PandoraPartyProject
Jail Scorpion2
Jail Scorpion
●選択
「私とて、徒に貴方方を痛めつけたい訳ではないのですよ」
盗賊王の許しを得て『本件』を預かったフギン・ムニンは人の悪い顔して告げた。
「特に恭順を申し出た方にはね。我等の仲間となるかも知れない貴重な人材だ。
相互に信頼関係を築くのはとても大切で――ええ、それは勿論、原則論ではあるのですが。
生憎と、刃を交わした相手を素直に信用するほど、私は性善説に生きてはいないのですよ」
「我が王は疑い深く、慎重だ。何せこの商売です。辛いですが、仕方ありませんね」と彼はおどける。
「そこで、一計を案じました。少しご協力頂ければ皆が納得する、一石二鳥のアイデアですよ」
「何を?」と訝しむ三人に、フギンは薄笑いを浮かべたまま言う。
「いえ、大した事ではありませんよ」
――ほら、この間シャーロット嬢を捕まえた時の『残り』が居るではありませんか。
皆さんに彼等を殺して貰いたいだけです。
ね? 仲間になると言うならば、実に合理的な踏み絵(アイデア)でしょう?
言葉を受けたサンディは小さく息を呑む。
確かに無条件に信頼される程甘い状況は想定していなかったが、先の救出劇で残した二人が痛恨である。
彼の指示で連れてこられた――囚われのイレギュラーズ。依頼では助けるべき対象だった、今は殺すべき対象とされた二人は不安気な視線をフギンと三人の両方に送っている。
「……おいおい、ちょっとまてよ。条件を先に出したのは俺だぜ。
俺を信用するのもしないのも勝手だが……
そっちが先に条件を飲まねえならそもそも仲間も踏み絵もクソもねえんだ。
一流の商売人なら前提をクリアしてから提案してくれよな」
サンディは奏と綺亜羅にチラリと視線を投げてからフギンをきつく見据えた。
「俺の条件は『そっちの二人の解放』だ。二人が解放されたところで何するかは俺の知るところじゃねえが。『それを確認したら』、ローレットを抜けて砂蠍に入るって言ったんだぜ。
そのためなら『人質を殺す』位はお安い御用だ。
そうなりゃもう仲間じゃねぇし――いられねえしな。ローレットなんざ」
「成る程ねぇ」
フギンはニヤニヤと笑って言い切ったサンディを見る。
サンディの狙いは自身を犠牲にしてでも――二人を逃がす事である。全滅する位ならば自分が死んで残りを助ける事である。しかし、そんな青臭く――真っ当な正義漢の感情が読めない程、フギンは甘い男ではない。
「勘違いしなさいますな、特異運命座標」
「……ぐっ……!」
冷静な語り口と共にフギンの蹴りが拘束されたサンディの腹部に突き刺さった。
「条件を出せる立場ではないでしょう。これは対等な取引でもなんでもない。
私が買うか買わないか、であり――貴方の意見は聞いていないのです」
淡々と言いながらサンディに苛烈な暴行を加える盗賊王の右腕は苛烈にして悲壮な決意すら嘲り笑う。
「まぁ、貴方の話は後にして――残りを伺いましょう。
残るお二方――お嬢さん方はどういたしますかね?」
水を向けられた奏は言う。
「『合理的』、ねぇ……
ちょっと面白くないけど、乗ってやろうじゃないの。
いいよ。その程度で信頼が買えるっていうなら、さ」
「――っ……!」
額から血を流したサンディは牢獄の床に這いつくばり目を見開くが、
「助けようとした人に手をかける…どうでもいいよね私には関係ないこと。それが貴方の運命だっただけ。
私はバーサーカー。闘争の獣。闘いたいだけ、殺したいだけ。たとえそれが……」
「鉄帝は抗うか逃げる者しか斬らぬ。生きる意志も逃げる力もない据え物は斬らぬ、狩りならば応じるが」
奏にせよ、綺亜羅にせよ――結論は『殺す』方に傾いているようだった。
綺亜羅が『狩り』の提案をしたのはまだ僅か『逃げ延びる意思があるならば』という気持ちも無い訳では無かったが、どの道彼女はこの場を離れる心算は無い。北部戦線で幻想とまみえる鉄帝国――皇帝の為、本望と死ぬ覚悟すらあるのだろう。
「……っ……」
『自身の為にそうする選択肢を持たなかった』サンディにとってこれは驚くべき展開だった。
「まぁ、注文をつける事は気に入りませんが――殺すならばサービスで良しとしましょう。
では、お二人にはその二人を片付けて貰う事として。困りました。品切れですね。
貴方は、そうですねぇ。まだ使い道もあるかも知れませんし。
うん――取り敢えず『半分殺して』おきましょうか?」
冷静なるフギンは目を細め、恐怖に震える人質、唇を噛むサンディ、達観したかのような奏、覚悟の綺亜羅――その全てを嘲り笑う。
蠍の牢獄はまた別の局面を迎えようとしていた――
※『意志の剣』サンディ・カルタ(p3p000438)のパンドラ値が半減しました……
イレギュラーズの反応
御幣島 戦神 奏 | プレイング |
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フギンの言葉を受け入れローレットの人質を殺す |
サンディ・カルタ | プレイング |
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おいおい、ちょっとまてよ。条件を先に出したのは俺だぜ。 |
一条院・綺亜羅 | プレイング |
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フギンの言葉を受け入れローレットの人質を殺す |
フギン・ムニンの反応
これならば、ローレットの皆さんが喜ぶ仕掛けも十分でしょう。
彼等が正義の味方でない事は知っていましたが――ふふふ。
予想以上に面白い集団だ。愉しんでばかりはいられないのが残念ですが、大いに結構!
実力を見せて頂こうではありませんか!