PandoraPartyProject

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強奪のファイブロライト

 砂漠の月は冷たく、朝の大気は酷く冷え込んでいる。
 乾いた砂交じりの風に、誰かが口元をスカーフで覆った。

 西の砂漠にある傭兵と商人達の国家『ラサ』で発見された『ファルベライズ』という遺跡では、色宝(ファルグメント)という『小さな願いを叶える宝物』が続々と発掘されている。
 傭兵や商人達は合議の末に、色宝を夢の都ネフェルストで管理することに決めた。
 発掘自体は冒険慣れしたローレットのイレギュラーズが中心となり、今も多くの依頼が舞い込んでいる。
 東の果て『カムイグラ』では魔種やガイアキャンサーの野望を打ち砕き、幻想に再現性東京に――世界各地で活躍を続けるイレギュラーズは、今日も大忙しという訳である。

 だがファルベライズに現れた『大鴉盗賊団』もまた色宝を狙っていた。
 色宝を求める冒険は、心ならずも争奪レースと相成ったのである。
 盗賊団と抗争を続ける中で、あたかも運命に導かれるが如く、とある少女達が何かに気付いた。
 パサジール・ルメスと呼ばれる流亡の民達は、どうやらこの遺跡と遠い昔に縁があるのではないかと。
 或いは『だから』だろうか。こんな事件が起きたのは――

 カイロ・コールド(p3p008306)の元へ、一人の少女が駆け寄ってきた。
「友人を……レーヴェンを、見ていないっすか」
 問いかけた『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)の顔色はひどく悪い。
「いえ、しばらく見てはいませんが」
 はたと首を傾げるカイロの言葉に、リヴィエールの唇が震えた。
「一体何があったんだ?」
 蹄をならして駆け寄ったラダ・ジグリ(p3p000271)が問いかける。
「……もしかしたら、っすけど」

 ――事態は、それよりほんの少し前に遡る。
 大鴉盗賊団を退けた一行が一夜を明かした夜のこと。
 酷く冷え込む夜の砂漠、その上空で。闇夜に紛れた複数の影が雲に紛れて移動していた。
「ッたく、とんだ邪魔が入ったもんだぜ」
 大鴉盗賊団の頭領たる男――コルボは部下に運ばれながら毒づく。その相手と言えば勿論、物資強奪せんとするコルボたちに向かってきた乱入者、イレギュラーズであった。
 あのままであれば全員殺し、全ての物資を奪うことも可能だっただろう。だというのに、どうだ。奴らから奪うことができた物資は全てとは程遠い。半分ほどは持ちだせたが、結果として邪魔をされたという事実がコルボを苛立たせていた。
「そう言ったってお頭、これは『努力目標』でしょうに」
 そう苦笑いする『俊足の』コラットに、しかしコルボはもっと苦々しい顔を浮かべた。
「馬鹿言え、どれもこれも奪ってこその盗賊だろうが」
「あい、すんません」
 軽い謝罪にコルボは目を眇めるものの、それ以上の口出しはない。これでも彼とは長い付き合いなのだ――他の幹部よりも気易いやり取りが多くなるのは必然。まあ、多くの部下に面を見せるときばかりはこの男も体裁というものを気にしている様だが。
(くだらねェ)
 取り繕うことに何の意味があるのか。どうせ遠からずして皆がコルボへ跪くことになるというのに。
 コラットとコルボ、そして部下の面々はすっかり夜となった砂上を移動していたが、やがて岩陰へ隠れるようにして降り立つ。この暗闇であればそう気づかれることは無く、この先もアジトまでは多少の距離がある。故に――どれだけラサの奴らが足掻こうと、そう容易く見破られはしまい。
「首尾は」
「上々です」
 アジトに戻るなり部下の報告を聞いたコルボの目が笑みに歪む。案内されるがままに進めば、奥に転がった薄汚い人影があった。その姿にコルボの目が細まり、叱責されると思ったのか部下が慌てて口を開く。
「多少抵抗されたもんで」
「生きてりゃいい」
 その言葉を途中で遮ったコルボは奥まで進み、その薄汚いものを掴み上げた。
「おい、女。生きてるか?」
 掴んだ射干玉の髪に頭皮が引っ張られたか、顔を歪める女――レーヴェン・ルメスはコルボを睨みつけた。その目に満足したか、コルボはぱっと手を離す。受け身を取れずに地面へ転がったレーヴェンは呻いた。
「てめェも知ってるだろ? ファルベリヒトの話をよ」
「……子供も怖がる盗賊団のお頭が、そんな御伽噺を信じて――」
 鈍い音と共にレーヴェンの言葉が途切れ、代わりに激しい咳込み音がアジトへ響く。その様を冷徹にコルボは見下ろした。
「言葉には気を付けろ。てめェなんぞ生きてりゃ構わねえ。翼をもごうが、四肢を切り落とそうがな」
 レーヴェンが黙ってコルボを睨み上げる。その脇からコラットが進み出るとレーヴェンの傍らにしゃがみこんだ。
「お嬢ちゃん、お頭はマジでやるから大人しくしといたほうがいいぜ。それにこっちにもパサジールの話に通じてる奴がいるんでな……ま、それはともかくとしても、お嬢ちゃんが死んだって代わりはいるんだ。
 ほら、ローレットから来ているディープシーの――おっと、」
 コラットへ噛みつかんとしたレーヴェンを難なく避け、男は「嫌だろ?」とレーヴェンを見下ろした。
「お友達に手を出されたくなきゃ、大人しくしてな。なぁに、すぐには死なねぇさ」
 立ち上がったコラットが「連れて行け」と命じれば部下たちがレーヴェンを引っ立て、牢屋へ閉じ込めんと連れて行く。その後ろ姿を見送ったコラットは視線をコルボへ向けた。
「お頭、いよいよだ」
「ああ。各自に準備させろ。多少足がついたって構わねェ」
 ラサ側でも順調に色宝を集めている様だが、それはこちらとて同じ。

 ――ならばそろそろ『返してもらおうか』


*領地でRAIDイベント『色宝争奪戦』が終了しました!
 この結果により『ファルベライズシナリオ』に影響が生じる場合があります!

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