PandoraPartyProject

幕間

For me? Not for you.

関連キャラクター:エッダ・フロールリジ

可愛い女ではないのです
●エッダ・フロールリジ
 可愛い女では無いのです。
 最初からそんな事は分かっているのです。
 強きを尊ぶ鉄血を継ぎ、フロールリジに産まれ落ち。
 幾多の戦場を、闘争を渡り歩いて。
 それが誰が為の戦いだと言い訳をしてなんになりましょう?
 弱者を踏み躙る『力』を憎んでいると言い訳をしてなんになりましょう?
 私は可愛い女ではないのです。
 強きを尊ぶ鉄血を継ぎ、フロールリジに産まれ落ち。
 尽きぬ理想を抱えたとて、私は常に焦がれてもいたのです。
『唯、圧倒的に強い。単なる暴力という装置に。単なる闘争という概念に』。
 ……馬鹿げた話です。
 私は誰かを救いたいと願いながら、何時も自身を救われぬ夢想に浸していた。
 泣きたくなる位の二律相反(アンビバレンツ)を抱えて、重石を抱えたまま水の中を歩いている。
 だから――だから、陛下。
 貴方を知って、関わって。
 関わって、また知る度に――可愛くない私は思うのです。
「一発、ぶん殴って差し上げたいのですが――宜しいでしょうか、陛下」
「宜しくねぇけど、『入れられるなら』御随意にどうぞ」
『可愛い』私は思うのです。
 貴方を知って、関わって。
 関わって、また知る度に――正体さえ知れないこの乾きは何度も姿を変えるのだろうと。
執筆:YAMIDEITEI
シガーキス
●可愛い女では無いのです。
「……可愛い女では無いですからね」
 半ば無意識に予防線を張るようにそう言ったエッダ・フロールリジ(p3p006270)がふ、と紫煙を吐き出した。
 仕事の一服は蓮っ葉に。見られてしまったからには逆に堂々と入った彼女は驚いた顔をしたヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)に流し目をやる。
「煙草の一つも呑むのです。陛下におかれましては忠実なメイドめの所作とは思わないのかも知れませんが」
『メイド』と呼びつければ業腹するエッダだが、敢えて皮肉に言った言葉はやや言い訳めいていた。
 可愛い女でない事は確かだが、可愛い女で居たくない訳ではない。
 何もこんな姿は進んで見せたいものではないが――同時に『陛下』がどう反応するか気がかりなのも確かだった。
「可愛い女じゃねぇかも知れないが――」
 肩を竦めたヴェルスは二歩、三歩とエッダに歩み寄る。
 間近に距離を詰められれば小柄なエッダの身体は長身の彼にすっぽりと包まれてしまいそうになる。
「――知れねぇが?」
「お前は居心地の良い女だろう? 『可愛くないのが丁度いい』」
 上目遣いにヴェルスを見上げたエッダは幽かな苦笑いを浮かべた。
「陛下は女性の褒め方を知らないようで」
「生憎と知っての通り、『女は苦手』なんでね」
(……どの口で仰る)
『あまりにあんまりな』麗帝の言葉にエッダの苦笑は深まった。
 可愛らしい女性を好まないのは知っているが、『居心地の良い』扱いを受けた自身はいよいよたまらない。
『居心地の良い女の立ち位置は普段ヴェルスが見せない異性への厄介さをこれ以上無く発揮する』。
「……………はぁ」
 不快かと言えばとても頷けないのは確かだが、釈然としないし負けた気がするのは間違いなかった。
「そうだ」
「……?」
「火を、貰うぜ」
「――――」
 ほれ見た事か――
 エッダは何処か他人事のように考えた。
 至近距離の戯れ、少しだけ大人びたやり取り、シガーキス。
「……返事は待たない主義ですか?」
「先手必勝って言うだろう?」
 目は口よりも物を言う。伏し目がちな彼女は完膚なきまでに負けている。
「……陛下はスキャンダルが怖くないようで」
 辛うじての皮肉はまるで本腰が入っておらず、大した効果をもたない事を他ならぬエッダ自身が知っていた。

参考資料:https://rev1.reversion.jp/sketchbook/illust/371
執筆:YAMIDEITEI

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