PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

雲間にて

関連キャラクター:チック・シュテル

さいわいの魔法

「付き合ってもらっちゃってごめんにゃ、チック」
「ううん。いい、よ」
 とててと軽い足取りで地を歩く白猫とは視線が合わない。
 いつもは――多少のヒールの違いはあれど――同じ高さだからか、何だか少し不思議な間隔を覚えながら、チックは手に抱えた荷物を抱え直した。
『お願いがあるのだけれど、付き合ってくれにゃい?』
 そう首を傾げた白猫――雨泽は、収穫祭に賑わう町の中を抜け、ケーキ屋さんへと向かった。受け取る予定の手が使えにゃくにゃっちゃってさ、なんてにゃむにゃむ言う雨泽の代わりにチックは荷運びをしてあげているのだ。
 揺らすと中身が崩れてしまうと聞いているから、揺らさないように慎重に菓子の入った箱を運ぶ。今日は収穫祭だから、南瓜のお菓子だろうか。それともお芋? どちらも美味しそう。
「あとは……」
 雨泽が時計台を見上げる。時間を気にしているようだ。
 市場の色とりどりの菓子たちの間を泳ぐように歩む。
「これ……あの子たち、好きそう……」
 レムレースたちが好きそうな菓子を見付けたから買って、お土産にする。
 そうして買い物を楽しむと、再度雨泽が時間を気に掛けた。
「そろそろいいかにゃー」
 帰ろう、チック。
 白猫が鈴を鳴らして笑う。
 可愛い彼らが君の帰りを待っているよ。


「おかえりなさい!」
 明るいレムレースたちの声と、笑顔。
 ただいまとチックがレムレースたちに返す前に、とたたと走った雨泽がレムレース側へと廻った。
 誰かが「せーの」と口にした。
「おめでとう、おにいちゃん!」
「誕生日おめでとう、チック」
 弾けるように、祝いの声が降り注ぐ。
「え……」
「びっくりした?」
「ふふっ、おめめまんまるっ」
「成功にゃね」
 屈んだレムレースと白猫がハイタッチ。
「こっちにきて」
 レムレースが空いている手を掴んで急かし、リビングへ。
「わ……」
 リビングは、チックへのお祝いの飾り付けになっていた。
 雨泽が迎えに来た時は、数日前からレムレースたちがチックと飾り付けていた収穫祭仕様だったはずなのに、いつの間に。
「……あり、がとう」
 いつも以上に、言葉に詰まってしまう。
 箱も開けてと急かす声に倣えば、そこには――
執筆:壱花

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