幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
雲間にて
雲間にて
関連キャラクター:チック・シュテル
- あやかし道中、幕間
- ●嚼
鬼灯提灯揺らして、漫ろ歩き。
「……がおー、噛みつく……するよ?」
指を軽く折り曲げてがおーのポーズをしたチックに、傍らで狐の手を作っていた雨泽が「えっなにそれ」と吹き出した。
「チックの中の鬼ってそういうイメージ?」
「おかしい、した? ……雨泽は、噛む……しない、の?」
「え。僕? うーん……噛んでもいいのなら噛む、かも?」
「噛む……するんだ」
「好きなものしか噛みたくないけど」
真っ直ぐに向けられる無垢な瞳に、狐の半面の下で雨泽がえーとかうーんとか暫く唸って葛藤している。
「いや、やっぱり噛まない」
転じる答えに、チックが首を傾げた。
結局、どちらなのだろう。
「本気で噛んでも許されるのは猫だけなんだよ、チック」
鬼灯提灯を揺らして、作り直した狐の手の口部分をパクパクさせながら零した言葉。
それは静かで、それでいて真に迫るような声だった。 - 執筆:壱花