シナリオ詳細
<信なる凱旋>etiam si mundus perditur
オープニング
●業
遂行者ズィールにとって、この二人の女は『異常』だった。
「なあアンタ、何を取り戻したくてここにいるんだ?」
そう尋ねた時、巨大なハンマーを担いだいかれた女トゥールーンはこう応えた。
「私の最高のおねえちゃん!」
話を後から聞いてみれば、彼女に姉などいなかったという。
近所に暮らしていた年上の女性をおねえちゃんと慕い、その女は家族の告発によってバラバラになってしまったと聞く。
ならば、星灯聖典に属してまで欲するものはなんなのだろう。自分の理想の『おねえちゃん』を仮に具現化できたとして、それで満足する女とは思えない。
本物を手に入れて、自分だけの鳥籠の中に入れて飼っていたいってタイプだ。
もうひとりの女もそうだ。
僧服に身を包んだマリーンはこう応える。
「私だけが『特別』になる世界ですよ」
その真に意味するところはわからなかった。帳を下ろして現実を書き換え、自分にだけ都合の良い世界を作り出すことを望む者も星灯聖典には多い。富や名誉、あるいは失った財産が戻ることを望む者たちだ。
だがマリーンは違う。彼女の優しい微笑みの内側に淀むように存在しているのは他者の悉くを破壊して自分だけが瓦礫の上に立っていたいという欲望……いや、業だ。
そう。業なのだ。
この二人には、深すぎる業がある。
きっとグラキエスはそれを見いだし、彼女たちにそれを実現するための力を与えたのだろう。あるいは、実現に足るという幻想を。
そうしたとき、二人から同じようにこう尋ねられた。
ならあなたは何を取り戻したいのですか?
決まってる。
そんなものは決まってる。
「オイラの仲間たちさ。一緒に冒険して、血反吐吐いて、くたばる寸前まで生き足掻いた毎日さ。オイラはあいつらが戻ってくるなら……他に何もいらない」
世界が壊れたって、構わない。
そうだ。それが、自分達の共通点。
世界が壊れたって、構わない。
そんな深すぎる、業なのだ。
きっと世界が滅びたって叶わないような……業。
●最後のチャンス
滅びの気配を宿した蒼き騎士を連れ、星灯聖典の一団がやってくる。
そう告げられたのは天義サン・サヴォア領、領主アーリア・スピリッツ(p3p004400)であった。
その部屋に同席していたのはメディカ、セララ(p3p000273)、そしてファニー(p3p010255)というやや異色の面々。
セララはかつてネズミ(今はズィールという洗礼名を持っている)が星灯聖典に加わる前から面識を持ち、ファニーはマリーンという遂行者と深く敵対しているという。
彼らのもつ因縁は一言では語り尽くせないほどに深く、そして淀みを帯びている。
アーリアとトゥールーンもまた、同じだ。
そして彼らが個々に集められたということは……そんな遂行者たちが力を合わせて向かってきているというなかなかに恐ろしい事実を示していた。
「『蒼き騎士』を釣れているということは、かなり強引に正しき歴史修復への誘いを行っているとみていいでしょう」
情報屋の女性は両手を膝の上に置いてしずしずと言う。
「今、天義には新たな天啓と共に四つの騎士があちこちに出現しています。それはルストの権能によって作り出された存在で、白騎士、赤騎士、黒騎士といるのですが……青騎士は第四の騎士。つまり最後通告を意味する騎士なのです。
この騎士は他のものと比べても特段に強力で、遂行者の刻印を持たぬ者を機械的に殺害して回る恐ろしい存在でもあります。なんとしても迎え撃ち、追い返さねばなりません」
敵の狙いはやはり、アーリアを初めとする者たちを自分の中間に引き入れることなのかもしれない。
だが――。
「そんなことは、許しませんからね」
ぎゅっと拳を握ったメディカが笑顔で言った。糸目の奥で紫炎が揺れるように瞳が開かれる。
手の中で崩れた角砂糖が、もう一度固形化して紅茶のカップへばしゃりと落ちた。
「絶対に、追い返してみせましょう。魔種の吐く『正しき歴史』など、認めるわけにはいかないのですから」
- <信なる凱旋>etiam si mundus perditur完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年09月11日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●静けさと闘争
普段は活気のある町はずれは、今や静かだ。
小洒落たカフェテラスの椅子に腰掛けて、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は足を組んでみせる。
ねえメディカ? そんな風にといかける彼女に、メディカは糸目のまま視線をやった。
「お酒なんて飲まずに、清廉潔白な薬師な姿が『正しい歴史の私』だなんて言ったらどうする? メディカはその方が嬉しい?」
吐いてしまったのは、弱音だ。メディカはどう応えてくれるんだろうと思っていると、メディカはぷいと視線をそらした。
「そんなお姉様『でも』良かった。今のお姉様だからこそ、出会った人や、見えた景色が、ありましたから。今を否定したくありません」
くすくすと笑うアーリア。
「そうね。何より今は、この状況を止めて、私達の故郷を守らないとね!」
話をさっさと切り上げてしまったそんなアーリアを、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は腕を組んで見守っていた。
そしてハッといつもの割るそうな顔で笑う。
「やれやれ、性懲りも無くまた泣かされに来たかよ。たく……『オニイサマ』も大変だぜ!」
「まあ、あの女にはあなたのような汚らしい男で充分です」
「俺みたいなナイスガイが羨ましいって?」
軽口を叩いて挑発するメディカに、ゲハハハハと笑いをいっそう深くするグドルフ。
「メディカさん。彼は口げんかでは無敵ですから。挑むだけ無駄ですよ」
眼鏡のブリッジにてをかけ、やれやれといった様子で息を吐く『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。
彼ほどの明晰な頭脳があれば、アーリアやグドルフが抱えている闇のような、あるいは泥のようなものを察することは出来る。けれど口に出さないのは、彼らが語りはしないから。この距離を保つのが、大人の男というものだ。
「それにしても、遂行者たちというのは厄介なものですね。
正義だ信仰だ神の国だとラベルを貼っても、やろうとしている事はエゴを押し通す事に変わりは無い。
それは誰もがやっている事です。やり方が異なるだけでね。
力でそれを通そうとするなら、そこにあるのはシンプルな闘争です」
「いかにも!」
『薄明を見る者』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が腰に下げていた剣に手をかけ胸を張った。
「特にあの青騎士とやら。騎士の名を冠しながら民を傷つける……それは私の騎士道とは相反するもの。
例えそれがただの呼び名だとしても騎士を名乗る者の狼藉を私は許しておけんのだ。
相対する敵がどれだけ強大であろうと私は私の騎士道に殉ずるよ」
それに……とアーリアのほうを見やる。
「ここの領主様には日頃お世話になってるしな」
「ありがと」
後で奢るわね、と手をぐーぱーして見せるアーリアに、ブレンダは表情を僅かに緩めた。
そんなやりとりを聞きながら、『屍喰らい』芳野 桜(p3p011041)は一人考える。
(『遂行者』とは、どういうものなのだろうな。魔種というのもいれば、ただの普通の人もそっちに行けるのか。イレギュラーズ、私のような異界の民も『遂行者』となることもできるのだろうか?
知的興味はあるが、一先ずはこの場をイレギュラーズとして切り抜けねばな。
変えたい過去はあるが、この世界ではない)
一方で、『Star[K]night』ファニー(p3p010255)はこの領地を攻める星灯聖典のネームドたちの資料をもう一度見直していた。
そこに刻まれたマリーンの文字。
これで、何度目になるだろうか。彼女と相対するのは。
もう何十回と言葉を交わしたかのような錯覚があるが、数えてみても片手の指ほど。「俺はもう覚悟を決めたんだ。罪を背負う覚悟を……な」
いずれにせよ、倒さねばならぬ相手だ。いずれにせよ。
同じく資料を見ていた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
彼女はズィールのプロフィールを眺めていた。
「失ったものを取り戻したい……ズィールはそのためにあちらについたわけだが……。
否定する資格は私にはない。だが、その手の話が叶えられる可能性など、無いに等しいだろう。
冒険家としては、同業者が目に見える破滅に進むのは阻止したいものだね」
「それでも、ボクは語りかけるよ」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)がゼフィラの呟きに応えた。
「『ネズミ』が取り戻したいのは、かつての仲間たちと探検をした日々なんだ。現実の上書きは、過去の否定と一緒だよ。それは、ちがう」
決然と言い切るセララに、ゼフィラは眩しいものをみるように目を細めた。
「説得は任せよう。私は、フォローに回るよ」
さて、とゼフィラがゆっくりとだが歩き出す。
「全員配置についてくれ。星灯聖典の前線部隊が罠にかかった。戦闘開始だよ」
●失った者たち
「雑魚共ォ、好き勝手暴れようたってそうはいかねえぜ?
──このグドルフさまの目が黒い内はなあ!」
グドルフの剣が振るわれ、信徒の手から槍が撥ね飛ばされた。いや、撥ね飛ぶという生半可な状態ではない。へし折れ、飛び、壁に突き刺さるその様は見る者を素直に恐怖させた。
それが人体に繰り出されればどうなるかなど想像もしたくないことだろう。
「ま、まってくれ! 俺は娘を取り戻したいだけなんだ! 幼いまま、病気で死んだんだ。それだけなんだ! ここを通してくれ!」
ペンダントの写真を見せて叫ぶ信徒の男。グドルフはそんな男の襟首を掴むと、思い切り頭突きをして気絶させた。
「奪ってでも手に入れてえなら、覚悟が足りねえんだよ」
「あら、お優しいのですね」
メディカがそう言いながら、信徒たちの集団に突っ込んでいく。彼らの銃撃を聖なる障壁によって無力化しながら距離を詰めると、全員を纏めてハンマーで殴り飛ばす。
「こんな不正義、殺してしまってもおつりが来ますのに」
「あら乱暴」
気配をそれまで消していたアーリアがスッとその姿を見せたかと思うと、ヴォードリエワインのボトルを群衆めがけて放り投げた。
ただのワインボトルがボッと光を放ったかと思うと、まるで火炎瓶のごとく人々を光で包み込んでいく。
非殺傷性の魔法によるものだが、光に包まれた痛みは相当なものであったようで皆気を失って倒れている。
「ここのエリアはクリア、ね」
指折りして呟くアーリア。
そう、信徒たちは町への侵攻を行うにあたって部隊をいくつかに分けていた。
というより分けざるを得なかったという方が正しい。
作られたバリケードやはられた罠を警戒する形で、広がりつつもある程度まとまりをもって動いていたのである。
それを潰す形で動くのが、寛治たちというわけである。
「この街全体がキリングゾーンになったようなものです。逃げ場はありませんよ」
建物の屋根から静かに姿を覗かせた寛治が、通りを進む信徒の集団めがけて手榴弾を放り投げる。
爆発によって足止めをくらった信徒たちへ突っ込むのはブレンダと桜の二人だ。
「青騎士はまだか。ならば――」
咄嗟におきあがり盾を構える信徒。その盾に剣を野球のバットのごとく思い切り叩きつけると、盾がひしゃげて相手が吹き飛んでいった。
「さあ、かかってくるがいい。本当の騎士道を見せてやる」
周囲に向けて挑発的な視線を送るブレンダ。
「相手は一人だ、纏まってかかれば一人くらい!」
「やってやる!」
信徒たちは吠えるように叫んで遅いかかった。
そこへ、桜が剣を抜き斬りかかる。
回転斬りのような美しいフォームで繰り出されたそれは神気の閃光を纏い、周囲の人々を次々に気絶させていく。
(信徒が死に瀕していた時、その者が助けを請い、敵にならないと言うなら治癒をして助けよう。だが洗脳されているわけではなく、敵であろうとするなら躊躇はすまい)
残ったエリアを担当していたのはファニーとゼフィラ、そしてセララだ。
幻影によって自らの姿を隠していたファニーが仲間にハイテレパスによる合図を送ると、通りを進行していた信徒たちの集団めがけて『降りしきる二番星』を発動。空から叩きつけられる大量の流星が爆発を起こし、通り一帯を舐めていく。
さすがにそこまで動いては気付かれるのか、足止めを喰らった信徒たちが警戒して銃をファニーへ向ける。だがそれが決定的な隙となった。
「ギガセララブレイク!」
雷のカードをインストールしたセララの斬撃が先頭の一人に直撃すると同時、激しいスパークが扇場に広がって信徒たちを吹き飛ばしていく。
「待って下さい! 私達は故郷を取り戻したいだけなんです! 見逃してよ!」
女がヒステリックに叫び立てる。
叫びながら放つ銃撃を、そこに割り込みをかけたゼフィラは銃弾をつかみ取って握りつぶすという荒技によって防御してしまった。
「故郷を取り戻したい。死んだ人にまた会いたい。裕福だった時代に戻りたい。どれも人なら抱いて当然の願望だ。否定まではすまい。けれどね……」
ゼフィラの腕、もとい義手がグリーンカラーに発光した。
魔術の光だ。危険を察知した女が血相を変えて飛び退こうとするが、ゼフィラが魔法を発動するほうが遥かに早かった。
「人々から奪ってまで偽りの『遺失物』を手に入れる。その行為は、止めなければならない。奪わせはしない」
ばたばたと魔法の光にあてられて倒れる人々。
それを一通り観察し、もう立ち上がる相手がいないことを確認するとセララはゆっくりと歩き出した。
「ファニー。『ネズミ』の居場所を教えて」
「ああ、分かってる。奴の抑えは任せた。念のためにゼフィラと二人でついておけ。俺は……」
「うん、分かってる。マリーンさんのところに行きたいんだよね」
「ああ」
「……」
ファニーの目に宿った殺意を、あえてゼフィラは見ない振りをした。殺意の一言で説明できないほど、その感情は深く深く渦巻いていたから。
●奪う覚悟
一人先行するズィールの前に、立ち塞がる二人がある。
セララとゼフィラだ。
「そこをどけよ。オイラには仕事があるんだ」
「どけない。君をここで止めるよ、『ネズミ』」
ネズミ――名前もなかった彼についた、薄汚いあだ名。けれど、仲間たちと呼び合った、大切な名前。
ズィールはガリッと歯をかみしめると、セララを睨んだ。
「オイラはズィールだ。もう捨てたんだよ、昔のことは!」
ハンマーによる殴りかかりを、盾によって防御する。防ぎきれないダメージを、ゼフィラは治癒の魔法でフォローした。
「ネズミ。君だって本当は分かってる。
彼らの言う『取り戻す』は死者蘇生じゃ無い。ifの世界による上書きであり、死んだ人は蘇らない」
「そんなことは知ってる! だからなんだ!」
「ネズミの仲間は探索者だったんだよね。だったら、彼らが探索した痕跡や成果がきっとあると思うんだ。
でもifの世界による上書きをしてしまったなら彼らが生きた証も、彼らがネズミに託した想いも消えてしまう。
そうなったらきっと、君は今よりもっと辛くなっちゃうと思うんだ。
それにね、ifの世界で別人となった仲間達と再会したとしても……その居場所にはifの世界のネズミ自身がいるかもしれないよ」
「いい加減なことを言うなよ! 何が言いたいんだお前は!」
「辛いだろうけれど、ifの世界では無く、この世界の未来を見て欲しい。ボクで良ければ一緒にいるから!」
ぶつかり合う意志と意志。ズィールの目には迷いの揺らぎが、確かにあった。
失った仲間を取り戻したいという彼の想いと、それが本当の仲間なのかという疑い。
(彼女の仲間の言葉を騙るつもりはないけど、破滅に向かうのは見捨てたくない)
ゼフィラはそれを見抜きつつも何も言わず、『聖王封魔』の魔術を義手から放出するのだった。
『また出会ってしまいましたね、ファニーさん』
『ああ、そうだな。マリーン』
青騎士との戦いの現場に、マリーンとファニーは対峙していた。
見つめ合う二人はそれぞれが攻撃と治癒を担当しながら、互いの想いをぶつけ合っていく。
『どんな事情があっても、自業自得は覆っちゃいけねぇんだよ、マリーン。
そもそもオレたちが特別になれなかったのは、選んでもらえなかったのは、自分自身の”怠惰”のせいだろうが!』
『そうかもしれません。けれど覆るなら……全て思うとおりに変えられるなら!』
『アンタは相手に寄り添ったのか? 同じ目線に立ったのか? そのうえで自分の気持ちをちゃんと伝えたのか? …………オレは出来なかった。出来なかったよ』
『…………』
『だからこそ、その責を、その罪を、無かったことにしようなんざ冗談じゃねぇ!!』
『いいえ、罪も責任も、消せるのです。捨てていけるはず。あなただってそうしたいでしょう!?』
『いいや――』
「オレは罪を抱えて生きるって決めたんだ!!」
彼にしか分からない叫びをあげ、ファニーは『指先の一番星』を放射した。
青白い光線が放たれ、マリーンは自らへの治癒と防御でそれを防ぐ。
しかしそれは、桜やブレンダ、寛治たちの集中攻撃を前にしても保たれるものではない。
「マリーン様!」
星灯聖典の信徒のひとりが飛び出し、マリーンの身代わりとなって腹を貫かれる。
「お逃げください! あなたは我々の希望なのです! どうか、我が故郷を……!」
「――ッ!」
マリーンの表情に歪みが生まれる。
『どうやら、私には新しい責任が生まれてしまったようですね。
あなたが罪を背負うというのなら、私は責を背負いましょう。
奪って、壊して、殺して、消して、上書きして――私達の理想を手に入れる』
そうハイテレパスで言い残し、マリーンは逃げ出した。
後を追おうとした桜たちを、青騎士がとめる。
「今は私も騎士を名乗っているのでな。正々堂々戦おうじゃないか」
その剛剣をギリギリで防御したブレンダが、青騎士をにらみ付けた。
「民を守らずして何が騎士か! 貴様はただの紛い物に過ぎない!」
ブレンダの連続攻撃が青騎士を襲う。その隙を突くような形で、桜の剣も青騎士へと幾度も繰り出された。
剣と剣がぶつかり合う音が幾度も響き、火花が散る。
「ここで我を通すのは難しいですよ。天義に思い入れの強い人が居ますからね」
と、物陰から飛び出した寛治の銃撃が青騎士へと迫った。
すんでのところで回避する青騎士だが、寛治の腕はそれほど甘くない。回避されることを想定して弾を散らして連射していたのだ。
巻き込まれないように飛び退くブレンダたちの一方で、寛治の銃弾が青騎士へと着弾する。
「よう。おれさまが恋しくなって会いに来ちまったか? 熱烈の割にゃあ邪魔者も多過ぎだがね」
「うるさい!」
ゲハハと笑うグドルフとトゥールーンの打ち合いが別の場所では始まっている。
「せっかく掴めそうなチャンスだもんな。おめえはよくやってるさ。
だがよ、奪いとるにゃ覚悟が足りねえ。
世界がどうなろうが構わねえと言うが──ハッ、そりゃ舐めすぎだぜ。
世間知らずのガキに教えてやるよ。
──世界はてめえの思うより、何億倍もしぶてえってな!」
「覚悟……? そんなもの――」
言い返そうとするトゥールーンに、メディカによる強烈な打撃が襲う。
吹き飛ばされたトゥールーンが民家の壁に激突し、ごろりと転がった。
「ねぇ、ミアちゃん。もしも私が貴女のお姉ちゃんになったとして、貴女は何を望むの?」
そんな彼女に、アーリアは優しく問いかけた。
「そんなの、決まってるじゃない。一緒にお茶して、お買い物して、毎日毎日笑い合って――」
顔を上げるトゥールーンに、アーリアはかぶりを振る。
「私はね、妹とは喧嘩して、仲直りして、一緒に生きていたい。だから貴女の望むような鳥籠の中のお姉ちゃんにはなれない」
放たれた魔術がトゥールーンへ直撃し、迫るグドルフとメディカの姿に歯噛みする。
「どうして……どうしてうまくいかないの! 私のほうが良い筈なのに! メディカなんかより、私の方がずっとずっと……!」
そこまで叫ぶと、トゥールーンはその場からの撤退を始めたのだった。
●青騎士の最後
剣が、青騎士の首を切り飛ばす。
ブレンダはその最後の一撃を華麗に放った後に、くるりと後ろを向いた。
崩れ落ち泥のように消えていく青騎士。
寛治が残る信徒たちに銃を向けるが、彼らは青騎士が倒されたことで一目散に撤退を始める様子だった。
桜もそれ以上追う必要はないと判断したようで剣を納めている。
トゥールーンとの戦いを終えて合流してきたアーリアに、ブレンダが胸に手をやって敬礼をしてみせる。
「ご命令通り守り抜きましたよ領主様?」
冗談めかした言葉に、アーリアは微笑みで応えた。
「ありがとう、騎士様?」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
サン・サヴォア領に青騎士を中心とした星灯聖典の一軍が攻め込んできています。
その中には星灯聖典のネームドであるズィール、トゥールーン、マリーンの三人の姿もみられました。
敵は強敵。状況は最悪。しかしこれを切り抜ければ、民が青騎士に虐殺される未来を回避することができるでしょう。
●フィールド
サン・サヴォア領町外れ
民家や店などが並ぶオシャレな通りです。ファンシーグッズも売られているような可愛らしい通りですが、今は住民が避難しておりもぬけのからです。
●エネミー
・星灯聖典×多数
聖骸布によって強化された星灯聖典の信徒たちです。
彼らがまずは町へ攻め入りクリアするという手はずになっているようです。
個々の戦闘力は低いものの数が多いので青騎士たちと連携されれば非常に厄介です。まずは彼らを町で迎え撃ち、倒しましょう。
奇襲や罠も有効です。
・青騎士サンベルヘルト
この作戦に投入された青騎士です。
非常に強力なアタッカーで専用の馬に乗って現れます。
今回の作戦の要であるため、青騎士が倒されると高確率で敵部隊は撤退すると思われます。
・トゥールーン
ハンマーを用いたアタッカーで自らを強化するバフを何重にもかけて突っ込んでくるタイプです。聖骸布を多く下賜されているため非常に強力です。
数人で連携して対応するのがベターでしょう。
・ズィール
元探索家の遂行者です。こちらもハンマーを用いたパワーアタッカーですが、器用に様々な場面に対応する柔軟さを持ち合わせています。
彼も多くの聖骸布を下賜されており強力です。連携して対応しましょう。
・マリーン
治癒能力に優れた遂行者で、青騎士、トゥールーン、ズィールをそれぞれフォローしています。
防御や自衛にも優れているため彼女を倒すのもそれはそれで一苦労する筈です。あえて攻撃対象から外して治癒能力をゴリ押ししていくのも作戦としてはアリでしょう。
●味方
・メディカ
ハンマーを用いたタンクアタッカーで、自らを強化するバフを何重にもかけて突っ込んでいくタイプです。
幾度もアーリアにちょっかいをかけてくるトゥールーンにかなりキレています。
●『歴史修復への誘い』
当シナリオでは遂行者による聖痕が刻まれる可能性があります。
聖痕が刻まれた場合には命の保証は致しかねますので予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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