PandoraPartyProject

幕間

今日のロロン温泉

関連キャラクター:ロロン・ラプス

湯けむり姫騎士紀行~こんなことって聞いてないわ~
 ――かぽーん。
 幻想・アーベントロート領僻地、実験都市リトルラプスに軽やかな音が響く。
 保養所を改装した温泉郷は領民の憩いの場であり、幻想を騒がす騒動も何処吹く風だった。
「ふぅ、いいお湯ねぇ……」
 石造りの露天風呂に浸かるアルテミアは、長い息を吐く。豊穣風と称されたその湯は、白く濁った美肌の湯。
 偶然にも貸し切り状態となったその解放感に、ゆっくりと伸びをする。
「……あら? あっちはジャグジーかしら?」
 アルテミアが奥へと目をやれば、そこは何やらぶくぶくと泡立っている。折角独りですべてを堪能できるのならば試さねば損だと、岩場に置いたタオルを片手にアルテミアは奥へと向かう。
 人の目を気にしてタオルで隠すことも不要なその豊かな肢体を揺らし再び湯へと浸かれば、なるほど刺激が心地よく――
「あら? ん、ちょっとなんだか泡が、ひゃあ!?」
 身体をなぞられ跳ねる声に、ざぱりと水が形を成して――「やぁ、アルテミア」と見知った声を発する。
「ロロンさん!? あのッ、ちょっと――!」
「いやぁ、見知った顔がお客様だったので少しばかりサービスを――あ、施設利用料込だから安心して」
 そういうことじゃない――そんな言葉は、ロロンに脇を刺激されて声にならず。

 アルテミアVSロロンの湯――この続きはこちらのリンクから!(有料登録)
 ※飛びません。
茜空へ手を伸ばす。或いは、ある日、夕暮れ…。
●温泉郷の夕暮れ
 西の空が燃えていた。
 まるで魔砲の輝きのようだと、ルシア・アイリス・アップルトンは頬をほんのり紅潮させた。
 肩まで浸かった湯の色は青。
 幻想、とある温泉郷にて過ごす長閑なひと時は、日々の依頼に疲れた心と身体を内からじっくり癒す。ほぅ、と思わず吐息を零せば、心の奥に溜まった澱みも一緒に排出されたような心地さえした。
「最……高、でして~♪」
(それは良かった。どうぞ心ゆくまで堪能しておくれ)
 独り言のはずだった。
 けれど、応えが返って来た。
「っ……何事でして!?」
(ルシア・アイリス・アップルトン……今、キミの心に直接話しかけているよ)
「嘘でしてっ!」
 誰かの声はルシアの周囲……肩まで浸かった湯から返って来たものだ。戸惑いを見せたのは一瞬。ルシアとてイレギュラーズとして、数多くの修羅場を搔い潜った身だ。不測の事態に備え、湯から出ようと立ち上がる。
 けれど、しかし……。
「動けないのでして!」
(まぁ、そう急くことも無いじゃないか。お湯から出るなら、ゆっくり100まで数えなきゃ)
 湯が……青い湯に溶け込んだロロン・ラプスがルシアの四肢に絡みつく。
「何なのでしてぇぇ……――!」
 青い湯船に飲み込まれ、ルシアの悲鳴がプツンと途切れる。
 そうしてルシアが空へ伸ばした小さな手が、藻掻くように虚空を搔いているのであった。
執筆:病み月

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