PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<渦巻く因果>ossa et villa

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スケルトン
「なあ、俺たちが全員で出張らないとならないくらいのモンスターが出たっていうのはマジなのかい?」
 おどけた調子で言うのは30台ほどの男性を思わせるゼロ・クールだった。ゼロ・クール――つまり心なき人形のことだが、彼は巷にいればさぞかしモテそうなハンサムな顔をし冒険者風の衣装を着込んだ調子のいいナイスガイだ。彼の腰には中折れ式のリボルバーピストルが収められており、革をなめした服の様子も相まってどこかカウボーイ風を思わせる。
「カーンの集落、ですね……僕の記憶によれば、あの辺りには雑魚モンスターしか出てこなかったはずですけれど?」
 そう応えたのはおなじくゼロ・クール。しかしこちらは大きな眼鏡をかけた少年風の人形だ。仕立ての良い服を着てどこかの貴族を思わせる風貌だが、開いている本は魔導書だ。
 そんな二人は同じく馬に乗り、並走する形で会話を交わしていた。
「二人とも、油断は禁物ですよ」
 並走する二人のあとに続く形で馬を走らせるのは僧服を纏った女性を思わせるゼロ・クール。長く伸びた髪がまるで南国の海のように青い。
 カウボーイ風をザナドゥ、少年風をミルハ、そして女性をアクアという。
 そんな三人が到着したのはミルハの言うとおりカーン集落。小さな集落だ。
「どういうこった? 人の気配がないな」
 耳のよいザナドゥがそんなことを言いながら馬を下りると、ミルハが小鳥を空へと飛ばす。
「誰も出歩いていません。モンスターが出たという報告はデマだったのでは?」
「そんなわけがあるかよ、狼少年じゃあるまいし」
「とにかく、誰かに聞いてみましょう」
 アクアは手近な民家に目星をつけると、コンコンと扉をノックした。
 ややあって足音が扉越しに聞こえる。
 ほらいるじゃあないですか。
 アクアがほっと胸をなで下ろしかけた、その時。
 勢いよく開いた扉の向こうにいたのは白い骨をさらしたスケルトン・アンデッドであった。
 瞬間、鼻につくのは血の臭い。
 スケルトンが手から下げている剣についた血と、そのずっと向こう……壁際に寄りかかるようにして倒れた村人の死体が全てを物語っている。
「――ッ!」
 咄嗟に飛び退き、魔法の杖を構えるアクア。
「おい、ヤバイぜ」
 ザナドゥが言うと、あちこちの民家が開き始める。
 中から出てきたのは、どれもスケルトン・アンデッドだ。
「コンタクト!」
 ミルハが魔法の火の玉を放ち、こちらへ走り寄ってくるスケルトンへ攻撃をしかけ、ザナドゥが銃を抜いて撃ちまくる。
 一体を瞬く間に倒したところでアクアが彼らの後衛についてバフ魔法を唱え始める。
「村人は全員やられちまったってのか?」
「寝静まっている間に……でしょうか。いや、これは呪術の痕跡です。きっと早朝に眠りの呪術をかけて村人が目覚めぬまま――」
 ミルハが状況を分析しつつ次なる目標に狙いを定めようとした、その時。
 ドッ――という激しい破壊音と共に民家の一つが吹き飛んだ。
 現れたのは巨大なワイバーンを思わせるスケルトン・アンデッド。
「スケリトルワイバーン!? こんなモンまで――」
 銃を向けたザナドゥの上半身が一瞬で食いちぎられ、持って行かれる。
 がくりと崩れ落ちる下半身を目に、ミルハが反撃の魔法を放つ――が、それはスケリトルワイバーンに当たる直前でかき消えてしまった。
「無効化結界!? そんな!」
 叫ぶミルハ。そこへ他のスケルトンたちが飛びかかり、彼の身体に無数の刃が突き刺さる。背中へ貫通した刃から血が出ないのは彼が人形だからだ。そして驚きの表情のまま動かないのは、コアを傷つけられたから。
「アクア、だめだ、ぜんめつ、する、まえに、たすけを――」
 呟くミルハ。アクアは首を振り、とめていた馬まで走った。
 彼女を狙う矢が何本もあちこちに刺さるが、それを無視して馬へと飛び乗る。
「ローレットの皆さんを連れてきます! 必ず!」
 仇は取ります。そう言いかけて、アクアはやめた。
 我等は剣。戦い死ぬが定めの人形。なればこそ、強敵の存在をあぶり出しその情報を持ち帰った彼らは役目を全うしたことになる。その誇りだけは、奪わせない。
「必ず、戻ってきますから!」

●魔王軍の侵攻
『我々はこの世界を滅ぼし、混沌世界へと渡航する事に決めた。
 選ばれた世界の住民達しか『混沌世界』に渡ることが出来ないのだ。滅びに抗えるお前達を捕え混沌に渡る手助けをして貰おうか』

 魔王軍の四天王のひとりがそう宣言してすぐ、プリエの回廊からほど近いヴィーグリーズの丘とその周辺にて魔王軍による虐殺が始まった。
「あれは『骸騎将』ダルギーズの軍に違いありません。アンデッドモンスターによって構成された部隊は強力なスケリトルワイバーンを中心として、夜暗に紛れ集落の人々を虐殺して回ったのでしょう。もしこのまま放置すれば、また別の集落が襲われます。そうなる前に……」
 急ぎ馬にて戻ったアクアは、集まったイレギュラーズたちにそう説明した。
「やはり、魔王軍が動き出したか……」
 説明にまず応えたのは三鬼 昴(p3p010722)。アクアたちからの依頼を積極的に受けようとアトリエ・コンフィーにて待機していたイレギュラーズのひとりだ。
「しかしそのスケリトルワイバーン、魔法を無効化する結界を張っていると言うことは……倒すのに物理攻撃を主体とすべき、ということか」
「はい。あるいは【ブレイク】攻撃によって結界を割るという方法もあるでしょう。いずれにせよ、強敵になるに違いありません」
 そのうえ大量のスケルトン・アンデッド。これらを捌ききるのは容易ではないはずだ。
 事実、この情報を持ち帰るにあたって二人のゼロ・クールが破壊されてしまったのだから。
 アクアは杖を手に握りしめ、決意を込めた眼差しで皆を見た。
「私も共に戦います。どうか、あのモンスターたちの殲滅を」

GMコメント

●エネミーデータ
・スケルトン
 骨だけで構成されたアンデッドモンスター。
 人間の死体から作り出されたというおぞましきアンデッド。
 とにかく大量に投入されており、武器はもたないが非常に厄介な敵となる。
 こちらの動きが阻害されてしまう前になぎ払っておこう。

・スケルトンウォーリア
 骨だけで構成されたアンデッドモンスター。
 通常個体よりもアップデートされており、強化魔法がかけられている他武器や防具が上等なものに変更されている。
 これが多数存在しており、一斉に遅いかかってくるこのモンスターへの対処がどうしても必要になるだろう。

・スケリトルワイバーン
 空を飛ぶワイバーン風の外見をしたアンデッドモンスター。実際は人間の骨を大量に継ぎ合わせて作られている。
 攻撃力が非常に高く、ゼロ・クールが一撃で葬られたことからも注意が必要。
 また神秘攻撃を無効化する結界をもっており、攻撃を通すには一工夫が必要になるだろう。

●味方NPC
・アクア
 今回一緒に戦ってくれるゼロ・クールです。
 回復とバフに優れており、味方の後衛を担ってくれます。
 なので今回多少強引に、ダメージ覚悟で突っ込んだりしても大丈夫でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <渦巻く因果>ossa et villa完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
一条 夢心地(p3p008344)
殿
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)
レ・ミゼラブル
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

リプレイ


 大型の馬車が小石を蹴って走って行く。御者台に座って居るのはゼロ・クールのアクアだ。その瞳には決意にも似た光があった。
 それは同胞を壊された怒りなのか、それとも人々を守ろうという慈悲なのか、はたまたマスターからプログラムされた命令でしかないのか。あるいは、それらに違いなどないのかもしれない。

 カタンと揺れる馬車の上。腕組みをして『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は低く唸った。女性ながらに逞しくついた筋肉を惜しげも無く見せ付けるその風貌は、どこか野生を思わせる。
「あれだけでは終わらないと思って警戒していたが、やはり動きがあったか。それも魔王軍とはな……」
 昴が以前対応したスケルトンの幽霊船。それも元を辿れば魔王軍に行き着くものだ。
 今回はそれが直接押しかけてきたということになる。
「しかも住民達を眠らせ、その間に虐殺するだなんてね……」
 『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が怒りに表情を歪める。
「こんな奴らにこの世界を滅ぼさせる訳にはいかないし、他の集落に被害を出させる訳にもいかないわ。絶対にここで殲滅しきるわよ!」
 彼女の言うとおり、もしここで取り逃せば今回のスケルトンたちは別の集落を同じように襲撃するだろう。そして『素材』を増やしてまた次へと続くのだ。
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)がギリッと奥歯をかみしめる。
「魔王軍……! 私利私欲のために虐殺を起こした貴様ら! 断じて許さん!
 村人とゼロ・クールの皆さんの無念を晴らすためにも……!」
 この集落の様子を見るために派遣されたゼロ・クールのザナドゥとミルハのことを想い、ムサシは強く拳を握りしめた。
「この宇宙保安官ムサシ・セルブライトの目の黒いうちは、これ以上の虐殺は許さないッ!」

「勇者的存在である麿の居場所を突き止め、軍勢を差し向けて来るとはな……。
 なーーーっはっはっは! 魔王のヤツも余程この麿の存在を恐れていると見た!
 じゃーがしかし、じゃがしかし。この程度のホネホネ軍団でどうにかなると思うたか!」
 なーっはっはと幌の上であぐらをかいて笑う『殿』一条 夢心地(p3p008344)。その瞳にキラリと遠く、空飛ぶ骨の竜もどきが見えた。
「む、あれがスケリトルワイバーンか」
「見えましたか」
 『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が馬車から身を乗り出して額に手をかざす。
 確かに遠く、見える。
「それにしても……」
 自分達は今、魔王軍からみて『つり出された』格好になっている。あのスケリトルワイバーンはいわば釣り餌なのだ。
 あるいはこれは、損をする選択なのかもしれない。けれど……。
「許せないと。見過ごせないと思ったのなら……」
 剣を取るには充分過ぎる。アッシュは、そう思うのだ。
 『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が膝に手を置いて目を瞑る。
「混沌の為だけを想うなら、もしかして私達はここを去るべきなのかもしれない。
 私達が去れば、魔王軍は当面私達の世界へと渡る手段の心当たりを失うのだから。
 それでもこの世界を救うのだと、それでも戦うのだと、出会った人達を見捨てられないのだと。
 その気持ち<エゴ>と混沌の安全を天秤に乗せたのだと、私はそれを自覚して戦いたい」
 置いた手を、ぎゅっと強く握りしめた。
「去らないのだわ、戦うのだわ、救いたいのだわ、私はそういう者であると……神にそれを誓うから!」
「その通り、ですね……」
 『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)が優しく微笑み、そして自らの手のひらに妖力の炎をぽっと灯した。
「大丈夫。砲撃だって抑えたんです。ワイバーンだって抑えてみせますよ」
 あるいはその先にある、四天王や魔王たちだって。
 そう考える一方で、『無情なる御伽話』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)は身内のスケルトンを思い出しながらぽつりとこぼした。
「しかし、スケルトンといえば雑魚モンスターと相場が決まっていますが……これだけ数が多いと厄介ですね。作戦は『例の作戦』ままで宜しいのですか?」
「はい、大丈夫でしょう。リスクは――」
 例の作戦とは、端的に述べればスケリトルワイバーンを真っ先に倒すという作戦である。
 怒りの付与によって地面に誘引し、飛行できない仲間も参戦するということになっているが、怒りの付与がうまくいくまでは少ない戦力で空中戦を強いられることになるだろう。あるいは相手の体力を数割削れば向こうも墜落し必然的に地上戦になる。いずれにせよ、空中戦に挑むチームの危険は大きい。
「そう、リスクは理解しています。けれど、やり遂げられるはずです。僕たちなら」
 鏡禍の言葉に、ミザリィはどこか優しく目を細めた。
「はい。では露払いはお任せを」


 スケルトンたちにとって、村人の虐殺はあまりに容易なことであった。
 後に様子見に現れたゼロ・クールたちとの戦闘は若干(そして文字通りに)骨が折れたが、戦力的にはこちらは充分な数と力を備えている。
 あとは目的のイレギュラーズとやらがやってきて、それらを倒し捕らえれば……。

「さぁ、まとめてかかって来なさい。頭スカスカな骨野郎共」
 風を切り走るミザリィ。巨大なフォークを武器に構えると、こちらに気付いて構えたスケルトンたちを容赦の無いスイングによってなぎ払った。
 スケルトン程度、ミザリィの敵ではない。注意すべきは――。
「――!」
 投げナイフが飛んできて、ミザリィは素早くそれを払い落とす。
 直後に短剣を構えたスケルトンウォーリアが突進をしかけ、ミザリィに連続攻撃を叩き込んできた。
 それを巨大フォークによる牽制で防ぐミザリィ。
 彼女の挑発は上手くいったようで、大勢のスケルトンが彼女へと群がりその防御を崩そうと集中攻撃を仕掛けにかかる。
 こういうときに恐ろしいのは集中攻撃を受ける際の回避ペナルティである。ミザリィの体力が早速削られ始め……たところで、空にギラリと銀の流星が光った。
 中に描かれた災禍顕現の魔法陣。
 それはアッシュによって生み出された魔方陣である。
 魔方陣は銀の輝きを放つと、光の礫をスケルトンの群れへと発射。不吉系のBSはこうした集中攻撃への対策として非常に有効だ。なにせ、『撃たせない』ことが回避ペナルティ軽減に繋がるのだから。
「援護します。そのまま、引きつけを」
 アッシュは次に銀の弓を取り出すと、三本の矢をいっぺんにつがえて発射。スケルトンのスカスカなボディに着弾した矢は銀の光を放ったかと思うと魔法の糸を張り巡らせる。
 スカスカなだけあって引っかかる場所も多いのか、大勢のスケルトンが糸に絡まって転倒、あるいは拘束されていく。
 その隙に包囲を突破して走るミザリィ。追いかけようとするスケルトンたちに割り込んだのはムサシのディフェンダー・ファンネルだった。
「敵の足を止めますッ! ディフェンダー・ファンネルッ!」
 ディフェンダー・ファンネルが次々にビームを発射。走って追いかけようとしていたスケルトンたちが次々に撃ち抜かれ倒れていく。
 一度エネルギーを補充すべく背部ユニットにディフェンダー・ファンネルを戻すムサシ。と、そこへスケリトルワイバーンがゴオオと咆哮めいた声を上げて遅いかかった。
 超低空飛行で突っ込んでくるその姿に振り返り――しかし、ムサシの表情に焦りはない。
「鏡禍さん!」
「はい!」
 アクアの叫びと共に飛び出す鏡禍。
 自らに特殊な妖力結界を纏わせると、アクアから能力強化のバフ魔法がかけられる。
「有言実行、してみせます!」
 ガンッとなにかを弾く音。それはスケリトルワイバーンの爪による一撃を鏡禍が弾いた音だった。
 物理攻撃を無効化する結界を張られたことに気付いたのだろう。スケリトルワイバーンがまるで舌打ちでもするように歯をガチッと鳴らして上空へと飛び去っていく。
 一方で『鏡面召喚術』を行使することで注意を引こうとする鏡禍だが、どうやらスケリトルワイバーンはその攻撃を回避してしまったらしい。
「そう簡単に誘導されてはくれませんか。けど――!」
「逃がしませんよ!」
 アルテミアが光の翼を羽ばたかせて空へと飛び上がる。
 射撃の届かないほどの高高度へと至ったスケリトルワイバーンに追いすがると、『プリゼペ・エグマリヌ』を抜刀した。
 淡い青の剣身を持つ瀟洒な短剣だ。それを構え、本来なら数十メートル先にいるはずのスケリトルワイバーンに一気に距離を詰め突進する。
 ガキンとスケリトルワイバーンの爪と短剣がぶつかり合い、直後にアルテミアは『プロメテウスの恋焔』を発動。蒼と紅の双炎が燃え上がり、スケリトルワイバーンへと遅いかかった。
 スケリトルワイバーンの巨体を部分的に焼く形で燃え上がる双炎。
「先にアレを仕留める。行くぞ」
 そこへ追撃をしかけたのはウォーワイバーンに乗った昴だ。
(幸いにも私は物理特化だ。アレの相手としては適役だろう)
 この依頼に呼ばれたのは幸いだったな、と内心で呟きつつ、燃え上がるスケリトルワイバーンに強烈な拳を叩き込む。スケリトルワイバーンの巨体が彼女のパンチ一発で派手に飛ばされ、空中で回転。羽ばたきによって制動をかけると、スケリトルワイバーンは昴たちをにらみ付けた。
 神秘攻撃を無効化する結界を張っているスケリトルワイバーン。流石に情報は割れているかと、集まる昴たちを見てガチンと牙を鳴らした。
「そうだ。対策している。ならば、そちらはどう出る」
 ゴオオオ! とスケリトルワイバーンの偽りの咆哮が放たれる。と同時に牙がむき出しとなり、昴へ遅いかかる。防御の弱い昴が狙われればひとたまりもない――が、そこはイレギュラーズのチームワーク。
 祝詞と『稀久理媛神の追い風』によって自らを強化した華蓮が割り込みをかけ、スケリトルワイバーンの上顎と下顎を腕と脚で押さえつけた。
 そのままかみ砕こうとするスケリトルワイバーンだが、華蓮の防御を破るのはいかなスケリトルワイバーンとて難しい。
 ぶんぶんと振り回し、なんとか歯に引っかかった状態から振りほどくのが精一杯だったようだ。
 華蓮はスケリトルワイバーンから吹き飛ばされつつも、翼を羽ばたかせて制動。その横をワイバーンに跨がった夢心地が金色の扇子を広げて抜けていく。
 扇子に描かれた文字は「勇者的」。
「なーーーっはっはっは! さあ、こちらを見るのじゃ!」
 ビュンとスケリトルワイバーンの横をすり抜けるように飛んでいく夢心地。
 爪による斬撃をうけそうになったところを激しいのけぞりで回避すると、空中をワイバーンによってターン。再び笑いながらスケリトルワイバーンへの挑発を継続する。
「む、効いたか!?」
「いや、まだだ」
「そのまま挑発を続けて!」
「うむ! なーーーーっはっはっは!」


 戦いは続き、そして傷は増えていく。
 アクアが『ああ!』と叫んだその時、空を飛んでいたアルテミアが光の翼を失い墜落してくるのが見えた。
「大丈夫ですか! アルテミアさん!」
 鏡禍が駆け寄ろうとするが、それよりもはやく何体ものスケルトンが墜落したアルテミアへと群がる。
 倒れ囲まれたその姿――は、たったの一瞬のこと。
「破ッ――!」
 青白い閃光が走ったかと思うと、アルテミアによる回転斬りによってスケルトンたちは纏めて吹き飛ばされていった。
「スケリトルワイバーンはどうなりました!」
 鏡禍が問いかけると、アルテミアは空を見上げる。
「……上手くいったわ」
 直後、夢心地がワイバーンから跳躍しスーパー殿着地(宙返りを三回挟んだ華麗なる着地。着地時にグキッという音が鳴るがなぜか無傷)をみせた。
「挑発成功じゃ! やれい、皆の者!」
 振り返り叫ぶ夢心地は額に横ピースを掲げて夢心地ビームを発射。
 追いかけて突っ込んでくるスケリトルワイバーンの攻撃をあえてシン・東村山と長介の二刀流で受けた。
「今じゃ!」
 スケリトルワイバーンの横っ面に、ミザリィの巨大フォークが突き刺さる。
 本来骨にフォークが刺さるなどありえないが、つぎはぎされた骨の間に食い込み貫いたのである。
「巨狼の爪で引き裂くが如く、その骨、ばらばらにしてやりましょう」
 更なる追撃として巨大なテーブルナイフを取り出し、大上段から叩きつける。
(人間の骨を接ぎ合わせて出来ているだなんて、悪趣味ですね。
 自然発生したとは考えにくいですし、一体どこの誰が作っているのやら。
 魔王軍にネクロマンサーでもいるんでしょうか。はたまた、魔の手に落ちた元ゼロ・クール職人でもいるのでしょうかね)
 衝撃は派手にスケリトルワイバーンの翼へと伝わり、翼を構成する骨部分がバラバラと砕けて散った。
 体力を失いすぎて飛行能力を喪失しかかっているのだ。
「ならば、もう一方も!」
 アルテミアがまだ無事な翼に向けて剣を叩き込む。
 燃え上がる炎がつぎはぎにされた大量の人骨を包み込み、その接合を剥がしていく。
 スケリトルワイバーンはゴオオと吠えるが、もう空に逃げることはできない。
「お前も攻撃力が自慢のようだが、私とどちらが上か勝負といこうじゃないか」
 そこへ突っ込んでいったのは昴だった。スケリトルワイバーンの頬に激しいパンチを叩き込む。
 人間にしては大柄な彼女とはいえ、巨大なスケリトルワイバーンと比べればあまりの差。しかしそれでも思い切り殴られたようにスケリトルワイバーンはよろめいた。
 それを許さぬとばかりにスケルトンウォーリアが弓矢による射撃を放ってきた。
 昴に迫る矢。それを――。
「危ない! 昴さん!」
 アクアが叫び、間に割り込んだ。
 彼女の身体に深々と刺さる矢。
 グッと歯噛みし、アクアは自らに治癒魔法をかけた。
「なぜ前に出た、お前は……」
「案内役が、あなた様を傷つけ自分だけ無事に帰るなど、ありえませんから」
 杖を翳し、フウと息を整えるようにして構えるアクア。
 その間にもスケリトルワイバーンは夢心地への攻撃をしかけにかかるが、それを阻止する鏡禍。
「作戦が嵌まりましたね。この状態をキープできればこちらのものです!」
 鏡禍がアッシュとムサシに目を向けた。
「相手の障壁を崩すなら今です! 二人とも!」
 叫びに応じてアッシュは銀の弓に矢をかける。
 と同時に、ムサシがブレイ・ブレイザーをソードモードに切り替えた。
「焔閃抜刀・剛――!」
 振りかざす剣のその先端にディフェンダー・ファンネルが飛び、間をつなぐように巨大な剣が出来上がる。
 大上段から繰り出したその一撃と、アッシュの放つ渾身の銀の矢。
 その二つがスケリトルワイバーンに直撃し、その身体を覆っていた神秘の防壁が砕かれた。
「今です! ビームバスターーッ!!」
 ムサシはビッと頭部に搭載された超出力ビーム発射装置に意識を向けると、両拳を腰の辺りで握る構えをとった。
 ビームの発射と同時にアッシュによるもう一撃。今度は銀の剣を振り抜いての斬撃が襲う。
「此処で散った、誰かの為に。
 此処に残された、誇りの為に。
 わたしに出来る、イマの限りを!」
 静かに、そしてスローに流れていくその時間の中で、華蓮は自らの弓に矢をつがえる。
 今こそ、撃つときだ。
(去らないのだわ、戦うのだわ、救いたいのだわ、私はそういう者であると……神にそれを誓うから!)
 もう一度心の中でそう叫ぶと、全ての力を振り絞った一矢をスケリトルワイバーンへと放った。
 そのボディへと突き刺さった矢は光を放ち、光はスケリトルワイバーン全体へと渡り、つぎはぎにしていたその接合部にヒビ入るように広がっていく。
 そしてついに、ばきゃんという激しい音と共に、スケリトルワイバーンは砕け散ったのだった。


 スケリトルワイバーンさえ倒してしまえばあとは楽だった。
 ムサシはディフェンダー・ファンネルを乱射しミザリィはカラトリーで暴れ周り、アッシュは矢の雨を降らせてアルテミアは短剣片手に駆け抜ける。昴に至ってはダブルラリアットの構えでスケルトンの群れをなぎ払っている。
「勇者的波動の前にはホネホネ軍団なぞ敵ではなーーーーーい。片端から砕いてやるわ。
 麿を倒したいのであれば、最低でもダルギーズを寄越すんじゃな。
 なーーーっはっはっは!」
 夢心地に至っては空を飛びながらビームを乱射するというなかなかな手をつかってスケルトンたちを蹂躙していった。
 そうして全てのスケルトンを倒したのを確認してから、華蓮はふうとため息をついた。
「村が骨だらけなのだわ」
「見て、あそこに!」
 アルテミアが駆け出したのを見て、鏡禍もまた駆け出す。
 彼女たちが見つけたのはザナドゥとミルハの残骸だった。
「人形って言ったって悼んだっていいと思うんです」
「そうね、持ち帰って……弔ってあげましょう」
 ゼロ・クールはコアを破壊されればもう直せない。つまりは死だ。
 そして死があるなら、弔うこともまた。
 アクアはその言葉を受けて、自らの胸に手を当てた。
「そう……ですね。ありがとう、ございます」
 帰りましょう。そう呟くアクアの馬車に、九人と二人だったものが乗り込んでいった。

成否

成功

MVP

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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