PandoraPartyProject

シナリオ詳細

焦眉之急・気魄一閃

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――この国は強さが全てだ。
 ならば。強さを失ってしまった者はどうやって生きれば良いのだろうか?


「グリバル・グディンを殺害して頂きたい」
 ローレットに持ち込まれた依頼は、ある人物の殺害。
 グリバル・グディン。依頼主によれば、その人物は帝都スチールグラードの片隅で活動している裏組織の者であり……人身売買や薬物の取引などに手を染めている中心人物なのだとか。奴を野放しにしておけばどれ程の被害がこれからも増えるか分からない――
 故に始末してほしいのだ、と。
「グリバルは数日後に……鉄帝各地に存在する『地下道』に姿を現わす情報があります。新しい取引をする予定があるのだとか――絶好の機会です。ただ一点、殺害の際にオーダーしたい事がありまして……」
「それは?」
「グリバルは敵対する組織間の抗争の末に死亡した、という体にしたいのです。――幸いと言うべきかこの取引自体が、グリバルとは別の……つまりは敵対している組織の罠のようなのです」
「成程……丁度よく抗争が行われようとしている訳か……」
「はい。しかしイレギュラーズの姿が目撃されれば厄介です。雇われている訳でもない者の姿が見えれば……他の思惑があった事が丸わかりですから」
 要はあくまでも『グリバルの組織』と『グリバルの敵対組織』だけが其処にいた事にしたい、という訳だ。そこでグリバルが死ねば敵対組織が殺したのだという事になり……裏組織同士で潰し合いが生じるだろう。争いが始まればクズ同士の弱体化が見込める。
 しかしイレギュラーズの存在を隠したまま暗殺など、かなり難しいのでは――
「ですので敵対組織の介入が行われた時点で――その一帯の地下道の灯りを落とします」
「――灯りを? 落とせるのか?」
「既に実験済みです。むき出しのケーブルらしきモノを破壊すれば灯りを落とせます。ただ……どこからか補助となる電気が常にあるのか、暗闇にすることが出来るのはおよそ30秒程度です」
 と思っていれば、依頼主から貴重な情報が入った。
 ほんの少しの時間だが完全な暗闇を齎す事が出来ると――つまり。

「30秒。その間に始末を付けろ、という事か」

 30秒でグリバルを始末し、脱出する。
 鉄帝地下道はあちらこちらに横穴も存在しているのだ。場所さえ分かっていれば事前に潜伏しておく事も十分出来るだろうし……同時にどこぞの横穴を通って逃げるのも難しくはない。特に襲撃と暗転による混乱の最中であればなおさらに。
 ――大事なのは『確実に30秒以内に暗殺を成す』事だ。
 その刹那に全力を投じる。
 防御よりも攻勢を。
 暗闇の最中に全てを終わらせろ。
「はい。どうかお願いしたいのです――ただ、お気を付けください。グリバルは元ラド・バウ闘士です。試合中の負傷により引退を余儀なくされ、全盛期の力はないでしょうが……それなりの戦闘力は保持していると思われます」
「……闘士? 確かなのか?」
「ええ――元B……いやA級という話もあります」
 独特な格闘術を用いて戦う闘士であった。しかしBの最後だかAに上がった直後の試合で、相当な重傷を負ったらしい。その後は負傷が甚大で闘士を続けられなくなり……やがては表舞台から消え去り、裏の世界に身を投じたのだとか。斯様な世界でなければ最早生きてはいけなかったのかもしれない。
 だが、如何なる事情があれど無辜なる民に害を成すのであれば。
「放ってはおけません」
 どうか彼に終わりをと――
 スチールグラードの一角を担う区長はイレギュラーズに頼むであった。


「ボス、もうすぐ取引の時間ですぜ」
「……あぁ」
 グリバル・グディンは口の端に煙草を咥えていた。
 揺蕩う白い煙が鉄帝地下道の低い天井へ昇る――
 地下は良い。誰の目にも触れぬ。誰の目も届かぬ。何をしても……
 あぁ一体いつからこのような事をしているか。
 もう覚えていない。だが、別にそうで良い。

 ――この国は強さが全てだ。
 ならば。強さを失ってしまった者はどうやって生きれば良いのだろうか?

 その結論の一つが地下に潜る事だった。それだけの事。
 今日も今日とて食い扶持の為に動かんと……していれば。
「――グリバル、死ねやぁ!!」
 眼前。銃を構えた連中が岩場の影より現れた。
 あぁまたこういう手合いか。だが問題はない。
 引退したとは言え元ラド・バウ闘士がこんな連中如きに――
「んっ!?」
 そう思っていた刹那。突如として周囲が暗黒に包まれる。
 鉄帝地下道には誰が建造したのかも分からないライトが各地に広がっている。その為、灯りには案外事欠かなかったのだが……それがいきなり停電したのだ。一体なんだ、何事だと周囲が慌てふためく中……
「感じるな。只者じゃねぇ連中がよ――俺を狩れるつもりか?」
 グリバルは知覚した。こちらへと殺意を向けてくる別の者達がいる、と。
 どこの誰かは知らないが。しかし眼前に現れた素人共とは違いそうだ。
 ――いいだろう相手をしてやる。

 俺を殺せるつもりなら――殺してみやがれ。

GMコメント

 超短期決戦の依頼となっております。
 描写重視になるかと思います、ご縁があればよろしくお願いします。

●依頼達成条件
 グリバル・グディンを30秒以内(3ターン以内)に殺害する事。

●フィールド
 鉄帝に存在する地下道の一角です。
 此処でグリバルの取引が行われる予定でした……そこを皆さんには襲撃してもらいます。電源が復旧するまで30秒(3ターン)以内にグリバルを撃破してください。撃破出来た時点で後は全員横穴に即座に飛び込んで脱出できるものとします。
 とにかく3ターン、全力で攻撃を仕掛けてその間に確実に撃破してください。

 視界は完全に暗闇の状態なので、暗視などがあると便利かもしれません。(必須ではありません。事前準備で目を暗闇に慣らせていた、なども可能です)
 また付与スキルを所持している場合、強襲直前に『全て付与済み』の状態として扱います。

●敵戦力
●グリバル・グディン
 元ラド・バウ闘士であった人物です。独特な格闘術を用い近接戦闘に優れていたそうですが……試合中に負った重症により引退を余儀なくされました。その後は名声を失い、生活も苦しくなり、やがて非合法な生業を始めてしまったのだとか……
 現在の実力は(負傷もあり)闘士全盛期よりも劣っていると思われます。

 徒手空拳で対応してきます。鋭い手刀や正拳突きを説く意図し、また敵から攻撃を受けると必ず通常攻撃で反撃を行ってきます。(ただし通常攻撃で反撃を行うのは至近~近接範囲内に限ります)
 最初は突如の暗闇に目が慣れていませんので、気配を感知して対応してきます。
 3ターン目に近付くほど目が暗闇に慣れてくるようです。ご注意を。

●組織兵×複数
 グリバル配下の兵です。チンピラのような連中で、襲撃して来た別組織とやり合っています。突然の暗闇に混乱しており碌に状況の確認も出来ない様ですので、放っておいて構いません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 焦眉之急・気魄一閃完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2023年10月10日 23時00分
  • 参加人数6/6人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
秦・鈴花(p3p010358)
未来を背負う者
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ


 この国は強さが一番。それがあのバルナバスの動乱にも繋がっている――
「慣れないものだ、この国の価値観には」
 突如の暗闇。混乱に陥る気配を感じながら『薄明を見る者』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は一瞬だけ、目を閉じるものだ。それは暗所に慣らす為でもあり――集中の意でもある。
 次なる世界を目にした時、己は闘争の世界へと至っているのだから。
 心を鎮め、自らの魂を投じる儀式。
 ――さぁ最期の戦いだ。
 剣撃一閃。跳躍と共に放たれた高速の一撃は、闇を切り裂き奴へと到達する。
 対するグリバルも拳をもってして剣へと抗しようか――
 暗き洞窟に激しき衝撃音が鳴り響け、ば。
「チィ。どこのどいつらだか知らんが、俺を簡単に殺せると思うなよ……!」
「ご安心を。こちらも其方が『どこのどいつ』なのかは――知りませんので」
 続く形なのが『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)だ。
 暗きを見据える目をもってして正確にグリバルの位置を捉えている。元闘士――堕ちてしまった存在――あぁだがそれ以上の情報は必要ない。むしろ、情報は少ない方がいいまであるか。
 余計な情が湧いて刃が鈍る事などあっては困る。
 そう。此処での己はただの『刃』――それだけでいいのだ。
 命屠り、悪逆を滅す存在。導きたる双閃。
「――グリバル。その命、頂戴する!」
「やってみろ、凡夫が――ッ!」
 ルーキスは踏み込みて狙う。一寸も逃すまいと、前のめりに。
 直後。先んじて赴いたブレンダやルーキスに当たらぬ様に、一筋の魔術が軌跡を描こうか。それは。
「かー。裏組織の大物を燃やしてよいと聞いておったのに……暗殺系のひっそり任務とは! 妾、一生の不覚じゃ!! しかしこれも妾の新たなる可能性を試す場と考えればこそ……新境地の好機よな! あれじゃろ? 乱戦になった末に偶々の攻撃が電灯のケーブルをショートさせて……漏電からの着火。全ては炎に包まれて真相は闇の中というヤツじゃな!?」
「アカツキさん、放火妄想はほどほどでお願いしますよ! 折角の奇襲ってのもありますが、こんな狭い所で大火力を放たれたら焼きしにゃこになっちゃいます! 焼きおにぎりの醤油ダレつきは大変好みですけれど、自分がそうなる趣味はないもので――!」
 だめと言われたらやりたくなる『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)からの一撃であった。絶対やらないでくださいね、絶対ですよ! と『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は紡ぎながらグリバルへと更なる銃撃を放とうか。
 しにゃこのラブリーなパラソル。向ければ穿つ。暗闇の世界を超えて。
 ――ええい。30秒で終わる簡単なお仕事ってヤツだと思ってたのに!
「まぁいいですよ。ハイエナで傭兵団長の最強で無敵な娘ですよ?
 獲物を狙うなんてお茶の子さいさい! 狩り上手な所、お見せしちゃいます!」
「しかし時間に余裕は御座いませんな。気を引き締めて参りましょうッ……!」
 所謂かな暗殺であると、しにゃこに次いで『忍者人形』芍灼(p3p011289)も駆け抜ける。
 あぁ実に忍者のようであればと心躍る! これは己にとっての宿命の一端ではないかと! 時間に限りがあるのもまた良し。元より、忍者は闇に生き、闇に動く者。であれば長期戦の彼方など柄ではないのだから……!
 グリバルの防御を掻い潜る一撃を此処に。その命、頂戴いたす――ッ!
 正に猛攻。圧倒的な手数の数々がグリバルに襲い掛かりて……
「なんだお前達……只者ではないな……?!」
「ええそうね。だから……問題。アタシ達は誰でしょう。回答時間は30秒」
 仕舞には『未来を背負う者』秦・鈴花(p3p010358)も加わろうか。
 軽やかに語り掛けながら、しかし彼女の気配は既に至近。
 グリバルの手刀を躱し、右の拳を返しに叩き込んでくれようか。
 虚空を打つように。音すら置き去りにする一閃が真っすぐに――着弾。
 軋ませる骨の音が伝わってこようとも加減はせぬ。
 ……あぁそういえば、明確に『人を殺せ』って仕事は初めてかもね。
 しかもそれが暗殺だなんて。
「でも、貴方はやりすぎたのよね」
 女子供も巻き込んで。自分が堕ちたからと他人も堕とした。
 ――斯様な行いを許すべからず。
 30秒でこれよりの未来を護れるというのなら。
「この拳が血に塗れたっていいわ」
「もう勝ったつもりか……舐めるなよド素人がッ!」
 再びに打つ。グリバルも反撃の一撃を放ちて、交差。
 ――拳と拳の衝突音が鳴り響いた。未だ闇の中に没す、洞窟の中で。


「お、おいなんだこの暗闇は! 誰か早く灯りを付けろ!」
「待て攻撃するな、やみくもにやっても同士討ちするだけ……ぐぁ!」
 ――暗闇に至りて十秒。周囲のマフィアの者達は未だ混乱に包まれていた。
 突然の暗転に誰も対応できていない様だ。
 イレギュラーズが介入している事にすら気付いていない――
 残り21秒。
 世界が再び光に包まれる前に、全てを決めろ。
「ぬぅぅ……!」
 20秒。グリバルも未だ暗闇に目は慣れていないものの。
 かつての培った経験と勘でイレギュラーズ達を迎撃していた。
 拳が殺意と闘志に反応する。見えずとも『いる』のだと分かればこそ打てると。
「されど――その『かつて』こそが隙でござる!」
 19秒。芍灼の刃が衝き走る。
 芍灼は事前にグリバルの身辺を調べていた――通常の依頼であれば斯様な時間はなかったかもしれないが、しかし今回は事前準備に余裕があった。彼が引退時にどこを負傷したのか、と……さすれば彼は左の拳が割れ、右の脚に甚大な怪我を負ったのだとか。
 ならば其処を突く。今は動けているように見えるが重ねれば再びに割れる筈だ、と。
 勿論皆にも共有し、総出を持って彼の命を狙わんとする――
「怪我で引退は可哀想ですよね。しにゃも世界の宝である、しにゃの顔に傷が入ったら……と思うと気持ちはわかります。でも非合法なのはスルー出来ません! やっちゃいけないラインってのがあるんですよ!」
「その通り。一線を越えてしまった者は――もう戻ってはこれない」
 ならばとしにゃこも、溢れ出るスーパーしにゃオーラを必死に押し留めつつ、伏射の構えで射撃続行。地を這う様な狙撃がグリバルの古傷を狙うのだ――グリバルの反撃術もこれだけ距離が離れていれば一切関係ない。
 残り18秒。しにゃこの狙撃がグリバルの脚の傷を抉れば、微かに生じた隙をルーキスが見逃さぬ。
 刀二閃。グリバルの防を抉る一撃が、続けざまに軌跡を描くのだ。
「お前ら如きに、何が分かるか!」
 が。当然グリバルも返しの一撃を放って来るもの。
 踏み込んできたルーキスへと真上より肘打ち。
 彼の肩を抉らんとする衝撃が襲い掛かって来るか――それでも。
 この刀術は人の命を奪う為に研ぎ澄まされてきたものであれば!
「退けぬ。臆せぬ。ここで汚れた生を閉じよ――ッ!」
 ルーキスの攻勢はどこまでも止まぬ。
 痛みを奥歯で噛みしめ殺し。体が挙げんとする悲鳴を無視。
 攻め立てる。グリバルの命を、彼の悪行を終わらせるまでは。
「チィィ……!!」
「ほら、まだ終わらないわよ。それとも見切ったつもり? じゃあこっちは?」
「多勢に無勢、などと言ってくれるなよ。これも其方の強さを知ればこそ、だ」
 17秒、16秒。刻一刻と減り往く。時を刻む砂が。
 代わりに生み出させるは数多の闘撃。
 鈴花の握りしめた五指は洗練さに加えて瞬速へと至り往き。
 ブレンダの二振りの刃は段々とグリバルの反応速度を超えていく。
 呼吸を止め、剣は止めず。刹那の一時に魂を込めよう。
 幾度も振るった剣の一閃は、彼女の想像通りの剣閃を描きて――血華を咲かすのだ。
 絶え間なく続く剣劇で貴方の終わりを彩ろう。
 防よりも攻勢を。一時の暇すら惜しいのだ。なぁに……
「私が倒れる前に、貴方を倒せばよいだろう? ――かつての闘技場の再演だ」
「下らん……下らん! あそこは地獄だ。命を削って命を得る。
 この国の国民はそれに血沸きやがる! おかしいと思わないのか!」
「そんな後付けの言い訳止めなさいよ。負けたから情けない事を言ってるだけ。それに――なんの理由があったとしても、自分が酷い目にあったからって、他人を巻き込んでいい理由なんか」
 この世のどこにも存在しないのよ、と。
 ブレンダの言の葉と斬撃に繋げる形で、鈴花の踏み込みからの掌底がグリバルを抉る。
 15秒。14秒。グリバルの喉奥から苦悶の音が零れ落ちようか。
 13秒。それでも未だ瞳に生気は在り。グリバルの闘志は抗いを続ける。
 彼の拳がイレギュラーズへと紡がれる。かつてラド・バウで鳴らした拳が――此処に。
「ぬぅぅ燃やしたい。火、使っていいかの? ダメ? あーもう仕方ないのー!」
 されど、12秒。その動きを止めるかのようにアカツキの魔術が再び。
 破壊の力を宿す魔法陣が紡がれ、それは真っすぐにグリバルを捉え穿つ。
 着弾すれば炸裂が生じる。おぉ多少はこれで留飲も下がろうか! 真なる爆発と爆炎には程御遠いが! さぁさぁはよう倒れよ。さすれば――
「妾の炎でパーッと送ってやるわ! ただし、地獄にのう!」
「……アカツキ、燃やすにしても火加減考えるのよ?」
「そーですよ折角暗くしてるんですから、技能:魔法収束、魔法制御でお願いしますよ!」
「なんじゃっけソレ、そんなの妾の辞書にあったかの?」
 暗きを見据える目にて敵の位置は全て把握している。
 慣れさせた上で優れた視力をも併用すれば――グリバルの姿はハッキリと捉えられようか。でも迂闊に調子に乗って炎使わないでくださいね、と再び鈴花やしにゃこに諫められる。これアレかの? 使ってしまおうかの?
 11秒。咆哮と共にグリバルが拳を握りしめる。
 壮絶なる攻勢に多大な負傷を負いながらも、しかし。
「死ねるかッ!」
 死なない為に生きてきたのだ。死なない為に泥すら啜る闇に生きてきたのだ。
 こんな所で、俺が――俺が――!
「同情はしよう。全盛期はきっと、気高く、誇り高い闘士だったのだろう。
 ここまでの戦いで――その戦い振りで――よく分かる」
 しかしそれでも、と。
 ブレンダは跳躍する。あぁ、最近は小綺麗な戦い方ばかりしていたが。
 ――今回ばかりは少し昔の戦い方をさせてもらおう。
 剣を握りしめる指先に、力を込めよう。強く、強く。
 剣だけでなく脚も全て使って――目の前の男を打倒する為に!
「だからこそここで散ってくれ。最期には誇りを思い出しながら」
 振るう一閃迷い無し。
 大上段より繰り出されるソレが――更なる血の花を、咲かそうか。


 残り10秒。死線に至る。
 グリバルの目も暗闇に慣れてきた、が。
(おいおい)
 見えるは地下道ではなく、三途の川のようであった。
 辺で死合う。送り合う。死が近しいが故の幻覚か?
 送り人は、複数。あぁやっとマトモに顔が見えてきた。
「うおー! どんだけ生き残ってるんですか!
 そろそろマジメに時間無いんですから倒れてくださいよ!!
 ハリーハリーハリー! 弾と時間が勿体ないですからね! コスパタイパ大事!!
 十六連射いきますよ――!!」
 一人がしにゃこ。倒れるまで連射してあげますと、銃撃を鳴り響かせる。
 ラブリーパラソル。可愛らしい傘……いや違う。ライフル銃を傘の様に可愛くデコったガチ銃を彼女は愛用しているのだ。その引き金を絞り上げて、しにゃパワー全開。雨降る様な彼女の銃撃がグリバルの逃げ先を奪え、ば。
「逃がさぬ――ここで果てろ、悪鬼に落ちた闘士よ!」
 9秒。ルーキスがどこまでも食い下がってこようか。
 敵の反撃? 知らぬとばかりに真正面から受け。
 懐に飛び込み斬撃幾度も。肉を切らせて骨を断つ……!
 いや、断つは骨ではなく命か。確固たる意志と共にルーキスは只管に前へと!
 ――俺は一人じゃない。
「例え、自分が止まったとしても」
 誰かがその先を繋いでくれれば――それで『勝ち』なのだから。
 逃がさない。追い求め、グリバルの拳の防御網を潜って一撃一閃。
 彼の身に新たな負傷を生みだすのだ。そして。
「然り! 命に代えても、ここは通しませぬ!」
 8秒。芍灼もまたグリバルを逃がさぬように囲おうか。
 苦難を破る一撃を此処に。グリバルが咄嗟に防御の腕を差し込ませるも、構わぬ。
 ――その上からぶち抜く。
 反撃は覚悟の上。芍灼もこの一瞬に命を懸けて、奴を追い詰めるのだ――
 同時に周囲の観察も忘れない。グリバルの身に痛打を与えうる隙があると感じれば……
「残念、時間切れ。応える余裕もなかった? それとも――目すら曇ったのかしら」
「ぐ、ぉ、おまえ、達は……!」
 一手譲るものだ。己よりも強き撃を叩き込めるものに。
 その一人が鈴花であったろうか。
 7秒、6秒。彼女が見定めた微かな隙、穿つ拳の楔は此処に来て神速へ至る――
 あぁ。殺しを楽しむはず、なのに。
(ただ殴り合う。ただの命のやり取りだけの、本能の戦い)
 心が沸き立つ。ギリギリの攻防に、彼女の血の根源もまた……!
 竜の血が――騒ぐのだからと! 五指に込める意志が、最高点へと至る!
 最早止められぬ。最早グリバルに防げる程の力はない。
 どこにこれだけの力の持ち主がいたのか、と。グリバルは掠れる意識の狭間で想おうか。
 ――あぁ。もしかすると、イレギュラーズか。
 あの皇帝バルナバスすら討った者達なら。
 勝てる訳が、無い筈だ。
「満足だったか?」
 5秒。近くで生じた美しい声は、ブレンダか。
 これが最期だが。かつての生き様を思い出せたか?
 貴方にも在った筈だ。闘士の血の滾りが……だから、こそ。
「日の当たる場所で、戦ってみたかった所だったが。
 私の剣は――誰かを護るために在る。だから、こそ見逃せない」
「――気にするな。望んで此処に来たんだ、望んで此処で死ぬさ」
「強かったよ、貴方は……」
 ブレンダは紡ごう。誰かを護るために研鑽してきたこの剣で誰かの命を奪う。
 ――今更だな。ああ、今更だ。だけれども。
 私はそういう生き方をするともう決めた。迷うことはない。
 グリバルが、最後の力を振り絞りて拳を繰り出すも。
 ブレンダは完全に見切る。そして。至高の剣閃を――奴の身に――
「せめて最後は太陽を感じるがよい。妾の慈悲ぞ。存分に受けとれぃ!」
 4秒。アカツキが全霊の力を投じようか。
 待ちに待った炎の刻だと。最後のお楽しみにして正真正銘最期の一撃。
 ――グリバルを包み上げる。
 炎の濁流が地を這い、奴へと纏うのだ。
 強烈な炎の光が溢れれば、今度は暗闇に慣れようとしていたマフィアたちの目を晦ます――今だ!
「よぉし、撤収じゃぞ皆の衆! あ、しもうた手が滑って足が滑って炎があちらこちらにーふはは、戦闘中のトラブルに見える工作は後は妾に任せるのじゃー! 火加減は得意中の得意じゃからのう!!」
「ちょっとアカツキさん、わざとらしすぎますよ!
 あっちが気付く前に撤収ですてっしゅー! サラダバー! ドリンクバー!
 あっ! お賃金でスイーツでも食べにいきましょうよ! 燃やすのより健全ですよ!」
「貴方達、ホント相変わらずねぇ。あーもうやだべとべと。
 こんな地下道じゃ、やっぱり色々ダメね。さっさとお風呂にでも入りたいわ!」
 3秒。アカツキがついでとばかりに炎を盛大に放ち、あれやこれやも巻き込んで進ぜようか。こうしておけば色々戦闘の後も全部有耶無耶になるだろうし、必要な出来事よ――だからいいじゃろ? ん?
 ただ『ウワー! しにゃ焼きはやめてください! しにゃをなんだと思ってるんですか!? え、薪!?』と、なぜかしにゃこの後ろ髪も微妙に巻き込まれている……敵より味方の方が怖いんじゃないかコレ?
 ともあれと撤退は速やかに。鈴花もまた横穴に潜り込んで即座に逃げ出そうか。
「横穴、燃えてたり一酸化炭素が襲い掛かってきたり……しないですよね?」
「そこはアカツキ殿を信ずるべきかと! 信ずるべき御方……だと、ええ、思うでござる!」
 2秒。ルーキスや芍灼も姿を消す。暗闇の中に、目撃されないように。
 微かに視線を、未だに炎ぶちまけまくって楽しそうなアカツキに向けるが――アレもきっと作戦上必要な放火だと信じて。うん。信じて。
 1秒。
「……例え国が違ったとしても。1を斬り捨て10を救えるのなら」
 最後に、ブレンダは燃え盛る炎に満足げに巻き込まれたグリバルの方を見据えようか。
 きっとあの男の生は幸福ではなかったろうが。
 斬った事に悔みはない。
 ――自らの刃には信念を乗せる。責を背負う覚悟はとうに出来ているのだから。
「私は喜んで、剣を振るうさ。これからも」
 0秒。
 地下道に光指すその時に――イレギュラーズの姿は一つもなかった。
 30秒に行われた、たった一筋の闘争は……貴方達だけが知るのだ。

成否

成功

MVP

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

状態異常

なし

あとがき

 お待たせしました、超短期戦闘でした。皆様、実にお強かったです……!
 ご参加ありがとうございました!

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