PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<渦巻く因果>鮮烈なる赤き花

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鏡に映る黒く澱んだ胸の石は、半分が欠けている。
 宝石を抱いて生まれてくるジュエリアの中で、唯一自分だけが黒く濁った石を宿した。
 幼い頃は分からなかったが、大人になるにつれて自分は劣等であるのだと思い知らされた。

 美しい女性の姿に成長するジュエリアの中で、男とも女とも付かない容姿。
 ジュエリアの名に違わぬ造形の美しさは備わっていた。ただそれはジュエリアでは当たり前のことだ。
 自分を守る術は強くなること。
 だから『暗黒卿』オルキット・ブライトレスは誰よりも強く、孤高であった。

「……でも、オルキットは私達を何度も助けてくれたじゃない」
 黒い鎖に繋がれた『ジュエリアの赤花』ダリア・ルベウスは赤い瞳をオルキットへ向ける。
 ジュエリアである彼女はオルキットによって捕えられ、黒曜館へ攫われたのだ。
「自分を護るためですよ。それが結果的に貴女たちを護ることになっただけです」

 かつて、精霊都市レビ=ウムにあるジュエリアの隠れ里において、オルキットは里の守護者のような存在であった。誰よりも強いその姿にダリアや親友のソレイユは憧れていたのだ。それが黒曜館に引きこもることとなったのは、ジュエリアを狙う密猟者と戦い、命鏡石が半分欠けてしまったからだ。
 ジュエリアにとって命鏡石は命そのもの。
 半分に欠けてしまったのなら命も半分になったということだ。

「どうして……ぐ、あ……!」
 喉元に這い寄る黒い水晶にダリアは苦しげな声を上げる。
「抵抗すればするほど苦しむだけですよ。受入れなさい。そして命鏡石を『ニル』に……」
 オルキットは古代アガルティア帝国の資料にあった『ニル』を思い出す。
 人と同じように心を通わせ、思考し『生きていた』ゼロ・クール。
 ニルを作り出すことが出来れば、自分の命すらも不変のものとなるのではないか。
 妄執に囚われるようにオルキットはニルを作り出すことに傾倒していた。

「しかし、随分と昔の資料なので喪われてしまったものも多かったんです。だから、私は考えたのです。
 ――ジュエリアの命鏡石とゼロ・クールの身体を使えばどうかと。
 最初は悩みました。同胞であるジュエリアの命を使うのですから。
 しかし、私はニルを完成させなければいけないんです……ニルを……ニルをこの手に」
 狂気すら感じるオルキットの変容にダリアは唇を噛みしめた。


 最初は黒い染みであった。
 それは次第に広がり、不思議そうに見ていたジュエリアの子供の足を掴んだ。
「うわぁああ――!?」
 子供の悲鳴がジュエリアの隠れ里に響き渡る。

 騒々しい声を聞きつけ、古代アガルティア帝国の精霊都市レビ=ウムへと来訪していたイレギュラーズが走り込んできた。ジェック・アーロン(p3p004755)が逃げ惑う子供を受け止め顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「お化けが、黒いお化けが来たの!」
 泣きながらぶるぶると震える子供の背を撫でて、ジェックは彼らが逃げてくる方向へ視線を上げた。
 其処には、以前レビ=ウム探索時に戦った終焉獣(ブライトレス)たちが見える。
「はやく此方へ!」
『レビ=ウムの精霊』ラーラ・ルタ・カンデラがジュエリアの子供達を終焉獣から遠ざけるように奥の部屋へと誘導する。

「でも、まだ子供達が……!」
 眉を寄せてニル(p3p009185)は自分と同じかそれより小さなジュエリアの子供達を見つめた。
 今まさに目の前でサンド・ブライトレスに絡め取られている。
 長月・イナリ(p3p008096)がサンド・ブライトレスに囚われた子供の前まで走り、牽制の一撃を放った。
 一瞬の隙をついてイナリは子供を掴んで、その場を跳躍する。
 直ぐさまラーラへと子供を受け渡したイナリの瞳に赤いジュエリアが映り込んだ。

「ダリア!? どうして」
 赤いジュエリアに驚愕の声を上げたのは『ジュエリアの騎士』ソレイユ・プリズムだ。
 親友である『ジュエリアの赤花』ダリア・ルベウスが終焉獣と共に現れたのだ。驚くのも無理は無い。
「ソレイユ……よか、た。無事、だった」
「ダリア!」
 近づこうとするソレイユをイナリは手を横に広げて制する。
「待ちなさい。様子がおかしいわ」
 イナリの声にソレイユはダリアに向かう足を止めた。
「ごめ、ん……身体が言う事を、きかない……逃げて……」
 苦しげな声でダリアはソレイユ目がけて魔法を放つ。それを交わしたソレイユはダリアに起っていることを察する。自分にも覚えがあるもの。

「黒い水晶に侵食されてるのね!? 暗黒卿の、オルキットに操られているのでしょう!」
 ソレイユ自身も以前、黒い水晶に足を侵食されていた。
「ごめ……、にげて」
 歯を食いしばり、必死に抵抗しているダリアへソレイユは首を振る。
 ソレイユは眩いダイヤモンドの瞳で親友を見つめた。

「いいえ、諦めない。私、貴女が居ないと困るの。美味しい料理をまた食べたいもの。
 些細なことで笑って、喧嘩して、笑い合って……まだまだ貴女としたいことがいっぱいある。
 ――私は貴女を見た。貴女は私を見てくれた。その赤い輝きを喪わせはしない!」
 ソレイユの言葉は広場に響き渡る。
「大丈夫、私達も居るわ。一緒にダリアさんと子供達を助けましょう!」
『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)と『Vanity』ラビ(p3n000027)がソレイユへと頷いた。

GMコメント

もみじです。ジュエリアを助けましょう!

●目的
・ジュエリアの保護
・終焉獣の撃退

●ロケーション
 アガルティア帝国の精霊都市レビ=ウムです。
 無数にあったとされる混沌世界のアーカーシュに連なる浮島の一つです。
 アーカーシュの建物と似ているものがあります。他には宝石で出来た建物があります。
 ジュエリアの隠れ里には大きな塔があり暗黒卿が住まう黒曜館を見つけることが出来ます。

 ジュエリアの隠れ里が終焉獣とダリア・ルベウスに襲撃されました。
 逃げ惑うジュエリアの子供達。大人はその殆どが暗黒卿に捕まっています。
 終焉獣を追い払いジュエリアたちの隠れ里を守りましょう。

 戦場となるのは大きな塔の中にある広場です。
 ジュエリアの子供達が戦場に取り残されています。

●敵
○『ジュエリアの赤花』ダリア・ルベウス
 暗黒卿に捕まり身体を黒い水晶へと変えられたジュエリアです。
 身体は操られていますが、意識はあるようです。
 仲間のジュエリアを傷付けることに抵抗があり、精神汚染があります。
 不殺で倒せば暗黒卿による身体の操作が途絶します。

 引き連れているブライトレスたちの核を壊す度に、ダリアの黒い水晶が解けます。
 黒い水晶が解けると精神汚染に対抗する力が出て来ます。
 逆に幼いジュエリアが捕まると精神汚染が進みます。

 赤い宝石魔法で攻撃してきます。灼熱の魔力を帯びています。
 真っ赤な焔で作り出した紅玉剣で剣技の腕もあります。
 黒い水晶によって能力が底上げされているようです。

○『終焉獣』フォグ・ブライトレス×5
 黒い霧のような身体を持つ終焉獣です。
 煌めく宝石であるジュエリアを狙っています。
 マッド・ブライトレスより強い個体です。

 霧を広げ毒をまき散らします。空間を汚染するものです。
 体内にある核を壊せば消えるでしょう。

○『終焉獣』マッド・ブライトレス×10
 黒い泥のような身体を持つ終焉獣です。
 煌めく宝石であるジュエリアを狙っています。

 地面を這うように動く黒い泥です。
 動きはゆっくりですが、遠距離で泥を飛ばしてきます。
 近づくと大きく広がり取り込もうとしてきます。
 体内にある核を壊せば消えるでしょう。

○『終焉獣』サンド・ブライトレス×5
 黒い砂のような身体を持つ終焉獣です。
 煌めく宝石であるジュエリアを狙っています。
 素早い動きで幼いジュエリアを攫おうとします。
 ジュエリア収集用のため戦闘能力は高くありません。

●NPC
○『ジュエリアの騎士』ソレイユ・プリズム
 胸にダイヤモンドを抱くジュエリアです。
 凜々しい立ち振る舞いとダイヤモンドの強さを誇る騎士です。
 しかし、終焉獣の軍勢を相手に負傷し足を黒い水晶に変えられてしまいました。
 現在は脹脛に僅かに残る程度です。

 軍勢に囲まれなければ、自分の身は自分で守れる程度に戦えます。

○『レビ=ウムの精霊』ラーラ・ルタ・カンデラ
 アガルティア帝国の精霊都市レビ=ウムを管理する灯火の精霊です。
 ジュエリアの子供達を匿うようにイレギュラーズの後方、奥の部屋の前に居ます。
 部屋のドアは少し開いており、ジュエリアの子供が来たら中へと連れていきます。

○『ジュエリアの子供達』6人
 様々な色を持つジュエリアの子供達です。
 大きな塔の広場に分散しています。
 サンド・ブライトレスに捕まっているのが2人。
 右の柱の陰に隠れているのが2人。
 左の柱の陰に隠れているのが2人。

○『Vanity』ラビ(p3n000027)
 ローレットの情報屋であり、のんびりとした性格。
 前に出て戦えますが、どちらかというとサポートに回っています。

○『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
 ふんわりとした見た目をしていますが、ノルダインの村で育った戦乙女。
 剣と魔法が使えますので一緒に戦い回復をします。

○『暗黒卿』オルキット・ブライトレス
 精霊都市レビ=ウムの北端に位置する黒曜館に住む人物。
 眩い宝石を抱いて生まれてくるジュエリアの中で唯一『黒く濁った命鏡石』を宿した者。
 ブライトレスたちを送り込んでいる者です。
 戦場には現れませんが、情報として記載します。

●プーレルジール
 境界深度を駆使することで渡航可能となった異世界です。
 勇者アイオンが勇者と呼ばれることのなかったIFの世界で、魔王の配下が跋扈しています。
 この世界に空中神殿やローレットはありませんが、かわりにアトリエ・コンフィーがイレギュラーズの拠点として機能しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 実際のところ安全ですが、情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <渦巻く因果>鮮烈なる赤き花完了
  • GM名もみじ
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年09月30日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
恋屍・愛無(p3p007296)
神喰い
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)
戦乙女の守護者

サポートNPC一覧(2人)

アルエット(p3n000009)
籠の中の雲雀
ラビ(p3n000027)
Vanity

リプレイ


 黒い水晶に彩られた館の中に大きな水鏡があった。
 ローブを目深く被り、水鏡の縁に手を置くのは館の主、暗黒卿オルキット・ブライトレスだ。
 水鏡を覗き込んだオルキットの長い髪がするりと垂れる。
 水面に映り込むのはジュエリアの里に送り込んだ『ジュエリアの赤花』ダリア・ルベウスの視界。
 前回の『ジュエリアの騎士』ソレイユ・プリズムの時には、侵食がうまく行かなかった。
 どうして、ソレイユが侵食を退け、ブライトレス達が戻って来ないのか。原因を突き止める為に、今回はダリアの視界を水鏡に映しているのだ。
「これは……?」
 水鏡には浮遊島の住民ではない者達が映り込んでいる。
「見た事の無い……何者でしょうか?」
 オルキットの呟きが薄暗い部屋に小さく反響した。

 ――――
 ――

「暗黒卿か……」
『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)はジュエリア達の話しに耳を傾けていた。
 その中で語られる暗黒卿オルキット・ブライトレスの逸話。
「追い詰められた時こそ本質が現れる。誰も彼もが強くなれるわけでも。強くあるわけでもない。それが人というモノだ。他者との交わりなど、最初から断てばいいモノを。半端に関わろうとするから「こう」なる」
 他者との交わりを断てば、そこに生ずるしがらみに苦しむことも無い。
 解らなくもないのだと愛無は息を吐いた。不要だと斬り捨てられれば、己の中に蟠るもどかしさに憂うこともなかっただろうに。だから、「滑稽ではある」と吐き捨てた。
 人と違うが故の、未熟な思いと行動が、かつての自分と重なったからだ。
 それは少なからず愛無がその地点より成長している証左でもあるのだが。自己を分析するのはむず痒く難しくもあった。だから、目的を単純にする。心を放し、今やるべき目の前の事象に集中する。
「暴力には暴力。さ。仕事といこう」
 愛無は敵が動き出すよりも早く周囲に結界を張り巡らせた。こうする事により周囲の被害や隠れている子供達への精神汚染も緩和出来るはずだ。自分達が住んでいる場所が崩れる恐怖は悪影響に違いない。それを取り除くことは子供達を守ることにつながる。
 それに重ねるのは『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)と『レビ=ウムの精霊』ラーラ・ルタ・カンデラだ。出来るだけ結界の範囲を広げる為に、別方向へと起点をずらす。
「間違っても柱が壊れたりしないように……」
 ニルはこの塔の支柱を壊されないよう注意深く結界を張った。
「ジュエリアのみなさまをまもりたいのです。ニルとおんなじように、宝石をもつひとたち」
 身体を黒い水晶に変えてしまうのも、ブライトレス達を放って攫うのも、自分がされたらと思うと怖くて震えてしまう。それが、大切な人にまで及んでしまったら……それこそ恐怖で足が竦んでしまう。
 ソレイユ達はそんな気持ちを味わっているのだろう。
「かなしいことは、いやです。だから、全力でやっつけるのですよ!」
 ニルの言葉に『金の軌跡』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は頷く。
 まずはソレイユの友人と、子供達を助けてやらねばならないだろう。
 詳しい事情を聞くのと、暗黒卿をぶん殴るのはそれからである。

「何がしたくて、こんなことを……!」
 銃を構えた『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)は円形になっている広間を壁沿いに走る。
 そのスコープには子供達を掴まえるサンド・ブライトレスが見えた。
『闇之雲』武器商人(p3p001107)と『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)が敵陣へと斬り込む合間を縫ってジェックは弾丸をサンドブライトレスへ的中させる。
 弾け飛んだ砂の身体から子供が零れ落ちるのを武器商人が受け止めた。
 広域俯瞰を持つ武器商人の目には、ジェックの弾道と着弾、それに伴う子供の落下地点が解ったのだ。
『子供をこちらへ……!』
『ああ、分かっているよ』
 ハイテレパスで繋いだラーラの声へ武器商人は答える。
 されど、自分が敵を集めてしまえばこの子供を守るのは難しくなるだろう。
 ならば仲間に託すのが最善だ。武器商人は『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)へと視線を上げた。
「ジュエリアってとっても綺麗な子たちなのね。こんなに素敵な子たちの輝きを奪わせるもんですか!」
 走り込んでくるジルーシャへと子供を渡し、武器商人は胡乱な言葉をブライトレス達に投げかける。
「さあ、さあ……おいでよ。我(アタシ)達と遊んでくれるんだろう?」
 武器商人の声色は蠱惑的で、恐ろしいのに何処か引き寄せられる感覚があった。
 暗黒卿が終焉獣をどう従えているのかと思っていたけれど、と武器商人は前髪の隙間から瞳を覗かせる。
「あの黒い水晶が関係していそうだね……」
 これ以上ジュエリアの子供達が狙われるのは厄介だと、武器商人はブライトレス達を呼び寄せた。

 人質付きとは難儀なものだと、ゼファーは槍を手にブライトレス達と対峙する。
 ただ力を叩きつければいいという訳には行かない。けれど、ゼファーは凜とした瞳で前を見据える。
「絶対大丈夫だから」
 揺るぎない自信に満ちているのだと、子供達に示さなければならない。
 胸を張り、高らかに槍を振るう方が、きっと心強いだろうから。
 戦場の奥には赤い宝石を抱くジュエリア、ダリアが苦しげに耐えていた。
 ダリアへと視線を上げるのは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)だ。
(あの子(ダリア)はルビーのジュエリアかしらね?)
 ダリアの胸元には赤く輝くルビーが見える。腕や足は黒い水晶に覆われているようだった。
 ソレイユの足を覆っていたものと同じだろうか。
「まぁ、調べるにしても厄介な連中を叩き出して大人しくさせてからね!」
「ああ……子供達も心配だからな」
『不屈の太陽』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)は『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)と共に戦場を駆け抜ける。
「こう言うのに巻き込まれんのはいつだって子供ってのはやるせねぇなぁ。全力で助けに行かなきゃな!」
「ええ。サポートするわジェラルドさん!」
 ジェラルドは敵の攻撃を受け止め、掲げる大剣で切り裂く。
「子供達を先に助けるぜ。アンタに結構な負担かけちまうけど引き受けてくれっと助かる。ただまぁ無理はしないでくれよ!」
「任せて! 私はもう守られるだけの子供じゃないわ!」
 共に鉄帝の大戦を潜り抜けたのだ。アルエットとて一緒に戦う事が出来る。
 それに、ジェラルドに頼られることが仲間として認めてもらえるようで嬉しかった。

「あーっ! なにやってんだぷちょへんざ!」
『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の大きな声も戦場に響き渡った。
「これはもう敵は倒す! 子供たちは助ける! そんで終わったら焼肉行くしかないな! 焼肉!」
 彼女の元気な声もまた、隠れている事もたちを勇気づけるものだ。
「とりあえずジェック、締めは任せた!」
 秋奈は緋い刀身の二刀を携え、フォグ・ブライトレスへと突進する。
「なんの恨みはないんだけどさ、実際、ダリぴとは初エンカだし? 私ちゃんが乱入する動機はある!」
 纏わり付く霧状の身体を切り裂けば、身体の中央に黒い水晶のようなものが見えた。
「ほら……アレじゃん? アレよアレ。子供を泣かせるのはやめなさーい! ってね! こんなん誰だってやるっしょ? めってすっしょ? 解決しかっしょ!」
 口調こそ軽妙であるが、秋奈の刃は鋭く敵を追い詰める。
「何事も一期一会! マジで一会しかねーんだわ! でもいつもの感はハズせんしー、ケド見せるとこは見せたいしー? よいちょし辛いよー! いや、それでも混ざるんだけどね! うぇーい! 1番騒いでけー!」
 騒がしい秋奈の声が戦場に響き渡った。それはフォグ・ブライトレス達に恐怖を植え付けるもの。
 恐怖は怒りとなって秋奈への敵視となる。
「いいよ、いいよー! よっしゃ、来いー!! 全部私ちゃんが相手してやる!」
 笑いながら剣を振るう姿は乱舞といっても過言ではないが、今はそれが頼もしかった。


 冠位をも貫ける『目』を持つジェックだからこそ、気づけるものもあった。
 弾丸を受け散らばったサンド・ブライトレスが寄り集まり、子供を捕えたままの個体へ集束していた。
 恐らく『誰か』の指示でそう動いているのだ。
 このままでは子供が砂の身体に取り込まれて攫われかねない。
 本来であれば狙撃手が前衛に出るのは無謀というもの。されど、子供の命には変えられない。
 銃を構え、撃ちながら前線へと走るジェック。
 子供を盾にされる前にサンドへと弾丸をたたき込む。接敵するジェックへサンドの攻撃が打ち付けられた。痛む傷を物ともせず、ジェックは子供の身体を掴む。
「多少の傷で四の五の言ってられないからね……なんて、明煌のこと怒れなくなっちゃうかも」
 自らが傷を負うことを躊躇わない親友への小言を頭の中で反芻しながら、ジェックは口角を上げる。
 それでも、きっと怒ってしまうだろうし。もしかしたら、帰ったら怒られてしまうかもしれない。
「よし、こっちへ」
 駆けつけたエクスマリアへジェックは子供を渡す。むずがる様に攻撃をしかけるサンド。
 それを庇ったのはジェラルドだった。
「子供は無事か!?」
「うん、大丈夫」
 更なる攻撃を受けまいとジェックは翻りアルエットの元まで後退する。
 即時に掛けられる回復で傷は塞がった。残る子供は柱の陰に隠れている四人だ。
 ジェックはその柱へと掛けて行くジルーシャを視界に捉える。
 ジルーシャには隠れている子供達の位置が確りと把握出来ているのだろう。
 武器商人やゼファーが敵を集めてくれているお陰でジルーシャは見つかること無く子供達の元へ向かう。
「怖かったわよね。もう大丈夫よ」
「う。う……」
 泣きそうになる子供の頭を撫でて落ち着かせるジルーシャ。ここで泣き叫べば敵に見つかってしまう。
 ジルーシャは咄嗟にキャンディを子供の口に放り込む。
「さあ、行きましょう。怖いのはもう少しの辛抱よ」
 片方の手で小さな子供を抱き上げ走るジルーシャ。遅れて付いてくる子供を気に掛けながらジルーシャは壁沿いに走る。
 それに気付いたブライトレスがジルーシャへ向けて動き出した。
 一瞬、胆を冷やしたジルーシャだが、立ちはだかるように前へ出たイナリがブライトレスを引きつける。
「こっちは任せなさい!」
「お願いね!」
 イナリは短機関銃を構えブライトレスへと対峙する。
 解き放たれる弾丸一つ一つに術式が込められ、ブライトレスの眼前に多重の光が散った。
 反動でイナリの身体も軋むが、儚く散ってしまう子供達の命の方が重要である。
 それに、まだジュエリアという種族について知らない事が多すぎる。
 彼女らの信頼を得ることは、その情報を得やすくなるということもあった。
 だから、イナリにとってはこの役回りは有益であるのだ。

 対面の柱の陰に隠れている子供へと走るのはエクスマリアと愛無だ。
 エクスマリアはラーラの元へ子供を届けたあと、再び柱の陰に隠れる子供達の元へと走る。
「こっちはマリアが引き受ける」
「はい! 一番優先するのは子どもたちの無事。傷つけるのもさらうのも、ゆるしません!」
 エクスマリア達が走り出すタイミングでニルは杖を掲げた。
「ニルはたちが相手をするのです!」
 眩い光がミラベルワンドの先端から散って戦場を駆け抜ける。
 それはブライトレス達を覆い、一気に爆発を伴い吹き荒れた。
「コアの場所は前にみたものと同じ……?」
「そうみたいだね──ここを狙って」
 ニルの攻撃を浴びたマッド・ブライトレスへ弾丸を撃ち込むのはジェックだ。
 ジェックの攻撃でコアを喪ったマッドが地面へと崩れる。
 愛無とエクスマリアはその隙に子供達の元まで駆けつけた。
「大丈夫か? 愛無はそっちの子を」
「ああ、任された」
 自分の『本気』は子供には毒である。だからこそ、愛無は先に子供を回収することを優先した。
 愛無の本来の姿はマッド・ブライトレスと同系統の黒き獣である。
 もっとも、その鋭利な爪や牙は雑魚共とは雲泥の差ではあるのだが。


「ははあ……此れは後でシャワーが恋しくなるタイプのルックスね?」
 ゼファーは槍にこびり付いた泥を払い、マッド・ブライトレスを睨み付けた。
 爆風を伴った槍の一突きにマッドの身体が弾け飛ぶ。
 再び集まったマッドを見遣り、先程ジェックが打ち抜いたコアへと辺りを着けるゼファー。
「あなた達の弱点はもう知っているのだけれど」
 びくつくマッドは何体も寄り集まり、ゼファーへと総攻撃を掛ける。
「そうでなくちゃ」
 マッドが自分に敵視を向ける限り、仲間の傷も減り子供達を素早く救い出すことが出来るというもの。
「それに、足は遅いみたいですから、捕まえることには苦労しなさそうかしら」
 怒りを誘うゼファーの言葉に一層の敵意を込めてマッドは攻撃を仕掛ける。
「そんなにハグがしたいなら、もうちょっと清潔感に気を遣ってらっしゃいな?」
「そうだねぇ……」
 ゼファーの言葉に同じく敵を引きつける役を負う武器商人が嗤う。
「風の娘の言うとおり、もう少し美しい方がいいね……まあ我は君達が愛してくれるというのなら、見た目は気にしないのだけれど……」
 武器商人の言葉にブライトレス達はたじろぐ。

「さて、子供達も無事にラーラの元へ戻ったようだし。ここからは思う存分暴れられるわね」
 槍を構え直したゼファーは戦場を見渡し子供達が居ないことを確認する。
 マッドと戦う中で浴びた泥は、ゼファーの美しい肌を汚した。
 されど、その青い瞳はどんな黒泥に塗れようとも輝きを喪わない。
 ゼファーの美しき槍の先がマッド・ブライトレスのコアを砕く。
「さて……またアンタらみたいなのと戦うとは、ね」
 ジェラルドはブライトレス達を前に大剣を振り上げた。
「お前らの弱点、核の位置は解ってんぜ……一気にカタをつけてやる!」
 積み重なる傷はジェラルドの力となる。体力が削れれば削れるほど彼の内側に闘志が滾った。
「こっからが真骨頂!」
 ジェラルドの大剣がブライトレスのコアごと身体をたたき割る。

 秋奈は苦しげに息を吐くダリアと剣を交えていた。
「どしたー? 私ちゃんなら大丈夫だからさー。どんと来い!」
 剣を向けたくないと黒い水晶からの侵食と戦っているのだろう。
 時折、意思とは関係無く暴走する力は秋奈が全て受け止めていた。
 それでも、ダリアの力を受け止め続けた秋奈は大幅に体力を削られている。
「よーし、私ちゃんそろそろ交代するね。あとはジルっち! やったれやったれー!」
 飛び退いた秋奈の代わりにジルーシャがダリアの前に立った。
「安心して。ジュエリアの子たちは皆無事よ」
「はぁ……はぁ……」
 歯を食いしばり侵食に耐えているダリアへジルーシャは笑顔を向ける。
「アンタには誰も傷つけさせたりしないわ。遠慮なくぶつかっていらっしゃいな!」
「ダリア、もう少し……耐えて!」
 ジェックはブライトレスたちのコアを的確に破砕しながらダリアへ言葉を紡いだ。
「今助けてあげるから。キミも、キミの友達も!」
「友達……」
 傷つけたくないのだとダリアは動きそうになる腕をもう片方の手で止める。
 ジルーシャやジェックの言葉は確実にダリアの心を動かしていた。

「さて、そろそろ本番の時間だわ。1匹残らず解体処分してDNAの1片に至るまで調べ尽くしてあげるわ!」
 イナリは残りのブライトレスたちを手中に捉え、術式を発動させる。
 瞬時に移動したイナリの身体は光を帯びて戦場に瞬いた。
「もう大丈夫、だ。黒いおばけは、やっつけた。」
 仲間の言葉に重ねるようにエクスマリアはダリアを励ました。
 ダリア自身も抵抗している今、動きは緩慢になり攻撃も当てやすいだろう。
 されど、油断してはならない。傷つけすぎてコアを壊してしまったりしたら大変だとエクスマリアは眉を寄せる。エクスマリアの放つ眩い閃光が戦場を覆い隠した。

「君は何のために、その剣を取ったのだね? 君が剣を振るうのは戦う術なき者から奪うためかね?」
 愛無の言葉にダリアは顔を上げる。
「例えば、先ほどの子供のように。君の力なら、さぞ簡単だろう。そうであるなら『そう』していると良い。それが君の選択なのだろうからね」
 愛無はダリアに組み付いて言葉を投げかける。
「私は……そんなことしたく、ない!」
「『違う』と言うなら抗いたまえ。生きるという事は戦うという事なのだから。意思無き所に道はできぬ。先ずは望む事だ」
 その言葉を聞きながら、ダリアは意識が遠くなるのを感じる。
「何にせよ、今は眠りたまえ。一人で出来ぬ事は皆ですれば良いのだからな」
 意識が無くなる瞬間、視界の端にニルの癒やしの光が薄らと見えた気がした。

 ――――
 ――

「……ニル?」
 ダリアの視界が暗転する直前、眩い光の中で水色の髪をした少年を見つけた暗黒卿。
 それは、古代の記録に残されていた命を持つゼロ・クール『ニル・リリア』に酷似していた。
 見えなくなった水鏡を、尚も食い入るように見つめるオルキット。
 その表情は動揺に揺れている。
「本当に、ニルなのですか? 私の前に、とうとう来てくれたのですか?」
 水鏡の縁に頭を預けたオルキットは表情をくしゃりと歪めた。
 動悸が胸を締め付け、息が苦しくなる。焦がれ求めていたものが突然水鏡の向こうに現れたのだ。
 服の下に隠れてはいるが、おそらく胸元にシトリンのコアがあるのだろう。
「ええ、そうに違いありません。だって、こんなにも似ているのですから……」
 胸を押さえながらオルキットは腰のホルダーから本を取り出す。
 はらりと捲ったページにはシトリンのコアを抱くニル・リリアの姿があった。
 床に蹲ったオルキットはニル・リリアを撫でながら考え込む。
「これで、私の宿願も叶います。ニルのコアを移し替えれば……否、あのニルを手に入れさえすれば」
 追い求めていた希望そのものが目の前に現れたのだ。
 オルキットは立ち上がり、ジュエリアたちを捕えている部屋へと歩き出す。


 静かになったジュエリアの隠れ里でジェラルドは子供達の元へ顔を出した。
「おうおう怖かったな、でももう大丈夫だ。俺達、特異運命座標が怖いヤツ追っ払ってやったぜ?」
 ジェラルドの大きな手が子供達の頭に乗せられる。
「ほんとう?」
「怖くない?」
 恐る恐る戦場となった広場をジェラルド越しに覗き込む子供達。
「ああ、もう大丈夫。それにまた何か来たって俺達が追っ払ってやる。何度だってな!」
 ジェラルドの力強い声に、子供達も安心したように微笑む。
 その笑顔を見てジェラルドはほっと息を吐いた。
 自分だって何度も故郷を襲われれば不安で仕方ないだろう。
 彼女たちはそれを何度も経験している。臆病になってしまうのも無理は無い。
 警戒を怠らないようにとジェラルドは周囲を見渡す。
 同じように周囲の見回りをしているのは秋奈と愛無だ。
 仲間が子供達のケアを安心して出来るように、自分達は守備を固める。秋奈も愛無も其方の方が性にあっていた。いざとなれば先んじて攻撃に移れる点もいい。

 ゼファーは腕に付いた泥を払いながら、戦場へと出て来た子供達へと振り返った。
「ほら、大丈夫だって言ったでしょう?」
 そのまま子供達を抱きしめてやりたいのは山々だけれど、ブライトレス達と戦い、身体中泥だらけのゼファーは笑顔を向けるしかなかった。
 これでは恰好がつかないと思いながらも、子供達はゼファーに感謝の眼差しを向けているのが分かる。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「ふふ、どういたしまして」
 ジュエリアの子供達は、自分達の為に泥まみれになって戦ってくれたゼファーがとても格好よく見えただろう。嬉しそうに目を輝かせているから直ぐに分かった。

 ジルーシャは子供達を落ち着かせる為に、柔らかな優しい香りを作り出す。
 香水では子供達の鼻には敏感であろうから、ほんのりと漂う香炉を部屋の隅に置いた。
「何してるの?」
「良い香り!」
 好奇心旺盛な子供がジルーシャの傍へとやってくる。
 その子供に交ざってエクスマリアの姿も見えた。自分達と同じぐらいの背格好であるエクスマリアは、既に子供仲間として認識されているのだろう。
「ふふ、アンタたちを守ってくれる香りよ。優しい気持ちになるでしょう?」
「うん……良い香りなのにふわふわするね。お日様とかママのお膝みたい。ねえ、エクスマリアもそう思うでしょ?」
 手を繋いだエクスマリアにジュエリアの子供は満面の笑みで振り返る。
「うん、そうだな。良い香りだ」
「えへへ、おんなじだね」
 子供というものは共感や同調をすることで安心を得る。だから、エクスマリアは子供達の心を少しでも落ち着かせる為に頷いてみせた。
 その様子を武器商人は微笑みながら見守る。子供が笑っているのは単純に微笑ましい。

「怪我をした人はいるかしら?」
 イナリの声に子供達は首を横に振る。仲間達の奮闘で子供達には怪我は無いようだった。
 であれば、ローレットの仲間であるが、ジェラルドはアルエットが手当をしているようで問題なさそうだと他のメンバーに振り返る。武器商人もゼファーも多少の怪我はあるが幸い動けない程の重傷では無い。
 戦場い散らばった黒い結晶を回収したイナリは、奥の部屋に寝かされているダリアの元を訪れる。
「ダリアの様子はどう?」
 イナリの声にベッドの傍で見守っていたソレイユとニルが振り返った。
「命に別状はありません。もうすぐ目を覚ますと思います」
「……う、ん」
 頭を押さえながら、ダリアは瞳をあける。
「痛てて……ここは?」
 ソレイユに支えられ上半身を起こしたダリアは周囲を見渡した。
「ここは塔の奥の部屋よ。覚えてる? 貴女、ブライトレスと……」
「大丈夫。覚えてる……ごめん、操られてるとはいえソレイユや子供達に怖い思いをさせた」
 悔しそうに眉を寄せるダリアの肩をソレイユが抱きしめる。
「私は大丈夫よ。子供達も分かっているわ……ほら」
 ゼファーに連れられて子供達とエクスマリアが部屋のドアから中の様子をうかがっていた。
「ダリアお姉ちゃん大丈夫? もう苦しくない?」
「ああ、ごめんな。怖い思いをさせて……もう大丈夫だよ」
 ダリアの言葉に子供達は安心したように笑顔を見せる。それはダリアが元に戻ったという喜びも含まれていた。彼女達にとってダリアもまた家族の一人なのだろう。

「少し、見せてもらっていいかしら? 黒い水晶がまだ残っているでしょう?」
「ああ……腕と足かな」
 イナリに両手を差し出したダリアは「どうだ?」と不安そうな顔を見せる。
「そうね。やはりこの黒い水晶で貴女を操っているみたい。ブライトレス達の核と一緒ね。所謂モンスターであるブライトレス達は簡単に操れるけれど、貴女みたいなジュエリアは難しいのでしょう」
 暗黒卿が力を注いだ黒い水晶だから成し得るのだろう。その術式は興味深いとイナリは考え込む。
「侵食されたりするの?」
「そうだな。この黒い水晶になった所が自分の意思とは関係無く動いてしまう。あとは……」
「目もそうじゃない?」
 イナリの言葉にダリアはこくりと頷いた。
「多分、暗黒卿は私の視覚を水鏡に繋げて見てる。あなた達の姿も知られてしまったと思う」

 暗黒卿オルキット・ブライトレスは浮遊島の北端にある黒曜館に棲まうジュエリアだ。
「ひとを操るなんてひどいのです。ジュエリアのみなさまをさらって、暗黒卿というひとは何をしているのでしょう」
 ニルはダリアの回復を一通り終えて一息吐いた。
「暗黒卿に村の大人は皆連れ去られてしまったんでしょう。なら……助けに行かないと」
 ジェックはラーラの背に隠れている子供を見遣り眉を下げる。
「その前に、知ってる範囲で構わないから……暗黒卿の目的を教えてくれる?」
 ダリアはジェックとニルの言葉にこくりと頷いた。

「オルキットは、ゼロ・クールの『ニル』を手に入れようとしてる」
「ゼロ・クールの『ニル』?」
 突然自分の名前を呼ばれ目を見開くニル。
「黒曜館には、オルキットが蘇らせたい古代アガルティア帝国の『ニル・リリア』の試作品がいっぱい転がってるんだ。あいつはニル・リリアを手に入れて、命が創れると証明したいんだ。あいつのコアは半分に割れてるから……」
 悲しそうな瞳を揺らすダリア。ソレイユもその隣で瞳を伏せた。
「だから、多分……オルキットは君を狙ってくる。私の瞳を通して、ははオルキットに見つかってる」
 ダリアはニルを見つめ申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「え? ニルはゼロ・クールではなく秘宝種です……でも、プーレルジールでゼロ・クールとして生まれた秘宝種のひとも、いるのですよね?」
 ゼロ・クールの『ニル・リリア』はニルに繋がる人物なのだろうか。
 その問いに答えられる者はこの場には居なかった。
 沈黙の中、ニルはダリアが告げた言葉を心の中で反芻する。
(『ニル』を手に入れる……黒いコアが割れている……わからないことがたくさんですが)
 まるで、テアドールが見た悪夢のようではないかと、足下から寒気が這い上がってきた。
 それはどんどんニルの脚を駆け上がり、背中へと伝う。
 何故、テアドールがそんな夢を見たのか。
 ニルの顔色が悪くなるのを見かねて、ダリアは「ごめん」と謝った。
 されど、ニルの身体を這う寒気は収まらなくて。
 自分の脚が黒い水晶に変わってしまうような、そんな錯覚を覚えたのだ。

「大丈夫。暗黒卿の所へ乗り込んで行けば分かるよ」
「そうね……まだまだ調べないといけないことはいっぱいだわ」
 ニルの不安を掻き消すように、ジェックとイナリが励ましてくれる。
 まだ、暗黒卿が何を考えているかも分からないのだ。恐怖も拒絶も『知らなければ』出来ないから。
「はい、行きましょう。暗黒卿の元へ……!」
 仲間に励まされ、ニルはぐっと拳を握り銀色の瞳を上げた。

成否

成功

MVP

ゼファー(p3p007625)
祝福の風

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 無事にダリアと子供達を助けることが出来ました。
 MVPは戦線を支えた方へ。格好よかったです。

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