PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夏はときめき思い出ひらり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●昼下がり
「つまりですね」
「なにが?」
 はりきっている様子の佐倉・望乃 (p3p010720)に、アレン・ローゼンバーグ (p3p010096)は紅茶片手に返した。気のない素振りに、望乃が肩を落とす。
「なにが、じゃないですよー。意地悪なんだからぁ」
「意地悪したつもりではないけれど……」
「意地悪でしたー!」
「まあまあ」
 フーガ・リリオ (p3p010595)が苦笑いしながら割って入る。午後のお茶の席。アレンの用意した紅茶は、甘い香りで、ついついお砂糖を多めに入れてしまう。星の形の角砂糖を、ゆっくりと紅い海へいれながら、クロエ・ブランシェット (p3p008486)が口を開いた。
「つまりですね、せっかくの水着、お披露目しないのはもったいないです、とね、いいたかったのですよね、望乃さんは」
「そうそう、そうなのです」
「そうですよ。やっぱり水着は着るものですからね。この時期といえば海洋でしょうか。あそこは海の美しさで有名ですし」
「海洋もいいですが、じつはさらにすてきなところへ行く予定なのです」
「すてきなところ?」
 クロエはこくびをかしげた。
 うんうんとうなずいた望乃。
「はい、きっといい思い出になります」
 さらに望乃は、興奮に頬をほてらせ、甘えるように大事な夫の腕を取った。そしてアレンへ向き直る。
「アレンさんも水着、手に入れたんでしょう?」
「え、うん、まあ、ね」
「ですからみなさんで、バカンスにいきましょう? ちょうどよく、シレンツィオリゾートのコンテュール・ビーチチケットが取れたんです!」
「あそこは競争率高いからさ、少し多めに申し込んだんだ。そしたら全部当たっちゃって」
 おいらたちを助けると思っていっしょにいこう?
 フーガの申し出に、アレンはふむと顎を押さえた。
「いってもいいんだけれど、南国だよね」
「はい!」
「僕はヘテロクロミアで、強い日光はすこし苦手なんだ」
 あ、とあなたもケーキを頬張る手を止めた。少し考えてあなたは言った。
 サングラスをかけてみれば?
 アレンは目を丸くした。
「そうか、文明の利器……そういうものもあったね」
 決まりだ。あなたはフーガからシレンツィオいきチケットを受け取った。
 コンテュール・ビーチは、海洋貴族カヌレ・ジェラート・コンテュールの出資によって建設されたプライベートビーチだ。パウダーサンドが自慢で、運が良ければ、夕暮れにグリーンフラッシュも見れるらしい。あなたは旅行の計画を、楽しく立て始めた。
 水着はやっぱり、あれにしようっと。

GMコメント

みどりです! ご指名ありがとうございます!

やること
前半)宝探し
後半)スイカ割り
おまけ)グリーンフラッシュを見る

●宝探しについて
カプセルの中にあなたの宝物をツメツメして、砂浜へ埋めます。
それから海の家でドリンクをいっぱい飲み、水分補給をしてから、宝探しを始めます。探すのは自分以外の人が埋めた宝物です。カンニングはだめですよ?

●スイカ割りについて
立派なスイカを現地調達してきました。
開始前にあなたはぐるぐる回されて三半規管を狂わされます。レインボーしないように気をつけてください。

●おまけについて
これは参加してもしなくてもかまいません。

●注意
・このシナリオでは戦闘はありません。戦闘はありませんが、シレンツィオなので、専用携行品は使えます。
・リプレイで描写がほしい水着があれば、プレイングへURLをお願いします。なければ、プレイングへ直接記入してください。

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 夏はときめき思い出ひらり完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年09月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
※参加確定済み※
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)
茨の棘
※参加確定済み※
秋霖・水愛(p3p010393)
雨に舞う
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
※参加確定済み※
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇
※参加確定済み※
カトルカール(p3p010944)
苦い

リプレイ


 夏というものはすべてがまぶしく見えて、彩りが鮮やかで、世界が一歩近づいてきてくれるような気がする。
 だから『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は夏の思い出をたくさんつくりたかった。練達製のカメラとかいうもので、写真を撮るみたいに、心へ色鮮やかなショットを切り取りたい。その気持ちを表すかのように、彼の水着は大好きな夜空と、ネコのモチーフ。ヘアゴムでくるりと銀に輝く髪をくくれば、夏の日差しが跳ねて踊る。そっとリムの華奢なメガネをかけて、魔術紋によって動くだけの虚ろな瞳を隠す。ぱちぱちとまばたきをして、鏡の中の自分をチェック。
「OK、いい感じ」
 にっこり笑ってみる。感情豊かに。ヨゾラは更衣室から外へ飛び出した。おどろくほど青い空は深く澄んでいて、夏の輝きに満ちている。もこもこした入道雲がヨゾラに手を振っていた。
「おい、帽子つかえ。日傘でもいいぞ」
 いたけだかな愛らしい声に振り向くと、そこには『苦い』カトルカール(p3p010944)がいる。前からここにいましたが? と言わんばかりの態度で、露店の主をやっている。日よけにぴったりの帽子と日傘が行儀よく並んでいた。
「こんなとこまで来て商売? あ、この青い帽子お願い」
「シレンツィオ・リゾートといえばこの僕の出番だからな。あい、650G、まいどあり。商売をする場所の楽しさは定期的に実感しとかないと、質の良いサービスは生み出せないし」
「すごい、職務に前向き、やる気あるぅ。で、どう? 似合ってる、この帽子」
「これ鏡。もうちょっと目深にかぶってみなよ、そうそう、うなじに視線が集まっていい感じ」
「私にもなにか見繕ってくれませんか、帽子屋さん」
 ヨゾラとカトルカールが話し込んでいると、『夢みるフルール・ネージュ』クロエ・ブランシェット(p3p008486)が近づいてきた。豪奢な白い翼が日差しを受けてきらきらと輝いている。フリルの付いた真っ白なビキニは、清楚でいて大人びた魅力を感じさせる。腰からおなかにかけてのなだらかなラインがなんともいえずなまめかしい。シースルーの上着がほっそりとした肢体へからみついていた。
 ほほうこれは、とヨゾラとカトルカールはごくりとつばを飲み、一瞬遅れてカトルカールが商売モードへ入った。
「せっかくのツインリボンを隠すのはもったいないから、日傘のほうがいいんじゃないか? こっちの白一色にフリルのついたやつなんて、水着とシナジーがあっておすすめ」
「ではそれをいただきますね」
 ぱつんと音を立てて日傘を広げたクロエは、沖の方を眺めた。今日の波は適度。泳ぐには絶好調。幾重にもゆらめき光を反射する海面へ視線を投げかけ、クロエはひとりごちる。
「シレンツィオの海もきれいですね~」
「そうだろ、ふふん」
 なぜか胸を張るカトルカールにくすり。クロエは微笑みを返す。
「波の音はいつも何か思い出せそうで、出せないような、不思議があるの……」
 夜ごと立ち現れるあれはなんなのだろう、どこなのだろう。クロエは考えて、すぐにやめた。夜に見る夢を追うには、この浜辺の日差しは強すぎるし、なんといっても。
「夏といえば海なのです!」
 このときめきがとめられないのだから。
「うん、わかるよ!」
 いつのまにか隣に来ていた『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)がきゅっと拳を握る。ライムグリーンにサンイエローが入ったビキニとパレオ。頭のゴーグルには大きな花飾り。ところどころに星型のアクセントをちりばめ、シュシュで彩りを添えている。手にはビーチバレー。遊ぶ準備は万端だ。
「やっぱり夏といえば海だし、海といえば、水着だよね。遊んで良し、泳いで良し、食べて良し、最高だよ」
「熱中症対策は万全にな」
 ほい、とカトルカールが渡したのは、こぶりな麦わら帽子。さっそくそいつをかぶり、ゴーグルを上から装着し直せば弾けんばかりの闊達さ。大きくてくりくりした赤い赤い瞳が印象的だ。
 対象的に青い青いビキニを着ているのは、『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)。深い海の底のような静けさをも伴って、しずしずと歩く足元はすこし大きめのサンダル。これも青いリボンが揺れている。
「みんなの水着も素敵だなぁ、なんだか埋もれちゃいそうだよ。ヨゾラもクロエもフォルトゥナリアも、それぞれ違ってそこがまた味があっていいよね~って」
 持参した大きな麦わら帽子は天然素材。ひまわりがあしらわれている。紅一点ならぬ黄一点。あ、でも、と水愛はつけたした。
「私こう見えても属性は水だから溺れたりはしないから安心してね!」
「そっちの埋もれるなの?」
 苦笑したフォルトゥナリアは『茨の棘』アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)へ目を向けた。ラッシュガードの上からさらに上下を着込んだアレン、備えは完璧だ。サングラスのために美しい色違いの瞳が見えないのがすこしばかり残念だが、アレンにとってシレンツィオの日光は強烈に過ぎる。そこここへちりばめられた、薔薇の紋様が華麗だ。細い手首を彩るブレスレッドの、ターコイズが彼を守るみたいに静かに光っている。
「……日焼け止め使う?」
 開口一番そういったアレンに、フォルトゥナリアは問い返した。
「SPFいくら?」
「50+」
「一番強力なやつだー。肌荒れしちゃわないかな?」
「日焼けって言うけど、要は全身火傷だからね? 僕くらい色素が薄いと、日焼け止めもそれなりのがいるんだ」
「はいはいはい、おにいさんおねえさん、30FPSのもあるよ。気になるPAもカバーしたやつもちゃーんと用意してあるからな」
 さっそく割って入ったカトルカールが差し出す小箱のなかには、シックで上品な日焼け止めがきれいに並べられていた。
「わあ、大人な感じですー」
「ひとつ買おうか? 望乃」
 歓声を上げたのは、横から顔を出した『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)と、その夫、『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)。ビーチパラソルでさりげなく妻を日陰に入れているのはさすがというべきか。黒のスイムウェアと白いフーディーのコントラストが、日に焼けた肌のうえで見事なコントラストを描いている。妻の方はふわふわとした見た目にふさわしい桃色の薔薇に包まれていた。赤い竜の翼を涼しげに薔薇が飾り、太い尻尾へはリボンがまきついている。半透明のパレオがスカートみたいにさらりと揺れた。
「買う?」
 フーガから聞かれた望乃は首を振った。
「こういうのは色鉛筆のセットと同じで、並べてあるからきれいに見えるから、見てるだけでいいです」
「そうか?」
「今なら、まとめ買いで2割引」
「うっ」
 カトルカールの提案に、望乃が小さくうめいて押し黙った。ぷるぷる震えている。
「カトル君は新婚夫婦をいじめなーい」
「いじめてない、商談だ」
 水愛にからかわれても、カトルカールは涼しい顔。が、次のセリフに鼻へしわが寄る。
「で、そのカトル君は、どうして水着じゃないのかな?」
「こ、ここへは、地元魅力再発見に訪れただけで……つまり、出張でしかなく、仕事の一環であって……」
「ふーん? それだけですか?」
 クロエもにやにやしている。カトルカールはぱっと人間形態へ変じた。現れたのは涼しげアオザイ姿、いや、見ろ、心の目で見ろ、下はあのいつものズボンではない。白の海パンだ。
「まあね! そこまで言われたら僕もリゾートへくわわるのもやぶさかじゃないっていうかあ~!」
「もう着てたんですね」
 クロエと水愛はにひひと笑った。


 ドリンク片手に望乃は、確かめるように砂浜を歩いた。まだ厳しい日差しのため、足元はアツアツ。それでもパウダーサンドの感触は心地良い。
「乙女の勘~んっふふふーん、ふふふふーん♪」
 歌いながらそいやと砂浜へ手を突っ込む。とりいだしましたるは……。
「ふふふ、どんな宝物でしょうね。オープンセサミ!」
 ほわっと望乃が驚きの声を上げ、中身を手に取る。長い数珠のようなそれの端っこを持ち、目の前にぶら下げてみた。まろやかな輝きをもつ、宝石が並んでいる。先端には大きな水晶の粒。
「きれい……」
 思わず見とれた望乃に、クロエがあっと声を上げた。
「もう見つかっちゃったです? せっかく海鳥さんにいい隠し場所を教えてもらったと思ったのに」
「クロエさんのものでしたか、これは?」
「お手製サンキャッチャーです。お家が海洋だから、シーグラスとか貝殻を集めるのが趣味なの」
「そうなんですね、大事にしますー!」
 照れ笑いを浮かべたクロエも、新しいカプセルを掘り出した。
「なにかな、でっかいけど……え、枕?」
 驚愕のなかみに「バレたか」とフーガが笑う。
「シェスタの相棒だぜ! あ、新品だから、そこは安心してくれ」
「枕かあ~! これは予想外です。でも気持ちよく眠れそうですね」
 うなずくフーガは、本当の意味でのお宝は埋めていない。愛しの妻や親友からの思い出は、どれも大切すぎるから。
「俺はなにと出会えるんだろう」
 つぶやきつつ砂浜を耕していく。やがてフーガが出会ったのは。
「こいつぁ豪華だ。まさに宝箱だな!」
 あふれでてきたアクセサリの数々。星の飾りのブレスレッド、猫をかたどったまるまるとした翡翠。ターコイズを連ねて、エメラルドを配したネックレス。
「かわいいですねフーガ」
「うん、猫モチーフが多いな。えーともしかして」
「はいっ! 僕のだよ!」
「ヨゾラさんだったのか、なるほど」
 猫好きで知られたヨゾラならではの贈り物だった。
「おいらの親友も猫と呼ばれることが多いんだ。いいものもらった、ありがとう!」
「いえいえ、どーいたしまして」
 さて、とヨゾラも砂浜を歩き出す。
「んー……このあたりがなんとなく猫っぽい」
 え、そういうもの? と、周りが目を丸くする中、ヨゾラは見事カプセルを手にした。
「……本?」
「見つかっちゃった」
 水愛がくすりと笑む。
「私の冒険譚だよ。こっちは初めて集落の外へ出たときの。それはイレギュラーズとしての働き。その紋章は青薔薇隊としての活動」
「いいねえ、わくわくするね。ありがとう読んでみるよ」
「どういたしまして。私はー、んー、見つかるかな?」
 尻尾で砂浜を払い、感触の違う場所を見つけ出す。ここほれワンワンすると、カプセルが出てきた。
「あれ、けっこう大きいな。なんだろう」
 開けてみると、赤珊瑚を配した万華鏡が現れた。
「わっ! すっごいきれいなもの当たっちゃった! もらっていいのかな、これ」
「どうぞどうぞ」
 アレンがうなずく。
「この日のために頑張って用意したんだよ。覗いてよし、眺めてよし、飾ってよし。楽しんでくれるとうれしいな」
「ありがとう、大事にするね!」
「うん、自信作なんだ、ふふふ」
 ほほえみながらおしゃべりしつつ、アレンもまた散策する。
「おや……」
 気になる場所を掘り返すと、カプセルのご降臨。
「へえ、髪飾りだ。星の飾りに星空のリボン、しゃれているね」
「えへへ、アレンさん色白だから、そういうのも似合うかも」
「フォルトゥナリアのかい?」
「そうだよ。お気に入りなんだ。色違いも複数持ってるくらい」
「ふふ、ほんとうに大切にしているんだね」
 言いながらアレンはフードの上から髪飾りをつけてみた。愛らしいデザインが、近寄りがたいくらいスタイリッシュな雰囲気をほんわか中和してくれている。
「似合ってるよ、アレンさん」
「こういう毛色が違うものも偶にはいいものだね。フォルトゥナリアは何を見つけるのかな」
「なんだろう、ワクワクするね」
 広域俯瞰に看破。どんなときでも手は抜かないフォルトゥナリアだ。すぐに違和感のある箇所を見つけ出す。
「ここだあ!」
 掘ってみると、小さなカプセルが出てきた。開けてみるなり……。
「わわっ、こぼれちゃう」
 ざらりと出てきたのは、丁寧に選別されたシーグラスの数々。日差しの下で、まろい輝きを放っている。
「うーん、見つけられちゃったかー」
「カトルカールのなの?」
「うん。そのとおり」
「このオパールみたいなの、なに?」
「それは貝のシーグラス。そっちの大きめのは陶器のシーグラス。レアどころもいれてあげたぞ、ふふん。アクセサリーにでもしてくれ。ちなみにこれは、発見よくできましたで賞の空き瓶。飾るのに使ってくれ」
「わー、品が良い! カトルカールって、目利きうまいのかな? ありがとう~!」
「まあな、漣店長としてはすこしはね」
 僕の出番だな、とカトルカールはあちこち掘り返された砂浜を歩き、すくい取るようにカプセルを見つけ出した。
「貝殻のブレスレッドか」
 望乃がどうでしょうか、と視線で聞いてくる。
「もしかして、手作り?」
「はい」
「良い暗示に魔力がこもってて守護ってくれそうだなと思ったら、望乃の手作りかー。納得」
 さっそく身につけて見るカトルカールは、どこか誇らしげだった。


「てやー!」
 思いっきり振り下ろした木刀は、しかし砂浜をえぐった。目隠しをはずしたフォルトゥナリアが眉をひそめる。
「ええー? 自信あったのに!」
 木刀が叩いたのは、スイカからわずか数センチずれたところ。あとちょっと、おしい。
「こうなたら次の人を思いっきりぐるぐるするね」
「お手柔らかにお願いね……。三半規管が強くないの忘れてた……」
 アレンは目隠しをしながら戦々恐々。
 ぐるぐる回されてふらふらしながらも、果敢に砂浜を行く。が、結果は惨敗。
「……ふむ、意外と悔しいものだね。これは、ぐるぐるしてしまいたくなるのもわかる」
「でしょ?」
「うん」
 フォルトゥナリアとうなずきあったアレンは、次の獲物へ顔を向けた。
「ひゃ、私はぐるぐるする側であってぐるぐるされる側じゃ……」
「「問答無用!」」
「きゃー!」
 水愛のかわいらしい悲鳴が響いた。
「わあ、ふらふらっていうかふわふわ。軽くトリップしたみたい。ここまで来ると逆に楽しい」
 あっちへふらふらこっちへふらふら。よしここだと心に決めて、木刀を振り下ろす。はずれ。
「あははっ、はずれちゃった。楽しいねぇ、楽しいねぇ。楽しいから回しちゃおうねぇ」
「わぁいぐーるぐーるぐーるぐーる……」
 全力で喜んでいるヨゾラを回す一同。
「……ぐーるぐーる、ちょ、うっぷ、めがまわ、うぷっ」
 青い顔でよたよた進んでいくヨゾラ。右だ、いや左だと声が響く中、ざぶんと勢いよく足を突っ込んだ。
「ひゃっ、つめた! なにこれ……あ、海か」
 思わず目隠しをはずすと、青い青い海が見えた。
「外しちゃったけど、まあいいかな」
 こんなにきれいな景色が見れたし。
 ついでフーガがぐるぐる回される。望乃の手で。
「けっこう回しましたけど、だいじょうぶですか? 平気ですかフーガ」
「ハハハッ、日頃昼寝しときゃ三半規管が、鍛えられるんだ!」
「そうなんですね!?」
「たぶんな!」
 フーガはまっすぐに歩いていく。海へ向かって。
「フーガ、そっちは違いますよー!」
「はっ!? なんて!?」
「そっちは違いますー!」
 望乃が一生懸命あいくるしい声を上げた瞬間、フーガは前のめりに転んだ。どぶん。海がフーガを受け止めてくれる。
「フーガ! フーガ!」
「大丈夫だ望乃。平気平気」
「顔真っ青ですよー!?」
 一同でよいこらせとフーガを引っ張り上げる。浜辺で望乃に膝枕してもらいながら、フーガは苦笑い。木刀を手に持つクロエへ、がんばれと声援を送る。
「この間鉄帝の遊園地にいって鍛えてきたんです。三半規管は結構強いですよ」
 ぐるぐるならまかせろと言わんばかりのクロエをカトルカールが回した。
「よーし、いってこいクロエ!」
「はいっ!」
 よろよろ、よたよた。
「がんばれ、そっちじゃない、もっと左、行きすぎ、修正して!」
 カトルカールたちの指示に従いながら、クロエがおもいっきり木刀を振り下ろした。ぽこん。
「当たった!?」
「当たった。割れてないけど」
「そんなあ~」
 目隠しをはずして眉を下げるクロエ。どうにも彼女は非力なので。とはいえ、当たったのは確かだ。カトルカールはうなずくと慣れた手付きでスイカをきれいに切っていく。
「スイカには塩」
「カトル君準備いい」
 いやそれはどうか。いいや、試してみるのもありだ。スイカには塩だろ普通。夏の浜辺が突然、議論会場になった。


 海で泳いだり、ビーチバレーをしたり、ビーチフラッグをやったり、思いつくことはぜんぶやった。夏の日差しは刺すようで、それ以上に目に映る全てを輝かせてくれて、大きな水平線に見とれてみたり。そうしているうちに、少しずつ太陽が沈んでいった。
「こっちこっち」
 カトルカールが練達製カメラを首からぶら下げて先を行く。
「到着、ここが穴場スポットだ。せっかくだし、記念写真をとるぞ」
「望乃はかわいくとってくれよ」
「もうフーガったら」
 遅れてきたふたりがじゃれあってる。みんなで遊んだ思い出を写真に残す。それはとてもすてきなことに違いない。みんなして砂浜に並んで座ることにした。まずは夫婦のフーガと望乃、それから日差しが落ち着いてきて、サングラスをはずしたアレン。隣に続くはフォルトゥナリア。水愛とクロエが並び、隣のヨゾラのために、砂浜へ猫ちゃんを書いてあげている。カトルカールはカメラを設置すると、油断なく暮れていく太陽を睨みつけた。ゆっくり、ゆっくりと太陽が降りてくる。
 あ、とヨゾラがあたりを見回した。
「夕焼けじゃない」
「ほんとうですね、なんだか暗いように思います」
 空に敏感なヨゾラだからこそわかったのか、クロエもうなずいて周りを見る。
「なんだろうね、なにかが起きる前兆みたいでどきどきするよ」
 フォルトゥナリアが水平線へキスする太陽へ釘付けになる。
「望乃、離れるなよ」
「ええ、フーガ」
 胸高鳴らせる二人のまえで、海へ溶けるように太陽が姿を消していく。
 じっと水平線を見つめるカトルカールの前で、太陽はもはや紅茶に入れられた角砂糖のようにとろけてしまっている。完全に沈む直前、皆は見た。緑に光る天体を見た。
 フーガは一瞬我を忘れた。その景色のうつくしさに。手の中へ相棒が落ちてくる。フーガはトランペットを思い切り吹き鳴らした。それを聞いた望乃の瞳には、感極まったように涙が浮かんでいる。
「船乗りでも一生に一度拝めるかわからないらしい」
 撮影を終えたカトルカールが、おだやかな視線で太陽の最後の光を見つめた。水愛の手には真新しい本があった。
「この思い出をギフトに変え、沢山の人と分かち合いたい……」
 そうだねとアレンが首肯し、皆の前へ立った。
「皆、今日はありがとうね。おかげで楽しい一日だったよ。今日という日の出来事が、ずっと残るといいな」
 それぞれにそれぞれの答えを返す皆の顔には、たしかに喜びがあった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!

おまたせしまして、すみません。

またのご利用をお待ちしております!

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