幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
今日のロロン温泉
今日のロロン温泉
関連キャラクター:ロロン・ラプス
- 茜空へ手を伸ばす。或いは、ある日、夕暮れ…。
- ●温泉郷の夕暮れ
西の空が燃えていた。
まるで魔砲の輝きのようだと、ルシア・アイリス・アップルトンは頬をほんのり紅潮させた。
肩まで浸かった湯の色は青。
幻想、とある温泉郷にて過ごす長閑なひと時は、日々の依頼に疲れた心と身体を内からじっくり癒す。ほぅ、と思わず吐息を零せば、心の奥に溜まった澱みも一緒に排出されたような心地さえした。
「最……高、でして~♪」
(それは良かった。どうぞ心ゆくまで堪能しておくれ)
独り言のはずだった。
けれど、応えが返って来た。
「っ……何事でして!?」
(ルシア・アイリス・アップルトン……今、キミの心に直接話しかけているよ)
「嘘でしてっ!」
誰かの声はルシアの周囲……肩まで浸かった湯から返って来たものだ。戸惑いを見せたのは一瞬。ルシアとてイレギュラーズとして、数多くの修羅場を搔い潜った身だ。不測の事態に備え、湯から出ようと立ち上がる。
けれど、しかし……。
「動けないのでして!」
(まぁ、そう急くことも無いじゃないか。お湯から出るなら、ゆっくり100まで数えなきゃ)
湯が……青い湯に溶け込んだロロン・ラプスがルシアの四肢に絡みつく。
「何なのでしてぇぇ……――!」
青い湯船に飲み込まれ、ルシアの悲鳴がプツンと途切れる。
そうしてルシアが空へ伸ばした小さな手が、藻掻くように虚空を搔いているのであった。 - 執筆:病み月