シナリオ詳細
魔法少女になりたくて
オープニング
●憧れたのは
それは幻想貴族の娘ミオが幼き日のことだ。
珍しく父が練達由来のオモチャを買ってきた。それは内部に記録された映像を投射するステッキだった。
映像はある少女達が変身し、協力し、時に喧嘩し、時に涙し、そして手と手を取り合って敵をやっつける映像だった。
魔法のような力を使い戦う少女達。
子供乍らにミオはその少女達に憧れ、いつか自分もそうなりたいと夢見た。
――それから長い年月がたった。
十八の誕生日を迎えてからもうすぐ一年になる。
少女でいられる時代はもう終わってしまう。
「……けど、諦めきれない……。
私は、私は夢を叶えてみせる!!」
たゆまぬ努力の末に、それらしい魔法も身につけた(はず)。
なって見せます! あの憧れの少女達――プリティ★プリンセスに!!
●
「こちら依頼人のミオさん。
今回の依頼は完全にミオさんの自腹によって報酬が支払われる、彼女の趣味趣向によるものだけれど、ローレットとして手を抜かずにお願いね」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が一人の背の小さい少女――ミオを紹介する。ミオは元気に手をあげて、
「ミオと申します! よろしくお願いします! 好きな色は元気な赤です! よろしくお願いします!」
よろしくを二回言ったミオに若干引きつつ話を伺えば、何でも魔法少女になりたいそうだ。
はて、イレギュラーズには自称魔法少女はちらほらと居た気がするが、彼女の求める魔法少女とはなんぞや。
「それはもう、敵をこう殴ったり蹴ったりしつつ最後は魔法でドカーン! とする奴ですよ!」
ああ、そういうのですね。イレギュラーズにいますよそういう人達。
「ええ!? そうなんですか!!」と目を輝かせ身を乗り出すミオを押さえつけながら話を続ける。
「今回は、私が魔物を倒すのをサポートして欲しいのです! こう良い感じに共闘しつつ敵を弱らせて、最後は私の必殺魔法でドカーン! と!」
「要約すると護衛しつつ、敵の止めを彼女に譲るということね。
しっかりと敵を弱らせてどんなに弱い攻撃でもあと一撃で倒せる状態にするのがポイントね。止めをさせない大技なんて白けてしまうもの」
リリィの言葉に、コクコクと首を縦に振るミオ。
なるほど、確かに止めで放った大技ののち敵が生きているというシチュエーションは、大ボスならともかく、普通の雑魚ではどっちらけだ。
しかし、サポートと簡単に言うが、このか細い少女を守りながらというのは中々骨が折れそうだ。
「今回はミオさんの希望もあって巨大敵をターゲットにすることになったわ。
ちょうどバルツァーレク領西部の村に巨人の魔物ヘラオスが三匹現れて暴れているそうでね、その討伐依頼も来ていたのよ」
なるほど、ローレットとしても巨人の討伐も叶えられ報酬が二度美味しいというわけだ。
「三匹とも止めを譲ればいいのか?」
「いえ、私の大技魔法は詠唱に時間が掛かる上に魔力を根こそぎ使うので、一匹にしか使えないと思うのです。
なので、最後の一匹だけ止めを譲ってもらえればと思います!」
ミオがどんな魔法を使うのか、それは後で聞くとして、そう言う話であれば一匹を残してあとは倒してしまっても大丈夫ということか。
巨人も弱い敵ではない以上、戦闘に不慣れに見えるミオを守りながらの戦いは、きっと難しいものになるはずだ。しっかりと準備して挑んだ方が良いだろう。
「ふ、ふふふ……いよいよ叶うんですね。魔法少女になるという夢が……。
大金叩いてお願いして良かった。うふふ、うふふ……」
「そういうのは全部綺麗に終わってから言おうね……」
いよいよ夢が叶うことを想像して、若干、瞳がおかしくなってるミオにどん引きしつつ、イレギュラーズは依頼書を受け取るのだった。
- 魔法少女になりたくて完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年10月23日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●登場! 特異運命プリンセス!
バルツァーレク領西部の村、そこに悪の手が迫る!
「た、助けてー!」
「おらの家が……村が壊されちまうぅー!」
逃げ惑う人々を嘲り笑うように、悪を行使する巨人ヘラオスが咆哮をあげた。
だれか、だれかいないのか――
祈るように頭を垂れた人々。救いを求める悲痛な叫びが天に木霊する。
――その時! 祈りの声に応えて、彼女達がやってきた!
「――お待ちなさい!!」
ヒーローを予感させる可憐な声が響き渡る。
声に反応し動きを止めるヘラオス達。その視線の先には力強い瞳を湛えた戦士達。
ビシッと指を突きつける中央の少女――ミオがまるで怖い物を知らないというように名乗りを上げる。
「夢見る心を忘れない!
空に輝く可憐な一番星! プリティ★ミオ!!」
一分の乱れも無い完璧なポーズを見せるミオの動きは、この日のために寝る間も惜しんで練習した成果だ。
ミオの名乗りに続くように、聖職者風の少女――『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)が名乗りを上げる。
「かしこみかしこみ申し上げます。
魔を払う一陣の風。プリティ★シスター!」
どこからともなく吹く風が樹里の服を良い具合に靡かせる。
並び立つメイド服の女性――『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)手にしたDVDをキラリと輝かせポーズを取る。
「眩い少女の未来の為。
プリティ★メイド、ここに推参です」
実に手慣れた名乗りは、彼女の日々の努力の賜だ。
プリティな流れの中、次は男勝りな彼女が注目される―― 『黒白の傭兵』メル・ラーテ(p3p004228)だ。
フリフリのドレスに顔を赤らめながら、吹っ切れるように名乗りを上げた。
「こ、困ったことは火力で解決!
漲る闘志! プリティ★ラーテル!」
ド級火器を振り回す姿は魔法少女とはかけ離れているように見えるが、今時はそんな個性も魔法少女にはかかせない。バッチリだ。
「村を恐怖に陥れる悪の手先め! この魔法少女軍団が相手だ!」
家屋の屋根に立ち、ビシィと指さすのは『翡翠の霊性』イーディス=フィニー(p3p005419)だ。
ギフトによって性別の入れ替わる彼女(彼)は、今回女性での参加だ。フリフリの輝緑の服に身を包む。しかし、その名乗りはちょっと硬い。
「なに、もっとプリティに? ……マジで?」
案の定の突っ込みに、ヤケっぱちのイーディスが叫んだ。
「輝く緑は深緑の恵み! プリティ★シンデレラ!!」
グッと親指を立てたミオの顔は満足げだ。
プリティシリーズ最後を飾るのは当然この人だ――『原初のプリティ★プリンセス』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)。プリティ★プリンセスへと辿り着いた第一人者のお爺ちゃんがバッチリポーズをとる。
「溢れる元気のプリンセス、プリティ★レッド参上!」
今時の魔法少女はお爺ちゃんだって成れるのです。
集うプリティメンバーの周囲を固める強力な助っ人もいる。
「夜海の歌唄い、ユゥリアリア。
ここに見参致しましたわー」
氷水晶の騎兵槍を掲げる、『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は見事なポーズで強力な助っ人的印象を見せつける。
その場に薔薇の花びらが舞うかのような幻覚を覚える。
音を立てマントを靡かせたその男が現れたからだ。
「私の使命は君たちを導くこと……」
仮面を付けた白タキシードの男一体誰なんだ? 仲間達はその小さな白仮面にちょっぴりほっこり顔だ。
『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)のお約束助っ人もミオには好評だ。
そして、もう一人マント靡かせる謎の男が現れる――『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)だ。悪そうな笑みを湛えている。
「くくく……俺は『悪の秘密結社XXX』参謀ラクリマ・イース!
魔法少女よ、本来お前達達とは敵対する身だが
今回は特別に理由はないが手を貸してやろう! 感謝するがいい!」
たまには敵が手を貸してくれる展開もあるのです。そんな美味しい展開にミオは鼻血を出しそうだ。なお結社は実在します。
全員揃ったところで、最後にグループポージングをしっかり決める。
「平和な村を襲う巨人さん! 悪いことはおやめなさい!」
決め言葉を叫んだミオは、これはもう感無量とばかりにプルプルしている。
お気づきかもしれないが、この一連の名乗りの中、ヘラオス達は律儀に待っていてくれている。彼らは空気を読む魔物なのだ。
そしてしっかりと空気を読んだヘラオス達が、こぞって咆哮をあげた。
戦闘意欲は高まって、瞬間、濃度を高める殺意が場を支配する。
「さあミオちゃん。ここからが本番だよ!」
「う、うん! が、がんばる!!」
魔法少女を夢見る少女の最初で最後の戦いが始まった――
●届け! 想いをこめたリリカルスター☆
魔法少女が立ち向かう巨大な敵。
それは目の前にすると、本当に大きくて、怖くて――思わず眼を閉じてしまいそうになるけれど。
でも、力強い声、暖かな励ます声が勇気をくれる。
目を見開けば、そこには心強い仲間がいてくれるんだ。
ミオはドキドキと高鳴る鼓動を感じながら、今、まさに魔法少女として戦っているのだと、興奮し滾る力をぶつけたいと息巻いた。
その様子は特異運命プリンセス――もといイレギュラーズも感じ取っている。
ミオをサポートするように展開した面々は、巨人達の注意を引くように――ミオを護るように――魔法少女らしい動きを見せる。
決して巨人は弱い相手ではない。
しかし、魔法少女たる彼女達の敵では――きっと――ないのだ。
「さぁプリティな諸君、私に続け――!」
特筆するべき反応を見せる白仮面サンディが、勇敢たる戦いぶりを披露し、周囲の味方を鼓舞する。巨人達を翻弄するように白いマントを靡かせて、放つカードが地面に刺さり注意を引く。
得てして助っ人というのは強いもので、主役達を食べて仕舞うものだが、自分の立ち位置を理解するサンディは、自ら手を出すことは最小限に、優雅に、余裕を持った立ち回りを見せる。
王子様を思わせるサンディの立ち回りに、ミオのテンションも上がっていく。
巨人達の立ち位置を気にしながら戦うのはプリティ★シンデレラ、イーディスだ。
仲間の連携を助ける為に敵をまとめ上げようと位置調整を行っている。
「くっ、この服、結構動きにくいな――!」
着慣れないフリフリの服に身体の動きを持って行かれそうになりながら、巨人へと距離を詰める。
「もうどーにでもなりやがれ! プリティ★エメラルドスマッシュ!」
放たれる衝撃は青だが、なんとなく技名のお蔭が緑にも見える。技名はやっぱり大事なのです。
そうして吹き飛ばされた巨人が二体重なれば、それは大技のチャンスだ。
「夢見る希望が今ここに列をなす、光り輝く道となれ!」
「さぁ、ミオさん! 一緒に力を合わせましょう!」
「レッド! シスター!」
頷くミオが、シスター樹里の手に持つ魔砲杖に手を添えて、力を溜める。
大きく息を吸ったレッドムスティスラーフも準備万端だ。
「いっけー!」
「全力! 全開!!」
ミオの声とともに注入される魔力は、樹里の魔砲杖によって増幅され、いつも以上のエネルギーを伴って巨人へと放たれる。
隣ではムスティスラーフが大きく口から緑の閃光を放っていた。
二条の閃光がイーディスによってまとめられた巨人へと突き進み、轟音を立てて爆発。大きく巨人を揺るがす一撃となる。
「くくく……流石魔法少女。良い攻撃だ」
参謀ラクリマがミオを褒めるように薄く笑う。
爆煙より抜け出た巨人が反撃に迫る。
――突如現れたよく分からないコスプレ集団に手痛い反撃を受けた巨人達は、とにかく力任せに手にした岩の棍棒を振るう。
その一撃は巨大さ故に強力で、戦闘経験を積んだイレギュラーズであっても、油断のできない攻撃だ。
ミオが喰らえば一溜まりもない一撃だが、それをラクリマが身を呈して庇う。
「くっ、なかなかやってくれる――!」
「参謀さん! 大丈夫!?」
わざと必要以上に痛がるラクリマ。それを見たミオが心配する声を上げる。ピンチを演出するラクリマは、しかし強がるように唇をつり上げた。
「くく……これくらいどうということはない。
貴様には最後の大物を倒してもらわねばならんからな」
人の良い悪役を演じるラクリマに、ミオの友情パワーは沸点に到達する。
「足止めは私が行います。
皆さんの方へは向かえないと思って下さい」
巨人達を前に巨大な重狙撃銃を構えるメイド鶫。
「そ、それは――!」
「ああ、この狙撃銃ですか? とてもマジカルでしょう」
主に弾がマジカルだが、まあ細かいことは良いだろう。
鶫が、弾丸を発射して巨人達を牽制する。巨人達が牽制を嫌がり距離を離そうとすれば、狙い澄ました一撃を放つ。足を射貫かれた巨人が、痛みに咆哮を上げた。
急所を狙わないように、しかし巨人達に決して逃げられないように、重い一撃を放つ鶫の働きは、まさにメイドが主人に仕える様に気を遣ったものだ。
お膳立ててくれるその動きは、主役になりたいミオの気持ちを汲み取っているもので、満足感が高いだろう。
「魔法少女ならぬ火砲少女ってか?
まあ、ミオの夢を壊さねーように、てな! 狙い撃つぜ!」
ラーテル、メルのド級火器が咆哮を上げる。
気力を籠められた一弾が、一条の光を伴い流星の如く尾を引いて、巨人達に吸い込まれていく。
火器はステッキ、気力は魔法。実に汗臭そうな雰囲気ながら魔法少女であるこには間違いないのだ。
なによりメルの着るフリフリの魔法少女風ロリータ衣装がすべての印象を覆す。「ちょー似合ってますよ!」とミオも鼻血を押さえるほどだ。
きっとこの戦いを振り返れば恥ずかしさに悶えてしまうけど、今だけは夢見る少女の魔法少女像を守り抜こうと思った。
「ミオさまー。あれが見えますかー?」
助っ人戦士ユゥリアリアが一体の巨人を指さす。
「あれは……他よりちょっと大きい?」
「そうですー。
あれがきっとリーダーに違いありませんわー」
「なら、あれを倒せば!」
「ええー。
ですからー、わたくし達に露払いは任せて、援護をくださませー」
そう言ってユゥリアリアが氷水晶の槍を携え巨人へ向かう。
「援護、援護ね! 任せて!」
反応を上げたユゥリアリアが突撃し、生み出した氷の鎖で巨人の動きを絡め取る。
「たー!」
そこに跳び蹴りを見舞うミオ。同時に樹里の放ったエーテルガトリングが無駄に格好いい効果音となる。それは対したダメージにはならないが、ユゥリアリアは巨人のよろめかせるように引っ張って、演出する。
「援護助かりますわー」
「う、うん!」
盛り上げてくれるユゥリアリアのおかげで、ミオの気持ちが高まっていった。
こうして、イレギュラーズはミオを盛り立てながら、そしてミオを護りながら巨人達にダメージを与えていった。
当然ながら、巨人達は死に物ぐるいで反撃を行ってくる。
その岩をも砕く一撃に、仲間達が傷付き、ミオも巻き込まれ泥まみれになることもあった。
「負けない、私は魔法少女なんだから――!」
ミオが傷付いた身体を起こし立ち上がる。ラクリマのさりげない回復が傷を癒やし、もう一度戦う力を与える。
「くくく……それでこそ俺のライバル!
さぁ、奴等も残すはリーダーのみ、いくぞ!」
ラクリマの言葉通り、巨人はイレギュラーズとミオの攻撃によって二体を倒し、残すは一際大きいリーダーのみとなっていた。
巨人が力任せに岩の棍棒を振るう。乱暴なその暴力は嵐のように巻き起こる。
その一撃に次々と仲間達が飛ばされて、そして力尽き膝を折る。
「ああ!? みんな!!」
ミオが悲痛な声を上げる。自分を護る為に倒れた仲間。絶体絶命のピンチにしかし、イレギュラーズ笑みさえ湛えて立ち上がる――パンドラの輝きが目映く溢れた。
「心配すんなよ。オレ達は――」
「そう、私達は――」
「魔法少女なのだから!」
そう、魔法少女は立ち上がる。人々の未来を守るため、奇跡を纏って戦うのだ!
「みんな後少しだよ、頑張ろう!」
ムスティスラーフが仲間に活を与えながら飛行し、告死たる一閃を巨人へと繰り出していく。
「さあ、最後の仕上げだ!
ミオ、魔力を高めるんだ!」
不殺を心がけながら巨人の体力を削るサンディが声を上げる。
「魔力を高める……う、うんやってみる!」
そして、ミオは自身が扱える最強魔法の詠唱を開始する。
「邪魔はさせません」
手足を撃ち抜き敵を釘付けにする鶫の一撃に、巨人が大きく咆哮あげる。敵の体力を良く見越して、敢えて顔を掠めるように弾丸を放ち、身動きが取れないように巨人を揺さぶった。
「勝利への道程をこじ開けろ! プリティ★ホーリークラッシュッ!」
放たれる光が、巨人の体力を見る見る削っていく。ニヤリと笑ったイーディスがミオへと親指を立て、下へと回した。
「今だミオ! 俺の分までブチかませ!」
「わたくしが抑え込めているうちに、トドメを!」
ユゥリアリアも巨人を拘束するように、氷の鎖を絡ませる。ギリギリと縛り上げる鎖の中で巨人が暴れ回る。
「俺の最後の魔力お前に託す!」
ラクリマが魔力を迸らせ、白く優しい幻の雪を生み出すとミオへと力を託す。力を与えた感じで、ばたーんと倒れたラクリマに「ぷっ」とちょっとミオが噴き出した。
鶫の体力調整が、終了する。これ以上は倒してしまうだろうと、武器を収めた。
「お膳立ては完了致しました。あとは、ミオお嬢様次第」
スカートを軽く摘まんで、礼をする姿は、実に瀟洒なメイドだ。
「ミオ! 一気にキメるぜ?」
「うん!!」
メルが武器を構える。魔力を高めたミオが元気に頷いた。
ミオの手を握る樹里が、一つ頷く。今度は皆の力を籠めてその力を放つのだと。
樹里の口から祝詞が零れ出す。
「――かしこみかしこみ申し上げます。
――少女の祈りを込めて。遍く望む、我ら魔法少女の奇蹟。思い描く軌跡。
尽くを染め上げましょう!」
「いくぜ――マジカル(物理)★シューテングスター!」
「届いて、私の想い! リリカル★スター!!」
イレギュラーズの力を借りて、放たれた小さな小さな星屑が、虹色の極小の奇跡の尾を引いて巨人の胸を穿って抜ける。
オォォォ――!!
身体を包み込む魔力の激流に巨人が一際大きな断末魔の咆哮をあげて、そしてコミカルな爆風を生み出すと同時に倒れ絶命した。
「や、やった――!」
全身の魔力を失い、倒れそうになる身体を支えながら、ミオが小さく叫んだ。
「さあミオちゃん、勝利を決めたらどうするんだっけ?」
ムスティスラーフが右手を上げながら微笑む。
「う、うん、勝利の後は――!」
パァン! と熱を帯びたハイタッチ。そして――
「せーの!」
みんなで決めた勝利のポーズをきゃるん★と決める!(男性も)
やりきった、その充実感がミオの心を満たしていて――
パチパチパチと、戦いを見守っていた村人達から拍手が――そして歓声が沸き上がった。
嗚呼そうか――私はこの村を救い、人々を救えたのだと、心が熱く、天へと昇るかのような高揚感をミオは覚えるのだった。
●夢はいつまでも
「最後の一撃-。素晴らしい一撃でしたわー」
ユゥリアリアの言葉にミオが顔を赤らめて笑う。
「どうでしょう。良い思い出になりましたか?」
「う、うん。とっても……本当に大切な想い出になりました!」
鶫の問いかけに、ミオは本当に嬉しそうに答える。
「へっ、まあ俺達も楽しかったしな。
特に二人は楽しめたんじゃないか?」
サンディの視線の先にはイーディスとメルの姿がある。
「もう、二度とやらねーからな……!?」
そういうイーディスはなぜか可愛いポーズをとる。まだ魔法少女が抜けきっていないようだ。
「くくく…ラーテルは実に魔法少女っぽくなかったな」
まだ悪の参謀口調の抜けきらないラクリマに言われたメルが鼻を慣らす。
「いいんだよ、あれで。
だって魔法少女だって色んなキャラがいるモンだろ?」
「ふふふ、そうだね。元気があれば何だって出来る。
お爺ちゃんでも魔法少女になれちゃうんだからね」
大事なのは諦めない心だとムスティスラーフが言う。
「諦めない心……そうですよね」
「……そもそもの問題として。乙女は永遠に乙女なのです。
その心が輝く限り、老若男女問わず、たとえプリティ★プリンセスに成れずとも……私達はずっと『魔法少女』、ですよ?」
心の輝きこそが魔法少女を魔法少女たらしめるのだという樹里の言葉に、ミオは一つ頷いて。
「うん、年齢とか、身体の大きさとか、そういうことじゃないんですね!
魔法少女でありたい、それさえ忘れなければ、いつだって魔法少女になれるんだ!
そう、私はいつだって……魔法少女に……うふ、うふふ」
依頼を受けたときのような若干危ない眼に変わったミオに一行が笑って。
一人の少女の夢は叶い、ここに新たな魔法少女を生み出した。
きっと、これから先もこの少女は自らを魔法少女と名乗りながら、魔法少女としての生き様を選択することだろう。
それはきっと、小さな小さな奇跡を起こす虹の星屑を生み出して、人々を救うに違いないのだ。
その時を、イレギュラーズは楽しみにすることにした――
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
皆さんの魔法少女を夢見る少女をサポートする姿、とてもよかったです。
戦闘中は皆変身後の名前で呼び合いながら戦ってたと思うと――節操ないメンバーでちょっと面白いですね(名乗りがなかった人は勝手にそれらしい変身ネームをつけました)
パンドラ復活者がもう一人少なかったら結構危なかったかもしれません。
MVPはお爺ちゃんでも魔法少女になれるのだと体現してくれた、ムスティスラーフさんに差し上げます。まさかお爺ちゃんが原初のプリティ★プリンセスだなんて、これにはミオも驚きです。
候補が多くて悩みましたが、相談にも顔をだし、決めポーズを決めた本当は可愛い物好きなメルさんに称号をお送りします。少女に年齢なんて関係ないのです。
依頼お疲れ様でした!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
憧れを現実に?
無理矢理な気もしますが少女でいられる時は限られていますからね。
プリティ★プリンセスの罪は重い。
●依頼達成条件
ミオが魔法少女として活躍する(最後の止めは私に任せて!)
■失敗条件
ミオが魔法少女として活躍できなかった
●情報確度
情報確度はAです。
想定外の事態は起こりません。
●依頼について
魔法少女に憧れるミオを盛り立ててください。
かっこよく庇ったり、同時攻撃をしてみたり、アシストからの連携を促してみたり。
とにかくミオが憧れた魔法少女の戦いを演出しましょう。
ただしミオは普通の女の子なので、性急なパスは上手く受け取ることが難しいでしょう。
ミオの動きに合わせたバトン渡しが必要になるはずです。
また止めを譲る為の体力調整は、『不殺』を持たなくとも可能です。しっかりとプレイングで不殺を心がけましょう。
但し、相手の体力の底はわかりませんので、『不殺』なしの場合、徐々に攻撃が弱くなっていくことに注意してください。
●ミオについて
貴族の娘。で、ありながらプリティ★プリンセスに魅了されて魔法少女を目指した少女。もうすぐ十九歳で少女といえなくなりそうで焦っています。
クラス:プリティ★プリンセスもどき
『コスプレも済んでます!』
エスプリ:元気で冷静でよく食べる白
『まぜるな危険』
以下のスキルをそれっぽい良さそうな場面で使います。
・ダイナマイトキックのような飛び蹴り(爆発しません)
・ほんのり痛そうな魔砲(破滅的な弱さです)
・リリカルスターっぽいなにか(一日一回限定)
・妹力(本物)
●巨人ヘラオスについて
群れからはぐれた巨人が三体、村で暴れています。
体長六メートルほどで、手にした岩の棍棒を振るいます。
動きは鈍いですが、体力があり、防御力が高いです。
油断すると手痛いダメージをもらうので注意しましょう。手を抜けるほど甘い相手ではありません。
●戦闘地域
バルツァーレク領西部の村になります。
時刻は九時まで。
いくつか壊れた家屋がありますが、概ね戦闘に影響はでないでしょう。
壊れた家屋は障害物として利用できなくはありませんが、あまり効果的ではないでしょう。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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