シナリオ詳細
アンシエント・リリクス冒険譚
オープニング
●古代に魅せられた男ローレンス
コツン――と杖をつく音が、酒場の扉の音に重なった。
エールを昼からちびちびとやっていた者は振り返り、その老齢を感じさせるシルエットを見た。
短く整えられた灰色の髪と、落ち着いた佇まい。それはただの老人ではなく、深い知識と経験と、そして魂から湧き上がるバイタリティに裏打ちされたものだとすぐにわかった。
そしてそう、考古学に詳しい者であれば、彼の名も知っているだろう。
「ローレンス・アーキン……? ローレンス・アーキン殿ではありませんか」
その声に気付いたのだろう、酒場の奥から『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が顔を出す。
「あら、これは珍しい――ネイビーブルーなお客さんね。お酒を飲みに来たわけでは、ないのでしょう?」
そこまで言われ、ローレンス氏は穏やかに微笑んでみせる。
「ああ。ローレットに、依頼をしたくてね。少し話を聞いてもらえるかな」
●鉄帝国の酒場にて
冬の寒さを忘れるくらいの夏。窓を開け放した酒場の個室にローレンスは座っている。
事前に一通りに話を聞いたであろうプルーが、部屋に入るあなたを出迎えてくれた。
「いらっしゃい。改めて紹介するけれど、こちらはローレンス。考古学者。説明は……」
「ああ、私からしよう」
杖を手に椅子に腰掛けた老齢の男性、ローレンスは『どうぞ座って』とあなたに優しく語りかけると、続けて今回の依頼について話し始めた。
「アンシエント・リリクス遺跡。ここから南方に位置するその遺跡には、はるか古代にあったというアンシエント族の遺物が眠っているという。
これを見つけ出すことは、考古学的に大変価値のあることだ。知っているかね? アンシエント族は少数でありながら気高く強く、周辺部族との交流も盛んであったことから冒険にも優れていた。
そしてその知恵を使って作られたのが、アンシエント・リリクス遺跡なのだ。
これまで盗掘者たちがアンシエント族の遺物を狙って侵入を試みたが、その結果返ってくることはなかったという。それだけ危険な場所だ……いや、それだけ危険であるからこそ、重要な秘密が眠っていると私は確信している」
アンシエント・リリクス遺跡は鉄帝南部に存在する遺跡である。
遺跡には『守護者』と呼ばれるゴーレムが配置されている他、失われた文明より残る悪霊たちや古代生物が潜んでいるとも言われている。
そうしたモンスターたちとの戦いは避けられず、また冒険に優れていたというアンシエント族による罠も数多く設置されていることだろう。
それらを突破することができるのは……そう、経験豊かで知識も豊富なローレットのイレギュラーズたちのみだと、ローレンス氏は考えたのだ。
「わしは中までは同行できん。この身体なのでな。しかし君たちなら必ず遺物を持ち帰ってくれると信じている」
ローレンスは自らが調べ纏めたという資料をあなたに手渡し、深く頷くのだった。
未知の遺跡をめぐる冒険が、始まろうとしているのだ。
- アンシエント・リリクス冒険譚完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月25日 22時05分
- 参加人数6/8人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
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参加者一覧(6人)
リプレイ
●
「冒険者らしい冒険……って感じだね」
日の差すテラス席。飛んだ蝶がとまった手すりの側で、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)はコーヒーカップをスッとあげた。
彼にとって冒険とはロマンだ。人生でもあり、彼自身を示すことばですらある。
そんな彼にとってアンシエント族の遺物を廻る古代遺跡への大冒険だなんて、願ってもない依頼なのだった。
「特にダンジョンアタックは得意中の得意だからね。今回は楽しみだなあ」
うっとりとした表情でカップに口をつけるカイン。
その隣で『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)が全く同じような様子でマルゲリータピザに口をつけていた。
いつでもピザをひと箱出せるという能力によってどこでも大体ピザを食ってるというかわったイレギュラーズである。ちなみにコーラ党。
このピザをどれだけ食べても体重や健康に影響がないというが、コーラは別だろうと――そのまた隣でエールをちびちびやっていた『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は思うのだった。
「ま、ともかく……メンツは揃ったんだ。能力の確認といこうぜ。そこの『冒険者』はいわずもがなで」
「私?」
手のひらで五指を揃え、自らを指し示すクアトロ。
いろんな場面において「ピザ食ってる女」以上のイメージを抱かせにくい彼女であるが、こう見えて才能も豊かである。
「探索能力に関してはなかなかだと思うわ。隠し通路や隠し部屋、そういったものなら私に任せてもらえれば大抵見つけられると思う」
「へえ……そんな能力があったとはなあ」
厳密には『紅蓮のコンパス』の能力だが、ダンジョンアタックには確かに役立つ能力だろう。
「そちらは?」
五指を揃えたままキドーを指し示すクアトロ。
キドーはキヒヒと笑ってエールを飲み干した。
「精霊だの妖精だののたぐいは得意だな。古代遺跡ってのは精霊が回してる場合が多いからよ、俺を連れてきゃ役に立つとおもうぜ」
実際、はるか古代からずっと労働精霊の循環によってインフラを維持していた遺跡なんてものもあるくらいで、古代遺跡と精霊はわりと近いところにあるらしい。
「なるほどね……あ、僕はやっぱり知識面かな」
『結切』古木・文(p3p001262)がコーヒーカップの縁をそっと指でなぞりながら言った。
瞬間眼鏡のレンズが光を反射し、彼のアンダーグラウンドな一面を覗かせる。気付く者にしか気付かないというか、キドーくらいしか気付かなかったが、彼の知識の深さやそれを身につける能力は書類偽造やそれにまつわる技能から来ているものである。
例えば人間が製造したものであれば、紙幣や身分証であっても完全に同じ物を製造することが可能だ。それを見分けるためのテクニックや罠なども含めて知識人同士の暗闘が繰り広げられるため、偽造屋は自ずと知識と知恵に強くなるのである。
「今回は考古学者のローレンス・アーキンからの依頼だしね、光栄だなあ」
眼鏡の奥で微笑んでみせる文。
これは本音らしく、アングラなわりに純粋で善良というのが彼の人柄なのである。
「へえ、みんな頼もしいなあ……」
『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)がのほほ~んと言った。本当にのほほ~んと。
「あ、俺はそんなにかな。医術には詳しいし、治癒魔法も得意だよ。冒険で役立つポイントっていったらやっぱりそこかな。えっと……」
アルムが意見を求めるように『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)を見ると、ブランシュは二本指を立ててニヒルに呟いた。
「俺は――死(タナトス)。戦いになれば、任せて貰おう」
ちょっとまえのブランシュを知る人たちが『こいつこんなやつだっけ?』という顔をしたが、誰にでもあるイメチェンなのだろうと流すことにした。実際そうらしいので。
「そっか。……あっ、そういえば遺跡っておばけでるんだよね! 幽霊ってダメなんだ俺、どうしよう」
「幽霊も、殴れば倒せる」
そうThanatosの導きのままに、みたいなことを独り言でつぶやくブランシュ。
アルムはあははと笑ってから、ローレンスより託されたアンシエント族の資料に目を落とした。
アンシエント族。冒険に優れ、その知恵を使って作られた遺跡。
その奥に眠る遺物を見つけ出してくるのが今回の依頼だ。
「謎解き、できたらいいなあ……」
未知の冒険。アルムは期待に胸を膨らませた。
●
「早速……だね」
カインはアンシエント・リリクス遺跡の前に立った時点で立ち止まり、そこに描かれた壁画を手でなぞった。
感触からしてかなり古い時代に描かれたもののようで、幾何学模様を組み合わせた人間の集団や何かの儀式のようなものが描かれている……ように見える。
扉は固く閉ざされており、開くための鍵はない。
「どうする? ぶっ壊すか?」
キドーが物騒なことを言うが、カインは笑って首を横に振った。
「その必要はないよ。見て、扉に魔力の反応装置が埋め込まれてる」
言われたとおりによく観察してみると、扉の数カ所に五芒星めいたマークが刻まれ、そこには水晶のようなものが埋まっていた。魔力を込めた手を近づけるとそこが淡く光るようになっているようだ。
「この仕掛けがなんだってんだ?」
「暗号だよ。壁画に示した暗号通りに魔力を込められる者だけが、この遺跡に立ち入ることができるってわけさ」
カインはそう言いながら魔力装置に手を翳していく。
「失敗したらどうなる?」
「罠が発動する、かな。ガスの噴射口があるから」
「げえ!?」
思わず飛び退くキドーたちだが、カインは難なく暗号を解読し、正しい手順で扉に魔力を注ぎ込んでいった。ごごごと音を立て扉が自動で開き始める。
真っ暗だった通路には灯りが順々にともり、順路を示してくれる。
「ね?」
「さすが冒険者、やるねえ」
キドーはにひひと笑ってまえに出た。
というのも、灯りがともったのが魔法だけではなく労働精霊によるインフラによるものだと察知したためである。
「ちょっとこいつらに話を聞いてみようぜ。安全な通路が見つかるかもしれねえ」
そう言うと、キドーは通路をてらてらと歩きながら空中に呼びかけていた。
彼なりのネゴシエートということだろう。たまに小さな宝石を取り出したりコインを出したり、酒をちびちび飲んで見せたりしている。
そんなキドーの調べによると、この遺跡は長いあいだ休眠状態にあったが扉が起動したことで眠っていた精霊たちが呼び起こされたということらしい。
同時に休眠中だった悪霊の封印が解かれたり、ゴーレムが動き出したりといった仕掛けも施されているようだ。
「ええっ!? やっぱり悪霊いるの? やだなあ……」
嫌な顔をするアルムを一瞥して、キドーがまたもなにやら交渉を始める。
そしてピンと拳大もあろうかという宝石めいたものを投げてやった。
「交渉成立だ。こいつらの使ってる精霊ダクトを使わせてもらえるらしいぜ。悪霊のすみかをショートカットで回避できる」
「本当!? すごいなあ! ……けど、イイの? あんな大きな宝石」
ぱかっと蓋を開いて身体をねじ込みつつ、キドーはちらりと振り返った。
「ただのガラスだよ。ナイショだぜ?」
キドーの案内で悪霊の住処をショートカットした彼らがたどり着いたのはやや広めの円形の部屋であった。
「あら、ここで行き止まり?」
クアトロは部屋を見回して立ち止まる。
光の精霊によって灯りが灯されており、部屋の中央には台座のようなものがある。
本来通ってくるはずの出入り口は一つだけで、他にはない。
遺物らしきものは、見えない。
「噂に聞くゴーレムも見ていない。どこかに隠し通路があるのでは?」
ブランシュがそう呟くと、クアトロが腕まくりをし始める。
「だったら私の出番ね。ちょっと本気出して調べてみるから、少し時間を頂戴な」
そう言ってクアトロは壁や地面、そして中央の台座を入念に調べ始める。そして天上にランプの明かりを向けたところで、『なるほどね』と呟いた。
「星座だわ。天上に描かれてる星座を正しく配置できなくちゃ、隠し通路が開かないみたい」
「よくそんなものを見つけたね」
文が感心したように言うと、クアトロは壁の一部をコンコンと棒のようなものでノックする。
「隠し通路を見つけるのは得意だって言ったでしょう? それより、星座に関する知識は?」
「大丈夫、あるよ」
文は手帳をぱらぱらと捲ると、そこに書かれた内容と空に描かれた星座の内容を見比べる。一見するとよくある星座を並べただけのように見えるが、知識のある文にはその違いがわかった。つまり、『星がひとつ足りない』のだ。
「これは冬になると現れる星座だね。台座にはそれが映り込むようになってる。けどひとつだけ足りない星があるから、それをうめてあげると……」
文がある台座のある一点に対して細く魔力を注ぎ込むと、ズズズと音をたてて隠し通路が口を開いた。
「あら、ビンゴね」
「まって」
歩き出そうとするクアトロを文は手を掲げて制止する。
「冬の星座が鍵になってこそいるけど、この星座は本来『凶星』……強く光ることで災いが降りかかるとされてる星なんだ。それを鍵にして開くってことは、これはまだ罠かもしれない」
そこで文が取り出したのは燃やすと煙の出る丸薬だ。シュッとマッチをすって火を付けると、煙は扉に吸い込まれると見せかけてその横にある隙間に吸い込まれていくようだった。
「ほら、風の流れができてる。だからここでもう一工夫して……」
文は先ほど流し込んでいた魔力を打ち消すように星を操作する。すると、動いていた扉がまた動作し、真実の隠し通路を出現させた。
「わ、すごい! こんな仕掛けになってたんだ……!」
アルムがわくわくとした顔で通路に顔を近づける。
精霊が灯りを灯し始め、ぽぽぽっと順路が示された。
ついに最奥へとたどり着いた。
そう確信できたのは、広い空間の真ん中に人型のゴーレムが鎮座していたためである。
「これが遺跡をまもるゴーレム……」
ごくりとつばをのむアルム。ゴーレムはまるで侵入者を待ちわびていたかのように目に当たる部分をぎろりと光らせて立ち上がった。
「戦闘は、任せて貰おうか」
スッと前に出るブランシュ。
アルムたちも当然身構えるが、ここはひとまず任せてみようという空気になった。
ブランシュは自らを強化する術を唱えると、四つに分裂した剣型のビットを引き連れてダッシュ。
ゴーレムはそれを殴りつけようと腕をふるった――が、ブランシュはビットを全て相手の腕に叩きつけることで相手の攻撃をゆるめ、その隙に相手の後ろ側へと滑り込んだ。
「タナトスの鎌からは逃げられないんだよ」
パッと手を翳すとビットが合体し大剣へと変化。ブランシュはそれをフルスイングすることでゴーレムを粉砕してしまった。
「わあっ! さすが!」
ぱちぱちと拍手をするアルム。
ブランシュもまたまんざらでもないという様子で剣をしまった。
「さてと、お待ちかねの遺物だけど……」
部屋の奥へと進んでみると、そこには巨大な箱のようなものが置かれていた。
箱はぴったりと地面にくっついていて離れない。開こうとしても開かない。
どうしたものかと思っていると、アルムはローレンス・アーキンから受け取った資料のことを思い出した。
「あ、そうだ!」
アンシエント族は冒険にたけ、その知恵をもってこの遺跡を作り上げた。
遺物を収めるなら、その知恵を試すはずだ。
資料に書いてあった、一族に伝わる『力ある言葉』を口にする。
発音の難しい言葉だったが、アルムは治癒魔法詠唱の応用でどうにかそれを口にすることが出来た。
言葉に応じ、ゆっくりと箱が口を開く。
中に入っていたのは……一体の石像だった。
強い魔力が込められているようで、もちあげてみたアルムにもそれがわかった。
「これがアンシエント族の遺物かあ……持ち帰ったら、ローレンスさんも喜ぶね!」
「考古学的にも価値がありそう。一通り調べたら博物館行きかな」
文が興味深そうに像を眺め、一方のキドーは『これ売ったらいくらになるかな』などと心の中で考えていた。
ブランシュが満足げに頷き、振り返る。
「帰るか。悪霊たちをよけつつ」
「そうね。遺物もこうして手に入ったことだし」
クアトロがくすくすと笑い、カインの顔を見る。
カインも冒険にだいぶ満足したようで、こくりと頷いて歩き出した。
「これでまた、古代の秘密が一つ明らかになった……ってことか。やっぱり、冒険はロマンだね」
違いない、そう仲間たちは返し、アンシエント・リリクス遺跡をあとにするのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
未知なるアンシエント・リリクス遺跡へと入り、沢山の罠や悪霊、ゴーレムたちとの戦いをくぐり抜け古代の遺物を手に入れましょう!
●一口プレイング
あなたの得意分野を教えてください!
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
探索スタイル
あなたはこのダンジョンに対してどのようなスタンスで探索するでしょうか
【1】戦闘に集中する
持ち前の戦闘スキルを駆使して現れるモンスターとの戦いに集中します。
【2】謎解きに挑む
持ち前の非戦スキル等を駆使してダンジョンに仕掛けられたギミックについて考えたり対処したりします。
【3】癒やし枠
休憩できるスペースを見つけて料理を振る舞ったり、ほっこりするようなものを振る舞ったりします。
戦闘スタイル
あなたのバトルスタイルを選択してください。
【1】アタッカー
率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
威力型やBS型など形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
相手にバフをかけたりするジャマー枠もここに含まれます。
【2】ディフェンダー
優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
味方や自分を治癒することで戦線を支えるヒーラー枠もここに含まれます。
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