PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

雲間にて

関連キャラクター:チック・シュテル

花信風のしらせ、幕間
●報告後、帰路
「それじゃあチック、今日はお疲れ様」
 刑部省に少女の身柄を引き渡した僕がゆっくり休んでねと告げれば、チックも「雨泽も」と言ってくれた。
「……雨泽? どう、したの……?」
 くすぐったい気持ちが溢れたのだろう。小さく笑ってしまった僕に、君は不思議そうに首を傾げた。
「いや、だってね。君ってば」
 路地でのやり取りを思い出すと、僕の胸には愉快な気持ちがもっと溢れてくる。
 僕をかばうように前に出た、君の姿。
 正直、あれには少し驚いた。
 報告書でチックの働きは知っていたけれど、君のことは大人しい子だと僕は思っていたから。
「王子様みたいで格好良かったよね」
 僕はお姫様だなんて柄じゃないから口笛を吹きそうになったけれど、空気を読んで飲み込んだんだよね。
「おれに、付き合ってもらってる……のに。雨泽に危ない目、合わせられない……合わせたくない、から」
「うん、うん。そっかぁ。それじゃぁ、危ない時はよろしくね」
 なんて笑えば、君は生真面目そうな顔でしっかりと頷いていた。

 でもね、チック。
 ――それは、俺もなんだよ。
執筆:壱花

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