シナリオ詳細
みじか夜に謳う
オープニング
●← そうだ、どちらの清舟になるか賭けをしよう! →
「ねえ皆、賭けをしない?」
豊穣内で見かける度に声を掛けるから、これで幾度目か解らない酒の席。腹はくちて酒飲みたちにも酔いが回ってきた頃、鯵の干物を箸で突っ付きながら劉・雨泽(p3n000218)がそんな事を口にした。
「賭け、と申しますと?」
物部 支佐手(p3p009422)が尋ね、なめ茸を乗せた大根おろしを口へと運んだ。かぼすを少し絞ってあるのか、さっぱりとして良い。
「賭け事ぉ? 乗ったぁ!」
「まだ内容を言っていないよ」
赤い顔で机と仲睦まじくやっていた嘉六(p3p010174)が勢いよく顔を上げて挙手をして、すかさず雨泽が落ち着いてと宥めた。直ぐ様松元 聖霊(p3p008208)が半眼となった。飲み過ぎ……という程飲んではいないが、勢いよく動けば体によくはない。
「何で賭けるんじゃ?」
ちびちびやっていた唯月 清舟(p3p010224)が問うた。面白ければやってやろうじゃん、くらいの軽い気持ちで。
「清舟」
「はぁ!? 儂!?」
「正確には『清舟が死ぬかどうか』」
「儂の生死!?」
「雨泽……」
流石に聖霊の目がすっと細くなって、まあまあ聞いてと雨泽は手を振った。そんな剣呑な顔をしないで、本当の生死じゃないからさ。
「春にさ、遠津に花見に行った時。僕は清舟に『(女性に対して)清舟のメンタルって桜よりも儚いのかと思ってた』って言ったんだよね。そうしたら清舟がさ」
「おい、表出ろや」
「あ、そうそう。こんな感じだったから僕が『受けて立つよ、遊郭行く?』って言ったら、清舟は『行ったらァ!』って言ったんだ」
「それは何と言うか……」
売り言葉に買い言葉。でもこれは軽率ではと支佐手の視線が清舟へと向かった。
「清舟が遊郭でもシャンとしてたら清舟の勝ち。清舟がおかしくなったり気絶したら僕の勝ち。どちらかに賭けてもらって、負け側に賭けちゃった方が遊郭での飲み代を出すってことで」
どうかなと雨泽が首を傾げた。
「あ。清舟は今更やっぱなしとか男らしくないことは言わないよね?」
「おん? 言うわけ無いが? やったろーじゃん」
「さっすが清舟ー。成長したところを皆に見せて、皆のイメージを塗り替えるチャンスだよ」
「応、まかせとけ! ……ん?」
儂、皆にそんな風に思われてんの? 清舟は他人からの評価が少し気になったのか、首を傾げて聖霊を見た。聖霊は涼しげな顔でふるりと首を振った。それどういう意味? 言葉にして。
「ということで、どう? 賭けない?」
「まあそういうことでしたら」
支佐手が顎を引いた。上手く賭けに勝てばただ酒だし、今日の酒家のような庶民的な食事よりも美味い飯にもありつける。
聖霊の視線は酒瓶を抱えて夢の国に旅立ちそうな嘉六と清舟の間を彷徨った。
「聖霊はあまり賭け事は好きじゃない? でも居てほしいな」
「どうしてだ?」
「僕たちの肝臓のために」
「ああそれは……深刻な問題だな」
目を離したところで無茶をされるよりは、安全なうちに直ぐ側で待ったを掛けれた方がいい。……正直な話、酒クズたちの相手をするのが雨泽は厭なのだ。聖霊が居てくれるだけでだいぶ助かるため、決まりだねと笑って鯵の開きを口へと運んだ。美味しい。
「おいおい、面白ェ話をしてるじゃねえの。俺も一枚噛ませてもらおうか」
「はいは~い! わたしも参加したいです!」
こんな面白いこと、賭けない訳がないだろ?
同じ店内の離れた別の席に居た耀 英司(p3p009524)と澄恋(p3p009412)だ。会計を済ませて帰るところで挨拶に来たら、面白い話が聞こえたらしい。
「勿論、参加者が増えるのは歓迎だよ」
他の人も良かったら、と雨泽は声を掛けたのだった。
- みじか夜に謳う完了
- 美味なる膳と酒を交え、賭け事を。清舟さんと雨泽、どちらが勝つのでしょう?
- GM名壱花
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月18日 22時10分
- 参加人数10/10人
- 相談0日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●即死
清舟が死んだ。
「おま!? せ、せいしゅうううううううう!!」
俺の金が! と直ぐ様『のんべんだらり』嘉六(p3p010174)が大絶叫した。まだ大門前に集合して、本日お世話になる『黒鴇屋』へと向かうべく歩いていたところだ。
「清舟様!? 清舟様はやる時はやる方だと聞いておりましたが!?」
純度100%の気持ちで『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)に賭けた『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)はあまりにも早く意識を失った清舟に心底驚き、『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)は彼女の肩をポンポンと叩いて慰める。
全員の視線の先では嘉六が「起きろ清舟! まだ遊郭にすら入ってねェぞ!」とゆすぶり、「やめろ嘉六。脳を揺らすのは良くない」と『医者の決意』松元 聖霊(p3p008208)が冷静に静止をかけていた。
「クェーサーアナライズで気付けをする間も無かったね……」
「……気付けをしたって、おかしくなったり気絶した時点で負けだけどね」
清舟に賭けるのが彼自身だけになっては賭けとして面白くないだろうと賭けた『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)の呟きに、すかさず劉・雨泽がツッコミを入れる。……それに、気付けをしたとしても彼は幾らでも倒れるだろう。そういうところは別の意味でタフなのだ、彼は。
「……あ~、ごめん。私のせいだね、これ」
ごめんね、と手を合わせて可愛く舌を出して笑ったのは『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。「今日は頑張ろう、清舟くん!」と喝を籠めるために彼の腕にギュッと抱きつき、ぎゅむっと腕に胸を押し付けたのがいけなかった。……でも、そんなに簡単に死ぬなんて思わないじゃん? 成長したって聞いてたし。
嘉六、澄恋、フォルトゥナリア、モカ、そして清舟。この五名が清舟に賭けた者たちだ。ちなみに、一人勝ち出来ると信じていた嘉六は少し驚いた。
「雨泽様!」
「なぁに、澄恋」
ずずいっと澄恋が雨泽に詰め寄った。
「これではあんまりです。あまりにも清舟様がか弱すぎて……桜よりもずっと儚いと言われてしまいます!」
「そうだなぁ。俺たちの口がちょっと滑りまくって、界隈に広がって伝説になってしまうかも知れないな」
「それは英司の口の軽さが悪いし……言いふらさなければいいだけだと思うのだけれど」
「でも、もう少し……」
「そうだよね、僕も彼に箔をつけてあげようと思っていたのだけれど」
チラッと清舟を見た。清舟をガクガク揺さぶっていた嘉六は今聖霊に羽交い締めにされ、モカが清舟に膝枕をしてあげている。随分と幸せそうな顔をで死……寝ている。
「雨泽殿、とりあえず移動しましょう」
清舟殿をおぶりますとモカから預かった『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)の言葉に雨泽は顎を引き、一行は予定通り黒鴇屋へと向かった。
「桜よりも儚すぎるという事実はまあどうしようもないとして、想像以上に儚かったからチャンスを三回にしようと思います」
いいよね? と雨泽が視線を向けるのは、清舟へ賭けなかった者たちだ。
「はい、問題ありません」
「肉がたくさん食めれば大丈夫です!」
賭けのことをよく解っていない『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)が笑顔で頷いて、『同一奇譚』襞々 もつ(p3p007352)も同意する。弱そうだなぁとは思ってはいたけれど、もつとてあんなにも瞬殺されるとは思わなかったようだ。三回なら、耐性がついてそこそこもつのでは? とすら思った。
「わしはまあ、南蛮物を買う予算を確保できるのであれば」
「俺は構わねェよ。その方が場が盛り上がるだろうし、いーんじゃねェの」
三回くらいが良い塩梅ならそれでと支佐手も顎を引き、楽しい場が好きな英司はふたつ返事。
「人煽って賭け事するのマジでどうかと思う」
生真面目な聖霊は真顔でそう口にした。
「そう言うけど、君は僕に賭けたんだね」
詳しい理由を知らない人に語ったところで詮無きことだから、由には触れず。真顔の聖霊に、雨泽はへらりと笑った。
「……俺の金は診療所のためにあるものだ」
賭ける以上、勝つと思う方に賭けるのは当たり前だと聖霊は口にした。例え清舟が友人であろうと、彼が持つ金の多くは延いては患者たちのためのものだ。薬のためや医療設備をよくするために使われるのだから。
「僕、君のそういうところが好きだな」
生真面目で、馬鹿がつくくらいに真っ直ぐで、見ていて好ましい。
「……。そういえば」
「うん?」
「最近倒れたんだってな」
聖霊の目が絶対零度の視線を放ち、雨泽が固まった。
「あ~……あ、そろそろお願いしまーす」
「おい」
冬に風邪で倒れて苦い思いをした記憶のある雨泽は手を叩いて遊女たちを呼び、素早く聖霊から逃げていく。
遊女や禿たちが膳を運び、酒を運び込む。そうして、この日の宴席は始まった。
「そんじゃあまあ清舟の成長を願って、乾杯!」
「かんぱーい!」
「清舟はどうでもいいが美味い酒だ! 乾杯!}
「乾杯です!」
「澄恋は程々にな」
「はーい」
音頭を取った英司が盃を掲げれば、盃や猪口、湯呑が掲げられた。湯呑は酒を飲まない聖霊のものだ。
本日の主役(清舟)はまだ寝ている。ちなみに、モカの膝枕だ。モカの足が痺れたら遊女たちが交代してくれると申し出てくれた。もしかしたら彼のこれまでの人生は、起きていない時の方が女性との接触時間が長いのかもしれない。
「豊穣のお酒も美味しいですね」
「ハンナ殿は深緑出身でしたか?」
あちらの酒は矢張り果物なのだろうかと支佐手が問えば、乾杯の一杯で既に真っ赤なハンナがはいと頷いた。顔は赤いが目はとろりと潤むこと無く、受け答えははっきりとしている。ただ顔に出るタイプなのだろうと支佐手は酒を舐めた。
「……う、うーん。私には少し苦いかもです」
「それでしたらもつ様、果実酒はいかがでしょう? わたしも果実のにしようかと思っていたところです」
「あ。でしたら私も果実にしたいです。豊穣にはどんなものがありますか?」
もつへと澄恋が声を掛ければ、ハンナも飲み慣れた果実酒にしようと手を挙げる。下手に他所で失態をおかしては兄からの小言が飛んでくるの目に見えていた。
「ここらなら桃や杏、梅あたりじゃないか? そうだよな、雨泽」
「うん」
さり気なく澄恋の手元にチェイサー用の水を寄せた英司がそう告げ、雨泽が注文に席を立った。
「おーい、嘉六。飲んでるか?」
「おー、飲んでるぞ」
まあまあ、一杯。清舟の残機がまだ二機あるからか、嘉六は上機嫌で英司から注がれた酒を口にする。安い酒家とは違う上等な酒が喉を滑り落ち、くぅっと唸る。
「清舟はよー、ここぞって時はやる男だと思ってるんだぜ、俺ぁ」
「ああ、俺もそう思うぜ。復活した清舟に期待だな。耐性もついてるだろうし、耐えてくれるだろうよ」
「だよなぁ。わかってんじゃねぇか英司」
機嫌よくわははと笑った嘉六の盃が空く度に英司が注いでいくが、英司自身は水もしっかりと取っている。
「おふたりはイケるクチで?」
嘉六のペースが早いことを見た支佐手が問えば、おう! と嘉六が返して支佐手へ徳利を傾ける。それを謝辞を告げながら両手で受け、支佐手もぐいと飲み干した。
「俺は嘉六よりは強くねぇな」
だから水も飲んでいる、と英司が見せ、なるほど、と支佐手は顎を引いた。
――だがしかし!
嘘である。英司はふたりよりも強い上に、ふたりの酒の進みがもっと早くなってもいいとさえ思っている。酔っ払いが増えたほうが場が盛り上がるからだ。
「英司、あまりふたりに飲ませすぎないでね」
支佐手は旅館で酔い潰れた事があるし、嘉六は刑部邸で酔い潰れている。わぁってるよと手を振って返す英司に、聖霊と雨泽は少し真顔になった。
「もぐ……うーん、肉が味気ないです」
「お肉というか、お魚ですよね?」
全てが肉に見えているらしいもつが首を傾げ、ハンナも杏酒を口にしてから首を傾げた。
豊穣で肉と言えば基本的には鶏肉か魚肉だ。牛や豚を食べる文化は練達の人たちが言うところの明治からのもので、平安~江戸文化の豊穣では開国してから入ってきた文化なため馴染みが薄い。
けれどもここにはもつが美味しそうだと思う人が居る。もつは視線を送ってじゅるりとし、清舟の様子を気にしながらも静かに膳をつついていた聖霊は突然の悪寒に辺りを窺った。
「ハッ」
突然カッと目をカッ開き、清舟が目覚めた。
「儂は何を……そうじゃ、儂は今まで美人な姉ちゃんたちにしなだれ掛かられたり扇で煽られながら、美女が手づから摘んだ葡萄を食べさせてもらい……足元には悔しがる雨泽が」
「全部夢だよ」
「夢ですね……」
「夢だな」
「夢ですの」
「清舟お前ってやつは……」
「清舟さん……」
「うーん、お兄さんは夢の中では女の子に強いタイプなのですか?」
妄想フルスロットルを聞かされた側が悲しくなる。幾つもの同じ言葉が重なり、女性陣からは哀れみの視線を向けられた。だが、清舟の視界には入っていないから、清舟はダメージを負ってはいない。
それよりも。
「む、胸……」
「清舟くん、起きたか? 具合はどう? ごめんな、腕を抱いちて驚かせてしまったりして」
「胸が……しゃべっちょる」
数名が顔を見合わせた。胸は喋らない。
ハッとした清舟は全神経を首周りに集中させた。感じる柔らかな弾力と暖かさ……これは、膝枕だ。
「清舟くん、まだ頭がはっきりしていないか? ごめん、水をもらえるか? うん、ありがと。はい、清舟くん、水だ。ああ飲みづらいかな。キミは口移しの方がいいか?」
ギフトで自在に変えられるモカの胸は、今日は美しい巨乳サイズだ。清舟の頭上で、彼女が動く度にそれが揺れている。清舟の瞳は限界まで見開かれ、それを凝視していた。モカが身を屈めれば胸が近づきてきて、清舟は――
「ふふ、冗談だ。……あれ、清舟くん?」
「にゃははははは! 清舟がまぁた死んでるぜ!」
清舟が二度目の死を迎え、完全に酔っ払い状態の嘉六が大笑い。美味しいお酒で気分の良い彼はきっと既に賭けのことが頭になく、まだ溶けて脱いでないだけマシな状態の彼の手の酒を水へと聖霊は慣れた調子で変えると、清舟の元へと駆けていく。
「脈は……少し早いが正常だ」
「清舟さん……」
清舟をめいっぱいサポートするつもりで居たフォルトゥナリアは眉を下げた。こんなに弱くてはさぽーとする以前の問題だ。もしかしたらフォルトゥナリアに優しくされただけでもあがってしまうかもしれない。
「膝枕は禁止しよう」
雨泽が決断した。清舟が一滴も酒を楽しまず料理も楽しまず、は可哀想だ。
お布団を敷きましょうかと遊女等に声を掛けられたが、それも断る。遊郭で布団で寝かせていたら、目覚めた清舟が何かを想像してすぐに気絶されても困るからだ。
「では座布団を並べますね」
「私も手伝います」
「あっ、危ない!」
澄恋に続いて立ち上がろうとしたもつがふらりとよろめき、フォルトゥナリアが支えた。酒にあまり強くないもつは座っていた方が良いだろう。ハンナが赤い顔で「もつ様のことは私にお任せください」と言うので、フォルトゥナリアはハンナにもつを任せ、澄恋とともに座布団を並べにいった。
「清舟様の身長でしたらこれくらいあればよいでしょうか?」
「足くらいは飛び出てもいいんじゃないか?」
「では、頭の座布団だけ丸めて……と」
「流石はおふたり共、丁度よい塩梅です」
雨泽と二人がかりで清舟の脇と足とを抱えて来た支佐手がそう言って、ふたりが並べてくれた座布団の上に清舟を転がした。
「しかしまあ、上等な座布団ですね。これであれば清舟殿も良い夢が見られることでしょう」
「おまわりさんって何ですか?」
どんなお座敷遊びがあるのかと問われた遊女がお座敷遊び名を唱えていくと、ハンナがそう首を傾げた。
おまわりさんとは、「おまわりさん!」の掛け声でじゃんけんをし、勝った方が3回太鼓を叩いている間に負けた方が1周回り、3回負けたら酒を飲む、という遊びだ。あいことなればリセットされるが、回ってから飲むため酒が回る。
「やってみる? 誰から行く?」
「はーい、わたしやりたいです!」
「それでは私も!」
澄恋が手を挙げ、ハンナも手を挙げた。
「うふふ、手加減なしです。負けませんよぉ」
「望むところです!」
「「おまわりさん!」」
楽しげな掛け声で始まった最初のおまわりさんは、澄恋がよろよろと倒れて英司が支えたところで終えた。最初の一杯で顔が真っ赤になったハンナだが、まだまだ平気そうだ。
「まだいけますよー。挑戦者はいますか?」
「ではハンナ殿、わしのお相手を」
「はい、支佐手さん。それでは……」
「「おまわりさん!」」
「ふたりとも頑張れー!」
程々に楽しむつもりのフォルトゥナリアの声援が響いた。
「ハンナさんってお酒が強いのですね」
強くない自覚のあるもつは、もぐもぐとご飯を食べるのがメインだ。
「えへへ、そうみたいです」
楽しそうにニコニコ笑うハンナは酒のせいで陽気にはなっているようだが、眠たそうにもしない。支佐手は「わしは少し休憩を……」とフラフラと風に辺りに出ていったため、冷たいお絞りと水とを持った雨泽が追いかけている。
ちなみにハンナは支佐手の後、嘉六とも勝負をし……同等に飲んだが、嘉六の姿が崩れていってドクターストップ(聖霊)が入った。酒を飲ませろと絡む嘉六と、コレ以上は駄目だと盃を遠ざけようとする聖霊の姿が、フォルトゥナリアの視線の端に映っている。
「清舟くん、まだ起きないのだろうか」
成長した(らしい)姿が見たいのだがと、モカは強い酒を飲み干した。
「ハッ」
部屋の隅で、清舟が二度目の目覚めを迎えた。
「儂は一体何をして」
「無理をするな」
ガバっと起き上がった清舟に対し、素早く身を寄せた聖霊が具合を見る。嘉六が脱ぎ散らかした服を回収していたところだったから、腕には嘉六の服を抱えたままだ。……当の嘉六は普段しまっている耳も出して溶けきって切っていた。
「記憶ははっきりしているか?」
「……確か大門辺りで……うっ、儂は強くなったはずでは!?」
だって澄恋の友人女性とは歩けたのだ。だから雨泽が強くなったんだねと言ってきて、もっと強いところを見せてぎゃふんと言わせてやる! となったのが今回のあらましだ。
「アレルギーみたいなもんだから無理することは無い」
聖霊が肩をポンと叩いて優しく声を掛けるが、清舟が欲しているのは慰めではない。女性に強くなった自分だ!
「あ。清舟様、お目覚めになったのですね」
「うーん、当たりませ……あ、お兄さんおはようございます」
投扇興に興じていたハンナともつが顔を向けた。もつの瞳はとろんと眠たげだから、扇を投げてもすぐにぽとんと落ちてしまうのだ。丁度えいっと投げたフォルトゥナリアはやったとガッツポーズをしてから清舟を見た。お開きになる前に目覚めてくれて何よりだ。
「結構いい筋なんじゃねぇの……っと」
清舟が起きたため、投扇興を囃していた英司がオッと顔を向けた。
「やっと起きたか、色男。姐さん方、もてなしてやってくれ!」
眠っている清舟に対し、澄恋が遊女たちへ『この殿方、今日を大変楽しみにしていたそうで……たっぷり疲れが癒えるよう是非もてなしてあげてください!』と紹介していたのだ。既に酔い潰れて英司の上着を掛け布団としてすよすよ寝ている澄恋に変わり、英司がけしかけ……労ってくれるよう頼んだ。
「清舟殿! 目覚めましたか!」
明るく笑った支佐手が盃を手に近寄っていく。
「さあ、冷たい水です。これを飲んで気を落ち着けてください」
あれは結構強い酒だなと気付いたが、英司は止めない。面白いし、英司と支佐手の賭け先は雨泽だ。どんな手段でも潰しに行く気がふたりにはあった。
「お、おう……」
何だか皆、儂に優しい……?
支佐手から受け取った盃を煽ると、くらりとした。あれ、これ酒じゃん?
「おっと、間違うて酒を渡してしまいましたかの」
「支佐手……」
ジロ、と睨む聖霊を笑って躱す支佐手もまた酔っている。まあいいじゃないですかと更に清舟へと酒を渡した。
「清舟は強い男だが、酒が入ってたほうが気分もあがるだろ?」
「おう! 女なんてこわかねぇ! かかってこい!!」
「おい、待て。清舟。アレルギーは……」
その意気だと英司が笑えば、遊女たちが清舟を取り囲んだ。その中に、楽しげに笑うモカも紛れ込んでいる。
聖霊は目を伏して額を抑える。こうなったらもう、結末は解り切っていた。
そうして、清舟は三度目の死を迎えたのだった。
ああ、やっぱり――桜よりも儚い。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
選択肢がソロの方がいましたが、他者に絡むプレイングであったためマルチとして扱ってます。
3回に増やしたけれど儚く散ってしまったので……敗者は清舟さんへ賭けた皆さんです。ごちそうさまでした!
清舟さんのこれからに期待してます!
称号出しておきますね!
GMコメント
ごきげんよう壱花です。
お盆時なので相談がいらないライトシナリオを。
両手に清舟さんが出来るTOPにしておきますね。撮影スポットです。
●シナリオについて
このシナリオはライトシナリオです。予約時間を超えると出発します。ほぼアドリブとなり負担が大きいため、お値上げされているのでお気をつけください。
『描写の要望』はPCとしてではなくPLとして書いてくださって大丈夫です。書きやすいように、儚い文字数ちゃんを抱きしめてあげてください。
投票結果と清舟さんの頑張りによってリプレイ内容が変化します。
●清舟さん(p3p010224)
清舟さんが参加していない場合、大門に足を踏み入れた時点で死んでいます。心臓は止まっていないので大丈夫です。
参加した場合、投票先は『自分』になります。勿論自分を信じてますよね。ね!
自分に投票してくれる人を誘っても大丈夫です。負けた場合は一緒に支払いをしてくれる人が増え、勝っても懐は傷みません。いい事づくし。
(誘われた方は裏切っても大丈夫です。)
清舟さんって~、どれくらい女の子に強くなったんですか~?
●劉・雨泽(p3n000218)
場数を踏ませてあげる親切心。成長を見守りたいがゆえの善意。……であって、楽しい! なんて思っていな……いことも、ないです。
美味しくお酒が飲めればオッケー。でも酒には肴が付き物でしょ? 今日の肴は――
●遊郭
以前遊女体験をするために貸し切りをした『黒鴉屋』です。(詳しくは『幕間 戀遊戯』のマスコメを参照ください。)
基本的には大部屋で皆で美味しいご飯食べてお酒飲んでドンチャンします。綺麗なお姉さんがお酌してくれたり遊びに付き合ってくれます。清舟さんの周囲には時間経過でお姉さんが増えていきます。やったね!
ペア参加で『個室希望』と記した場合、ふたりきりでごっこ遊びや食事をしても大丈夫です。
●ご注意
公序良俗に反する事、他の人への迷惑&妨害行為、未成年の飲酒は厳禁です。年齢不明の方は自己申告でお願いします。
直接的な性的な描写もありません。健全オブ健全なシナリオです。
●シナリオの値上げについて
本シナリオでは参加費用が通常時よりも値上げされております。
参加費用の上昇に伴う獲得経験値・GOLDの比率は50RCごとに3割増となります。
例:100RC上昇している場合「基礎経験値(基礎GOLD)」×3割増×2倍=6割増
投票先
お会計までに清舟さんが潰れないかを賭けます。
負けた人たちで支払いは折半です。
【1】清舟
清舟を信じる! 強い子だ! 成長した姿を見せてくれ!
【2】雨泽
清舟? すぐ転がるよ。まあ見ててご覧よ。
酒の強さ
一杯でも酔うとか、ザルです! とか、書いてあると解像度が上がります。
【1】よわよわ
【2】ふつう
【3】つよつよ
【4】飲まない
飲まない!(強い意志)や未成年用
交流
誰かと・ひとりっきりの描写等も可能です。
どの場合でも行動によってはモブNPCが出る場合はあります。
【1】ソロ
広間にはいるけれど、ゆっくり料理を楽しみたい。
【2】ペア
広間で隣り合って座っている。
もしくは『個室希望』をプレイングに記載してふたりっきりでのんびり過ごす。
【3】マルチ
広間で皆でドンチャン。
絡めそうな場合、参加者さんと交流。
雨泽は話しかけると反応します。
【4】NPCと交流
おすすめはしませんが、弊NPCとすごく交流したい方向け。
なるべくふたりきりの描写を心がけますが、他の方の選択によっては難しい場合もあります。
雨泽があなたと同等くらい喋るやつです。
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