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シナリオ詳細

再現性東京202X:六百文字探偵・希望ヶ浜切裂地縛霊編

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●OPの時点で終わってる依頼
 再現性東京20XX希望ヶ浜地区北部にて、謎の斬殺死体が発見された。
 包丁で切り裂かれたとおぼしきその死体は人間によるものでは断じてない。
 犯人と思われる怪異を見つけ出――。
「私がやりました」
 身元不明の地縛霊、出刃包丁切裂男が諸手を挙げて立っていた。
 あなたは、そして依頼人であったはずの黄泉崎ミコト校長は死体見分をしようとした矢先に現れたその怪異さんをまじまじと見つめる。
「……え」
「私がやりました」
 証拠です、といって包丁をそっと差し出してみせる地縛霊。まあ地縛霊っていうか、夜妖なんですけども。
 差し出された包丁はそれはもうバッチリ血塗れだし、地縛霊の切裂男さんもやっぱ血塗れだった。丁度、先ほどの切り裂き死体を作るに当たってこうなるなあって感じの血塗れ具合である。
「見たところ……そう強い地縛霊ではないようにみえるが……」
「はい! 弱小(くそざこ)です!」
 元気いっぱいにクソザコ宣言をする地縛霊。
 試しにエネミースキャンしてみたらクソザコもクソザコだった。多分通常攻撃を何回かぽかぽかやったら死ぬんじゃないかなってくらいである。
 顔を見合わせる、あなたとイレギュラーズたち。
 だって考えてみて?
 謎の斬殺死体が見つかったからって犯人である夜妖をあらゆる手段で探し出してから八人総出で戦ってやっつけるまでの一連の流れ、多分あと100文字くらいで終わるよ?
 いくらなんでもこの依頼を謎のダンスで数千字埋めるってわけにはいかない。プレだって今からラーメン屋に行ってレビューしはじめるプレで埋めるわけにもいくまいよ。
「待て」
 この依頼がOP(オープニングって読むよ)の時点で終わっちゃうことを察したミコト校長はサッと手を翳して帰ろうとするイレギュラーズたちを止めた。
「いいのか? 今帰ったら今回の報酬はゼロ。ついでにこのオープニングは世に出ることも無くなる」
 出てるじゃんと思ったが言われて見れば確かにそうだ。このまま全員帰ったら何かこう、とんでもないコトになる気がする。
「たとえばそう……この怪異が誰かを庇っているという可能性もある」
「確かに!」
 乗ってみる。乗ってみるしかない。例えば深夜歩き疲れた時にそっとやってきた一台のバスの如く。
「または操られていたり、他の事件と間違えているという可能性も」
「「確かに!」」
 大体今の時点ではプレイングだって埋められない。昨日の晩ご飯とその感想だけでプレを埋める暴挙はきっと許されないだろう。だってこれ夜妖を探し出して倒す依頼だし。
「俺は信じている……」
 これまで一度だって見せたことのないシリアスな顔で校長はキリッと言った。
「この依頼、お前なら600文字一杯までもたせてくれるとな!」

●そして無意味に挟まるビリーフィングタイム
「フッ――よく来たな」
 夜の校長室。一室だけ灯りの灯ったその部屋を開けば、ブランデーの瓶とグラス、そして足を組んでソファに座る校長の姿がそこにはあった。
 棚を見やればトロフィー類の代わりに酒瓶が並び、さながらそこはバーである。
「まあ座れ。『例の件』で……来たんだろう?」
 重々しく呟く校長の声に、あなたは頷いて向かいのソファに腰掛ける。
 酒かソフトドリンクをあなたのグラスに注ぐ校長は、暫くの間沈黙していた。
 あの惨たらしい斬殺死体を思い出していたのかもしれない。
「お前に、『例の件』の捜査と解決を頼みたい」
 そう言って傍らに置かれたファイルを投げるように差し出してくる。
 ファイルから勢い余って飛び出たのは、先日未明に発見されたという斬殺死体。そしてちょっと見切れて映ってる地縛霊斬殺男。
 分厚い資料には男の経歴や前後の行動を調査したものが書かれていた。
 といっても、簡単なものだ。
「男は商社に勤めていたようだが、詐欺まがいの浄水器を老人家庭にばかり売りつける悪徳業者だったらしい。殺された時間は夜間だったらしいが、それも仕事終わりに一杯引っかけての帰り道だ。
 怨恨か、はたまた義憤か……」
 すっごいたまたま通りかかった地縛霊に運悪く殺されただけなのはみんな知ってるけど、シリアスな顔で校長は続けた。
「この事件……お前なら、どう見る?」

 ――どう考えてもOPの時点で終わってる上にプレだって一行で終わっちゃいそうな依頼に600文字限界までシリアスなプレで埋めてくれるイレギュラーズ、その名は六百文字探偵。
 ――次々に繰り出される名推理、シリアスに行われる証拠集め、雰囲気だけは完璧に整えられた必死の調査シーン。そして手に汗握る白熱した戦闘シーン!
 ――あなたはこの依頼を、ギリギリ一杯まで終わらせることができるか!?

GMコメント

※この依頼はシリアスの皮を被った何かです。皆さんもシリアスの皮を被ってお楽しみください。

 謎の殺人現場だと思ってた場所に現れた犯人。そしてクソザコ過ぎる敵。
 このままではプレイングどころではありませんがしかし! 皆様なら……これまで百戦錬磨を重ねてきた皆様なら! プレイングをシリアスな600文字で埋めることができるはず!
 そう例えば調査パート!
 シリアスに希望ヶ浜の町を走り、妖しいバーや情報屋や道行く人々に聞き込みをしまくったり、図書館で事件を調べたり、校長から情報を引き出したりとシリアスな調査パートを描けるはず!
 そして例えば戦闘パート!
 クソザコ相手にも超絶苦戦する様子や、本気を出して挑む白熱したプレイングが描けるはずそう描けるはず!
 さあ皆さん、表情をキリッとさせて相談を始めましょう。シリアスに!

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

  • 再現性東京202X:六百文字探偵・希望ヶ浜切裂地縛霊編完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
霧小町 まろう(p3p002709)
その声のままに
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋

リプレイ

●名探偵、まろう!
 ファー……という謎に神秘的なBGMをラジカセで鳴らしながら、『その声のままに』霧小町 まろう(p3p002709)はゆうっくりと振り返る。
「神は言いました、『難解なるこの事件を誠意解決せよ』と」
 両手を胸の前で握る。そう、祈るようにして。
「ええ神様、仰せのままに」
 頭の中の声は『切裂男が……』と言っているが、まろうは華麗にスルーした。
「仰せのままに!」

 まろうは走り出した。
 なぜなら情報は足で稼ぐものだからだ。
 希望ヶ浜の大通りを、中華街を、コンビニ前を、カフェテリアを、地下駐車場を走る走る。走りながら……。
「他の事件との類似性はないでしょうか?
 例えば、同一犯による連続殺人であるとか。
 それを模して、人に罪を擦り付けようとした可能性もあります。
 過去似た手段で身内を殺された人が、同じ手段で犯人に復讐しようとした、なんてことも……!」
 グッと拳を握りしめ、たかとおもいきやスマホをサッと取り出した。
 ふぃーっていいながらカフェに入りカフェラテを注文すると、出てくるまでの間にスマホをぽちぽちしはじめる。
「過去の新聞。過去に遡って調べてまいりましょう。ふむふむ……」
 頭の中の声が『足で稼いでない……』て言ってるがまろうは華麗にスルーする。今日のまろうは神の声をスルーできるかつてないまろうなのだ。
 出てきたカフェラテを手にテーブルにつくと、向かいのテーブルの地縛霊切裂男に画面を見せ付けた。
「見てください! この記事! ご老人をターゲットに詐欺を働いていた男が惨殺されるという事件が十年くらい前におきているのです!
 もしかして、あなたはかつてはこちらの事件の被害者だったのではないのですか?」
「いえ別にそうい――」
「地縛霊さま。調査に協力してくださりありがとうございました!」
 がたーんと席から立ち上がるまろう。
「しかし、お告げがあったのです…『集めた証拠の全てが、こちらの地縛霊さまが犯人であると示している』と!」
 ビシッと指を突きつけるまろう。
 『最初からそう言っていますよ』と頭の中の声が告げたけどまろうはスルーした。
 対して地縛霊切裂男は――。
「おっと、待ちなァ」
 シリアスな声に全員が振り返る。
 カフェ店員のエプロンをした『恨み辛みも肴にかえて』トキノエ(p3p009181)がサングラスをチャッと外すと、カウンターからゆっくりと出てきた。
「お前らも、もうわかってるんだろう? 今回の事件には裏がある。
 単純に見えて複雑に……なんか色々絡んで起きてるかもしれねえ……ってことをだ」

●名探偵トキノエ――
「どっかの刑事や署長も言ってたよな。現場百篇ってやつだ」
 そう呟いたトキノエは地縛霊切裂男と共に現場へとやってきていた。
「おい、この辺で怪しい人影を見なかったか?」
「えっ」
 通りがかった人にサングラスをチャッて外しながら問いかけるトキノエ。
 彼と切裂男の間を視線でいったりきたりさせながら、通りがかりの主婦は『みてますけど……』と呟いた。
「やはりか。おい、そこの精霊!」
「えっ」
 たまたま本当にたまたま通りかかった高位の精霊さんに問いかけるトキノエ。
「この辺で、殺人をおかすような奴を見なかったか?」
 精霊さんはトキノエとその後ろでリンボーダンスを始めている切裂男を交互に見てから、『見てますけど……』と呟いた。
「やはり、か……この事件、なにかありやがる」
 サングラスをもっかいチャッで外しながら、トキノエは遠くを見やった。
「男は酒を飲んだ帰り道に無残に切り裂かれ殺された。
 確かにそう見えるが…本当にそうか?
 そこの出刃包丁野郎が男を襲った時にはもう、本当の犯人に殺されてかもしれねえぜ」
「な、なんですって!?」
 驚きに振り返る、そして背中から地面に倒れるリンボー切裂男。
「それを、今から確かめに行く」

 確かめに行くと言ってトキノエが訪れた場所。それは希望ヶ浜にある居酒屋『黒民』であった。
 やってるかい、とのれんを軽く潜って尋ねるトキノエ。
 店主がヤッテルヨォといって頷くと、トキノエは木製の椅子にこしかけ、カウンターテーブルへと肘をおろす。
「ここは、男が酒をひっかけていたという店だ」
「ま、まさか……」
 ごくりと息を呑む切裂男。トキノエはそのまさかさと言って、店主に被害者の男の写真を見せた。
「この男が注文したものを、出して貰おう」
「カルアミルクです」
「カルアミルク」
 なに可愛いもんのんでんだこいつと思いながらグラスに口をつけ……。
「こ、これは!」
「トキノエさん!」
「美味いな!」
「トキノエさん!?」
 と、そこへ謎の名探偵ミュージックが流れ出す。
 シルエットと共に現れたのは――『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)だった。
「うぇいよー、ご無沙汰だぜーっ。
 ンンンー! 早速ですがこの事件は非常に困難な事件だったのです。ンッンー」
 似てそうでなにも似てないモノマネを披露しながら、秋奈はゆっくりと歩き出す。

●名探偵秋奈、現る
「崩せないアリバイ、突然届く匿名の警告の手紙、不自然な証拠……。
 人によって導き出された推理の答えは様々だったのです。
 これが、かの有名な「迷宮入り」かもしれない、鬼ってるレベチすぎな事件。
 ちなみに私ちゃんの答えは……、ンッフッフ」
 まだモノマネを続けていた。続けていたし、メンチカツを注文して食っていた。
「えー、それでは次、えーっと、もう一回、ウチらのまわりをよく探してみたのです。
 えー、謎の斬殺死体、ん~、もう一回、手がかりがないか調べてみるのです。
 謎だらけの殺人現場に現れた身元不明の地縛霊、何か引っかかるところがないか確認してみるのです」

 モノマネをまだまだ続けながら、地縛霊切裂男をつれたまま希望ヶ浜の夜の町を歩く秋奈。
 場面を動かしたかったらキャラクターを歩かせてみろってどっかの作家も言ってたのである。
「この広い希望ヶ浜の町、手がかりが落ちてないか、もう一回、調べてみるのです。
 そう。探し物は大抵、ウチらの、あなたのすぐ目の前にあるものなのです。
 えぇ、意外な所にね」
 思わせぶりに振り返る秋奈。それにつられて切裂男も振り返り……見えたのは、一軒の店の看板であった。

 テロテロテローン、ラッシャッセーィ。
 入店の音楽と共に店員があげるヤル気の無い声。
 秋奈は思わせぶりなモノマネをずーっとしながら適当な席へ着くと、メニューを開いてじっとなにかを考える仕草をした。仕草だけである。
「あ、天津丼ください」
「え?」
「え?」
「ん?」
 切裂男と目が合った。
 飯食いに来ただけだと、今気付いた。
 と、そこで。
「困っているようだな!」
 天津丼を片手に『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が颯爽と現れた!

●モカ――ザ・名探偵
「まず、被害者の死体を調べよう。
 たいたい、凶器の血痕と、被害者の血液との照合はしたのか?
 ローレット科捜研の全力をもって調べるぞ!」
 血液、証拠品、切り傷の跡からなにからなにまで一致していく中、モカは出された資料をバッと投げ捨てて振り返った。
「地縛霊の切裂男氏、彼にとって自供するメリットは無い。
 ならば、切裂男氏は誰かに脅迫されている、または誰かをかばって犯人として名乗り出ている……?
 とすれば、黒幕または、かばいたい人物が存在するはずだ。
 街に出て、被害者と切裂男氏、それぞれの人間関係を洗おう!」

 タクシーの運転手をしているビキニパンツの情報屋に金を手渡すモカ。
 すると運転手は周囲をチラチラ見ながらパンツに金をしまい込んだ。
「実はな、切裂男は生前、被害者と同じ浄水器詐欺まがいの企業に勤めていたという噂がある」
「……有益な情報だな」
「そしてとある女性社員が、上司と被害者からパワハラやセクハラを受けていたという噂もある」
「なんだと……!?」
 ある現場にたどり着いたタクシーが止まり、車から降りるモカと切裂男。
「切裂男氏はその女性社員に惚れていたが、彼女が上司のパワハラ、セクハラを苦にして自ら命を絶ち、そのことに絶望した切裂男氏も後に自ら命を絶った……。そんな物語も見えてくる、な」
「そんな話あったかな……」
 切裂男が小首をかしげる
「どうやら、出番のようだね」
 車を降りた先に待っていたのは……そう、『闇之雲』武器商人(p3p001107)であった!

●名探偵なんですか武器商人さん!
「被害者は悪徳商社に属して詐欺商品を売りつけることを繰り返していたんだってね。
 ふーむ、練達にも支部を置いている商人ギルド・サヨナキドリとしては看過することはできない事実だね。
 コネクションでこの悪徳商社のことを洗いざらい調べ上げてやろう」
 すごい今更なことを言うが、商人ギルド・サヨナキドリはそれはもうあっちこっちに支社があって多分だけど希望ヶ浜にもある。別のPCの話になるのでぼやかすが武器商人の知り合いなことは間違いないはずなのだ。
 それによって洗い出される真実とは……。

「ふむ……」
 送られてきたメールの内容をスマホで確認する武器商人。
「どうやら、被害者の務めていた悪徳商社は経営破綻寸前だったらしいねぇ」
 経営状況は火の車。自転車操業に粉飾決裁。隠蔽工作になんやかんや。とにかく会社がらみの悪いことは大体やったと言えるくらいに真っ黒な企業であることが判明したのだった。
「それじゃあ早速、地縛霊切裂男にも尋問してみようねぇ」
「えっボクですか」
 やだなあと言いながら目をそらそうとする切裂男。その両頬を手でがっちり抑え、武器商人は尋問を始めた。
「キミ、誰かのために動いてる様な気がしてない? するよねぇ? そう、するんだよ」
「えっでもボク別に――」
「キミは他の悪徳商社の刺客だったとかそういう感じだったんだよね? わかるとも」
「えっいやそんなことは――」
「そうするとこう、適当な証拠を盾にその悪徳商社を潰す建前がゴホン」
 何か言いかけて武器商人は咳払いをした。
「この凶悪な事件を終わらせなければならないんだ……わかるね?」
「アッハイ」

 こうして悪徳業者『株式会社 労働基準法糞食らえ』の悪事が明るみの元に出て希望ヶ浜から悪徳企業が一つ消え去ったのであった。
 だが、まだ解決していない事件がある……。
「大丈夫、僕はいつだって頑張り屋さんで一生懸命にゃ。色んな意味で任せてにゃ」
 『見習い情報屋』杜里 ちぐさ(p3p010035)がガサ入れ真っ最中の会社のビル前で親指を立てたのだった。

●名探偵っすかちぐささん!
 そこは希望ヶ浜学園校長室。
 並ぶ資料を前に、ちぐさは悲しげに目を伏せていた。
「さて……今回の事件、にゃ。
 これだけの資料かありながら犯人確保に至っていないという事実が危険を感じさせるにゃ。
 この斬殺死体……あまりいい人じゃなかったらしいとはいえ惨たらしいのにゃ」
 そっと写真を封筒にしまい、ちぐさはハッと顔をあげた。
「僕の(見習い)情報屋の勘が、犯人はとても冷酷極まりない人物だと知らせているのにゃ。
 ……恐らくこれは……連続殺人……それも『殺人鬼』と言っても差し支えのない凶悪犯にゃ…!
 次のターゲットはきっと『誰でもいい』。
 一刻も早くなんとかしないといけないにゃ!」
 イヤリングに軽くふれて、何かを祈るように目を閉じる。
「まだ現場近くにいる可能性も……ショウ、僕を守ってにゃ……!」
 そしてちぐさは校長室を飛び出した。
「あっ待って下さい!」
 地縛霊切裂男さんも一緒に飛び出した。

 路地を走る。坂を走る。交差点を走る。
 そしてたどり着いたのはそう、殺人現場。
「ここが現場付近にゃ……この不吉な感じ……僕の勘は当たったのにゃ……?」
「おーい、まってくださーい」
 包丁を手に追いかけてくる切裂男。
「……なるほど、次のターゲットは僕、というわけにゃ?」
 ようやく追いついてヒーヒーいってる切裂男を前に、スマホを取り出し耳に当てる。
「僕を選んだのは不運だったにゃ。おとなしくお縄につくにゃ!」
「その事件、チョット待った」
 『記憶に刻め』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)がスマホを耳に当ててそう答えた。

●マニエラ名探偵物語
「まだ現場の情報を集めきっていない。まずは私の霊魂疎通で現場付近の情報を集めよう」
 ハッと回りに目をやる。霊魂、いるのかな。いるのかもしれない。
「霊魂たち。見てました。とかそういうのは良い、動機に繋がるような事を教えて欲しい。なるほど……そうか……そう、か……」
 暫く意味深に頷くマニエラ。
「まぁいい情報は得られた。結論から言えば『何もわからん』」
「えっ」
 質問に答えていたうちのひとり、切裂男がハッとして振り返る。
「一から調べ直す必要がありそうだ。校長の出していた資料をもう一度見直そう。
 なぜ地縛霊になったか、そこから洗い出した方が良さそうだ」

 そしてマニエラはビキニパンツのタクシー運転手をつかまえ、タクシーで希望ヶ浜学園までやってきたのだった。
「夜妖であれば必ずしも生前があり、理由があるわけでは無いのだろう。
 ある可能性も否定はできないが…勘で言えば此処まで弱いのに包丁で通りすがりの男を惨殺し、調べに来た胡散臭い男に自供する。
 この行動には一貫性がない。まるで倒して下さいと言わんばかりだ」
 隣で偶然なんだけどなあと呟く切裂男をスルーして、とまったタクシーから出るマニエラ。
 校長室へ続く廊下をつかつかと歩きながら、自分の考えを纏めていく。
「仮説としては……何かしら厨二的なサムシングによって生まれたよる夜妖。
 つまりだ、多分劇的なバトルをすれば成仏するんじゃないか?」
「フッ、そうとも限らないよ」
 がらりとあけた校長室の中では、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)が待っていたのであった。

●本当に探偵が出てきやがった! シャルロッテ!
「まあ、まずはラーメンでも食べに行こうじゃないか」
 と、いきなりシャルロッテは言った。
 そうしてシャルロッテと共に切裂男が向かったのはラーメン天下二品。
 注文したのは豚骨チャーシュー麺である。
 運ばれてきたラーメンにそっと箸を付け、すする……。
「スープのよく絡むちぢれ麺に豚骨仕立てながらしつこさの少ないスープ。
 しつこくならないようサラッとしたスープだからこそ、絡ませる為にちぢれ麺で……」
 キラッと目を光らせ、千円札をテーブルに置くとシャルロッテは車椅子を動かした。
「情報は手に入った。次へ行こう」

「サラッとした…といえば、昨日の晩御飯はシチューだったね?
 カロリーカットを意識したささみ肉をメインにしたシチューだ
 ミルクを多めに通常よりサラッとした仕上がりで、口当たり良く美味しかった」
「えっ?」
 急になんですかと切裂男が言うと、道中のシャルロッテは車椅子を動かしながらフッとシニカルに笑った。
「その時見ていたテレビでは延々と続く謎ダンスを見せられる番組をやっていたのを覚えているよ。文字に表せば数千字にも及びそうで、ひどく頭が混乱した」
「あ、あの」
「最後に聞き込みだ、君はええと……出刃包丁切裂男さん?」
「地縛霊切裂男です」
「昨夜は何をしていたのかな?」

「着目すべきは被害者男性が「昨夜」に「一杯引っかけて」帰っていたことさ。
 そう……彼は一杯ひっかけた帰りにラーメン屋に寄り、あの謎ダンスも見ていたのだよ
 長時間の謎ダンス……そしてアルコール……混乱し酩酊した頭……弱小地縛霊でも彼を殺害出来る状態が出来上がった!」
 殺害現場へとたどり着いたシャルロッテは、全員のいる前でビシッと地縛霊切裂男を指さした。
「極めつけは君の昨夜は男性を惨殺していたという証言…これらを矛盾なく繋ぐ真実は一つ! 出刃包丁切裂男……君が、犯人だ!」
「はい! 最初からそう言ってます!」

●一行で終わるバトル
 地縛霊切裂男は死んだ!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 めでたし、めでたし!

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