PandoraPartyProject

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イベント・クリア!

 ――Congratulation!
   本来的には複数形にしておく方が良いんだろうけど、ミーム的に考えてCongratulationです!

「……」

 ――プレイヤー達は見事な戦い振りで押し寄せる砂嵐を押し退ける事に成功しました!
   一部現場では敗退もあり、被害が出たシーンもありましたが、気にする事はありません。
   R.O.Oはゲイムです。プレイヤーがいなければ凄惨暗澹たる有様になら、張る胸以外はないのです!

「……何これ」
「祝福、ではないか? いや、厳密には『祝福している心算』ではないのかね」
「言い得て妙だな。いちいち全く嬉しくない言葉選びに涙が出るぜ」
 R.O.O――より正しくは『ネクスト』と呼ぶべきではあるが。
 モニターの中に表示された最新の『お知らせ』を見た時、レオンもカスパールも渋面を禁じ得なかった。
 一般に考えられるネットゲームの『運営』の告知と呼ぶには余りにもお粗末で、余りにも問題である。混沌の住民であるレオンは実際問題そのようなものに触れた事はないが、練達のクエスターであるカスパールの方は『そういったもの』を知識として有しているので尚更だ。
「……まぁ、これも『ヒント』になろう」
「そうだな。つまる所、『ネクスト』を支配してるらしいGMって奴は」
「品行方正に仕事をするようなタイプではない。私情を大いに混ぜている。
 人間的な――言い方を変えれば癇に障る意思人格を持っているという事で間違いあるまい」
「これもイベント告知だけじゃ分からなかった事って訳だ」
「協力に感謝するよ。レオン・ドナーツ・バルトロメイ。貴殿に『貸し』た甲斐があったというものだ」
「おいおい。『借り』たのはそちらの方だろう? 俺とディルクが手伝ったのは練達の為だぜ。
 ……いや、分かってるよ。分かってはいるんだ。
 それ位アンタ達にとって政治的な存在に研究を触らせるのは承服しかねる事なんだろうよ。
 だが、俺やディルクは兎も角だ、置いといても構わんがね。
『ローレットの連中はこの先何が起こるか分からんゲームを命がけでやってんだ』。
 その辺りの認識はせめてそのように願うよ、カスパール老」
「……失敬。研究仕事が多くてな。外部と関わる事が少ないが為、失言を許されよ」
「本音って事だろう? 気にしなくていい。そういう国だってのは分かってる」
 肩を竦めたレオンにカスパールは苦笑した。
 カスパールとしてもこれだけ全面的な協力をしているローレットを信じていない訳ではないのだ。
 しかしながら、長年積み重なり骨身に染み付いた価値観というものは一朝一夕で変えられるものではない。
 悪いとは思えど、本音を言えばやはり外部に機密を晒したくない気持ちは強いものだ。
「それで、中々愉快な事になってきたじゃねぇか」
「うむ」
 モニターの中のお知らせには続きがある。

 ――プレイヤーの健闘により新たな解放が行われました!
  『ネクスト』はこれからアップデートされます!
   ネクスト2.0、タイトルは『遥かな東と竜の脅威!』
   プレイヤーの冒険の舞台は更なる広がりをみせる事でしょう!
   以上、これからもRe:verio……じゃなかった、ネクスト運営チームを宜しくお願いいたします!

「……やっぱりこの『流れ』に乗って情報を集めていくしかなさそうだな。
 GM(あちらさん)が意味もなくネクストを遊ばせてるとは思えないし……
 こうしてクリアを続ければ3・0だか4・0だか知らんが何れ『何か』が見えるんだろう。
 今回のイベントでかなりの人質(トロフィー)も助けられたと思うが……
 この先もアンタ達はローレットに協力を要請していく、でいいんだな?」
「うむ。R.O.Oは練達の国家的事業故。海洋王国が絶海を諦められなかった事と同じよ」
「まぁ、分かるよ。人間には割り切れない想いもある。
 他人にとってどれだけ馬鹿げていてもね。そういう願いはあるもんだ。
 だが、カスパール老。受け一方じゃ上手くないな。GMの土俵でゲームを進め続けるのは問題だ」
「考えがあるようだな、レオン殿……わしにも一案はあるが、同じ事かな?」
「多分ね。知り合いに偏屈な天才が居る」
 二人が頭に思い描いたのは同じ顔である。
 セフィロトの近くに塔を構えながら外界の全てを拒絶し、神の如く眼窩を見下ろす問題児――
 問題児ではあるが、正真正銘神に最も近い男だ。何がが出来る可能性は極めて高かろう。
「リスクだが、仕方ないよな」
「うむ。毒を喰らわば皿までよ。我等は門前払いだった故な、そちらの差配はローレットに任せたい。
 どんな危機があれど、我等が悲願『システム』を破棄する事は許されぬ。必ず取り戻さなければ。
 ……マザーよ。ご苦労をおかけいたしますが、伏してお願いいたします。このカスパールめにご助力を」
「……」
 水を向けられた『マザー』は暫し沈黙して何かを考えるような仕草を見せた。
 酷く人間的なその姿は彼女が確かな知性と自由意志を持つ一個の存在である事を確信させるものだ。
 しかしながら彼女は母に甘えるかのような――『玩具(R.O.O)』を諦めない老人を否定する事は無い。
「……ええ。カスパール。私は練達の為に、貴方達愛し子の為に力を尽くしましょう。
 それが――の為、それが、私の産まれた理由なのですから」
 一瞬だけ走ったノイズが彼女の言葉の一部を覆っていた。
 機械仕掛けの母はただ静かに激動の練達を見守っている。
 昨日も、今日も、きっと明日も――もっと、ずっとずっと昔から。


※<Genius Game Next>のクリア評価値がA(最大S+)になりました!
   この結果によりネクストが2.0にアップデートされ『遥かな東と竜の脅威!』が始まったらしいです。
   ……今の所、何が起きるのかは分かりませんが……!

これまでのリーグルの唄(幻想編) / 再現性東京 / R.O.O

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