PandoraPartyProject
<鏡面世界>
数多の物語が交錯する『絶望の青』。
望む通りになるものもあれば、皮肉にもその逆を辿る運命もある。
しかして、天は何時だって残酷ながら同時に気まぐれでもあるのだろう。
幾重にも絡みついた闇の鎖とて、それより強い光に照らされて――そう、消え失せる事さえあるのだろう。
「――――」
息を呑んだのは果たして誰だったか。
叶うと信じていた者は居たが、多数派だったとは言い難い。
強く願っていた者は居たが、決して確信していた訳ではないだろう。
故にそれは間違いない奇跡だった。
フェデリアの海で、一人の少女を囚える呪いの終焉――
鏡の割れるような音と共に、『セイレーン』セイラ・フレーズ・バニーユの怨念が霧散した。
棺牢(コフィンゲージ)による変異が中途で止まったことに『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は気づく。
「シャルロット!」
『鏡の魔種』ミロワールの本来の名を呼んだアレクシアは駆け寄った。背後には依然として存在する強大なる滅海竜が唸りを上げ続ける。荒れ狂う波濤の中、彼女が走り寄ったミロワールはアクエリア島で見た彼女の姿を何の変化もなかった。
「……助けられた……?」
呆然と、呟いた『Ephemeral』ハルア・フィーン(p3p007983)の双眸より、ぽろり、と涙が落ちる。
膝を着いて呆然とその様子を見遣った彼女の肩を叩いた『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は「シャルロット」とその名呼んだ。
「戻れたンだな?」
「……ねえ、ヨハンナ。わたしは、わたし……?」
唇が震えている。影の様な少女の顔も、姿も、表情さえも手に取るようにわかる気がしてレイチェルは揶揄う様に「お前サンだよ」と笑った。
――長い黒い髪、黒い瞳、闇の色の彼女は、光の色をしたかたわれを殺したのだという。
それを起点にして『魔種ミロワール』の物語は始まった。
しかし、彼女は鏡。鏡ゆえに、イレギュラーズを深く映しこみ、そして『その性質に変化した』。
イレギュラーズの希望がミロワールをセイレーンの呪いの如き怨念より解き放ったのだろう。
「おはよう、寝坊助さん」
そっと、ミロワールに近寄って、微笑んだ『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)の声音に『鏡の少女』は戸惑ったように呟いた。
「おはよう」
そして顔を上げた時、自身がぎゅっと抱きしめられている事に気付いてミロワールはぎょっとしたように瞬いた。
『最強砲台』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)の愛と希望の『はぐはぐ』は奇跡を希うたそのままにミロワールはを抱きしめている。
「おかえり、シャルロット。おはよう」
「お、おはよう……あの、えっと、その……」
戸惑う様に彼女は言った。助けてくれて、ありがとう、と。
「シャルロット。約束通りビスコに花を送ろう。
何度でも謝ろう。罪を抱えたままで――ボク達もいっしょだ」
約束を果たそうと、ハルアはそっとミロワールに微笑みかける。ムスティスラーフの愛と希望の詰まった抱擁より抜け出して、ミロワールは静かに息を吐く。
「わたしに、皆を助けられることはある?
……ううん、聞くのが、おかしいね。わたし、みんなを助ける。この命を賭けてでも、滅海竜を、越える為に」
ミロワールは振り仰ぐ。海洋王国や鉄帝国の味方艦隊が背後には存在している。静かに息を吐き、彼女が広げるは『鏡面世界』。
薄く広がるそれは味方艦隊を守るが為のバリア。リヴァイアサンに齎していたそれよりは効果は薄いのだろうが広範囲に広がるバリアは味方艦隊へのダメージを幾許は和らげるだろう。
「……わたし、みんなの仲間を守るわ。
だから……だから、みんな、滅海竜を倒して。約束、したでしょう?」
ミロワールは、どこか照れたように笑った。
――もしも、わたしが戻ってこれたら、
この海の外でもう一度『シャルロット』って呼んで。
ビスコッティに綺麗な花を一輪買って、弔いを行った後、
わたしのことを、彼女の許へ送ってほしいの。
約束よ、イレギュラーズ――
※魔種ミロワールがイレギュラーズの動きによりアルバニア陣営から離反しました!
リヴァイアサンへの守りが消滅し、逆に連合艦隊に防御バリアが展開されました!