PandoraPartyProject

シナリオ詳細

皆酔っぱらってたんだ、仕方ない。数千万GOLDする壺を割っても。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●皆酔っぱらってたんだ、仕方ない。数千万GOLDする壺を割っても。
 幻想貴族サウェント卿はローレットと繋がりを持たんと画策していた。
 彼らは英雄。世界各地で活躍し、あらゆる動乱を鎮めてきた者達。
 故にこそそんな優秀な彼らを歓待……或いはストレートに言うなら懐柔せんと画策していたのだ――

「さぁさどうぞどうぞ、此処に在るのは全て皆様が為のもの――遠慮なさらず!」

 そんなこんなでサウェント卿に招待されたイレギュラーズ達。
 彼らを待ち受けていたのは豪勢な食事だった! 肉に魚に果物に――それから酒!
 煌めかんばかりの素晴らしいモノが並んでいる。あぁ涎もたれてきそうだ。
 ――だが無論、こんなもので懐柔されるイレギュラーズ達ではない。そもそもローレット自体特定の勢力に寄りすぎない姿勢だ……だから此処で歓待を受けようがサウェント卿のみを優遇するといった事はあり得ない。
 あり得ない、が。
「うぉー旨いッ!!」
「なんだこれは……実に美味な酒だな……!!」
 それはそれとしてイレギュラーズ達は遠慮なく食べさせてもらう事にした! だってそもそもここに招待された事自体、依頼だもん。此処で是非『料理を食べてほしい』という依頼なんだもん。その裏になんらかの意図を含んだものがあるとしても、知った事ではない。
 精々楽しませてもらおう。サウェント卿の意図する様に進むかは知らないが。

 ――そんなこんなで豪勢な食事を楽しんだイレギュラーズ達。

 やや時も過ぎて小休止な状態か――
 時刻も夜に差し掛かっている。お酒で火照った体を夜風で冷やさんとしようか。
 だがそれが悪かった。
 皆、酔っぱらってしまっていた。人によっては泥酔状態の者もいるかもしれない。
 だか、ら。
「あっ」
 うっかりとしていたのだ。イレギュラーズがふらついていたのに加え、周囲が薄暗かったのも多大に影響はあったろう。うっかりと足がよろめいてしまって――『何か』に引っかかったと同時。

 ――金属音が響き渡る。

 え。なんだ? 何か割れた?
 視線を滑らせて見てみれ、ば。
「……あっ」
 割れてた――『壺』が。
 昼になんかサウェント卿が言ってたな。

 『ははは、とても高価な壺だったんですよ。ええ数千万GOLDも――』

「…………」
「…………」
 ……えっ? 割れた、割れ、割れた――?
 時価数千万GOLDともされる壺が――!!
 酔いが醒め始める。いや一部はなんかまだ泥酔してる人もいる気がするが。
 まずい。まずいぞ! さっきの壺が割れた音は相当響いた――!
 もしかしたらすぐにでもサウェント卿が駆けつけてくるかもしれない!
「…………誤魔化せ!」
 その大胆な判断をしたのは――酔いがあったからか、それとも冷静な判断だったか。
 そうだ。今割れたのは誰も見ていない。
 それにサウェント卿はイレギュラーズに好意的な人物だ。何かの意図を含んでいたとしても。だからある程度の言は信じてくれるはずだ……! 例えば侵入者がいて割れてしまったとか、突如として凄い魔物が現れて暴れてて退治したとか!
 何か思いつけ。
 数千万GOLDの弁償はまずい。
 だから、あぁ――!

「全力で、誤魔化すんだ……!!」

 なんでもいいから――この場を全て誤魔化せェ!!

GMコメント

●依頼達成条件
 ――誤魔化せッ!!

●フィールド・シチュエーション
 皆さんは幻想貴族サウェント卿に招待されました。
 豪勢な食事や大量のお酒が出て大変良い気分。ですが……

 酔っていたからでしょうか。うっかりと――壺を、超高価な壺を割ってしまったのです!

 サウェント卿が自慢してました。『ははは、とても高価な壺だったんですよ』と。
 いけません。これはいけません――
 よって誤魔化してください。

 何をどう言い訳しても構いません。例えば侵入者がいたとか、魔物が出現して大激戦を繰り広げていたんだとか……サウェント卿はイレギュラーズに好意的なので、バレなければ大体の事は受け入れてくれるでしょう!
 もののついでに隠蔽工作系などのなにがしかの非戦スキルを活性化していれば、説得力は増すと思います……! 頑張ってください!

●敵(?)戦力
・サウェント卿
 ローレットのイレギュラーズと個人的な繋がりを持たんと画策していた幻想貴族です。
 貴族としては善人とも極悪人とも言い難い、実に『幻想貴族らしい』人物ですがイレギュラーズにはそれなりに好意的です。ですのである程度は荒唐無稽な言も受け入れてくれる事でしょう――!
 えぇいとにかく誤魔化してください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 皆さんのプレイングで全てが決まります――グッドラック!

  • 皆酔っぱらってたんだ、仕方ない。数千万GOLDする壺を割っても。完了
  • ――いやまずい誤魔化せ誤魔化せ!
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2023年08月30日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
ナイアルカナン・V・チェシャール(p3p011026)
気紛れ変化の道化猫

リプレイ


 ――その日。『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は覚悟した。謎のでかい袋を前に。
「はぁ、はぁ」
 動悸が激しい。だけど、やるんだ。やるしかないんだ汰磨羈ィ!
 お前は完璧で究極のねこでタヌキなアライグマ……
 つまり100%たぬき……ちがう、心はねこ……!

「うおおおお――ッ!!」

 彼女は猛り狂う。魂の奥底から。そして――


「おおお落ち着きましょう!
 深呼吸すれば、きっと良い解決策が浮かぶはずでございますわ! 酸素、酸素はきっと万人を救ってくれますわ……! すーーーーはーーーー……よし。先程、主が素晴らしい啓示を下さいましたわ。
 ――人は埋めてしまえば、何も喋れなくなると。
 これぞまさしく神によって許された平等の権利ですわね!」
「はー! 流石はヴァリューシャ、名案だね!!
 じゃあ早速裏山に良さげな場所がないか探してくるね――なんならVDMランド地下労働施設にぶちこんでやるって手段もあるかな、あ、こら離したまえ京君!! ヴァリューシャの未来を護る為に必要な事なんだ!」
「待ちなさい二人共―! それやったら二度と戻れなくなるわよ――!!」
 時は少し遡り。粉々になってしまった壺を前に半ばヤケクソ気味になっているのは『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)だ! 傍にはいつでもヴァリューシャ全肯定・テンション上がって放電状態の『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)もいる……けど。二人の暴挙を『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)が必死に止めんとしているか。
 だってまずいって! マジでそれはまずいから!
 裏家業の人の始末方法じゃん! 何か解決方法はある筈だから落ち着くんだ!
「放して頂戴! 私は、借金まみれで強制労働する羽目になるなんて絶対に嫌でしてよ! マグロ漁船はもうこりごりですわ――!!」
「やっべぇ……これ、ギルド条約で何とかなりませんか……? 無理か? 流石に無理ですか? 数千万GOLDは流石に見捨てられますか……? なんとしても誤魔化すしかありませんね」
「ほろ酔いになってる場合じゃなかったわ――万が一、このことがこの場で終わらずにサヨナキドリにまで波及したら……迷惑がかかったら始末書だけじゃ済まないかもしれない……ぜ、全力で誤魔化すわよ!!」
 騒ぎ立てるヴァレーリヤ。しかし焦っているのは彼女だけではない――『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)や『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)だってそうだ。もう酔いなんて醒めますよこんなのぉ!
 とにかく急げ、手を動かせ。誰かにこの現場を見られる前に!
 ――とかそんな事を考えてたら。
「こ、こここれは一体!!? な、ななななにが、なにがあって……!!」
 案の定サウェント卿が駆けつけてきていた! ひー! 割れた壺に愕然となっている。そりゃそうだよね! と言う訳で見られた以上後は言い訳しかない訳だがどうするか――と、その時。

 \ぽーーーーんぽんぽんぽん☆/

 屋敷中に響き渡る謎の声が生じた。
 な、なんだ一体どこから!? ハッ! 窓の方に何か影が! それは――!
「ふふふ私の名は怪盗アラーイ・タヌキキャット! 時価数千万GOLDもする壺を盗みに来たが――うっかり猫の本能が出て、ついイタズラ全開。ミスって割ってしまったのでスタコラサッサする所だポン! 捕まえられるものなら捕まえてみるぽぉーん☆ まぁ無能な警備兵達でぽんぽこを捕まられるとは思えないけどぽ・ーんッ! ふはははは!」
「サウェント卿、奴こそが此度の犯人! 犯人は猫を自称する狸のようなアライグマ……長いので、以下『たぬきち』と称しますね。とにかくたぬきちが壺を割ったのです――えぇ我々が保証します!」
「そうだよ、これを見て! 壺ににくきゅうの跡が付いてる――このにくきゅうの跡はたぬきちが犯人、いや犯狸で間違いないよ! 猫(自分)の財布も、あのアライグマに盗まれんだ!」
 汰磨羈……いや怪盗アラーイ・タヌキキャットであった! 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)が即座に告げたように長いのでこれ以降はぽんぽこ『たぬきち』と略すが、とにかくたぬきちは見るからに怪しい着ぐるみと共にサウェント卿を挑発していた。おのれ許せねぇたぬきちィ! 奴が犯人なのは間違いなさそうだ。
 なんでかって『気紛れ変化の道化猫』ナイアルカナン・V・チェシャール(p3p011026)の施した証拠偽造――じゃなくて清く正しい調査の結果、たぬきちのモノと思わしき指紋(ぽいの)が検出されたのだ! おのれ許せねぇたぬきちィ!!
「――警備兵、奴を討ち取れェ! 首を取って構わーん!!
 イレギュラーズの皆様方もどうかご協力を……おやそういえば汰磨羈殿はどこへ?」
「さぁ? ど、どこ行ったんだろうねー?」
「そ、そうね汰磨羈ちゃんは……汰磨羈ちゃんはその……そう、さっき怪盗アラーイ・タヌキキャットに気絶させられてしまったの! 卑劣な一撃によって背後から、こう、ガツーン! とされちゃったの! 今は別の所で休んでるのよ!」
「むむむ! 悪逆非道なタヌキめ……許せん!」
 というわけで案の定簡単にブチ切れるサウェント卿。汰磨羈がいない事に気付いたようだが――ナイアルカナンやクアトロは視線切って誤魔化しておいた。どこいったんだろうね、不思議だねーともあれ、やってきた警備兵達がたぬきちを追わんとする、が。
「ふーはははは! 無駄に洗練された無駄の無い無駄なねk……たn……アライグマの動きを捉えられるものなら捉えてみるぽぉん!」
 たぬきちはたぬきちで全力逃亡の最中であった!
 厄狩闘流秘奥『真義三絶』の一を使ってまでの、マジ逃亡。
 あぁ――あまりの熱量に涙が零れちゃう!
 己はねこだと信じながら、たぬきちは駆け抜けるのであった――!


「そうよサウェント卿! あのタヌキよ! あのタヌキが――全部悪いのよ!!」
「ええ私も見たわ……! 怪盗アラーイ・タヌキキャットによって壺が割れちゃった所を――! あぁなんてことでしょう! こんな、こんな悲劇が起こってしまうなんて……!」
 警備兵達が『まてー!』『うわ、凄い跳ぶぞ!』なんて言いながらたぬきちを追いかけている最中――サウェント卿を更に信じさせんと京やクアトロは全力で乗っかった。いやだ。タイムマシンでも探さないといけない羽目になるのは絶対にいやだから――!
「アタシ達はお酒を飲んでいただけなの! なんかタヌキみたいなタマキみたいなネコみたいなのが出てきて割ってったのよ! 『アライグマだぽん!』なんて宣言しながら、ヤツが前脚を滑らせて落っことしていったのよ!」
「そう! その通りですの! 私達がお酒を飲んでいたら突然現れた、タヌキ型の魔物が全て悪いんですのよ! 決して泥の様に酔っぱらった末にうっかりしていた訳ではなくて……げふん! きっとあのタヌキはサウェント卿の命も狙っていたに違いありませんわ!」
「なんと――?! 馬鹿な、タヌキかアライグマ如きが斯様な思惑を……!?」
 そしたらヴァレーリヤも、まだ残ってたワインの酒瓶を背中に隠しながらたぬきち黒幕説を採用していた。迫真の演技にサウェント卿も非常にちょろ……いや信じてくれているようである……! 更に。
「本当に悪い魔物だ! タヌキだ! タヌキだったよ!
 私は見間違えない! あれは紛うことなきタヌキだったね!
 絶対に虎でもなければ猫でもない! タヌキ・イズ・100%だったよ!!」
「いや猫だが??? 猫……あ、ちがう、くそぉ、ぽぽおぽぽぉん!
 その通りだぽーん! 誰もが目を奪われていくアラーイ・タヌキキャットだぽん!」
「ほら自白したよ自白! なんか、こう、あの前足でズバー!! と壺を破壊していったよ!」
 マリアもたぬきちがやったと証言しよう。
 この虎の目で確かに捉えたのだと――あのたぬきちの悪逆非道を――! そうしたらたぬきちも一瞬我に返りそうになるが、不屈の精神で再び己を怪盗アラーイ・タヌキキャットに引き戻す事に成功した。
 はぁはぁ、元より自虐ネタの為に用意せんとしていたこの衣装……! 着る理由がちょっと変わっただけ……! 恐れるな汰磨羈。己は謎の魔物だと信じろ! でなくば騙せぬ――! ザルすぎる警備兵らの追撃を余裕で躱しながら、たぬきちは笑っていた!
「館の外から迷い込んだ猫のイタズラなら可愛いものだけど……これは許せないよね!
 ねこ……そう、ねこなら……ねこのねこぱんちだったなら……!」
 同時。ナイアルカナンも誤魔化しに全力を。
 猫なら仕方ない。だって猫はイタズラをするものなのだから。いや彼らの脳裏にはイタズラという概念すらないか……なんか押してみた、ぐらいなもんだろう。シャドーねこパンチする可愛い猫の姿を脳裏に映しつつ――おっと、それよりも!
「決して酔っ払いが追っかけて壺に突っ込んでったらこうなった訳ではないからね! べろんべろんに酔っぱらってたのが原因とか、そんな事は決してないよ! うんうん!」
「ええ、まさか酔っぱらっていたとは言え皆さんがそんな事を成される筈がありません――つまりあのタヌキが全て悪いのですね!」
「その通りです。しかし――それだけではありません。
 賢明なるサウェント卿は、もうお気づきなのでは?
 『何故たぬきちが壺を盗もうとしたのか』……そこに隠された理由があった事を」
「寛治殿!? それは一体……ハッ、まさか!」
 たぬきちがたぬパンチで警備兵らを圧倒しながら遊んでいれば、今だとばかりに寛治も言を紡ごう。眼鏡の位置を調整しながら、その奥にありし瞳には『お分かりですね?』という意志が込められていて。

「――そう、この壺には呪いが掛けられていたのです。
 飾っておくといずれ家主を呪い殺す狸の魔物が取り憑いていた――呪いが!」

 な、なんだって――!? なんかたぬきちも『え、そうなのか!?』と驚いた顔を見せながら警備兵にたぬキックしてる気がするが、寛治の言は止まらぬ。今こそサウェント卿の心理を疑惑に染め上げるよう!
「恐らくたぬきちの同族でしょう。言うなれば『悪のたぬきち』とでも称しましょうか。きっとたぬきちは其れを知って、サウェント卿を守るために、そして同族の魔物を誅するために、壺を盗もうとしたのでしょう。結果としては悪のたぬきちに抵抗され……壺が割れる事態になったと察されます。」
「そんな。ではあのタヌキは……善良だと!? しかし――たぬきですぞ!?」
「ねk……アライグマだが?」
「あの言はきっと己が全ての罪を背負わんと決めた覚悟の上なのでしょう。壺を毀損したのは、間違いないのですから――しかしたぬきちは人の命を護ったのです」
「ええ、ええ、神は壺よりも人の命こそが尊いと仰っております。
 聖職者も言うかは分かりませんが。しかし――たぬきは言ってもおかしくないでしょう」
「ねk……うぐぐぐぐー!!」
 更にライも、もう半ばヤケクソ気味の心を隠しながら聖職者スマイルを此処に。
 信じろサウェント卿。信じなければもう鉛玉で解決するしかなくなるのだ!
 人一人の命がかかっていますよ、このミッションには……! なんかさっきから所々たぬきちの言が挟まってくる気がしますが、たぬきちはねこじゃないんで気のせいかな。
「この不幸な出来事を神も嘆き、貴方に慈愛の眼差しを向けておられます。
 必ずや、これを補って余りある幸運が神より齎される事でしょう。たぬきのようなねこのアライグマによって生じた、眼前の不運を乗り越えよ、と神は仰せになられているのです(タブン)」
「これも神の啓示だと――? 幸運……もしや私の目的が達されようと……!?」
「ええ、ええ。きっと貴方の望みは神によって叶うことでしょう――」
 もし叶わなかったら苦情は私ではなく神にお願いしますね。
 小声で何か紡ぎながらライは再び聖職者スマイル。優しく敬虔なシスターであると全霊をもって注ぎ込もうか……嘘も方便。人の心を救う事が出来ればそれでいいではないか――他者をいいくるめるあらゆる技能をもってしてサウェント卿の心に侵入すれば、もう彼の心はイレギュラーズが割ったとかいう可能性は排除されていた。やったぜ!
「危なかったね……あのタヌキチ……じゃなく壺に潜んでたタヌキの魔物はきっと君の命も狙っていたね! 数千万GOLDっていう壺の価値を隠れ蓑にしてたんだ! 私の直感はそう言っているよ!」
「命があっただけでも儲けものですわよね――もしも放置していればきっとサウェント卿の魂はタヌキに染め上げられていた事でしょう。危ない所でしたわ……!」
「うむむ……高名なマリア殿やヴァレーリヤ殿もそう言われるのであれば……!
 しかし其方のヴァレーリヤ殿が背負われているその袋は一体?
 なにか端から酒瓶が見える様な……」
「――危ないですわ!」
 刹那。マリアとヴァレーリヤ……というかヴァレーリヤが何か背負ってる事にサウェント卿が気付いた、ので。酒瓶でビンタしてやった。『ぐえー!?』とぶっ飛ばされる、が。
「ふう、戻って来た魔物がほっぺに止まっていましたわね。
 まさかサウェント卿に幻覚を見せるとは……とんでもないタヌキですわ!
 ――念のためもう一発殴っ……治療しておきましょうかね」
「袋? 何の事かな? ……ハッ、さては魔物の呪いか何かに既にやられてるね!?
 かーっ! タヌキチ! ……ではなく! タヌキ魔物! 絶対に許すことはできない! めちゃくちゃにしてやらなきゃ! まぁ勢い余ってサウェント卿をめちゃくちゃにしちゃったけど、仕方ないね!」
 ヴァリューシャが無事ならオールオッケー!☆ だめだこの虎早くなんとかしないと……! たぬきち? アレはいいよ。別にたぬきちだし、捕まっても逃げ出せるだろうし……
「うむ、うぐ、むむむ……い、今の衝撃は一体……」
「――いやあ、サウェント卿は噂ぬ違わぬ人格者ですね。
 たぬきちを無罪放免する事を声高に宣言されるなど!」
「えぇ?!」
「おやどうされました。今なぜか倒れられる前に仰られていたではりませんか!
 事情が事情。呪われていたとはいえ高価な壺を破壊するなど本来極刑は免れない所業だ……ですが事情を鑑み、たぬきちの心を汲むなど只人には出来ません。今すぐ吟遊詩人を呼んで歌に残したい。ちょっと私プロデュースしてきます」
「え、え、えぇえ!?」
 そしたら案の定目敏い寛治が間髪入れず機をモノにする。
 記憶が混濁している間に擦り込むのだ。たぬきち無罪ルートを!
 あぁ事件解決・円満終了! めでたいめでたい!
「このめでたき日を飲まずしてなんとしますか。
 サウェント卿に乾杯しましょう! さぁ皆さんご一緒に、イッキ! イッキ!」
「素晴らしい……今日、とても良くもてなしていただいたことは商人ギルド・サヨナキドリのギルド長に確かに伝えさせていただきますわね。そーれイッキ・イッキ」
「ささ、もう一杯どうぞ……ね? お酒はみんなを救うわ。ヴァレーリヤさん程行くと身の破滅になるけれど。でも少しぐらいなら心を落ち着けてくれるわ――? ね、ねぇサウェント様? さぁもう一杯、もう一杯!」
「サウェント卿も飲もう! そうしよう! どんちゃん騒ぎだ――!」
 勢いでゴリ推そうね! 寛治がワインをサウェント卿へ。続いてクアトロや京も、これがチャンスだとばかりに……サウェント卿の濁った思考の最中に誘惑戦とする……! 色香で騙くらかして全てうやむやにするのだ!
 これが最後の機だとばかりに。ナイアルカナンもその勢いと共にアルコールで懐柔せんとする“ その隙にヴァレーリヤは酒蔵に侵入を果たさんとしつつ、マリアも『さすヴァリーシャ!』と追従しようか。誰かあの二人捕まえて!
(――ハッ。最悪、このままヴァレーリヤさんを売れば万事解決するのでは?)
(――最悪マグロ漁船に皆で乗り込んで稼いで来ましょうかね)
 であれば京の脳裏に仲間を売る選択肢が思いつくものであった。ヴァレーリヤさんなら慣れっこでしょ? 地下鉱山に引っ張られるか、マグロ漁船かは知らないけれど。この状況でなお盗みを働こうとしてるアナタも悪いのよー、うふふのふ。ライも似た様な思考に至りながら、最悪の場合ギャンブルだと……と、その時。
「うぐ、うぐぐぐ~! ま、まて、たぬきちが、にげ~」
「フフフ。そこな貴族よ。私がまた来る時までに、立派な信楽焼を用意しておくといいぽぉん。今のトレンドは信楽焼ぽん。壺なんて時代遅れぽん。時代は常にアップデートされていくと気付くんだぽぉん? ――では!」
 遂に警備兵らを全部ぶちのめして、その気絶した山の上で勝利たぬきポーズ決めてたたぬきちが――脱出した! 怪盗アラーイ・タヌキキャットは闇夜を駆ける。あぁ。
「――何やってんだ私は?」
「ええと、その、可愛いわよ? ピザ食べる?」
「たべる」
 なんかまた正気に戻りかけたがが、やっぱりもう少しだけたぬきちモードでいる事にした。だって正気に戻ったら――まずいもん! 追いかけてきたクアトロと合流し、ヤケクソのピザ喰いタイム。
 なにはともあれ、数千万GOLDする壺が割れた事はなんとかなりそうであった。
 べろんべろん状態のサウェント卿ではもうどうしようもない。
 そもそもこの日の事を正確に覚えてるかどうか――
 此れも全ては怪盗アラーイ・タヌキキャットのおかげ。

 ありがとう怪盗アラーイ・タヌキキャット……!
 さようなら怪盗アラーイ・タヌキキャット……!
 何者だったんだ怪盗アラーイ・タヌキキャット……!!

 ……後日。幻想中央公園のベンチで、サカバンバスピス顔で虚無ってる汰磨羈が発見されたという噂が出るのだが――それはまた別の話であったとか。

「ところである人が酒瓶で誰かを殴ったとして、それは酒瓶がその人を殴ったということになるでしょうか? いいえ違うはずです。誰かを殴ったのは、酒瓶そのものではなく、酒瓶を振り回した人の心だからです。
 つまりですねあの屋敷で起こった全てのなんらかの暴行事件は酔っ払った私達が悪なのではなく、私達にお酒を飲ませたサウェント卿自身だったと考えるべきで……あっあっ、放しなさい! ズルいですわよ、こういうのは連帯責任でしょう!?」
「ヴァリュ~~シャ~~!!」

 なおそれはそれとしてヴァレーリヤの殴打事件はなぜかバレたらしく幻想の留置所にも一時お世話になったんだとか。さすヴァリューシャ……

成否

成功

MVP

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式

状態異常

なし

あとがき

 お待たせしました、ありがとうございました!
 怪盗アラーイ・タヌキキャット……何者だったんだ!!

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