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シナリオ詳細

解き放たれたナイトシーカー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ナイトシーカー
 夜歩くもの、ナイトシーカー。それは、ハーデス=ザビアボロスの眷属の内でも、獰猛にして狡猾な特異個体亜竜。『夜のアサシン』である。
 その牙に滴る毒は、恐るべき強毒。
 闇夜に紛れて空を舞い、暗闇に紛れて獲物を殺す。その姿はまさに暗殺者か。
 ハーデス=ザビアボロスの威光にひれ伏していたその亜竜は、しかし今、押さえつける者を失った。もとより亜竜にしては知性のあった種である。残された数少ない群れとともに、竜達すら疲弊したこのデザストルの大空をわがものにせんと、その翼を大きく羽ばたかせる。
 ナイトシーカー達は、ピュニシオンの森に存在した『ザビアボロスの領域』より、一匹、また一匹と飛び立った。彼らを縛る首輪はもう存在しない。夜の空に放たれたナイトシーカー達は、まずは亜竜種たちを食い殺さんと、その牙をぎらつかせながら、夜を行く――。

「ごめんごめん、ちょっと緊急」
 そういうのは、ムラデン(p3n000334)と名乗る少年竜である。以前、ヘスペリデスでの戦いにおいて、一時的とはいえローレット・イレギュラーズたちと共闘した形になるその竜は、また珍しく、フリアノンのローレット支部へと顔を出していた。
「竜が依頼ですか?」
 あなたの仲間である、イレギュラーズの一人がそういう。ムラデンはいささかばつが悪そうに頭をかいた。
「んー、そうなんだよね。しかもなんていうか、うちの先代の尻拭いっていうか」
「先代というと、ハーデス=ザビアボロスか」
 仲間の一人がそういうのへ、ムラデンはうなづく。
 ハーデス=ザビアボロスとは、かつてローレットと敵対した傲慢なる竜、バシレウスが一つである。人間を軽んじ、同族である一部の竜すら見下した彼は、己が毒によってヘスペリデスを洗い流そうとしたのである。
 それを、ローレット・イレギュラーズたちは見事阻止したわけだ。
「ほら、あんな傲慢野郎でも、それなりに眷属はいたわけでさ。だいたいは決戦の時にまとめて死んだか、おひいさま(ザビーネ=ザビアボロス)に再度恭順してるわけなんだけど。こう、おひいさまも、前の戦いですごい消耗しちゃっててね。全力を出すことが困難だ。
 そうなると、いう事を聞かないやつとかが出てきちゃってさぁ。
 ナイトシーカーっていう種類の亜竜がいてね。陰険なクソ亜竜なんだけど、そいつらがどうもいう事を聞かない」
 ザビーネ=ザビアボロスのいう事を聞かずに、ザビアボロス一族の領域より離脱してしまったのだという。あまつさえ、その行く先をフリアノン付近の亜竜種たちの集落に定め、襲撃をもくろんでいるようであるのだ。
「僕も自分で何とかしたいところなんだけど、同じく消耗がひどくってね。ぶっちゃけ君らと同じかってくらいの力しか出せない。
 妹(ストイシャ)やおひいさまも同じくらい消耗してるわけだから、そんな状態の二人をほんの少しでも危険にかかわらせたくないし。
 そんなわけで、キミたちってわけだ」
 ムラデンがそういうのへ、なるほど、と合点がいった。つまり、いつも通りの亜竜退治、というわけだ。とはいえ、ヘスペリデス近辺に潜んでいた亜竜である。それなりの危険性は伴うだろう。
「頼むぜ。こう見えても、ヘスペリデスでの一件から、それなりにキミ達の事は信用してるんだ」
 竜からの、ある種の信用が、ローレットにはあるわけだ。ならばそれには答えてやらねばなるまい。
 あなた達はうなづくと、さっそく、ナイトシーカーの迎撃ポイントへ向かうこととした――。

 夜。それは『彼ら』の時間である。
 8匹のナイトシーカーたち。最後に残った、たった八匹の同種の同胞たちは、ザビアボロスの軛より解き放たれ、今自由自在のただ中に存在した。
 ふと足元を見れば、巨大な牛の様な原生動物の姿が見える。牛のようとはいえ、デザストルの自然で生きる野生動物である。その脅威度は、ただのそれではない。だがナイトシーカーは一切おくすることなく、ゆっくりと降下した。流れるようなそれは、まるで風切り音を立てずに、ふわりと、しかし鋭く落下していく。原生生物は気づかない。それが彼の命の明暗を分ける最後のタイミングだった。もう次の瞬間には、ナイトシーカーは音もたてずに、原生生物の背に食らいついていた。硬い肉が、骨が、纏めてがぎり、とかみつかれた。その牙から注入された猛毒が、原生生物の内部に、まるでマグマを流し込んだみたいな強烈な激痛を与える。
 ぎゅああ、と、悲鳴を上げた原生生物がたまらず倒れ伏した瞬間、残る七匹のナイトシーカーが、一斉に羽ばたいて飛び降りて、まるで猛禽の鳥が餌に群がる様に、おぞましい様相を見せながら肉をついばみ始める。
 その食事がわずかな時間で終われば、ナイトシーカーは再び夜空へと飛びあがった。
 今のは前菜。
 もう少し先に行けば、豊富な亜竜種(エサ)が潜んでいる集落が、存在するはずであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ナイトシーカーを迎撃しましょう。

●成功条件
 すべての敵の撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ハーデス=ザビアボロス。かつてローレットと敵対し、滅んだ強大なる竜が一つ。
 彼の眷属である亜竜ナイトシーカーは、主であるハーデスが滅んだがゆえに、自由へと解き放たれてしまいました。
 ナイトシーカー達は、最後の八匹で徒党を組み、フリアノン近辺の亜竜種の集落を襲撃しようとしています。
 彼らを放っておけば、集落は確実に全滅してしまうでしょう。
 これを止めねばなりません。
 ザビーネ=ザビアボロスの従者であるムラデンは、皆さんに事の解決の助力を依頼しました。
 皆さんは依頼を受け、集落近辺の光源エリアで、ナイトシーカーを迎撃することとなります――。
 作戦決行タイミングは夜。星灯りと月あかり程度の灯りしかないため、光源を持ち込むなどの対策があれば有利に動けるでしょう。また、ナイトシーカー到着までに多少の時間があります。何か迎撃用の策があれば、行ってみるのもいいかもしれません。

●エネミーデータ
 ナイトシーカー ×8
  ヘスペリデス付近に生息していた強力かつ狡猾な亜竜です。夜のアサシン、とも呼ばれた種で、牙や爪に仕込まれた強力な猛毒が得手。また、毒のブレスなども吐き、強力な毒や痺れ系列のBSを付与してくるでしょう。回復などは万全に。
  夜目もきき、夜陰に乗じて、気配を殺し素早く接近し、攻撃してきます。
  敵はまさに暗殺者ですが、奇襲を警戒し、先に発見することができれば、ある程度危険は避けられるかもしれません。
  また、耐久力は低めの傾向があります。攻撃手は出し惜しみなく、全力でたたいてやってしまいましょう。

●味方NPC
 ムラデン
  レグルスに属する年若い竜。竜故に強力なユニットなのですが、先の決戦の影響で、著しく戦闘能力が落ちています。
  このシナリオに関していえば、皆さんと同等くらいの性能しか発揮できません。
  とはいえ、放っておいても死にはしませんので、便利な遊撃手くらいに利用してやるのがいいでしょう。
  指示をしてくれれば、「竜に命令とかマジ?」って言いながら手伝ってくれます。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 解き放たれたナイトシーカー完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
物部・ねねこ(p3p007217)
ネクロフィリア
メリーノ・アリテンシア(p3p010217)
そんな予感
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
陰房・一嘉(p3p010848)
特異運命座標

サポートNPC一覧(1人)

ムラデン(p3n000334)
レグルス

リプレイ

●ムラデンの僥倖
「なるほどね……充分すぎるほどのメンバーがそろってくれたみたいだ」
 ムラデンがそうつぶやく。竜としての傲慢さを持ち合わせてはいるムラデンだが、同時に『ローレット・イレギュラーズたちへの評価』というものも確かに存在している。当然だろう。彼はローレット・イレギュラーズたちを試し、そして見事に応えたわけだ。神話のそれ等を気取るわけではないが、ある意味で竜の試練を超えてきた者達である。そして、弱体化の憂き目にあっているとはいえ、いや、それだからこそだろうか? 相手の力量をしっかりと計れないというほどに、ムラデンも愚かな竜ではない。
 一行は、ナイトシーカー迎撃のために、少し早めに迎撃地点へと到着していた。ほとんどの亜竜は、ムラデンが居るだけでその場を避けて通るだろう。ある意味で安全地帯となっているのは皮肉なことか。ここを通ろうとするならば、ムラデン、そしてその主であるザビーネ=ザビアボロスを恐れぬようなものであり、例えばそれが、亜竜ナイトシーカーというわけだ。
「ふふ。頼ってくれてかまわんぞ?」
 いささか得意げに言うのは、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ。ムラデンは、特に気分を害したふうでもなく、頷いた。
「今回ばかりはそうさせてもらうよ。それに、たまきの力量は、ちゃんと知ってるからね」
 多くのイレギュラーズによる攻撃があったとはいえ、先代にラストアタックを決めたのは汰磨羈だ。ムラデンも、そこのところはしっかりと承知している。
「今の御主をしおらしい、などと馬鹿にはせんよ。困ったときはなんとやらだ。友だろう?」
 そういう汰磨羈へ、ムラデンはうなづく。弱体化したムラデンにとっては、汰磨羈達は本当に、頼りになる存在であることは事実だった。
「でも――キミら、なにしてるの?」
 と、ムラデンが首を傾げた。というのも、汰磨羈はエプロン姿におたまをもって、鍋をかき回しているわけだ。
「何って、料理だが?」
 私またなんかやっちゃった? みたいな顔をする汰磨羈へ、ムラデンが困惑した表情を見せた。
「なんで?」
「生餌だよ」
 と、そう言ったのは、『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)が言った。
「久しぶりだな、ムラデン。元気そうで」
「うん、ストイシャが世話になってるみたいで。いや、それはそれとして、生餌?」
「ああ。腹を空かせてるんだろ? だったら、試してみるのもいいじゃないか?」
「フランスパン……いや、ほんとストイシャから聞いてた通りだな。面白」
 くっくっ、とムラデンが笑う。
「どう聞いてたのか知らないけど……そういえば、『アイツ』は呼ばなかったのか?」
「んー……ああ、彼女は。別に実力を軽んじてるわけじゃないよ。頼りにはしてる。でも、緊急だったんでね。根回ししてる余裕がなかった」
 ふむ、とムラデンが言った。確かに、ムラデンがフリアノン近郊のローレット支部に現れたのは、まったく急なことだった。おそらくはギリギリまで、自分一人での対処を考えいたに違いない。
「君、結構真面目だよな……」
「僕の事、考えなし生意気ドラゴンかなんかだと思ってた?」
 肩をすくめる。
「そうそう、その『アイツ』からなのだけど。預かりものよ、坊や」
 『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)が、そう言ってムラデンに差し出したのは、『テスタメント・プロテクト』。防御のアイテムだ。
「……なんで?」
 きょとん、とムラデンは首を傾げた。
「守るべきだとしたら――僕というよりは、君や、背後の亜竜種たちだ」
「まぁ、坊や。思った通りなのね」
 むぅ、とメリーノは口を尖らせた。
「坊やの大切なものは、みんな坊やの手の中にあるのよ。
 同じように、誰かの手の中の大切なもののなかに、坊やもいるのよ。
 怪我しないで 帰らないと、ね」
 諭すように言うメリーノに、ムラデンは一度、口を開こうとして、それからすぐに、うー、と唸った。
「まぁ。ありがと。お礼を言っておいて……いや、ごめん、自分で言うよ」
 それから、話題を切り替えるように、ムラデンは迎撃準備を整えるイレギュラーズたちへ視線を移した。
「しかし、他のメンバーも、いろいろ考えてくれてるみたいで。
 ……そこのところは、本当にニンゲンは使えるな」
 頼りになる、などと言わなかったのは、ささやかなプライドだろう、と零は思った。
「ふふ、ザビーネさんが困っているのだもの。頑張りますよ~♪」
 にこにこと笑っている『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)だ。
「ムラデンさんから事前に聞いていた、ナイトシーカーの特徴なんかをまとめておいたから、あとで皆も読んでくださいね?
 ……でも、力を見せないといけない、なんて。大変ですね」
「おひいさま、そう言うのあんま得意じゃないからなぁ」
 ムラデンが頭を掻いた。
「いや、別にやるってならやるんだけど。ほら、ねねこはわかるだろ?
 おひいさま、どっちかっていうと本読んだり、物調べたりする方がすきなタイプだからさ」
「わかります~! 最近医学関係でちょっとお話ししたりもして~!」
「ふふ、皆さん、仲がよろしいんですね」
 と、『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)が笑った。
「ムラデンさん初めまして! ユーフォニーです。
 ムサシさんからお話は色々聞いてるんです。
 一緒に戦えるの嬉しいです!」
「ああ、ムサシの! 友達かな?」
 ムラデンが合点のいった顔をした。
「よろしく。アイツの友達なら、きっと強いんだろ?
 そのドラネコもよく懐いてるね」
「ええ。リーちゃん、と言います」
 にゃー、とリーちゃんが片手をあげて見せるのへ、ムラデンが笑った。
「いいね。さすがにヘスペリデスとか、ザビアボロス井t族の領域の辺りじゃ、こういうのは飼えなくてね……キモい亜竜とかならいるんだけど」
「キモい亜竜はさすがに……ですね」
 ユーフォニーが苦笑する。
「キモい亜竜ではないが」
 そういったのは、『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)だ。
「ナイトシーカーは、確かにこの地点を通るのだな?」
 ムラデンからの情報を基に、迎撃地点を決めたのは、一嘉だ。その言葉に、ムラデンは頷く。
「あいつらはほぼ一直線に進んでる。それに、傲慢さは竜並だ。えさ場まで回り道なんてしないよ」
「なら、いい。
 あとは、予定通り、生餌で釣って、迎撃する」
「頼むよ。そうだ、仮眠でも取っておくかい? 少しくらいなら余裕がある」
「そうさせてもらおう」
 ゆっくりと頷き、一嘉が目立たない場所に腰を下ろし、静かに目をつむった。
「質実剛健、って感じのニンゲンだ。改めて、バラエティ豊かだね、キミ達は」
「ムラデンさん達……竜も、そうだと思いますよ?」
 『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がそう言って笑った。
「先ほど、一緒に村を回った時も、そうでしたが。
 ムラデンさんはやっぱりいい人ですね。
 自分とはもう関係のない彼らの為に、こうして依頼まで出してくれるなんて。
 私の悪友が惹かれる気持ちもわかります」
「まぁ、本当に、こっちの尻拭いだからね……」
 ムラデンは、頭に手をやった。
「別に、キミ達みたいに、世界のためとか人類のためとかってわけじゃないけど。
 やっぱり、自分の住んでるところの近くで、自分の関係してるやつらが血腥いことをしてるのって……うーん、あんまり気持ちよくないからね。
 おひいさまやストイシャも、きっとそういうの嫌いだろうから」
「ふふ、そうですか」
 どこか見透かすようなマリエッタの笑みに、ムラデンは肩をすくめた。
「そうだ、オデット」
 話題を逸らすように、ムラデンは『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)に声をかけた。
「偵察してくれるんだろう? そろそろお願いするよ。気をつけてね」
「うん、まかせて! さぁ、オディール、あなたもお願いね?」
 オデットが笑う。凍狼の子犬が、ひゃん、と鳴いた。
「ところで、力で押さえつけないとダメだなんて竜種の世界も大変ね。
 消耗するぐらいあの戦いはやばい戦いだったってことにもなるのかしら」
 尋ねるオデットに、ムラデンはうなづいた。
「そりゃ、ね。先代はそれだけやばい奴だった。
 くやしいけど、キミ達が居なければ勝てなかった。それだけは事実だよ」
「そうなのね。ふふ、竜にそう言われるのって、なんだかうれしいのかも。
 まぁいいわ、火力で黙らすなら得意分野だもの。今回のは、ぶっ飛ばしていいんでしょ?」
 そう楽し気にわらうオデットに、ムラデンは肩をすくめて。
「思う存分頼むよ」
「まかせて」
 そう言って、オディールは暗闇の迫る覇竜領域の空を飛んだ。ムラデンの影響下があるとはいえ、覇竜領域の空を自由に飛べるなどはそうそうあるまい。もうじき闇が下りるが、その時が、戦いの本番の時なのだと、オデットは思った。

●闇を探るもの
 さて――夜闇に、八の亜竜が飛ぶ。
 ナイトシーカー。夜の暗殺者。ハーデス=ザビアボロスの力に従っていた眷属が一つ。ほとんどの眷属が、再びザビアボロスの一族たるザビーネに隷属する中、弱体化した彼女に反発し、ザビアボロス一族の領域より逃れた亜竜。
 凶悪。残忍。狡猾。亜竜にしては知能が高く、野心的でもあった八匹である。竜たちが、先の戦いでいまだ混乱の中にあるのをよいことに、彼らは自由を手にした――と、思い込んでいるだけではあるのだが。
 何れにして、ナイトシーカー達は、フリアノンの方面へと向かって飛んでいた。そこに亜竜種、つまりニンゲンの集落があることを知っていたからだ。ニンゲンは美味い。食いでがある。フリアノンで本腹を満たす前に、まずは近くの小集落で小腹を満たしてやろうと、残忍な彼らはそう思っていた。
 さて、その道中である。奇妙なことに、森の近くに焚火を焚いて、野営をする、行商人と思わしき姿があった。彼らの荷物からは、異様に美味そうな匂いがする。食い物であろう、とは判断できた。
 しかし愚かである、とナイトシーカー達は思う。竜も亜竜も、焚火などを恐れない。いや、覇竜領域の怪物が、火を恐れたりするものだろうか。この地で人間が生きていくならば、地竜の加護にすがるか、穴倉に潜むしかあるまい。となると、あの行商は、外からやってきた者達だろうか。少数ほど、外との交易者がいるようであるが――。
 いずれにしても。彼らが、ネギを背負ったかもであることに間違いはあるまい。ナイトシーカーはゆっくりと、音を殺した。翼をたたみ、風切り音すら殺して見せる。静かに、静かに、暗殺の気配を伴って、ナイトシーカーたちは一斉に、獲物へと襲い掛かる――。

「くそっ、分かってても怖いんだよな……!」
 愚かな行商=零は、フードを目深にかぶりながら、そう言った。近くには、護衛役の一嘉の姿も見えた。一嘉が、焚火の枝を二度折ってから、火にくべた。
「来るぞ」
 という意味合いの、合図である。それを察して、零は立ち上がった。なるべく、なるべく、自然に。怪しまれぬように、逃げなくてはならない。
「あっ?」
 と、間抜けな声を上げて見せた。奇襲に気づいたのではない。たまたま空を見上げたら、そこに亜竜がいた。そのような、演技である。
「ひ、ええっ! 逃げるぞ! 一嘉!!」
 叫ぶ。同時に、無様に転がるように地面に飛び込んだ。間髪入れず、亜竜が爪を大地に突き立てる。
「うむ!」
 一嘉が立ち上がり、走りだす――亜竜としてみれば、『偶然』必殺の策が外されたことに、明確な怒りを覚えているようだった。ぎゅあ、と鳴き声を上げると、残る七匹の亜竜たちが、鋭い刃めいて落下してくる。
「やだーーー! パンはともかく俺は美味しくないからあっちいってぇ~~~!!」
 煽り半分、本音半分の叫びをあげながら、零と一嘉が走りだす。後方の森へと向けて。自然な動きだ。開けている場所より、その方が生き残りやすい。本来ならば。
 とはいえ、亜竜にはプライドであり驕りがあった。そのような場所に逃げたからなんだというのだ。このまま、捉えることができる。たやすく。僅かに生存時間が伸びただけ。その考えがまったく、驕りであると思い知らされたのは――。
「今井さん!」
 彩の乙女(ユーフォニー)が、その友へと力を託し、万華鏡の光でもって、亜竜たちを貫いた瞬間である! 万能攻撃係長である今井さんは、手にした金属製の名刺入れで、ユーフォニーの光を乱反射して見せた。彩波揺籃の万華鏡が、夜の森にて、暴虐の亜竜を照らし上げる!
「GYAAAAAA!!!」
 文字におこすならこう言った悲鳴であろうか。絶叫を上げて、亜竜たちが散開した。
「逃がしません! 一気におとします!」
 ユーフォニーの言葉に、潜伏していたメンバーが一気に跳び出す。零、そして一嘉も、一気に向きを反転して、攻撃にうつる。
「パン屋は食われるだけじゃねぇぞ!」
 叫びながら、零が逃げ遅れた亜竜をぶんなぐる。ぐあん、と強烈な音がして、亜竜が地面に叩きつけられた。即死しただろう。
「マジか、パン屋怒らせると怖いな。ストイシャにも注意するよう言っておくよ!」
 ムラデンが、仲間をサポートするように火焔術式を展開する。さながら竜のブレスのようなそれが、亜竜を焼いた。ぎゅあぎゅあ、と亜竜たちが吠える。
「坊や、あいつら怒ってるみたいよぉ。うらぎりもの、って感じかしらぁ?」
 メリーノがそういうのへ、ムラデンは苦笑した。
「どっちがだよ……メリーノ、遠慮はいらないから、やっつけちゃって!」
「おっけぇ!」
 メリーノは大太刀を抜き放つと、最も近い亜竜に一気に接近した。そのまま、大上段から刃を振り下ろす。ざん、と音を立てて、翼を切り裂かれた亜竜が大地に落下した。這うように逃げようとするそれを逃がすことなく、
「はい、だめよ?」
 メリーノが大太刀を、その頭に突き立てた。絶命。
 一方で、亜竜とてただ狩られるだけではない。むしろ逆に、纏めて腹のうちに収めてやるという気概は持ち合わせていた。夜の闇に、黒きブレスが吐き出される。強烈な毒のブレスは、確かにイレギュラーズたちの体力を著しく削る、強烈な一撃であった。
「……けどっ! ザビーネさんの毒ほどじゃないです!
 ……いや、私は受けたこと、ないんですけど!」
 ねねこがそう言いながら、頭上に向けてグレネードをぶん投げた。そのまま耳をふさいでしゃがむと、頭上でばぁん、と破裂したそれが、科学的回復物質と魔術的回復物質をまき散らし、皆の体から毒素を中和する。
「サポート頼むぞ、ねねこ!」
 汰磨羈が叫んだ。
「『ねこ』同士、な!」
 軽口を見せる余裕を見せる汰磨羈。ムラデンは言ってやった。
「たぬきじゃなかったっけ!」
「はんっ! なら先代とやらは、たぬきに斬られたという事になる。
 それの使い走りが粋がったところでなぁ!」
 にぃ、と笑いつつ、亜竜の真正面から、強烈な魔力の奔流を打ち放つ。これに飲み込まれては塵すら残るまい。実際、目の前の亜竜はその通りとなった。
「あなた達は、本当に自由を受け入れられますか?」
 マリエッタが、眼前の亜竜に尋ねる。意図は通じまい。意味も通じまい。心も通じまい。
「――いずれにしても。私が、あなたを眠らせる葬送者となりましょう。それが、私の、役割であるとするならば」
 マリエッタが、その指をパチン、とならす。途端、亜竜の周囲に血の魔法陣が展開され、その中から無数の『地で生成された武器』が生み出された。まるでアイアン・メイデンの内にいるかのような状況に、亜竜は痛みと絶望の悲鳴を上げる。しかして、その恐怖も本の僅かなことだっただろう。すぐにそれは絶命したのだから。
「ゆっくりと……おやすみなさい」
 一礼をすると同時に、武器は消え去った。あとに残るのは屍のみ。
 イレギュラーズたちと亜竜たちの戦いは、イレギュラーズたちの目論見通りに、彼らの優勢のまま進んでいった。イレギュラーズたちにそれなりのダメージを打ち込んできたのは、それでも亜竜たちの維持であろうか。腐っても、ハーデス=ザビアボロスの眷属であったわけだ。そんじょそこらの亜竜とは桁が違う。とはいえ、そんな亜竜と戦い、生き残るほどの冒険と実力を、イレギュラーズたちが積み重ねてきたこともまた事実だ。
「ふっ――」
 一嘉が、その闘気とでも言うべきものを呼気とともに解き放つ。それが、残る亜竜たちをどうしようもなく引き寄せる。一嘉はゆっくりと構えた。
「来い」
 言葉は少なく。そして、打ち込む拳も一つだ。さながらそれは、早撃ちか、或いは居合の果し合いか。まるで交差するように、一嘉と突撃してきた亜竜が打ち合い、そして、倒れたのは亜竜だ。
「時代は変わる。大人しく、受け入れていればな」
 一嘉が静かにそういった。あるいは彼らも、傲慢なる先代ザビアボロスの、邪悪な遺産であるのかもしれない。あの戦いのやり残しなのであれば、或いは、ここでイレギュラーズたちが相対することも、必然であったのかもしれない……。
「残りは、この子だけ!」
 オデットがその両手を掲げた。その手の中に、小さな太陽が生まれる。陽光。それは暖かでもあったが、苛烈でもあった。夜を吹き飛ばす、陽の光であった。
「ちゃんと静かにしてれば、よかったのにね……!」
 オデットはそう言いながら、小さな太陽を、最後のナイトシーカーへと叩きつける。ぎぃあああ、と、ナイトシーカーが吠えた。その太陽に焼かれながら、夜の翼は地に落ちていく。ムラデンが、静かにそれを見つめていた。
「馬鹿だな、キミ達は」
 そう、少しだけ悲しそうに、そう言った。
「よいしょっ」
 と、オデットが着地する。ぱんぱん、と服のほこりを払って、笑った。
「これでおしまい。どう?」
「おみごと!」
 ムラデンが笑った。
「キミたちに頼んで正解だったね。僕だけじゃ、やっぱり少し困るところだった。
 ま? 僕も? キミたちに負けてるわけじゃないけどね?」
「素直じゃないんですね。リーちゃんを触らせてあげようと思ってましたけど、お預けです」
 ふふ、とユーフォニーが笑い、リーちゃんは「にゃー」とそっぽを向いた。ムラデンが肩を落とした。
「マジか……いや、別に? 触りたくないけど」
 強がる。
「この出来事に懲りてこんな離反者がもう起きないといいわねぇ。
 それより療養が先かしら?」
 オデットが言うのへ、ムラデンが頷く。
「おかげで少しは抑止になるだろうね。
 いつ力が戻るかは、マジでわかんないからなぁ」
「なら、また何か起こるかもしれんだろう?」
 汰磨羈が笑う。
「今回はこれで終いのようだが、抑えきれていないのはこれだけ、という訳では無いのだろう?
 また何か起きそうになったら、遠慮なく呼ぶといい。幾らでも、この猫の手を貸してやるからな」
 そういうのへ、ムラデンがにっこりと笑った。
「サンキューたっぬ」
「御主さぁ……」
 汰磨羈が苦笑する。
「それより、ザビーネさんの威光? をもっとアピールすべきですよね!」
 ねねこが、目をキラキラさせながら言った。
「まずは助けた集落にザビーネさんが助けを寄こしてくれたんだよーって宣伝ですね!
 後はザビーネさんの威光を宣伝する案やザビーネさんに恭順してない不穏分子対策を!」
「お、おう……なんかねねこ、下手したら僕よりおひいさま好きじゃない……?」
 真面目にそういうねねこに、ムラデンもちょっとびっくりである。
「ねえ坊や、竜も、人間も、大切なものを大切にしたいのはみんな同じなのねぇ」
 メリーノがくすくすと笑うのへ、ムラデンはうなづいた。
「そうかもね」
「そうだ、因みにムラデン、お前の好みも折角だし教えてくれねぇか?
 それとストイシャが一番好んでる飯とか。
 やっぱ好きなもん食べさせたいってのもあるし……お前らのこと知りたいのもあるからよ」
 零がそういうのへ、ムラデンはうなづく。
「それはいいけど……キミらも疲れてるだろ?
 なんだかんだ、外は危ない。集落へ戻ってからにしよう」
「そうですね。ひとまず、お疲れ様でした」
 マリエッタが言うのへ、一嘉が頷いた。
「ああ。それに、生餌に使った食べ物がもったいない。帰って食事と行こう」
 その言葉に、仲間たちは笑ってうなづいた――。

成否

成功

MVP

ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、集落への襲撃は未然に防がれました。

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