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シナリオ詳細

<信なる凱旋>勝鬨の騎士

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●交錯
 聖都フォン・ルーベルグは動乱の渦中にあると言って良いだろう。シェアキム六世に降りた謎の神託は決して成就されてはならないものだ。天災、死、滅びの予言どれを抜粋してもこの国のみならず、世界に真っ当に生きる者にとっては受け入れ難い異端であった。
 仮にこれが小規模なカルトと言われるものであれば天義の聖騎士団が何事もなく糾弾していただろう。しかしその異端には遂行者という中心的存在が認められ、『神の国』を造り上げる途方もない目的がコミューンを強固な物としている。
 遂行者の暗躍はイレギュラーズによって阻止され続けているが未だに活動が衰える事がなく、これまでに解決した問題事は氷山の一角と言う表現が正しいものである。

●パレード
 星灯聖典に属する者たちが進軍する。没落貴族やはぐれ騎士、未亡人に罪人と多様な人物を含有するその組織は皆一様に神の国へ希望を見出しており、互いに一つの目的のため助け合うものだから夢物語を追う暴徒の一言で片付けられない厄介さがあった。
 詰まる所、荒事は騎士が前線に立ち、罪人は汚れ仕事を引き受け、没落貴族が僅かな財産すら投げ売って資金を援助するのだ。遂行者によって腐敗した者たちでありながら内部構造は潔白であり、対処は困難なものとなっている。
 そして今まで以上に大規模な活動を行う遂行者にはそれなりの理由が存在し、理由そのものが街を闊歩する。

「我々には白騎士様がついている! 恐れる事はない!」
 預言の騎士と呼ばれる新たなリーダーを得た遂行者は増長し、我が物顔で聖都を手中に収めんとしていた。
 歯向かう者は白騎士の威光を背負った星灯聖典の刃によって浄滅され、道に迷う者は白騎士によって導かれ聖骸布を身につける。 
 この聖骸布がただの怪しい壺のような宗教資金繰りの為のものであれば楽な話だが、実際の所は天義に広まりつつある明確な毒だ。聖骸布は簡易な聖遺物であるが、一般人ですらイレギュラーズを相手にする程の戦闘力を得るという危険なものである事は間違いない。毒は毒を呼び、密やかに増長する。

「諸君、天義の偽りの神は我らに何を与えてくれた? あちらを立てたかと思えばこちらを潰す不徳な組合は我らの何を引っ掻き回したか? 力を持つ者の遊び道具として扱われた持たざる者たちよ、今こそ立ち上がれ。我は白騎士、我は諸君らの為に声を上げよう。勝鬨の声を!」

 聖骸布は強力な聖遺物ではないが、星灯聖典の構成員に無数に配布されている。これを取り除かねば天義は彼らの言う所の正しい歴史にいずれ書き換えられてしまうだろう。この白きパレードを阻止するべくイレギュラーズは派遣される事となる。

GMコメント

 ●目標
 白騎士の討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 聖都フォン・ルーベルグ広場
 現場に到着する頃は昼です。
 まともな市民は退避しています。

●敵
 白騎士アルドリク
 突如現れた遂行者達を導く存在、白騎士の一人です。
 強力なリーダーシップで仲間の能力を底上げします。
 高名な騎士のようで、戦い方や退き際を心得ています。
 アルドリクから致命的な被害を受けた場合、後述の『歴史修復への誘い』が判定されます。

 星灯聖典の構成員 10名
 聖骸布によって身体能力が強化された信者たちです。
 各々が希望の為に老若男女問わず迷いなく戦います。
 アルドリクを守るべく殉教する事も厭わないでしょう。

●『歴史修復への誘い』
 当シナリオでは遂行者による聖痕が刻まれる可能性があります。
 聖痕が刻まれた場合には命の保証は致しかねますので予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <信なる凱旋>勝鬨の騎士完了
  • GM名星乃らいと
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月04日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ロレイン(p3p006293)
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
メリーノ・アリテンシア(p3p010217)
そんな予感
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ

●信ずる者
 街の広場は殺気立っていた。無数の市民が白馬に跨る騎士を守り、イレギュラーズをも踏破せんとしている。
 各々が持ち寄った武器には農具や骨董品も見られ、これから始まる激突の前には頼りないものであったが当人たちは気後れ一つないようであった。その中には多少の戦闘経験があるものも混ざっていたが、やはり軍隊とは言い辛いちぐはぐさ、素人集団という雰囲気は否めないものだった。
「一般人に戦闘力を与える布か」
 『影編み』リースヒース(p3p009207)が実物を前にして厄介さを再確認した。彼らは騎士に庇護を求める存在ではない。聖骸布なる遺物を身に纏った事でイレギュラーズと対等にやり合う自信すら生まれているようだった。
「布一枚でお手軽に強くなれるの!? そんな即物的で俗っぽいご利益くれるなんて、さぞかしやり手の神様なんだね!」
 『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は無防備に見える位置で挑発的な対話を試みた。これ見よがしに頭に聖骸布を巻き付けている男が激昂し、顔を赤くしたが白騎士が何かを伝えたようですぐに表情は元に戻った。男はこちらを哀れむようないやらしい笑みを浮かべ、自分たちの正しさや白騎士の存在そのものを盲信しているようだった。
「騎士ってのは『こんなの』かぁ……がっかりにも程があるわ」
 ヒィロとバンダナの男に心理戦が繰り広げられる傍らで『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)はきっぱりと、しかし誰に聞かせるでも挑発するでもない調子で呟いた。無数の聖遺物や民を狂奔させる騎士とナンセンスな展開に本心から出た言葉だろう。ヒィロはそれを舌戦の論点として生き生きと活用したが、美咲としては手も気も抜けない状況にため息をつきたくなった。
 少し聞き耳を立てるだけで聖戦だの殉教だの耳障りの良い言葉が聞こえてくる。それが白騎士の鼓舞なのか熱狂している星灯聖典の構成員によるものかまでは分からなかったが、『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)と『明けの明星』小金井・正純(p3p008000)はそのやり口の巧妙さを認めた。弱者を利用するシンプルな構図を崇拝という形で強固なものとしている。このような形式で成り立っている場合トップやそれに近い立場の者を失墜させる事が有効な一手となるが、この段階まで来ると騎士への幻滅よりもその地位を守るべく彼らは身を投げ出すのだ。
「白騎士とやら、よくもまあ耳触りの良いことをぺらぺらと……」
「人ならば誰もが思うその想いを利用して、自分たちの戦力に変えんとする。悪辣ではありますが、有効ですね」
 白騎士はアルドリクという名で呼ばれている。この人物が何者であるかは掴めなかったが、口が回る男である事は間違いない。ヒィロ流の挨拶を難なく受け流し、見ているこちらが恥ずかしくなるような演技めいた鼓舞をさも当然のように行えるのだ。その英雄ごっこを『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)は止めてやろうと意地悪に微笑んだ。
「騎士ってレイセツを重んじ、ドウトクを備え、メイヨを求めて神に仕えるものなんだけどねぇ」
「詐欺師とて、百人騙せば、扇動者」
 ロレイン(p3p006293)はその神の騎士を詐欺師と評価した。侮蔑を混ぜたものだが本質はそう遠くはないだろう。鎧の中に潜む生物、アルドリクが人間であるならば詐欺師やカルティスト、甘く言っても演者なのではないか。清廉潔白な言葉を次々と回せるその男は騎士として理想的すぎた。まるで物語に出てくるヒーローなのだ。
「神の国に与するもの、それすなわち魔種に連なるもの。それがし、まだこの世界について知らぬことが沢山なので滅ぼされるわけにはいきませぬ」
 『忍者人形』芍灼(p3p011289)は聖骸布に注目している。人それぞれ身に付けている箇所が違い、大きさもバラつきがある布だけを器用に狙えるとも思っていないが、何に再利用されるか分からない、得体の知れない物は破壊する必要があるだろう。
「切手程度のご利益でもあればいいけれど」
 ロレインは額に聖骸布の欠片を貼っている男を見て呟いた。

●聖戦
 最初から先手を取れるとは思っていなかったのか、白騎士は守りを固めつつも被害を切り離せる間隔を保たせていた。そこにアンナが躍り出て敵の引き付けを行う形で戦いは始まった。
「さあ、白騎士様とやらを狙う不埒者はこちらよ。布で力を得ただけのあなた達に捕まえることができるかしら?」
 布の面積が少ない者が呪いの舞に反応した所を見るとやはり聖骸布の力は大きさに比例しているな、と感じた。しかし参考程度に抑えねばならない、この反応そのものが演技、白騎士の入れ知恵である可能性もあるのだ。あの演技派の男がそう仕込んでいてもおかしくはない。分断したとは言い切れない距離感がそれを物語っており、アンナは飛来してくる石を水晶の剣で弾いた。
「おぉ! 良いぞ信徒たちよ~。私のため、神のために使い捨てになるが良い~! こんな感じかな? アハッ」
 白騎士の、しかし間延びしたような声が戦場に流れた。星灯聖典の信者たちはもとより、アンナまでもぎょっとしたその異質な声は白騎士から発せられたものではない。ヒィロの挑発が次のステップに移った事を意味している。
 一瞬場が静まり返る。ヒィロの反射神経基準では反応が薄かったかなと反省するに十分な時間であり、美咲としてはよくやるわねと呆れるに充分な時間が流れた刹那、望まれていた激怒が到来した。これすらも演技であるならば打開の糸口を見つける事は困難だろうが、白騎士周辺が慌てている所を見るに効果はあったと思われる。
「今である我が信徒、美咲さん!」
「はいはい、もう声真似はやめなさい」
 美咲が瞬時に戦闘態勢へと以降する。魔力の消費過程を吹き飛ばしながらグラビティ・ゲートが開く。全く異なる二つの魔術を同時に展開し、ヒィロの悪ふざけにも対応する離れ業だった。

「星灯経典、星の名を冠するのであればこちらも星の巫女としてお相手しましょう」
 陣形に若干の乱れが生じた瞬間を正純は見逃さなかった。混沌に蠢く泥を中心に叩き込む事で信者たちは何か不自然な気運に支配されてしまう。泥そのものは具現化した魔力の形であり、物理的なものとして戦場に残る事はなかった。しかしヒィロやアンナを狙う武器が滑り落ち、大暴投となる形でそれは現れた。
「きたねえぞ、何が星の巫女だ! 泥の巫女に改名しろってんだ!」
「嫌です。それより、今という自分たちの歴史を否定して、ありもしない『もしも』のために誰かを犠牲にするのですか? 自分たちの感じた不幸を、誰かの不幸にするのですか? それはただの逃げです。現実に抗うことをやめて逃げているだけ。だから私は、貴方たちがその聖骸布を纏う限り容赦はできません」
 信徒の動揺が大きくなっている。何かを言い返そうにも上手い言葉が見つからず、正純を威勢よく脅そうとした者ですら他者に次の返しを望んで目線を逸している始末である。

「狼狽えるな! 先程の邪悪な魔術を見たであろう! これこそ神の国を脅かす魔そのものである。泥の巫女は我らが聖書に記述はない……ないがこそ悪魔が密やかに送り付けた邪悪の手先である! 我々は誰一人として犠牲にはしない! 友よ、横に並ぶ友を見よ。君たちこそが犠牲者であり、これ以上の犠牲を出さぬべく立ち上がった勇敢な人間ではないか! 泥のデーモンに惑わされるな、私が道を照らそう」
 正純が反論しようとした時には眩い光が周囲を包み、ケイオスに気運を支配されていた者やヒィロやアンナを追いかけ回していたものが彼らの言う所の正気へと戻った。
「大道芸で迷いは塗り潰せませんよ」
 正純は舌打ちをする。これは道を照らすどころか自分を狙った光だ。正純は白騎士から放たれた光線によって広場を突き抜け、民家へ吹き飛ばされた。金物が飛び散る派手な音が響いた。

「人は死者を覚え、歴史を認識しながら生きていくしかない。それをゆがめて都合のいい物に変えてしまうのは、これまで生きてきたものらへの冒涜だ。死者を見送る者として、遂行者の行いは、死んでも是とはいえぬ」
 影を纏うリースヒースが正純の救援に向かう。白騎士に対する影の騎士が献身的に動く様は信徒からは不気味なものに見えた。死生観について反応し、心が揺らごうとした矢先には白騎士のフォローが入る。徹底的に対策しているようで、逆に考えれば隠しようのない弱点なのだろう。どうにか利用してやれないものかリースヒースは思考を巡らせながら正純の吹き飛んでいった周辺へ急ぐ。
「すまない。二撃目を警戒して遅れてしまった」
「いえ、私も油断していました。演説だけが取り柄の男だと思っていたので」

 メリーノと芍灼がバンダナの男と対峙する。切手サイズの聖骸布を持つ者は一発からニ発で倒せていたが、強さがサイズに比例するのであればこの相手は相当なものだろう。芍灼が明鏡雪鋼で次々と斬り払っていく中、やすやすと棒切れで受け止めたのだ。
「あらあら、身体だけかと思ったら持ち物まで強くなるなんて便利ねぇ」
「感心している場合ではござりません! メリーノ殿!」
 バンダナの男は芍灼の名刀とメリーノの大太刀を木の棒で受け止めている。その異質なオーラに包まれた武器が攻に転じた時に何が起きるかも分からない。硬質なだけでもこの速度で頭に当たったら酷い事になるだろう。
「女が二人がかりで刃物振り回しやがってよ! あぶねぇだろうが!」
「危ないのはこっちよぉ? 女性に青痣なんてつけちゃ駄目じゃない。芍灼ちゃん、今よぉ」
 メリーノが思い切り踏み込み、反撃を受けながらもニ連撃を叩き込んだ。
「加減できませぬ! 御免!!」
「謝るぐれぇなら戦場に出てくるんじゃねえ!甘いんだよガキがっ」

「騎士に天使に遂行者、もう聖遺物はいらないのかしら?」
 前線で猛威を振るっていたロレインは信徒に取り囲まれる形となったが、白騎士は包囲を解いた。主力の一人であるバンダナの男が苦戦しているからか、そちらを優先させたようだった。
「天義に生まれながらも我らに弓引く悪魔め。私は白騎士アルドリク、地獄へ返す前に貴様の名を聞いておいてやろう!」
 白騎士の周辺は密度も薄くなっていたが、それでも白騎士が声を発する度にそこら中で歓声が起きる。盲信とはまさにこの事であり、この騎士道めいた決闘シチュエーションも大方それのために行っているのだろう。
「どっちが悪魔なのかしら。赤だの白だの黒だの、練達で聞いたような色合いの騎士でそれっぽさを演出しても、ただの二番煎じにすぎないわ。ともあれ、胡散臭い騎士に名乗る名前なんてないわね」
「痴れ者が!」
 白騎士自ら孤立する形となったのでロレインは即座に豪炎の魔術で応戦する。
「神よ、我が行いを赦したまえ……」
 直撃したかに見えたが、咄嗟に白馬が身代わりとなり、白騎士の代わりに炭化した。
 これで白騎士は速度を失う形となったが、使えるものは何でも使う思い切りの良さにロレインは苦戦を予感していた。
「あなた達はこの国で酷い目に遭ったのかもしれない。けれどあの白騎士達は違うとどうして言い切れるの。結局良いように使われているだけじゃない」
 アンナがすかさず今の光景について信徒へ問いかける。盾として使われた白馬のような運命を辿るだけだと言うのに、何故ここまで盲信しているのか。或いはこの道しか残っていないと、都合の良い話と理解っていながら自棄になっているのか。白騎士に生まれた一瞬の隙を突くチャンスであったが、逃走手段がなくなった以上、信徒を相手に立ち回っても大丈夫だと判断した。

「こちらの狙いは信徒と引き離す事だったのだけど。どんどん状況が悪くなってないかしら?」
 ロレインの後ろから急に現れた美咲が白騎士の命を貫かんと虹色の瞳で凝視する。白騎士の『いのちのかたち』が見えたかに思えたが、白騎士が盾を構えると濃い霧によって阻まれた。構わずそれに手を伸ばそうとした時に顔先を剣が掠めた。このまま続けていたら、刃にもう少し踏み込まれていたかもしれない。魔術に対する備えが二重にも三重にも準備されていて視認し辛い。腐っても騎士、光がどうのと言うだけの事はある。しかし次は断ち切って見せる、美咲は飛び退いた勢いでまたも信徒やイレギュラーズを遮蔽とし、その瞬間を狙っている。
「御身がただしき死を欺こうとしても、宿命は刈り取りの手を止めぬぞ」
 彼方より漆黒の馬車が走ってくる。正純を回収したリースヒースが即座に戦線に復帰したのだ。
「そのまま逃げておれば命は助かったであろうに。加減された事が理解らぬか!」
「泥の巫女だの流布されても困りますからね。それでは今度はこちらの光、星の光をお返ししましょう。」
 黒現のアバンロラージュから飛び降りた正純はそのまま弓を射る。超音速で飛来する一矢が流星となって白騎士の盾を貫いた。
「アルドリク様!!」
 信徒も劣勢を感じていた。白馬に続き聖なる盾までもが邪悪なものに打ち砕かれてしまった。元々ロレインとの一対一の余興であったはずが、隙に食い付かれた白騎士達は着実に追い込まれているようだった。
「私は大丈夫だ。見よ、不吉な馬車がデーモンを連れて来た。我が盾はまた造れば良い、諸君らの命は造る事はできぬ。諸君らを守れた事は騎士の、盾の本懐である」
「うそだよ、本当はボクに飛んできた矢が怖くて盾に隠れちゃっただけであるよ」
 ヒィロは徹頭徹尾に舌戦を仕掛けている。声真似と種が知れれば困惑も少ないが、やはり白騎士の声を真似される事は不愉快なのだろう。おまけに言葉の所々でロールプレイしきれていないヒィロ味が出ている。崇高ぶっていた信徒ももはや反論もなくヒィロへ殴りかかり蹴りかかり頭に血がのぼっている始末だった。
「声真似しかできぬ薄汚い獣人が!」
 正純同様に剣先から光をヒィロに放つ。
「ワンパターンな事……あ、あれは危ないわ。ヒィロ!」
 不可避の光が不自然な程の速さで曲がり、2度躱し、3度掠めた後に諦めて防ぐ事にした。
「ごほごほ……ボクの動きを観察してたみたいだね、大丈夫だよ。そんなに痛くないから」
「そろそろ詰ませましょう。これ以上ヘンな技を見たくも受けたくもないわ」
「同感だよ。信じる者が神様にすくわれるのは足元だけだって教えてあげなきゃ! アハハッ」
 芍灼がバンダナの男を仕留め、白騎士との戦いに加わる。最後の最後まで強烈な反撃を行ってきた為、深手を負っていたがリースヒースの手が空いた事で活力を取り戻した。メリーノは聖骸布を剥がそうと信徒との戦いを繰り広げているが、力の差は歴然ですぐに合流できるだろう。
「やっぱり都合よく正気に戻ったりはしないのねぇ。ちょっと気味も悪いし雑巾にもならないんじゃないかしらぁ」
 
 気付けば白騎士の減らず口が見る影もない。イレギュラーズもヒィロの無尽蔵なポジティブさを除いては口数も減り、戦闘は長引いていた。取るに足らない信徒が急に白騎士を癒やす呪文まで唱えるので想像以上に粘られている。
「まさか信じて着いてきた信者を置いて一人逃げるなんてしないわよね、遂行者様?」
 それでも有利はイレギュラーズにある。アンナが先回りするように釘を差し、また実際に先回りするかの如き高速の一撃を白騎士へ叩き込む。白馬を失った悲劇的な演出は彼らの士気を高めたが、ここにきてデメリットが上回ってきている。
「騎士に天使に遂行者、次はペガサスでも出てくるのかしら」
 ロレインが再び炎を放ち、桜の花にも似た炎片が白騎士を包む。数々の猛攻を凌いできた白騎士の鎧は汚れ、ダメージの蓄積を物語っている。
「アルドリク様、お逃げください。我々が身を投げ出せば多少は時間が稼げるかも……いえ、稼いでみせます!赤騎士様のエリアまで走る事ができれば炎獣の支援が受けられるはずです」
「こうなってしまっては無理な話だ。私は白騎士……せめて諸君らと共に、最期まで戦おう!」
 また嫌な話に持っていったなとアンナは苦い顔になった。こう結束されては正気に戻したりする事もできない。情報を漏らされるよりは全滅した方がましという事か、そもそも白騎士に何か企みがあるのではないかと推測したが、玉砕がほぼ正解だろう。
「どうあってもそれがしと戦うのですね! これは間違っているとそれがしも思いますが!」
「白騎士ちゃん、これは正しい事なの? 白騎士ちゃんの号令で皆死んじゃうのよ?」
 芍灼が、メリーノが信徒の首を飛ばす。完全にやられた、殉教という目的のもと聖骸布の魔力が膨大なものとなり身体を突き動かしている。手加減などしていられない血生臭い戦いがここにきて始まるとは。全員とまでは言わないが、助けられる命ならば助けたかった。
「第一印象って正しいものね、白騎士アルドリク。あなたには失望したわ」
「またその陰湿な黒魔術か小娘! その手はもはや見切っておるわ!」
 祝福された盾がない。そうだ、あの邪悪な一矢で使い物にならなくなったのを失念していた。
「それで防いでいたのを見てましたからね」
 あれは手頃な信徒などを盾にできるものではない。やられる。
 
 美咲の刃がアルドリクの命、その概念を断ち切った。

成否

成功

MVP

小金井・正純(p3p008000)
ただの女

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!
犠牲になった馬の名前はテンギイチバンです。ダート向けです。

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