シナリオ詳細
古代遺跡に愛は消えて
オープニング
●古代遺跡のその奥に
「……此処がネイルン地下遺跡か」
冒険用の装備を整えた1人の男が、遺跡を前にそう呟いた。
幻想の、とある場所に存在する古代遺跡。
ネイルン地下遺跡と名付けられたその遺跡は、あまり重要度が高くない遺跡としても知られていた。
というのも、大抵遺跡に期待されるものとは「古代文明のゴーレムなどの機械」であるからだ。
鉄帝などはまさにそれによって技術力を強化しており、見つかる古代兵器はそのまま転用されていたりもする。
しかしどうやらこの遺跡はそうではない。此処は、どうやら細工工房のようなものであったらしく浅層などでは古代の技術による各種のアクセサリーなどが見つかっていた。
今となってはそういうものはすっかり取り尽くされているが、まだ中層や深層には価値の高いものが眠っているとされている。
しかしこうした遺跡では当然のことだが、中層から先には警備用のゴーレムがまだ稼働していて、それが浅層にも時折出てくるという。
だが……それでも、やる価値はある。だからこそ男は此処に来ていたし、あらかじめ手に入れていた浅層の地図を元に探索を開始していく。
男がこんなところに来た理由は、ただ1つ。片思い中の人のためだ……彼女にプロポーズするために、彼女に相応しいものを手に入れようと考えていたのだ。
幸いにも男は素人ではなく、それなりにベテランのトレジャーハンターだ。勝算のない挑戦ではない。
「ミーシャ……俺は帰って、必ず君に告白するからな」
準備は万全。これで失敗したら、それは本気で運が無かったということだろう。
そして……残念なことに、男にはどうやら本当に運がなかったようだった。
●サルトを探して
「トレジャーハンターのサルトという男性が行方不明になったです」
【旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201)は集まった面々にそう切り出した。
サルトは1カ月前に、幻想の荒野に存在するネイルン地下遺跡に向かったことが分かっている。
細工工房の跡だとされているネイルン地下遺跡だが、どうやら当時の高級宝飾商の建物の地下部分が残った遺跡であるらしく、地価は宝飾商のデザインの秘密などが詰まったセキュリティエリアであったようだ。それゆえに古代文明の防衛装置が地下に向かうほど残っているようなのだが……そこに向かったサルトが行方不明になったようだ。
万全の準備をしたはずのサルトだったが、道中の何処かで何かがあったのだろう……行方不明から1カ月ということは、恐らくもう生きてはいない。
長いスパンで家を空けるトレジャーハンターという職種であるからこそ、こうして依頼になるまで1カ月もの時間がかかってしまったわけだが……サルトがアタックしていたミーシャという女性がサルトの安否を気にしなければ、まだ依頼は先になっていたかもしれなかった。
「まあ、もう生存に関しては絶望的でしょう。遺跡のシステムの状況によっては、遺体が見つかるかも分からないです」
しかし、せめてサルトの安否だけは確かめたい。もしかしたら生きているかもしれないからだ。
答えのない希望よりも、前に進める悲しみのほうがいい。そんなこともあるということだ。
「だから、何らかの『答え』を持ち帰ってきてほしい。それが依頼人の希望です」
- 古代遺跡に愛は消えて完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年09月28日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ネイルン地下遺跡へ
幻想の遺跡、ネイルン地下遺跡……地下3階。
「幻想のゴーレムが出る古代遺跡……ゴーレムと聞いて思い浮かぶのが鉄帝関連なせいでサルトさんはゴーレムに改造されたとか想像しちまうな。ベテランが万全の準備してて帰れないなら死亡か詰んでる状況、後は人前に出れる姿じゃなくなった可能性とかだよな。後者はすっごい低そうな確率だが……」
「そうだね。危ない遺跡で一月は、正直言ってサルトの生存は絶望的だけど……もしかしたら居住区みたいなところがあってそこに逃げられたのかもしれない。あるいは遺跡に殺されちゃって、遺体も荷物もどこにもないのかもしれない。サルトがアタックしてたっていうミーシャのためにひとつでもアクセサリーを手に入れてて、それがどこかに残ってるのかもしれない。真実がよくても悪くても、遺跡を踏破してそれを確かめられるのはオイラ達だけだよね。願わくば、ほんの少しでもいい答えを……ミーシャが依頼してきたってことは、脈がないわけじゃなかったんだろうしね」
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)と『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が言い合うが、事実どんな可能性も結果が出るまではゼロではない。だからこそ、しっかり探さなければならないが……そのためにウェールは暗視で視界を確保し、ファミリアーで鼠を召喚して先行偵察させていた。此処に敵がいるのは明らかなのだから、確かに役に立つだろう。
更には透視で罠や壁越しに扉の先を警戒して、敵や罠が透視で見当たらないなら物質透過で壁を通り抜けて捜索するようにしていた。
「オートロックの扉だったらサルトさんが一度鍵を開けても閉まるからしっかりと確認しなきゃな……」
「そうだね。ん……この扉はロックはかかってないね」
アクセルも言いながら地図に印をつけていく。そう、アクセルは道中はマッピングをメインにしていた。
広域俯瞰に暗視、超視力、瞬間記憶、精密模写と組み合わせ、これで上からの視点で周囲を見て遺跡の地図を作っていく。
(この地図から構造的に隠し部屋とか隠し通路とか、生活空間みたいなのがないかも類推できるはず……)
本来の視点で部屋の様子やネームプレートなんかを見て地図にメモするのも忘れない。
「あとは、天井は無理かもだけど壁のトラップなんかを察知できたらいいんだけど……」
「可能な限り罠やセキュリティは作動させない方向で行きたいね」
『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)もアクセルにそう頷きながら罠対処できるように捜索していく。
「行方不明者の救出や捜索も冒険者の仕事、ではあるけど……件のサルト氏も素人では無い様だし、何かがあったのは確かだよね。未知の致命的な罠による物なのか、致命的な不運による物なのかはさておき、僕らも油断しない様にしなきゃね」
「ああ。たとえ結果が見えていても、これはミーシャの心の問題だ。彼女の気持ちに区切りがつくよう、俺も手を尽くそう。俺がもし、彼女と同じ立場になったら……きっと、アネモネを探すだろうな」
『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は依頼主のミーシャから出たサルトの持ち物から彼の匂い、ミーシャへの質問で身体特徴を把握するという事前準備をしていた。遺跡の中での捜索が長期的な物になると見据えて準備を行うことが大事だと考えて痛し、その一環だ。
暗所は発光し、劣悪な環境は苦行で対応するつもりだったが……少々かび臭い以外は問題は無さそうだ。
元々頑丈な建物であったのか床が抜けている場所もなく、足場も問題はない。しかし何があるかは分からない……いつでも飛行できる準備は出来ている。
それだけではない。叡智たるツァラトゥストラの効果で仲間を助けることも含め、統率し得た情報を整理する役割もベルナルドはかって出ている。具体的には遺跡の通路や罠の情報は美術でマッピングして視覚的に分かるようにし、アクセルとの相互確認で違和感を見逃さないようにも出来ている。
敵を見つけた時はモンスター知識とエネミーサーチで強さを確認し、ドリームシアターで壁の幻を作る等でやり過ごせそうならやり過ごし、交戦が必要そうなら安全に対処できる人員を提案できる体制も整えていた。
更にはサルトを人助けセンサーやギフトたる極彩嗅覚、イチリンソウの雫と呼ばれるに至る人探しの力によって直接探すことも忘れない。
そう、この仕事の肝がサルトを探すことだとベルナルドは分かっているからこそ、全員ではなく最低限の戦力であたらせる事で、敵の増援や連戦に耐えるよう消耗を抑えることが出来るようにしているのだ。人探しというものの難しさをベルナルドは良く知っているのだろう……頼りになるのは間違いない。
しかしカインも負けてはいない。罠への対処もそうだが、後回しするべき場所を選べる判断力もそうだ。
「まずはサルト氏が何らかの痕跡を残していないか等の捜索だ。あまり重要視されていなかった遺跡だし、埃でも積もっていれば足跡等を辿りやすいんだけど……見つからなければ見つからないで僕らが正攻法でこの遺跡を探索し尽くして虱潰しにするだけだね!」
地下3階以降は警備ゴーレムやスケルトンもウロついているせいか、色々な足跡が残っている。
先程やり過ごしたスケルトンにしたところで、そうした足跡をつける1人であった。勿論、ベルナルドが身体的特徴は把握しているので、あまり違う足跡を誤認することはないのだけれども。
「或いはここで活動していた人用のIDカードの類なんかが見つかるかもしれないしね。力尽くでの突破は……まぁ、最終手段だよね。推定被害者も居るんだからあまりしたくないし……サルト氏の生存や痕跡の探索が優先だけど、勿論何か価値がある物があれば可能なら確保、お持ち帰りだ。僕もこういう遺跡には目が無い冒険者だからね」
(……もしかしたら彼の決死の苦労の対価か、餞になるかもしれないけどね)
まあ、それはカインは言わない。言霊を信じるわけではないが、生きていることを……どれだけ可能性がゼロに近くとも、信じてあげるのも仕事だからだ。
●その奥にあるものは
「みーおの一撃、食らえーですにゃー!」
『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)のプラチナムインベルタがスケルトンにトドメを刺す。どうやらただのスケルトンのようだ……ブーツと剣以外に持ち物はない。
ネイルン地下遺跡、地下4階。此処まででサルトは見つかっていない。この階にいるか、もっと奥に行ったのか……それはまだ定かではない。しかし、みーおは生存を祈っていた。
「サルトさん……できれば生きていてほしいですにゃけど……せめて、生死をはっきりさせる答えは持ち帰らないとですにゃ」
「何か……分かるといい……」
『玉響』レイン・レイン(p3p010586)もそう頷く中、みーおは鳥のファミリアー(鳥)を使い、五感共有してハイセンスに暗視、透視も用いて周囲偵察と警戒をしていた。
屋内なので自由に飛べてはいないが、それでも天井付近から偵察可能というのはそれだけで意味があるだろう。それでもファミリアーは壁や天井等に近づけすぎないよう気を付けてもいた。
そしてレインは得た情報を細かくメモする書記役になっていた。
更にレインの呼び出したファミリアーは蛇だ。こうした場所では役に立つ上位に入るだろう。
暗い場所では少しでも見えるように発光することで視界の確保をするだけではなく、ベルナルドたちと手分けして照らす範囲を広げられるようにもしていく。
他にも歩けない場所があったときの対処や……自身の火炎無効や凍気無効を役にたてられそうな場面があるなら迷わず出るつもりでもあった。
(連れて帰れない時……ミーシャはどうするんだろ……新しいオスを探すのか……それともずっとサルトの事……思って生きていくのか……それとも……サルトを見つける為に……ミーシャもトレジャーハンターになるのかな……)
それは分からない。分からないが……『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)はとある事情により、ミーシャの気持ちが多少なりとも分かる気はした。
(遺品一つ残さず消えて、死んだって言われても踏ん切りつかねえ気持ちにゃ覚えがあるんでな)
「はっ、良かったじゃねえか、サルト。てめえは少なくとも心配されるくらいには意中の相手に想われてたみてえだぜ? ……或いは想われてねえほうが良かったのかな。悲しませることになっちまったんだからな」
それについては、きっと誰にも正解は分からない。あるいはサルトが無事に帰る未来もあったかもしれないのだから。
とはいえ、何らかの結末は必要だ。だからこそ牡丹は事前に資料検索、そして瞬間記憶でサルトとミーシャのことを調べて覚えていた。無論ミーシャ本人からも話を聞いておくのも忘れてはいない。この辺りはベルナルドと一緒に聞いていくことでより精度の高い情報を得ることに成功していた。
遺品にしろ遺体にしろサルトのことを知っておいたほうが判別しやすいだろうというのもあったし、ミーシャのことはサルトが探しに行った品の方向性にあたりを付けるためだった。情報網でサルトが手に入れた地図も入手できてはいたが、地下2階くらいまでのデータしかない。まあ、仕方がないのだろうが……今リアルタイムで作っているもののほうが大分マシだろう。
更にはエネミーサーチとハイセンス、透視、暗視、聞き耳で索敵したり異常がないか注意もしている。この辺りは仲間の索敵と組み合わせることで、先程から何度も戦闘を回避できている。
「罠対処と解錠もあるんでな。罠にも気付けるし、鍵開けもできるぜ。物質透過はその辺の補助にも使えるだろ。暗号解読も任せな」
超方向感覚もあるし、MASTERによって隠し通路や部屋などの発見もお手の物だ。
「お、此処に隠し部屋……中には何もないな」
単なる隠し倉庫か何かか……どのみち中には何も無さそうだし、ケースの中身が無事なところを見ると使われていなかったのかもしれないとボタンは思う。ケースの中身を調べてミーシャ好みの品がありそうなサルトの辿ったルートを割り出し捜索するつもりでもあったが……そのケースの中身を見ながら『忍者人形』芍灼(p3p011289)は短く唸る。アナザーアナライズで解析もしてみたが、特に何か効果があるわけでもないアクセサリーだ。
「むむ……あからさまな危険に飛び込むリスクを背負ってでも、懸想する女性により珍しく高価な贈り物で求愛したかったということでしょうか。それがしにはなかなか難解な感情にござる……。その懸想する女性が安否を気にしていたということは、それほど悪い感情は抱かれてはいなかったのでは無いかと解析するのですが……」
まあ、自分に出来ることで最高のものを用意したいと考えるのはさほど珍しい感情ではない。それが正しいかどうかはさておいて……だが。まあ、その辺りを理解されるかされないかはこれまた難しい問題だ。ともかく、芍灼もやるべきことをやるつもりだ。
「遺跡の冒険はチヨ婆から十分に気をつける様にと命じられておりまする! サルト殿はベテランクラスのトレジャーハンターとのこと。最悪、地下7階まで行くこともありえましょう。同様に食料やサバイバルセットなど万全な準備を整えております。それがし、鉄の脚ゆえ長時間の移動もへっちゃらです!」
ということで、今回芍灼は斥候の役目を果たしていた。何体かのファミリアーが斥候をしてはいるが、それに頼り切りというわけにもいかないからだ。牡丹と協力し、罠対処を行いながらサルトを捜索していた。
「墓を作る時に亡骸や遺品がない空っぽの墓は、きっとすっごい寂しいもんだと思うんだよ。冥福を祈っても届かないんじゃないかと不安で思い人は命を懸けて愛を伝えようとしたのに、身体や骨、遺品すら自分は見つけてあげられなかったなんて後悔や嘆きが心を段々と蝕んでいく……彼女を幸せにしようとしたサルトさんの行動が少しでも報われるために遺体、せめて遺品。後はサルトさんの持ち物に送るつもりだったプレゼントがあるといいんだが」
そんなウェールの願いが通じた、のだろうか。4階の部屋の隅で、乾いた……けれど新しい大量の血痕と壊れたロケットペンダントが見つかった。そこにあったのは依頼人であるミーシャの絵姿。そして隅っこに小さな……けれど現代では困難な精度の細工の施された指輪が転がっていた。
「……死んじゃったんだね」
人間が生きていられる血の量ではない。遺体は何処かに運ばれてしまったのか、それともスケルトンと化したか。分からないが……アクセルはもうそれは見つからないだろうと確信していた。
「残念だけど、そういうことみたいだね」
カインと芍灼も黙とうを捧げるが……決してサルトを愚かだとは思わない。
「サルトさんの魂は、此処にはいないのですにゃ……もう帰ったのかもしれませんにゃ」
みーおは呟きながら、指輪を拾い上げる。
「きっと……サルトさんの、最後の入手品ですにゃ」
ペンダントと合わせ、これを持って帰るべきだろう。
「ミーシャさんに持ち帰った『答え』を……ミーシャさんが望むなら、渡したいですにゃ」
(……サルトさん自身が無事に帰ってきて彼女に手渡しするのが、きっと一番良かったんですにゃけど…)
「……悲しみを抱いてでも、生きるのですにゃ」
「そうだね……せめてそれだけでも、一緒に……」
「……だな」
レインと牡丹も頷きあい、ベルナルドは戻ったらサルトの幻をミーシャに見せようと考えていた。
(死者を蘇らせる事はできない。だから幻でも「ただいま」の一言くらい、彼女に届けてやりたいんだ。俺達への依頼は『答え』を持ち帰る事。ただ遺品や遺体の回収を求められた訳じゃない。だとしたら、これが俺の答えだ)
そう、それで何かが変わるわけでもない。けれどせめて、一片の救いを。
それが、あるいは区切りになるかもしれないのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
ネイルン地下遺跡に向かい、サルトの痕跡を探しましょう。
全部で地下7階の遺跡ですが、地下2階までのセキュリティは沈黙しているようです。
地下3階からは未踏破区域であり、セキュリティも作動しています。
侵入者に反応する天井のレーザー光線や壁から発射される電撃などの罠があります。
また、並んでいるショーケースには試作品と思わしきアクセサリーも並んでいます。
工房などの部屋は鍵が開いているもの、かかっているものもあるでしょう。
何処かでサルトの遺体が見つかるかもしれませんし、サルトの持ち物が見つかるかもしれません。
罠対処系のスキルで罠を解除できるかもしれませんし、鍵開け系のスキルで閉まったドアが開くかもしれません。
その他、思いついたスキルを試してみるチャンスでしょう。
●出てくる敵
・スケルトン×不明
侵入者のなれの果て……かもしれません。ダガーなどの武器を使います。
・警備用ゴーレム×不明
かつて警備にあたっていたゴーレムは、今ではただの殺人機械です。
胸部マシンガンとレーザーブレードを使用します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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