった。

●深緑の霊樹集落よりの依頼
「世界がいつか滅びる。俺たちイレギュラーズはそのことを知っている。絶対に外れない神託により観測された超終局型確定未来――通称<D>の発生によってな」
 所変わってここは深緑付近の馬車宿。情報屋のオキストファンはそう、この場にいるイレギュラーズたちに語りかけた。
「そいつはいずれやってくる。その『いずれ』が、姿を見せ始めているらしい」
 なんでもラスト・ラストより終焉獣の出現が確認され、それらは隣接したラサ、深緑、覇竜の三国に対して侵攻をかけているという。
「それに関して起きた事件……なのかもしれないが、霊樹集落の巫女サルエラより依頼が入っている。『大樹の憤怒』アルミシェンを倒し、霊樹を鎮めてほしいという依頼が、な」

 『大樹の憤怒』アルミシェンは紅の焔を纏った人型の精霊めいた存在だ。
 眷属として大量の焔の鳥たちを作り出し、集落に解き放っているという。
 集落の住人たちは既に避難を終え、あとはイレギュラーズを待つばかりという状態にあるらしい。
「巫女サルエラが声を聞いてみた所、『ファルカウが怒っている』『ファルカウを護る為だ』と主張し、深緑全土を襲う脅威に対しての憤怒を見せているようだ。
 これは以前、大樹の嘆きという名で知られた現象に似ているな。いわゆる深緑の自浄作用、あるいは防衛装置といったところか。それが無差別に人間たちまで襲ってしまうのが、厄介なところなんだが」
 情報屋はやれやれと首を振る。
「『大樹の憤怒』アルミシェンはその外見通りに焔の魔術を操り、空を飛ぶ。だが森を守るために動いているだけあって森には保護結界のようなものがかかっているらしく、延焼する様子はない。おそらくアルミシェンを倒す事ができればこの現象を鎮めることができるだろう」
 情報屋は数枚の資料の束を突き出すと、あなたへと頷いて見せた。
「アルミシェンはそれなりに強力だ。だが、力を合わせて戦えば勝てない相手ではない筈。皆、宜しく頼むぜ」

GMコメント

●シチュエーション
 霊樹集落にて、『大樹の憤怒』アルミシェンが出現し無差別に周囲のものを襲っています。
 集落の避難はすんでいますが、このままでは集落で暮らすことが出来なくなってしまいます。
 霊樹の巫女サルエラからの依頼を受け、あなたはアルミシェンを倒し鎮めることとなりました。

●フィールドデータ
 霊樹集落
 森に囲まれた小さな集落です。
 巨大な霊樹を中心として細々とした生活が成されていたようです。
 集落には巨大な保護結界が張られており、アルミシェンの炎によって燃えてしまう心配はなさそうです。
 人々まで襲っているところからして民家にまで保護結界をかける必要はなさそうなのですが、おそらく区別を付けられなかったのが原因でしょう。

●エネミーデータ
・『大樹の憤怒』アルミシェン
 紅の焔に包まれた人型の精霊体めいた存在です。
 空を飛び、炎の魔術を扱います。
 強力な魔術を扱うため、非常に攻撃力が高く基礎スペックも当然高いはずです。

・フレイムバード
 アルミシェンが放つ眷属たちです。かなり大量に解き放たれており、集落に入るにはまずこのフレイムバードたちを倒さなければなりません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <クロトの災禍>紅き憤怒のアルミシェン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月09日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
冬越 弾正(p3p007105)
終音
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)
メカモスカ

リプレイ

●大樹の憤怒とは
 アルミシェン集落。それは霊樹アルミシェンを中心としたハーモニアたちの集落だ。
 住民たちは突如として襲いかかり始めた『大樹の憤怒』アルミシェンから逃れ、集落の外に集まっていた。
 集落の外はやや危険であるとはいえ、アルミシェンほどではない。なにせ放った眷属フレイムバードが集落の中を飛び交っているのだから。
「怒りに駆られて自らを苛むというならファルカウも人間らしい、で済ませられるのですが。原因が分からなくては根本対応も難しい。森そのものが無くなる前に彼らを止めて、理由を窺いましょうか」
 不安げにこちらを見やる集落の住民たちを横目に、『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は彼らの間を歩み抜ける。
「推察はできるわ。おそらく深緑の自浄作用ね。
 ハーモニアというか知的生物は深緑の外敵と判断しているみたいだけど、どんな方法で目標(攻撃目標)を判断しているのかしらね?
 特殊な感覚器官でもあるのかしら?興味深い生態(システム?)だわね……」
「外敵、ですか」
 瑠璃がそう呟くと、『君を全肯定』冬越 弾正(p3p007105)が困ったように首を振った。
「アルミシェンは大樹にとっての白血球のような役割なのだな。異変に対して騒ぎ立てて深緑の人間へ危機を伝える。それ自体はよいだろうが、漠然と不安を広げるだけというのは困ったものだ」
「人間に危機を伝える役割まで持っているかは疑問だな」
 波の高まりをブイで知るように、大樹の憤怒によって世界の滅びを察知しているというほうが人間的には正しいのかもしれない。
 『メカモスカ』ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)は呟き、口元に指を当てた。
「大樹の憤怒か。アレは大樹を守る免疫と聞いていたが。
 滅びのアークに反応しておるのか?
 否、或いは我らそのものが異物と思われているのかもしれん
 しかし、守ることには変わらぬ」
 守ることにはかわらない。その言葉に、弾正たちは深く頷いた。

 依頼書を手に、集落へと進む『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。
「いくら自浄作用であり延焼しないとはいえ大樹が炎を使うとはな。いや、弱点となりうるからこそ免疫として対抗手段を用意したのか?
 何にせよ人を襲うよう暴走してるとあっては何時その見境もなくなるか分かった物ではないし手早い対処が必要だな」
 その横を歩く『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)が、ざわつく森の空気に顔をあげる。植物疎通を持たぬ彼でさえ、この森がざわついているという『気配』のようなものが感じられるのだ。
「……森も彼らなりに世界の危機を感じているんだろうな。霊樹ともども、安心してもらえればいいんだが」
「そのためには、まずはアルミシェンを鎮めないとね」
「ああ、全くだ」
 『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)に言われ、エーレンはこくりと深く頷いた。
 ため息をつくレイリー。
「ファルカウを護るためかぁ。
 確かにその気持ちはわかるわ。
 でもね、それで我を失ってはダメよ。
 大丈夫、絶対に被害は出させない、『あなた』の大切なものを壊させないから」
 最後の一言は独白ではない。この森そのものへの言葉だ。
 皆の意志を確認すると、『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は同行していたリチェルカーレを置いて集落へと歩み出した。
「アルミシェンは、森を守る為のものなのよね……。
 ルシェたち幻想種も、森を守り、共に生きるものなのよ。
 だから、聞かなきゃ。
 森に何が起きているのか。
 森を守るためにどうすれば良いのか。
 だって、ルシェたちは、森を守る為のものだもの!」

●フレイムバードの集落
 世界は滅びに向かっているという。
 絶対に外れない神託により観測された超終局型確定未来――通称<D>。
 それは終焉獣や星界獣、そしてこの『大樹の憤怒』によって目に見えて観測できるものへと変わっていった。
 世界の滅びは近いのだ。そう、思わせるように。あるいは、訴えかけるように。
 『大樹の憤怒』アルミシェンもまた、そのひとつなのだ。

「やはりフレイムバードが多くて集落へは簡単に入れないか」
 飛び交うフレイムバードの群れを前に、弾正は哭響悪鬼『古天明平蜘蛛』参式へマルチスピーカーを接続する。
 鳴り響くロックミュージックに誘引されるかのように、大量のフレイムバードが弾正めがけ突っ込んでくる。
「くっ……!」
 平蜘蛛から展開する光の盾で防御する弾正だが、次々と突撃をしかけてくるフレイムバードの群れに押され気味だ。
「頑張って! 回復は任せて!」
 キルシェが『Kirschblüte』をひとなでする。祈りを込めたブレスレットはまるでキルシェに応えるかのように桜の花を散らしたような魔力障壁を展開。それを弾正の障壁に重ねるようにして彼の体力を治癒していった。
「勢いはすごいけど、個体ごとの攻撃力はそこまでじゃないみたい。なんとか耐えきれるはず。けど一人じゃ――」
「大丈夫、一人じゃない!」
 レイリーが前に出ると、四肢のアームドコンテナから鎧と盾、そして槍を展開していく。
「ヴァイス☆ドラッヘ! 怒りを鎮めるため、只今参上!」
 がつんと槍を地面に突き立てるその仕草がまるで白亜の城塞を思わせ、フレイムバードたちの一部がレイリーへと突進していく。
 たかが鳥と侮ってはならない。相当な大きさの弾丸が鋭い嘴を使って『着弾』するのである。いかなレイリーの防御力であっても完全にダメージを殺しきることはできない。
 しかし……。
「さぁ、私が盾になるわ! 多少、巻き込んででも容赦なく蹴散らして!」
 レイリーは勇ましく、そう吠えた。
 ならばその心意気には応えねばならない。といっても……。
「巻き込みはしませんが、ね」
 瑠璃は忍者刀から伸びるワイヤーを展開。
 フレイムバードたちは網のように森に展開するワイヤーに引っかかり次々と墜落していく。
 それを確認しつつ、瑠璃は墜落したフレイムバードを忍者刀の側で切り裂いて回った。
 ざくりを腹をさいてトドメをさすと、まるで炎が消えるかのようにボッと一瞬だけ光をあげたのちに消滅してしまう。眷属とは聞いているが、どうやら精霊のたぐいのようだ。
 ふむ、と瑠璃はその死に様を瞬間的に観察した。
 どうやら相手は精霊体。死体が残る敵であれば情報を覗き見ることもできるのだが……と少しばかり残念に思いながらも、続く斬撃で別のフレイムバードを仕留めた。
「それじゃあお言葉に甘えて、こっちも行くわよ」
 イナリはレイリーが引き寄せたフレイムバードの群れめがけて『御神渡り』を実行した。否、御神渡りを擬似的に再現した術式を行使した。
 ダンッと地面を踏みしめた直後に舞い散る木の葉の幻影がフレイムバードたちを切り裂いていく。
「オマケに――」
 イナリはその場に呪術を展開。厳密には呪術に類似した技術を用いた行動阻害術式を展開していく。
 次々に術式に飲まれ鈍化していくフレイムバードたち。これ幸いとばかりにイナリは短機関銃でフレイムバードたちを撃ちまくった。
 ひとつなぎの銃声の中に飛び散る空薬莢。
「全く、定期的な整備をしないから過剰反応して更なる手間を取られるんだぜ。アークとパンドラの識別ぐらい出来るように設計しておけよな!」
 やれやれと錬は絡繰儀杖を握り飛んでくるフレイムバードをたたき落とす。
 弾正とレイリーが【怒り】の付与をしてくれているおかげで殆どはあっちへ向かってくれるが、全てというわけじゃない。
 残った敵を処理するのも、役目としては重要だろう。
 錬は五行結界符を発動。自らの周囲に結界を発動させると、続けて『式符・陰陽鏡』を発動させた。
 瞬間的に鍛造した陰る太陽を写す魔鏡が虚無の光線を発射。光線を喰らったフレイムバードとその周辺のフレイムバードたちは纏めて虚無の中へと取り込まれていった。
「やはりこういうシチュエーションと相性がいいな。この式符は」
 自画自賛をしているとエーレンとビスコッティがその横を駆け抜けて行く。
「残った敵は任せろ。道を切り開く。――鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』!」
 凄まじい機動力をもつエーレン。彼のすごみはただ走るのが速いというだけの話では勿論ない。フレイムバードの集団の『要』を見つけ出し斬り付けると超高速で敵の間を駆け抜けながら次々に斬り付けて回っていく。最後に元の位置までスッと戻ると、最後に刀を振り抜いた。
 ボボボボボッと次々に爆ぜて消えるフレイムバードたち。
 その様子を確認したエーレン――に別のフレイムバードが突っ込んできた。
 先述したとおりフレムバードはそこそこの大きさの弾丸にもなり得る。そんなものが直撃すればエーレンはかなりのダメージをくらう……が、そうはさせない。
「む」
 間に割り込んだビスコッティが突っ込んできたフレイムバードを両手でむんずと掴んでキャッチした。
 衝撃を吸収してか両足が地面をざざっと削る。
「この場所を抜けるまではかばっておく。アルミシェンのもとまで走るぞ」
「ああ、心強い!」
 そんなビスコッティの側頭部にがいぃんと激突するフレイムバード。燃え上がる炎。
 が、そんなことはこのビスコッティには関係ないとばかりに表情を変えず、曲がったフレームを自己修復させていく。
 あがる炎も、どうやらビスコッティには全くの無力のようだ。
「……本当に心強いな」
「褒めてもロケットパンチくらいしか出ないぞ」
「出るのか? ロケットパンチ」
「冗談だ」
 突き出した手をグーパーしてみせ、無表情のまま構えをとる。
 両手ですうっと円を描くような構えをとり、突っ込んでくるフレイムバードを次々とその腕で捌いて弾いていくのである。

●アルミシェン
 入り口で弾正とレイリーがかなり張り切った結果、そして錬やエーレンたちが残ったフレイムバードも蹴散らしてくれていた結果、アルミシェン周囲のフレイムバードはごく僅かとなっていた。
 ならば、ここでもうひと頑張りすればよい。
「私が道を創るわ! 皆、行きなさい!」
 レイリーは槍をアームドコンテナに収納すると、展開式増加装甲を纏ってフレイムバードの群れへと突進。
 対するフレイムバードは残る全戦力をレイリーめがけて突っ込ませてきた。
(私が立っている限り絶対に誰も倒させない。
 だから、私は最後まで立ち続ける。
 それはあなたも。倒すまでで滅ぼしはしないわ、アルミシェン)
 そうなってくればあとはアルミシェンを倒すだけだ。
 空に舞い上がったアルミシェンは下半身を炎で包んだ人型の姿をした精霊体であった。
 両手に炎を纏わせ、魔方陣を次々に展開する。
 発動したのは炎の雨だ。
 それを駆けぬけることで防ぎながら、イナリと瑠璃そして錬はアルミシェンへの間合いを詰めにかかる。
 瑠璃の忍者刀がアルミシェンの腕を切り裂く。と同時にアルミシェンの魔方陣のひとつが瑠璃をとらえ、砲撃。
 炎の渦が発生し瑠璃を巻き込むが、それを瑠璃は忍者刀のひとふりによって払いのけた。
「炎の魔術……なるほど、解除するのもそう難しくないようですね」
「油断は大敵よ。というか精霊とか生身が無い目標はサンプル回収が出来ないから調査し辛いのよねー……死体でも残ればいいのにー」
「それは同感です」
 などという会話をしながらイナリは距離を詰めて至近距離から軽機関銃を撃ちまくった。
 相手が精霊だろうがなんだろうが弾が当たるのがこの世界だ。
 凄まじい連撃に対してアルミシェンの身体が踊る。
 空薬莢がぽぽんと飛んで地面にはね、ぶつかって乾いた音をならす。
 イナリは反撃を察知して大きく飛び退いた。
 アルミシェンの手刀がそれまでイナリのいた場所を通り抜けていく。
 と思った矢先、巨大な魔方陣が展開しイナリめがけて激しい炎がぶつけられた。
「飛び回るのが厄介だな。たたき落とすぜ!」
 錬は盾を瞬間鍛造すると絡繰儀杖と合体。斧の形態へと変化させるとアルミシェンめがけて飛びかかった。
 ドッと撃ち込まれた斧はアルミシェンの腕を切断。
 痛みがあるのだろうか。アルミシェンは声をあげて悶絶する様子を見せた。
 これ以上の斬撃をうけてたまるかとばかりに錬へと魔術の砲撃が連発される。盾部分を使って砲撃を防御する錬。
「アルミシェン! お願い! 話を聞いて!」
 そんな中、仲間たちの治癒を行いながらキルシェはアルミシェンへと呼びかけていた。
「どうしてそんなに怒ってるの!? ファルカウに何があったの!?」
 呼びかけるキルシェに、キッと目を向けるアルミシェン。
『ファルカウを守らなければ――護らなければ――!』
「どうして!? ファルカウは皆も一緒に守ってくれるわ! こんな風に暴れる必要なんてないのよ!」
『近づいている! 恐ろしいものが! 恐ろしいものが! 森が怒り、震えている!』
「大丈夫よ、私達が守るわ。滅びからも、脅威からも!」
 キルシェが呼びかけている間に、ビスコッティはアルミシェンへとずんずん突進していく。
「来やれ! 我が身はモスカなれば!」
 近づくなとばかりに炎の連射が浴びせられるが、ビスコッティは両腕をクロスさせその攻撃を受け止めた。
「汝の怒りは何処にありや! 理由なき怒りほど哀れな物はない。答えてもらうぞ」
『ファルカウが――!』
「怒りに我を失っている、か。ならば鎮めるほかあるまい」
「無辜なる混沌を守りたいという気持ちは、アルミシェンも俺達も同じはずだ。どうか俺達の力を信じ、託して欲しい」
 守りをビスコッティに任せ、その影から飛び出す弾正。
 平蜘蛛に剣の柄だけのパーツを接続すると、光の刀身を発動させた。
 光の剣によって飛んでくる無数の炎を切り落とすと、アルミシェンへと跳躍。大上段から斬撃を浴びせた。
『あああ……!』
 弾正をはねのけるためにか発動した炎の柱。飛び退く弾正やビスコッティたち。遠距離射撃も難しい距離だ。
 が、そんな中で一人、距離をとられても問題無く斬れる男がいた。
 エーレンである。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。この世界を滅ぼさせはしない。どうか今は鎮まってくれ」
 名乗りと共に踏み出すと、光の如く風の如く、炎の柱の間をすり抜けるように駆け抜ける。
 そして振り抜いた剣は、アルミシェンを切裂き……。
『どうか……ファルカウを……守って……』
 最後の声を、聞き届けた。
「承知した」
 スウッと消えていくアルミシェン。フレイムバードたちも姿を消し、残ったのは炎にすら包まれていない集落の風景だ。多少散らかってこそいるが、どこも燃えてはいない。
「滅びは俺達が食い止めてみせる。どうか安心してこの集落を護ってほしい」

●祈りと明日と
 瑠璃やイナリ、錬やビスコッティたちは集落の外に避難していた住民に事の次第を伝えると、戻るとともに集落の片付けや怪我人の治療を始めていた。
 その中に、集落の巫女サルエラがいる。
 ウッドベルという独特な道具をカランとならした彼女は、集落の中心にある霊樹に祈りを捧げるのだという。
 弾正やレイリー、キルシェやエーレンたちも共に祈り、気持ちを込めた。
 もう大丈夫。森は必ず守るから。
 どうか、安らかに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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