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巫蠱の『毒』
巫蠱の『毒』
高天京――神威神楽の政治中枢を有する都は真夏の日差しに晒されながらも豊かな日々を謳歌する。
商人達の声を聞き、涼しい顔で歩む『中務卿』建葉・晴明は只一言、「そうか」とだけ呟いた。
「……どうなさるつもりで?」
「無論、其方と『同じ』だろうな」
晴明の傍らに立っていた榊 黒曜は溜息をついた。茹だるような夏の太陽と人目より避けるようにその脚は神威神楽の神奈備――此岸ノ辺へと向けられる。
晴明と僅かに一歩遅れて歩く黒曜はその背中を眺めながら、歯痒さを隠せずに居た。
特異運命座標――『英雄』がこの国に辿り着き巫女姫と天香派閥による治世に対して疑問を投じる者は多くなった。この国にも変化が訪れているのは確かだ。それでも足りない。
霞帝という柱を無くした現状では晴明一人では『獄人差別』や政の正常化は望めない。黒曜始めとする中務省の人員を投じようとも『八枚の扇』のたった一枚では対した影響も与えられないのが実情だ。
外つ国、海洋王国より提案された合同祭事で新たに発見された肉腫、そして、魔種による暗躍は祭りの中断の懸念もあったが彼ら英雄の参戦と活躍によって収束しつつあった。
民達には「此度は民の熱狂と暑さで熱中症が多発したのだろう」と苦しい言い訳を続けた晴明であったが、流石は『龍神様』を鎮めた者達だとその実力をもう一度認識した良い機会であった。
だが――
黒曜が「どうなさるつもりで」と問いかけたその言葉には、一つしか返す事ができない。
祭りの喧噪も遠ざかり、日常を取り戻したはずの高天京には新たな闇が暗躍している。
未だ、拭いきれぬ肉腫と魔種の脅威とは別の闇。
異質な呪詛が流行し、民は何かに影響されたように人を呪わずには居られない。
呪わねば呪われる。
そうして心の端に存在した恨み嫉みが妖を媒介にした呪詛にまで発展しているとするならば。
「……魔種の――それも影響力のある者の仕業でしょうね」
溜息を混じらせる黒曜に「だろう」と晴明は呟いた。
この様に人の心を操る事ができるのは特異運命座標達が齎した情報が一つ、原罪の呼び声と『狂気の伝播』なのだろうと晴明は認識していた。
強き力を所有する者による大きな影響によるものなのだとするならば――「巫女姫」と晴明は呟いた。
「……いや、忘れてくれ」
「承知しました。卿の『独り言』は聞かなかったことに致します」
首を振る。巫女姫の仕業であろうと兵を挙げ、宮中内裏に飛び込んだところで得るものは何もない。
穏便に国と民を守るために情報を収集しながら呪詛と妖の暴動を抑えねばならない。
「宮中を見てきたのだろう」
「はい。……七扇――長官(かみ)を始めに、何やら動きが有るようですが……」
中務省を抜けば、式部省、治部省、民部省、兵部省、刑部省、大蔵省、宮内省――『七枚』の内部にも呪詛は蔓延り、狂気と混乱として滲み続けている。
人死にも多発し、呪いによる流行で政にさえ、影響が出ていると言うのは明らかだ。
夏祭り以降、巫女姫や天香との謁見も許されていない晴明は自身が彼らと接触する事に不都合があるのだろうと認識していたが――七扇が混乱している中で、中務省が『政治中枢』に触れて欲しくないという意図もあるのだろうか。
現に、自由に動き回っている天香・長胤の義弟などは兄に拒絶され暫くは内裏にも入れていないと聞く。
「宮中も混乱しているか。この様なときに帝が居れば……。
その様なこと考えることさえ意味もないか。彼が戻るまで、神威神楽を護らなくては。
さて、巫女姫と天香はどう動くであろうか――……」
――今は、特異運命座標に、かの英雄達にこの国の未来を委ねるしかないのかも知れない。
夏の太陽を眺め、晴明は小さく言った。「彼らに呪詛を鎮めて貰いながら時を待とう」と。
多くの呪詛を阻害すれば、必ず『あちら』も何かの行動を起こす筈だ。
※高天京始めとする神威神楽全域に『呪詛』が流行しています!
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※サミットの結果、各国に領土が獲得出来るようになりました!
キャラクターページの右端の『領地』ボタンより、領地ページに移動出来ます!
→領地システムマニュアル