PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

For me? Not for you.

関連キャラクター:エッダ・フロールリジ

シガーキス
●可愛い女では無いのです。
「……可愛い女では無いですからね」
 半ば無意識に予防線を張るようにそう言ったエッダ・フロールリジ(p3p006270)がふ、と紫煙を吐き出した。
 仕事の一服は蓮っ葉に。見られてしまったからには逆に堂々と入った彼女は驚いた顔をしたヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)に流し目をやる。
「煙草の一つも呑むのです。陛下におかれましては忠実なメイドめの所作とは思わないのかも知れませんが」
『メイド』と呼びつければ業腹するエッダだが、敢えて皮肉に言った言葉はやや言い訳めいていた。
 可愛い女でない事は確かだが、可愛い女で居たくない訳ではない。
 何もこんな姿は進んで見せたいものではないが――同時に『陛下』がどう反応するか気がかりなのも確かだった。
「可愛い女じゃねぇかも知れないが――」
 肩を竦めたヴェルスは二歩、三歩とエッダに歩み寄る。
 間近に距離を詰められれば小柄なエッダの身体は長身の彼にすっぽりと包まれてしまいそうになる。
「――知れねぇが?」
「お前は居心地の良い女だろう? 『可愛くないのが丁度いい』」
 上目遣いにヴェルスを見上げたエッダは幽かな苦笑いを浮かべた。
「陛下は女性の褒め方を知らないようで」
「生憎と知っての通り、『女は苦手』なんでね」
(……どの口で仰る)
『あまりにあんまりな』麗帝の言葉にエッダの苦笑は深まった。
 可愛らしい女性を好まないのは知っているが、『居心地の良い』扱いを受けた自身はいよいよたまらない。
『居心地の良い女の立ち位置は普段ヴェルスが見せない異性への厄介さをこれ以上無く発揮する』。
「……………はぁ」
 不快かと言えばとても頷けないのは確かだが、釈然としないし負けた気がするのは間違いなかった。
「そうだ」
「……?」
「火を、貰うぜ」
「――――」
 ほれ見た事か――
 エッダは何処か他人事のように考えた。
 至近距離の戯れ、少しだけ大人びたやり取り、シガーキス。
「……返事は待たない主義ですか?」
「先手必勝って言うだろう?」
 目は口よりも物を言う。伏し目がちな彼女は完膚なきまでに負けている。
「……陛下はスキャンダルが怖くないようで」
 辛うじての皮肉はまるで本腰が入っておらず、大した効果をもたない事を他ならぬエッダ自身が知っていた。

参考資料:https://rev1.reversion.jp/sketchbook/illust/371
執筆:YAMIDEITEI

PAGETOPPAGEBOTTOM