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シナリオ詳細

ご飯にする? お米にする? それともラ・イ・ス?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「今日はパンで」
「――はっ?」
 カムイグラ。高天京からは少し離れた村で――ある論争が巻き起ころうとしていた。
 そう。それが……『米』か『パン』か問題であるッッッ!
 両方炭水化物だろって? 違う! 全く違う問題なんだこれは!

「貴様、それでもこの美しい豊穣の大地で生まれた者かッ!!」
「うるせー!! 海の向こうの文化最高だろうが!! パンしか勝たん!!」
「ふざけるな米を食ええええええ!!」

 カムイグラと言えば、訪れた旅人には『日本って国に似てるなぁ』なんて言っていた者もいたか。似ている点として、カムイグラの各地では主に昔から米が多く作られていたらしい。故に米はこの国にとって馴染み深いものである、が。
 海洋王国との交流も始まって以降、混沌大陸方面から多くの文化も流入して来た。
 そうしてこの村に根付きつつあったのが……パンなのである……!
 新触感。新感覚。まぁパンも美味しいよね。近くにとっても美味しい石窯パンのお店があるんですが、どれ食べても美味しいもん。塩パンっていう塩ふりかけただけのパンすらめっちゃ美味しくて……いかんいかん閑話休題。
 ともあれ――そんなパンであるが、しかし美味しいからと受け入れられるかは話が別。米に馴染み深い者達にとっては、主食にとって代わらんとするパンを排斥せんとする者達もいた……!
「パンに魂を売り渡した者達が! 恥を知れ!」
「うるせー! これが新しい時代だよ!! 大体米を喰わないからってなんだってんだ! 別に何か不利益が在る訳じゃねーだろ!」
「何を言う……! 米を喰わねば、米の化身がやってきて天災を齎そうぞ!!」
「ハッ! 何を言って……んっ?」
 その時。言い争う村の若人と老人――が、気付いた。
 『何か』来ている、と。近くにある森の向こうから何かが……!
「な、なんだありゃあ――巨大な、米ッ!!?」
 然らば実際に見えてきた。木々をなぎ倒し突き進む、巨大な米粒の姿を。
 ――アレこそが『米の化身』 この地に伝わりし伝説の存在……!
 米の信仰が失われし時に現れ人類を粛清するという――!
「あああ実在するとは! もう終わりじゃ米の津波が我らを……うわー!!」
「親父――!! うわ、ホカホカのコメが押し寄せてきて……!!」
 ぎゃー! 悲鳴轟く村だが『米の化身』にとって米派もパン派も関係ない。
 奴は解き放たれた魔物のようなモノ……
 人類全てを米によって支配するまで止まらぬ――そんな存在なのだから。


「いやなにその……人類を粛清する米って? 遠まわしに言うけれど正気?」
「冗談のように聞こえるかもしれませんが、冗談じゃないんですよ!!」
 そんなこんなで高天京に来ていた神使へと依頼が持ち込まれた――米の化身を退治してくれ、と。巨大な米粒が暴れている……何言ってんだと思うかもしれないが、されど本当にそのままの状況なので仕方ない。
 奴は村を壊滅させ、そのまま山の中を突き進んでいるとの事だ。
 もしかすると高天京方面に来ないとも限らない――その前に倒してほしい、と。
「まぁ状況は一応分かったけれど、米やパンの諍いでそんな事がなぁ……」
「あ、ちなみにパン派の者の魂を直感で感じ取ってるのか、どちらかというとパン派の者を狙う傾向が強いらしいですよ。米派の者には若干攻勢が弱いとか……ただ米派の者はなんとなく米を攻撃し辛くなってしまう気持ちに襲われるそうですが」
「なにそれ怖い」
 魂の色を感じ取るって何? どういう事? どういう魔物なの?
 ……もしかすると人それぞれの主義主張によって、米の化身に対するなにがしかの効果が変動するかもしれない。攻撃しやすくなったり、攻撃をあてやすくなったり……或いは米の化身に狙われやすくなったり、ダメージが通りやすくなってしまったりなど……
 何はともあれ依頼であるのならば米の化身とやらを退治させてもらうとしようか。
「米もパンも――好きに喰えばいいのになぁ」
 吐息一つ。零しながら神使は現場に赴かんと、歩を進めるのであった……

GMコメント

 米は旨い! でもパンも美味しいよね、と言う訳で以下詳細です!!

●依頼達成条件
 『米の化身』を鎮める事。

●フィールド
 カムイグラ。高天京から少し離れた山の中です。
 時刻は昼。視界に問題はないでしょう。
 後述する『米の化身』が木々をなぎ倒しながら進んでいます――倒してください!

●敵(?)戦力
・『米の化身』×1体
 米です。数多の米粒が集合し、一個の巨大な個体として形成されています……! 常に低空飛行しています。なんでも目的は全人類を米で支配する事なんだとか。なんだこの魔物は。
 クソデカい存在であり非常に卓越した耐久力を宿しています。
 攻撃時はホカホカの米津波による広範囲攻撃が得手のようです。熱い。その他、小型の米粒で射撃の雨を作ったり。米粒ビットで思わぬ方向から攻撃してくる事も。ダメージを受けていくと段々小さくなっていきますので、追い詰めているかは見ればすぐわかる事でしょう。

 それぞれの抱く主義主張(後述選択肢)によって、色々変わります。
 狙われやすくなったり、ダメージを通しやすくなったり。
 或いは逆に受けたダメージが減少したり増えたりと……
 ただ主義主張がどうであれ人間を全て米で覆い尽くさんと攻撃してきますのでご注意を!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はKOMEです。
 想定外の事態は起こりません。たぶん。


主義主張(?)
 君は米か? それともパンか? それとも全く別のモノか――?

【1】米派
 やっぱり米が一番だよ。
 敵から受けるダメージが大きく軽減します。
 代わりに敵に与えるダメージもやや減少します。米を傷付けるなんて……!

【2】パン派
 パンこそ至高だよ。
 敵から受けるダメージが増加します。また、敵に狙われやすくなります。
 代わりに敵に与えるダメージが大きく増加します。米よ、くたばれー!

【3】その他派
・米もパンも美味しいよね。
・笑止。スパゲッティだろ。
・ベイクドモチョモチョだよ。
・たけのこだよね。
・はっ? キノコだろ?
・ベイクドモチョモチョ!?!?
 などなど。米やパン以外の主義があったって普通ですよね……!
 内容によって効果が変動します。敵に与えるダメージが増加したり減少したり、BSを与えやすくなったり、なんか命中とか回避とかCTが上昇したりとか色々あるかもしれません。

  • ご飯にする? お米にする? それともラ・イ・ス?完了
  • 「今日はパンで」
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月30日 23時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
ミスト=センテトリー(p3p010054)
伝承を語るもの
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)

リプレイ


「わあ、ボク知ってる。あれはカムイグラのおにぎり!
 とーっても美味しいんだよね! 大きいねぇ。とっても凄いねぇ!
 でもすごくホカホカしてるなぁ……う~熱すぎるのは、ヤッ!」
 米。ホントにデカい米! 見据えるは『無尽虎爪』ソア(p3p007025)である……ソアにとっては『肉』こそが至高なのだが、だからこそよく合う米も好みの範疇である――じゅるり。あぁ飛びついてかぶりつきたいが。
 しかし離れていても感じる。莫大な熱が込められていると。
 迂闊に近付けば焼き虎になってしまう……! それはヤダ!
「米一粒には七柱の神がいるという言い伝えもあるが、まさか本当に米の化身が反乱を起こすとはな……このままカムイグラを米で包まんとでもしているのか? なんとも冒涜的な光景だが……」
「ったく! 流石にコイツは見逃せねぇな!
 米に対しちゃ俺だって甘く見てやりてぇ所だが……目に余るぜ米の化身とやら!」
 故、攻め時を見極めんとしていれば大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)や『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)も準備を整えようか。ゴリョウは自らに防の加護を。武蔵は攻略の思考を巡らせているのだ。
 特にゴリョウはある意味、憤慨たる想いを抱いていた。
 農業やってて米の普及を目的としたゴリョウ亭を運営している身だ――
 正に生粋の米派。本来であれば米と敵対するなどありえようか……しかし限度がある!
「人様に迷惑を掛けるってのは、な。さぁて一丁やるとしますかね……!」
「えぇ――そもそもどっちも美味しんだから、どちらも尊重した方が良いのでは?
 どっちかを選ばなければならない、なんて事ないですよね……?」
『――いいえ。米こそが至高。米以外の主食の存在など、必要ないのです』
 わあああ喋った!?
 後方より銃を構え射撃を行わんとしていた『閃きの料理人』エル・ウッドランド(p3p006713)へと降り注いだ妙な声は――米の化身からの念話だろうか?
 その声色は決して友好的なモノには感じられない……どころか既に米によるホカホカ津波が押し寄せてきているのだから! うわ、熱い、熱い!!
『貴方達も米を信望しなさい。しないなら死ね』
「すっげー口悪いぞあの米の化身!!
 だがよ――オイラの主食は米でもパンでもねぇ……イカだぜ!」
 直後。『ぜってー屈しねぇ!』とばかりに米に立ち向かうのは『生イカが好き』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)だ! くわっ! と目を見開き米の津波を乗り越える――! うぉぉでっけーからって負けられねー! それに何より!
「こりゃすげーでけー海鮮丼にできそうだぜー、やっつけて食べちまおうぜー!
 さいきょーの米で、さいきょーの海鮮丼だー! イカにイクラにウニに、山盛りだー!」
「やれやれ。確かに、煮炊きする米だけが至高などとは認められないな。
 誰がそんな事を決めた――? 今の時代に即していない事を、教えてやろう」
「あぁ。時代は米だけではない……お米も食べる。パンも食べる。
 勿論ラーメンもうどんも食べる――全部だ。全部寄こせ」
 自らが至高だと驕り高ぶっている米の化身に一撃ぶち込む為にも、この程度では臆せない。『新たな可能性』ミスト=センテトリー(p3p010054)が波打つ米を薙ぐように火焔伴いし拳を一閃し、続く形で『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)も射撃敢行。少しでも米の体表を削らんと撃を仕掛ける。
 そもそも何故『米かパンか』などという、どちらかを選ぶ事が絶対なのか。
 例えばビーフシチューを頼んだ時にどちらにするか聞かれるけれども――
「パンを浸しても食べたいしご飯にかけても食べたい。
 それはどちらも自由であるべきで、侵されざるべき領域の筈だ」
『いいえ。パンなど道端に捨てなさい。ご飯だけ食べれば宜しい』
「……やはり傲慢。これが奴の本性か」
 オニキスは思考する。結局ごはんセット頼んでから単品でパンも頼んだと――両方美味しいもん。書いてる私も分かる……閑話休題。とにかく、ご飯は確かにおいしいけれど『それだけ』に統一するなんて絶対許されない。
 ただ、米の化身は決してそうは思わぬようだ。
 パンなど許さぬ。パンなどという手段が選択肢の中に入る事すら不遜だと。
 刹那――米ビットが襲い掛かって来る! 四方八方から小さな米粒が、アイタタタッ!

「米? パン? 時代遅れな発言ですね……時代はベイクドモチョモチョですよ」
『なんて?』

 しかし、その時だった。ベイクドモチョモチョ派の『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)が介入して米ビットを斬り落と――ちょっと待てベイクドモチョモチョ!?!?
 馬鹿な。正気とは思えない。
 あれは崩落饅頭だろう! え、なんですか武蔵さん? あれは回転焼き? 呉では大判焼きだった? ていうかソレは本当に主食の範囲かって? いかんこの論争を進めるとこれだけで全て埋まってしまうので再度閑話休題!
 トールは確固たる決意を瞳に秘めながら米の化身を見据えよう……!
 至大至高こそベイクドモチョモチョであると!
「好きなものを食べる。寛容こそが最も重要だと、私はベイクドモチョモチョから学びました。それほど巨大な身を宿す米の化身であれば……器量もベイクドモチョモチョの様に、広く穏やかであるべきだったのではないですか……!?」
『なんて??』
「えー!? やっぱり最高なのは肉だよ肉!」
「何言ってんだ海の幸の極み、海鮮丼だぜ――!!」
 ソアにワモンの大いなる主張。この神使達、ほとんどバラバラなのだが大丈夫だろうか??? 何はともあれ米の化身を倒すんだ神使! この地域の主食の平和は――君達に託されたんだから!


 さて米に対抗する神使達だが、米に対する精神が戦いに大きく影響していた……!
「とにかく米の化身はサイズが大きいね――少しずつでも削っていこう。
 米だって限度はある。大きいままじゃいられない筈だから」
 『ぜんぶ』派であるオニキスの撃。なんとなし全ての能力が上がっている気がした――
 特に命中だ。命中力が明らかに上がっている気がする。ぜんぶ食べたい、という超高範囲の欲望がソレを成しているというのか――! 穿つ迫撃砲が米に着弾すれば、見事に炸裂。
『なんたる強欲。これだから人間の欲望というのは――度し難い』
 が、オニキスの食欲をはてなき欲望とみなしたのか米が憤怒している。
 米からの一撃に更なる力が宿る――! オニキスを狙う米ビットの熱量が増しているのだ! オニキスに纏わりつくような熱が襲い掛かれば、彼女の体力を削らんとしている!
「うぉーそうはさせねーぜ! イカ派のオイラが相手をしてやるー! かかってこーい!」
『魚介などそれこそ米のお供に過ぎないのですよ――身の程を知りなさい』
「ふふん、自慢の雷だよ。たっぷりじっくり焼きおにぎりになあれ!
 ――って、あづっ?! 熱い、熱い! ふしゃー! ふぐるるるる!」
 一方でワモンはオニキスとは対照的に米に近寄らんとしていた。こんだけでかけりゃ近寄った方が安全だろうと、アザラシパワーを此処に! 宙を舞って米へと衝突せん――! 更にソアは少し離れた所から攻勢支援。考えるよりも早く動き、雷撃を繰り出そう……!
 が。小賢しいとばかりに米はワモンやソアを米の津波で呑み込まんとする。
 熱い! やっぱり熱い! ソアは思わず尻尾を膨らませた上に逆立たせ、びっくり退散! 木々に飛び乗り安全圏へと達すれば、威嚇するように米の方に唸り上げるのだ!
「ふー! ふー! でも、少し灼けた気がするよ!
 えへへ、焼きおにぎりまで、そう遠くないかもね……! じゅるり」
 されどソアは見た。米に確かなる一撃を叩きこめたと――
 そう。米を肉や海鮮のお供と見なすソアやワモンの一撃は……いつもよりも痛打なる力を増していたのだ! 米の身をガリガリ削っていけそうだ……! 気を付けるべきはやはり米からの攻撃である、が。

『なぜ米派である者が私に逆らうどころか――他派も庇うというのです』

 瞬間。米から聞こえてきた声は、失望か。それともまたも憤怒か。
 ……米派に属する者は米からの撃が薄くなる。
 それは他者を護らんと試みるゴリョウにとっては絶好の相性であった。更には、他派を庇う動きを見せれば、米の怒りが彼に向こうか……! 信仰の矛盾ではないか! 斯様に糾弾する声が聞こえてくるようだ、が。
「おいおい勘違いするなよ米の化身よぉ。俺は米派だ。それは間違いねぇ――」
 だけどよ。
「パンも麺もあるけどやっぱりお米が一番好き!
 ――ってのは他の主食がねぇと成り立たねぇだろうがよ!
 他の存在を認めねぇお前を認める訳には――いかねぇんだよ!!」
『『比較』が肝要だとでも――? 愚かな。どうやらパンを心の内に住まわせたらしい』
 米が全てになった世界は、米がスタンダード……なのではなく。
 他が存在しない世界。比べられない世界。あぁ一体なんの価値があろうかと!
 米がゴリョウに米爆撃を繰り広げてくる、が。耐える。この程度なにするものぞ!
「然り。武蔵も当然米派であるが……パンの存在すら許さぬというのは、些か狭量ではないか?」
 直後にはゴリョウと同じく米派の武蔵が続こうか。
 豊穣の人々と同じく、米が主食である国で生まれたのが武蔵だ――魂に米を宿している。そんな武蔵も、やはり米の化身の在り方は認められぬのだ! 武蔵は米を見据え、砲撃を行わん……!
「米よ。驕り高ぶったその精神――焼き飯にして止めさせてもらうぞ!」
『笑止! 米に呑まれるがいい!』
「うぉぉおお! 武蔵の船体にデンプンが! デンプンの波が!! だがぁあああ!!」
 ――武蔵は悟っていた。
 第一に、米の化身は巨大であるという事。
 第二に、米派の精神性によりダメージが減少するが、しかし他に影響はない事。
 ――ならば。砲撃による炎獄、つまり追加加熱は通る!! 調理可能だと!! ホカホカのご飯を見事なりし焼き飯を作り上げるのだあああああうわあああデンプンが船体の隙間に! 隙間に! 貴様これを後でどう掃除すると思ってえええ!! ぬあー!!
 さすればミストは吐息一つ零すものだ。
「米よ。この地で生きるお前は知らないかもしれないが、今の時代、フォーにバインチャン、果ては米粉パンなんてものまで今の時代生まれてきている。創意工夫で小麦や玉蜀黍に引けを取らないポテンシャルを秘めているのだぞ」
『――それがどうしたというのですか。米は頂点にして唯一神、それだけで十分』
 だめだなこれは、と。どこまで話しても分からぬのならば……
 全ての食に感謝を込めて。
「――おいしく調理してしまおうか」
 ミストは穿つ。米を削り、不毛なる戦いに決着を付けんと――!
「閃いたんですけれど。確かに米粉でパンを作れば全て解決するのでは……?」
『そんなパンに魂を半分売ったモノなど、認めません。
 そんなモノを生み出す世界など――私が粛清します』
 次いで米もパンも時々で変わり、どっちも美味しいと思ってるエルも射撃敢行。後方から銃撃を繰り返しつつ――米に想いを馳せようか。まぁ食べてる比率的には8対2ぐらいで米優勢かなと……しかし彼女にしろ、やはり全てを弾圧する米を見過ごす訳にはいかない。
「粛清しますってホントに過激ですねぇ……仕方ない。
 倒して米粉にして、パンにしてしまいましょう。
 ――と。アレは?」
「馬鹿な、これは……米を、巨大な米を落とそうとしている……!? なんでこんな物を地上に落とすんです! これでは地上が寒くなって米が出来なくなる……米の冬が来ますよ!」
 その時。エルが見据えたのは――米の化身が自ら地上に近付いてくる様子!
 落とすというのか。絶望のトールは、思わず叫ぶものだ……!
『豊穣に済む者がパンに穢されようとしている。
 だから私、米の化身が粛清しようというのですよ、ベイクドモチョモチョ』
「食の好みで人類を粛正しようだなんてエゴですよ、それは!
 ――たかが巨大な米粒ひとつ、イレギュラーズで押し出してやる!」
「おぉ! 今こそ俺達の力を見せてやる時だな――行くぜェ!!」
「砲撃を続ける! アレが落下する前に、破壊してみせるぞ! 全砲門解放ッ……!」
 だが。この程度の事態で――神使が恐れるものか!
 トールに続き、ゴリョウもまた立ち塞がる。
 砲に詰まったデンプンを剥がしながら武蔵も再度攻撃態勢!
 ――受け止める。うおぉぉぉぉ!!
『ば、馬鹿な……人間如きにこの私が……!?』
「なによなによ、お米なんて! ご馳走の主役といえばお肉なのに!」
 さすれば止まる! 微かだが動きが鈍っているのだ。
 更にその時、声が響く――ソアだッ!
「おにぎりとステーキなら誰だってお肉を選ぶでしょ! そもそもステーキハウスはよくあるけれど、お米ハウスなんて聞かないわ、この家無き子の反抗期め! カレーライスだってライス抜きは許せても、カレーを抜いたらもうカレーじゃない! そんなのライスだよ! なんならボクはハンバーガーも肉で肉を挟んで欲しい! 肉&肉&肉のサンドだよ――最高だよね! わかった?!」
『それはもうハンバーガーじゃなくて肉100%なのですよ』
 だからソレが最高だって言ってるんじゃん! 分からず屋――!!
 ソアの無限なる主張。それは、お米が熱すぎて近寄り辛い事による狩りの欲を満たせぬストレスもあったか。怒りの儘に米の化身をdisる。ていうかあまりにも肉好きの欲望が出てる。だって仕方ないじゃん――
 ボクは物心ついたころから肉だけ食べて育ってきたんだから!
 肉が――サイコーなんだ!!
「ボクにだって意地があるんだ――!」
『ぬ、ぬあああああ!! 馬鹿な、私のデンプンがあああ!!』
「今だー! フルボッコだぜ――!!」
「ご飯は確かにおいしいけれど、それだけに統一するなんて許されない。
 カレーはご飯にもパンにもうどんにもラーメンにも合う。
 どれが欠けてもいけないんだよ。全てで一つ」
 見えた隙。その間に武蔵やソア、ワモンにミストにエル、そしてオニキスの総攻撃が紡がれる。特に闘志に火が付いたソアの突進を誰が止められようか! 見る見るうちに米の総量が削れていく――米津波や米ビットを展開する余力もない!
 そしてオニキスもまた、確固たる意志と共に米を打ち倒さんと紡ごう。
 私はぜんぶ食べたい。
「だからお米による人類の支配なんてさせない……!」
『ぐ、あ――!!』
「見ていますか、米の化身……! 貴方を倒す為に集う力。そう、これがライスフレームの共鳴……世界に見せなくちゃいけない人の心の光です!」
 フルパワーの砲撃が放たれる。ボロボロになりつつある米の中心を捉え――一閃。
 あぁ、だから宣言しよう。トールが、勝利を。
 ああ包まれていく。米から放たれる光は、最後の熱量か――
 まるで爆発するような衝撃に包まれると同時。

 米の化身の身が、果てた――


「ある意味想像を絶する奴だったな……だが、本番は此処からだぜ……!」
 米の化身は倒れた。その後に残ったのは、大量の――米。
 米の化身を形成していた米だ。全て光り輝くような見事な新米。
 ――ならばコレを用いて事を成さんとゴリョウは即座に画策。それは!
「さぁさ『お米祭り』だぜ! 米の化身の米……正に米の中の米! 味わっていかねぇかい!」
 そう。米祭りである……! 盛大にプロデュース。元の村の復興がてら開催したこの祭りは……しかし単純に旨い飯を食おう、というだけではない。すなわちこれだけ旨い米の化身を『神様』に祭り上げてしまおう、という意図があったのだ。
 『豊穣祭』ではなく、あくまで『米』が主役のお米祭り。
 それはきっと米の化身から見ても納得いく祭りだろう――
 鎮め、奉じ、和魂と成す。
「それが一粒の中に居ると言われる七人の神様に対する豊穣式の敬意ってやつだ。ぶはは。上手いこといけば、米の化身もまた一柱としてこの村引いてはカムイグラを護ってくれるだろうよ! 暴走してた米だが、気質が清らかになりゃ豊作の神になるかもな!」
「……しかしとんでもない量が手に入ったね? お茶碗何杯分くらいあるんだろう。
 まぁこれだけあったら暫くお米には困らなさそうかな?
 とにかくお祭りで鎮めるというのは――賛成だね」
 さすればオニキスも手伝おうか。あぁ美味しそうだしね、と。さすれば。
「ひゃっはー! やっぱゴリョウのおっちゃんがいるからこうなると思ってたぜー! うめーめしタイムだ――!! 暴れまくって腹減ったからよ、一つくれー!!」
「ポン菓子も作ってみましたよ。これもどうぞ、デザート……豊穣だと甘味ですかね」
「うむうむ。暫し待ってほしい。
 少し掃除してから頂こう。くっ、デンプンがなんと細かい所まで……!」
 ワモンが丼を喰らいながら楽しんでいる。武蔵はへばりついている米の残骸に四苦八苦している最中か――しかしいい喰いっぷりを見て散り散りになっていた村民たちも集まってこよう。
 ならばと同時にエルは、ゴリョウが丼やおにぎりを用意すると予見して、種類違いのポン菓子を配ろうか。油で生米を揚げて、味付けは塩と砂糖。
 袋に入れて振りまんべんなく味付けすれば――あぁ見事なポン菓子の完成だ!
「これもお米判定ですよね。きっと」
「うんうんお米もポン菓子も美味しいね! 熱かった米もこうなれば大人しいものだよ!」
 次いでソアも食べ要員として即座に現れようか。
 ポン菓子や丼、おにぎりもたべて――まぁ確かに美味しい、が。
「でもゴリョウさん! ボクねボクね! かつ丼を食べてみたい! いいよね?」
「ん、カツ丼? だがなぁカツの材料が無……
 んっ? 待て、ちょっと待て。どこ見てんだソア? おい、おい!?」
 じゅるり。本日何度目かの涎タイム。
 カツが無い? 何を仰る。ソアの視線の先には見事な『カツ』の食材があるではないか。
 直後。豊穣の森にゴリョウの悲鳴が轟いたとか、轟いてなかったとか――

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
黒豚系オーク

あとがき

 お米もパンも肉も海鮮丼も美味しいですよね! だがベイクドモチョモチョ、君は(名前が)だめだ。
 ありがとうございました!

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