PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

雲間にて

関連キャラクター:チック・シュテル

蜜月は夜明けまで、幕間
●つきあかりの
 シレンツィオ・リゾートを訪れた数日後、ギルド・ローレットに寄った時に偶然雨泽と出会った。
 チックの翼が視界に入ったのだろう。人々の間をするりと猫のようにすり抜けた雨泽はやあといつも通りに笑って、チックへと封筒を差し出した。
「これ、は……?」
「こないだの写真だよ」
 早速確認してみれば、白百合のブーケを手にしたチックがパンツスタイルのドレス姿でステンドグラスの前に立っている。チックの立つ場所にはちょうど月光が差し込み、まるでスポットライトのようだ。写真は二枚。ひとつは全身、もうひとつはバストアップで瞳を伏せているところ――丁度撮った時に瞬きをしていたのだろう。けれどそれは、祈るようでもあった。
「あまり上手に撮れなくてごめんね?」
 カメラマンが夜には居なくなるのは、彼自身の生活もあるが、撮影をするには光源が足りないからだ。それでも夜に撮るのならば沢山の蝋燭に火を灯すけれど、その日の光源は月明かりのみ。薄暗さのなかにぼやけてしまっている。
「大丈夫、……ありがとう」
 大切にするねと胸に両手で封筒を押し当てて微笑めば、雨泽が安堵したように吐息を零すのが解った。

「おかえりなさい!」
「おにいちゃん、なにかいいことあったの?」
 家に帰れば、小さなこどもたちが足元にわらわらと集まってくる。
「ただいま、みんな……ちょっと、ね」
 こどもたちはみんないい子で、帰ってきたばかりのチックをあれやこれやと手伝ってくれる。荷物はこっち、おにいちゃんはそっち。気付けばソファに座らされていて、いいことのお話聞かせてとチックの周りにレムレースたちが集まった。
「撮ってもらう、したんだ」
 封筒から写真を取り出せば、わあ! と歓声を上げてこどもたちが覗き込む。
「おにいちゃん、きれい」
「あのひみたい」
「……あの日?」
 リュケの言葉に瞳を瞬かせて首を傾げれば、「うん」と元気に答えるのは別の子だ。
 こどもたちは顔を見合わせ、せーのとタイミングを合わせてチックへ告げた。
「「「おにいちゃんと、ぼく(わたし)たちがはじめてあったひ!」」」
 月明かりのステージで歌うチックが綺麗で、それがどれだけ嬉しかったか。
 だから、ね。
 今日もお歌が聞きたいな!
執筆:壱花

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