PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

雲間にて

関連キャラクター:チック・シュテル

いとし花むすび、幕間
●藤の日のお土産
 兎がちょんと座った形の『兎鈴』は、根付に出来るよう紐がついている。
 その紐を摘んで腕を伸ばして揺らせば、視界に広がる藤棚の上を小さな兎がちょこちょこと歩いているようで可愛らしい。
「……あ」
「どうしたの、チック」
「ん……もうひとつ。買おう、かな……」
「もうひとつ?」
 どうするの、と問う視線を向ける雨泽に、チックは淡雪のように柔らかに微笑んだ。
 愛らしい兎の形の鈴は、きっと年端もゆかぬ少女が喜ぶことだろう。
 姉を亡くしたことを刑部省で知ったであろう少女の、少しでも心の支えとなることを願って――。
「ふぅん。それじゃあ僕はお守りでも買おうかな」
「お守りも……可愛い、ね」
「お守りってね、念や思いを吸収するんだよ」
 そう言って社務所に再度向かうチックについてきた雨泽は『藤守り』を買い求めて。
 手にしたばかりのお守りには、神様の加護がある。藤花刺繍が揺れる愛らしいお守りをを両手で包んでから、雨泽はチックへと差し出した。
「はい、あげる。君、結構無茶をするみたいだから」
 これで加護も二倍だよ、と。
執筆:壱花

PAGETOPPAGEBOTTOM