PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

冒険譚の寄り道に

関連キャラクター:ネーヴェ

拝啓、イエローの丘よりきみへ
 その村――海洋王国中央島リッツパークの外れにある小高い丘の花畑で、ルドラスは幼い少年少女に囲まれていた。
「やだー! ルドラスにーちゃんは次オレとチャンバラするんだ!」
「ぼくに木登りを教えてくれるって言ったもん!」
「ルドラスだって疲れてるのよ! わたしとおままごとするの!」
 両の手を少年に引かれ、腰には少女がしがみ付く。振り解くことも出来ず困ったように笑うルドラスに、「おいおい」と男の声が飛んできた。
「ルドラスも困ってるだろ、まずは一回お茶にしないか。丁度パイが焼けたってビアンカ叔母さんが呼んでるぞ」
 子供達にとっては、焼きたてのパイに勝る言葉はなく――やったぁ、と駆けていく背中を見送り、ルドラスは声の主へ向き直る。
「助かったよジュリオ、みんな本当に元気だから……」
「悪いな、またこうして花畑で遊べるのが嬉しいみたいで……本当にありがとう、ルドラス」
「いや、いいんだ。こんなに美しい場所なんだから、この光景を守れてよかった――きみも、力を貸してくれてありがとう」

 ――あんた、冒険者か。俺の村を守ってほしい。

 ルドラスがリッツパークの酒場で、汗まみれで肩で息をするジュリオに声を掛けられたのは一昨日のこと。
 彼の住む村に凶暴化した獣が住み着いたのだと言えば――ルドラスは二つ返事で頷き、ジュリオと共に事態を解決したのだった。
 一面の菜の花は美しく、多少踏み荒らされた形跡はあれどすぐに復活するのだと村の者達は話していた。

「ほら、俺達もパイ食いに行こうぜ。早くしないと全部食われちまう!」
「ああ、そうだな」
 歩き出せば――甘く、香ばしい香りが鼻腔をくすぐった。

 ――ネーヴェへ。
 今日は海洋で、獣が襲う村を助けて来たよ。
 菜の花の咲く花畑はとても綺麗で――なんだかきみの御屋敷の庭を思い出したんだ。
 俺が転寝をしていると、きみは横でたんぽぽとシロツメクサの花冠を作ってくれていたね。
 村の人から美味しいパイの作り方を聞いたんだ。次に帰ったら、一緒に作ってみよう。
 俺はお菓子作りなんてしたことないけれど――きみとならば、きっと美味しく作れる。
 そう、思ったんだ。

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