PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

雲間にて

関連キャラクター:チック・シュテル

白片ノ灯

「……落ち着く、した?」
「うん、少し。ありがとう」
 僕に小さく笑みを零す余裕が生まれると、君はよかったと柔らかに笑った。
「……あ、そうだ」
 握っていた手を離して、ごそごそ。
 何かを取り出そうとしている様を見てランタンを預かろうかと申し出たけれど、それだと雨泽の手が塞がっちゃうと君が言った。
「雨泽、これ」
 手を出してと言われて広げた手に乗せられた、水色の箱。中身は装飾。白い羽根と銀の鈴、星の形の花。少し早い誕生日プレゼントだと君が言った。
「……羽根、チックの?」
「うん」
「抜いたの?」
 君が少し目を逸らす。
「……痛くないの」
「平気、だよ」
 雨泽だって。そう言いたいのだろう視線を感じた。君に供血しているから。
「ありがとう、大切にするね」
 微笑んだ君は、また小さく歌っていた。
 白い光と君は――ああ今日も、つきあかりのようだ。


 ――ちり。
 摘み上げると鈴が鳴った。
 光に翳すと綺麗でいつまでも見ていたくなるけれど――水色の箱に綺麗にしまって、棚へ。
(お守りって言っていたから持ち歩いた方がいいのかもしれない、けど――)
 持ち歩くと無くしそうで怖いから。
 無くしたらきっともう戻らないから。
 俺はスカイウェザーではないから白い羽根をくれたことに意味があるのかは解らないけれど、君が俺の手元に白を残しておきたいと思ったのなら綺麗な状態で保管したかった。
 棚をぱたんと閉ざして立ち上げる。
(――求愛で羽根を贈るのは梟だっけ)
 気落ちしている時で良かった。そうじゃなかったら問うていただろう。綺麗な羽根を選んで贈ってくれたのかなと自惚れ、その気恥ずかしさを隠すための軽口で。
(チックって何の鳥なのかな)
 彼のことを詳しく知らない事に気がついた。
(聞いてみたら教えてくれるのかな)
 そんなことを考えながら、俺は塒を後にした。
執筆:壱花

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