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シナリオ詳細

<アンゲリオンの跫音>雷鳴の鳴る中に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<アンゲリオンの跫音>雷鳴の鳴る中に
 天義の巨大都市『テセラ・二バス』に漆黒の帳が落ちてから、数ヶ月が経過。
 遂行者のばら撒きし『聖遺物』から生まれ出ずる、リンバス・シティの先にありし『神の国』。
 様々な聖遺物から生み出されたかの国は、天義だけに治まらず世界各国に似た光景を描き出してきた。
 更には各国に気付かぬ内にばら撒かれた『触媒』もまた、各国に少なからずの影響を与えていた。
 勿論イレギュラーズ達の活躍によりて、その脅威は何とか抑える事が出来ており、その影響は収まりつつあった。
 だが……しかし、そんな状況において、新たなる動きが密かに動く。
 天義近郊の草原地帯に、前触れも無く突如降り注いだのは雷鳴と大雨。
 その雷鳴の下でくすりと微笑むのは、背丈の余り高くない……小柄な影。
『ふふふ……あー、いい天気だねぇ…………やっぱりここの方が居心地がいいってことなのかもねぇー』
 くすりと笑う彼女の頭には、うっすらと鈍く煌めき続ける『翼』の紋様。
 そして空の雷鳴と呼応するかの様にそれは瞬き……そしてその雷鳴の中には、漆黒の影に包まれた、双翼の影。
 まるでその姿は天使の様だが……その影は雷鳴をモノともしない。
 更にその周りには、双塔の大砲や高射砲の様な『武器の影』を持った人影達も生まれる。
 そしてそれら影の軍勢は……後方で笑う『翼』の影より。
『さぁ、それじゃいこうか。そろそろ頃合いだろうし、ね……ふふふ』
 何処か嬉しそうな影の指示を受け、天義首都に向けて進軍を開始するのであった。


「皆さん……大変です……!」
 天義首都にて、切迫した表情で訴える『深緑の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)。
 慌てているのも当然の事……つい今さっきに、この天義首都『聖都フォン・ルーベルグ』の周囲が突如闇の帳に包まれる。。
 そして闇の中から影に包まれた人、獣……更には戦艦装備の様なモノを装着した影が姿を表し、この地へと進軍を開始し始めたのだ。
「突然の事で、情報も余り纏まっては居ませんが……恐らく『遂行者』達の進軍でしょう。皆様のご尽力のおかげで『神の国』や『聖痕』の事件は解決されており……それを快く思わずに、攻勢に転じてきたのだ思われます……」
「一部は既に、この首都に入り込んでいる可能性もあります。ですが……外殻の主力部隊を放置していては、それらが加勢する事にも繋がりかねません……皆様の力で、闇の軍勢の構成をどうにかして止めてきていただきたいのです……宜しくお願い致します……」
 突如訪れた、聖都フォン・ルーベルグの危機。
 雷鳴轟きし戦場は危険なのは間違い無い。
 しかしここで退けば、遂行者達の大きな次の一手になるのはまず間違い無いだろう。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 遂行者達がどうやら動き始めたようですね……聖都も危機に瀕してしまっているようで、皆様の力が必要です。

 ●成功条件
  遂行者の率いる、『聖都フォン・ルーベルグ』の近くの雷鳴轟く戦場で、大量の敵の討伐作戦を遂行する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   今回舞台となるのは雷鳴轟く街の郊外の草原地帯です。
   草原地帯なので広く拡がる平地帯ですし、草木も背丈が高いのは殆ど生えていない為視界を遮ることはありません。
   とは言え空は闇の帳に包まれており、昼間であっても真っ暗な状態です。
   ライト等ないと、R3位までぼんやりとしか見えず、それ以上先は殆ど見えない状態になります。
   又、雷鳴が常に轟き、落ちています。
   常に足元は濡れておりそこに雷鳴が落ちればその雷鳴が伝わり、戦場全体に『痺れ』効果が付与されますので、ご注意下さい。
   (敵は痺れ効果を無効化する能力を持っているのか、効果は現れません)

 ●討伐目標
 ・ヒトガタ、更には翼を生やした『影の天使』
   姿形は『人』ですが、双翼の影の翼を生やしており『天使の様な姿』をした者達です。
   今迄皆様も出逢ってきているのと大差は無く、常に浮遊状態で縦横無尽に戦場を駆け巡りて攻撃、更には魔法も使用します。
   魔法自体は氷、炎の二属性で、それら攻撃が当たるとそのBSも付与されるのでご注意下さい。
 
 ・艦隊装備を伴ったヒトガタの『影の艦隊』
   概形だけでいえば『人』であるのは変わりませんが、影の天使に対し『砲撃装備』を備えている影の者達です。
   こいつらは攻撃能力がかなり高い様です。
   ただその攻撃は『大砲巨艦主義』の如く単体攻撃が主で、範囲攻撃を持つのはごく少数です。
   影の天使に比べれば体力は一回りほど多く、影の天使と合同の隊列を組んで攻防を行い、後方にいる『遂行者』を守る隊列を取ります。
   この隊列を上空から回避しようものなら、高射砲の格好の的になりますのでご注意下さい。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <アンゲリオンの跫音>雷鳴の鳴る中に完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

雨紅(p3p008287)
愛星
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
陰房・一嘉(p3p010848)
特異運命座標
多次元世界 観測端末(p3p010858)
観測中
アリカ(p3p011038)
お菓子の魔法使い

リプレイ

●闇再来
 天義首都『聖都フォン・ルーベルグ』に突如襲い掛かる闇の帳。
 そんな漆黒の闇の中から現れたのは、影に包まれたヒトガタやら獣、更には戦艦装備の様な物を装備した、影の軍勢。
 更にはその帳の下では雷鳴が鳴り響き、視界不良に雷鳴に撃たれる心配すらあると言う……かなり危険な状況。
「恵みの雨……稲妻であれば好ましくも思えるのですが……これは、そうは見られないですね。自然のものではなく、敵意でもって放たれるのは破壊でしかありません」
 と『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)がは空を見上げ、ぽつりと零す。
 そんな悪天候の下、突如現れたその影の軍勢はフォン・ルーベルグに向けて戦線を引き揚げてきており、時間的余裕も無く。
「とうとう攻めてきたな、遂行者達! しかもこんなに雷を轟かせて……まさに天の怒りとでも言うべきか」
 と『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が首を傾げると、それに『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)と『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)、『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)が。
「そうだな。いよいよ本格的に動き出してきたところ、かな?」
「エエ。敵ノ軍勢モ、今迄ニ無イ規模デアルトイウ情報ガ入ッテイマス。大量ノ敵ノ討伐デスカ」
「そういう事になるな。今回敵の総数が不明だ。流石に百も居ないとは思いたい所だが、五十はあり得るかもしれんな」
「ソウデスネ。個々ノ質ハトモカクトシテ、自軍ト敵戦力ノ人数比的ニ当端末デ支エ切レルノカ? 正直、不安デハアリマス」
 流石に今迄様々な事象を観測してきていたとしても、不安を覚える程に今回の敵の軍勢が強敵揃い、かつその敵数が不詳である事に不安を抱かざるを得ない。
 とは言え今回敵軍勢は、最早『聖都フォン・ルーベルグ』の間近まで迫っている訳で……体勢を整える暇もない。
「確かに拠点に戦力を大量投入する今回の様な物量作戦……これは力押ししか手が無いのか、何か別の物に目を向けさせない為なのだろうか?」
 と『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が彼らの思惑を考える。
 ……確かに突如として敵の大軍勢が現れたとなれば、そちらに手を裂くのは必然。
 しかしながら、それが敵の思惑通りだとしたら……。
「まぁ、とは言えここまでわかりやすく攻めに来たのは、それはそれでやりやすいけどね」
「ああ、そうだな。無理な力押しは避け、皆と密に連携してやるしかないだろう」
 雲雀、一嘉、そしてオニキスも。
「そうだね。どんな狙いであろうと聖都にはこれ以上近づけさせない。どれだけ数を揃えてこようが、ここで殲滅するよ」
 聖都フォン・ルーベルグに、彼らを到達させる訳にはいかない……そんな強い意識と共にイレギュラーズ達は、雷鳴轟く戦場へと足を踏み入れた。

●雷鳴轟く
 響きわたる雷鳴と、空に渡る漆黒の闇雲。
 薄暗い空間を、ザッ、ザッ……と歩を進める敵軍勢の群れは、かなり数が多いと分かる。
 更にその先陣に続き、後方には『人型』の影に『砲撃装備』を備えた異質なる者達が揃い踏み。
「うわぁ……戦艦? と言うのですか? 初めて見るものなので良く分かりませんが、なんか強そう! と言うのは良く分かります!」
 目を大きく開けて声を上げる『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)の言うが通り、砲撃装備を備えた影の軍勢は……明らかに前線を張るヒトガタの影の天使達に比べて戦闘能力が高そうに見える。
 更にアリカは周りを見渡し、雷鳴の空を見上げて。
「お昼なのにこんなに暗い……どういう事なんでしょう! お先真っ暗ってことですか! 雷もたくさん鳴っていますし……こんなところ、いつまでもいたくないです!!」
 ちょっと我儘な言葉が零れるアリカに、『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は。
「確かに不気味な雲のせいで暗い。だが、これで少しはマシになるだろう……お前も使うといい」
 と昴はアリカに暗闇でも視界を確保するポーションを渡す。
 それをごくりと呑んで、殆どない視界から少しばかりの光明を確保。
 更に昴は。
「雷はあるが、それは無視していいだろう。元から私は弱い。そこに『感電』したとしても、大差は無いからな」
「そ、そうなのですか? まぁ、そうですね! ぱぱっと敵さんを倒して仕舞いましょう! 魔法の呪文『ナルハヤデ』です!」
 えいえいおー、と拳を振り上げるアリカ……その声に呼応して……という訳ではないが、影の軍勢達は更に歩を進めてくる。
 感情の無い彼らの動きは不気味かつ、躊躇することは無い。
 ……そんな彼らに向けて沙耶は威風堂々と。
「本当に天の怒りを買っているのは、君達の方だと知るがいい! さぁ、行くぞ皆!」
 沙耶の戦線布告と共に、イレギュラーズ達は敵陣へと間合いを詰める。
 無論相手方は、そんなイレギュラーズ達の襲来を即座に察知し、先ず先陣を切って前に詰め行くは『ヒトガタ』の影の天使達。
 彼らは漆黒の翼をはためかせると共に、空に手を掲げると……呼応するかの如く空から濡れた地面に雷鳴が轟き落ちる。
 そして濡れた地面を伝わり、イレギュラーズ達の脚元にも雷鳴の痺れが及ぶ。
「っ……いえ、負けられません」
 その攻撃を、唇を噛みしめて耐える雨紅。
 雷鳴を者ともしない魔石にてその攻撃に耐えつつも、この薄暗闇の中で敵の位置を明らかにするために、己を光に包む事で視界を確保。
「舞台には照明も必要ですからね……さぁ、皆様……参りましょう」
 そう仲間達を鼓舞するように告げつつ、雨紅は敵陣へと先陣を切りて斬り込んでいく。
 そして、彼女の光を灯台として、更に昴、一嘉の二人も影の天使の先陣へと切り込み、攻撃を始める。
 ……勿論、そんな三人に対して、後陣から狙いを定めるは『影の艦隊』達。
 影の天使を盾にしながらも、イレギュラーズ達の攻撃が届かない遠距離からの砲撃を開始。
「届かない所から攻撃するだなんて、酷いのです!」
 とアリカが非難の言葉を口にするも、当然影の艦隊達は気に掛ける訳も無い。
 そして。
「後方からちょこまかと……厄介にもほどが有るな」
「そうだね。でも今は耐え時……突破口を見つけるまでは、ね」
 沙耶にオニキスは頷きつつ、二人は戦場を広く見渡し、敵の配置をつぶさに観察。
 それを邪魔と言わんばかりに影の天使と影の艦隊両方から攻撃の矛先は向けられる……しかしそれには。
「させないよ」
 と、気配を潜ませていた雲雀が突如姿を表し、撃ち落とすべく反撃。
 又、喰らったダメージを観測端末がつぶさに観察し、即座に回復し、最後にアリカは。
「皆さんの足を引っ張るのは嫌です、だから精一杯頑張るのです!!」
 と覚悟を決めた表情で、届く範囲の敵を対象に魔力を力に買えた一撃を叩き込む。
 そこまで大きなダメージにはならないものの、アリカも厄介名奴だ……と闇の軍勢には思われたようで……彼らの攻撃ターゲットは彼女も狙いに定める事に。
 ……勿論集中砲火を受ければ、此処に居る誰であろうとひとたまりも無いだろう。
 その中でも、狙いやすそうな彼女を狙おうとするのは、悪知恵が働くのか、それとも……賢い作戦を立てる者が居るのだろうか。
「……させるか」
 そんな敵の攻撃の射線を塞ぐように昴と一嘉が立ち塞がっていく。
 邪魔するなと言わんばかりに、艦隊と天使の両面から放たれる一斉掃射。
 強靱な身体をもってしても、一気に体力が削られて行く。
「危険領域。回復ヲ」
 雷撃を逃れつつ、回復に専念する回復端末と、雲雀。
 先ずは敵の様子を伺いつつ、本来の狙いである影の艦隊への活路を切り拓くが為に、戦場を駆けるイレギュラーズ。
 暗闇の中ではあるが、敵の動きをつぶさに観察しつつ、手薄と思われる所を指示することで、該当箇所に攻撃を集中させる事で、艦隊への活路を切り拓こうと、傷を負いながらも奮起。
 そして、戦闘開始から十数分経過した頃。
『……っ……』
 声も上げずに消え失せる数匹の影の天使達。
「左側、今ガ好機」
 一瞬手薄になった一角を見逃さずに、即座に観測端末が仲間達に共有すると、昴が。
「分かった……行くぞ、乗れ」
 短く告げると共に、連れてきて居たドレイクの手綱を握り、その僅かなる隙の合間に一嘉、沙耶達と共に突撃。
 影の天使達がその動きに素早く対応は満足には出来ず、易々通す事になる。
 とはいえ影の天使と影の艦隊の間に、イレギュラーズ達が割り込む事となるが故に、三人への攻撃は前後両面から仕掛けられる事になる。
 だが、それをも昴は。
「前進あるのみ、攻撃あるのみ。力の限り暴れ回り、蹂躙し尽くしてやろう。さぁ、かかってこい。お前達をスクラップにしてやる」
 と臆すること無く、威勢良く敵陣を常に挑発。
 そして切り込んだ仲間達への攻撃の手数を少しでも減らすために、雲雀、オニキス、雨紅とアリカが怒りや光を発光する事で敵の注目を逆方向に集めるように工夫。
 そして最後の砦として、仲間達の体力の具合を常に観察し、危機に瀕する前に回復を飛ばす観測端末。
 ……決して優位とは言えないながらも、五分五分の互角の戦況が続く。
 更に数分が経過し、イレギュラーズも、影の軍勢達も傷が隠せなくなりつつある、その時。
『全く……何なのさぁ。思った程強く無かったのかなーぁ?』
 闇の艦隊の後方、更に漆黒に包まれている部分から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声。
「……又、お前か」
「エエ……過去ノ記録ト一致。致命者、デスネ」
 一嘉と観測端末の言葉に、その声の主は。
『全くさぁー……新しい『オモチャ』を手に入れたから、面白そうって思ったんだけどなぁー……不良品だったのかな?』
 自分の使役する者達を『不良品』と呼び捨て、更にはイレギュラーズ達を舐めているかの様な口調。
 今までに幾度となくイレギュラーズ達に声を残し、去りし致命者。
「やっぱり、この軍勢は君達が糸を引いて居た……という訳か」
『うんうん。まぁ、そういう事になるかなぁ? だって君達が幾度となく邪魔してくるからさぁ、こっちだってそろそろ堪忍袋ってものがさ、ね?』
 クスクスと笑う彼の言葉の中に感じられるのは『余裕』。
 恐らく彼、いや彼女、からすれば、イレギュラーズ達に万が一にも負ける筈が無い……と思って居るのだろう。
 とは言え闇の艦隊と張り合っているのを見て、少しは脅威に感じつつあり、それを見せない為に虚勢を張っている……という事なのかもしれない。
 ……そんな遂行者の声のする方向に、視線を向ける雨紅。
 漆黒の闇の帳の中に……ほんの僅かではあるが蠢く影の『形』。
 ただその大きさはさほど大きくは非ず、子供の様にも見える。
 でも……そこから発せられる力の奔流は、底なしの如く蠢いており、どれくらいなのかも見当が付けられない。
 ……とは言えそれに、怖じ気づく事は無い。
「貴方達の狙いは釈然とはしませんが……ここ、『聖都フォン・ルーベルグ』を貴方達に渡す事はありません。影の艦隊も、天使達も、この先には決して……進ませたりはしません」
『へー、そっかそっか。ふーん……ま、そう思ってるならそれでいいんじゃないのかな? 取りあえず……時間稼ぎは出来た事だし、ね』
 くすりと笑った次の瞬間……闇の中に居た遂行者の影形が収束。
 顔の表情は見えないものの、小柄な身長、細身の体躯……決して大人とは言えない影形。
『取りあえず、この『オモチャ』は置いてくよ。早々に倒せれば、ボクに追いつけるかもしれないね? ま……ムリだろうけど、さ』
 その声と共に、まるで狂ったかの如く影の艦隊は、前線に居る影の天使達を巻き込む事も厭わずに一斉砲撃。
 弾幕の落下と共に巻き起こる水飛沫、更には雷鳴の轟きが戦場を駆け巡り、自然と恐怖を抱かせる。
 しかし、決してその雷鳴の勢いに怯む事無く、斬り込んだ前線の者達は影の艦隊を叩き、後方側は影の天使達を攻撃。
 艦隊の攻撃も合わさり、影の天使達は程なくして全て全滅し、残る影の艦隊に戦線を上げてイレギュラーズ達は総攻撃。
「速攻でけりを付ける……逃がす訳にはいかない……!」
 オニキスの言う通り、遂行者を仕留める為には……艦隊を討伐しない事には近づく事は出来ない。
 暫くの間、遂行者は艦隊とイレギュラーズ達の戦いを後方で、どことなく嬉しそうに眺めていたのだが。
『あーあ。まぁ、確かに強いみたいだけど、まだまだ、かな? ま、近い内に機会はあるだろうし……今日のところは『逃げた』事にしといてあげるよ。尻尾巻いて逃げた、とか言えば、君達の気も紛れるだろうしね? ふふっ』
 と、小馬鹿にした態度は一切崩さない遂行者の影。
 それに、雲雀は一際強く攻め立てる口調で。
「お前たち遂行者の思い通りには絶対にさせない。未来は皆それぞれに選ぶ権利がある! それをもとより定められているなどとのたまうその傲慢な思想は、片っ端から砕いて見せる!」
『そうかぁー……うんうん。それじゃーそう思うならやってみなよ。もうちょっと『オモチャ』を置いてって上げるから、さ』
 と言うと共に、パチンと鳴り響く指の音。
 その音と共に、闇の中から更なる影の艦隊と影の軍勢。
「更なる増援だと? 数が多いな! これだけの数を用意出来る遂行者とは、一体どのようなからくりを使って用意しているんだ……? だが、どんな仕組みだろうと、イレギュラーズという『異常』の前には無双出来てしまうのだがな!」
 そう沙耶が強がるが如く声を荒げる。
 ……しかし遂行者は。
『まぁまぁ……それはオモチャで遊び終わってから言ってみなよ。なんだかボク、ちょっと疲れちゃったしねぇ……』
 追加された、影の艦隊を全て仕留める前に闇の中へと姿を消して行ってしまう遂行者。
「逃げるな……!」
 沙耶が唇を噛みしめ、怒りの咆哮を上げるも、その影は留まる事無く……闇の中に消え失せて行く。
 そして……更に数十刻が経過し、どうにか全ての闇の軍勢と闇の艦隊を倒し終える。
 闇は晴れぬものの、更なる闇の軍勢がその帳の中から現れる事は無く……雷鳴のみが轟く現場となる。
「取りあえずは……一段落、か? いや、一段落もついていないか」
 息を吐く沙耶に、頷くオニキス。
「そうだね……また逃げられてしまった。でも……『近い内に』と言ってたのに破、何か理由があるのかもしれないね」
「ああ……そうだな。そういえば、聖都の方はどうなった? 俺達が戦っている間に……もしかして」
 胸に去就する一言の不安は、いつまで立っても拭う事は出来ない。
 ……そして。
「取りあえず、簡単に回復をして、戻りましょう。何か……嫌な気配を感じます」
「了解……」
 雨紅の言葉に頷き、観測端末がすぐさま仲間達の傷を癒す。
 無論全てを……という訳にはならないが、戦える程度まで傷を癒して回ると共に。
「良し……では戻るとしよう」
「そうですね……いそぎましょう!」
 昴とアリカの言葉に皆も頷き、そしてイレギュラーズ達は急ぎ聖都の方へと向かうのであった。

成否

成功

MVP

結月 沙耶(p3p009126)
少女融解

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂き、ありがとうございます。
逃げ足速い遂行者ですが、段々と追い詰めているのは間違い無いでしょう。
雌雄を決する時も間もなくだと思われます……彼か彼女かは分かりませんが、強敵なのは間違いありません、ご注意下さい。

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