幕間
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暖かな日々
暖かな日々
関連キャラクター:ヴェルグリーズ
- 寒空
- 「星穹」
「ああ、ヴェルグリーズ」
「ごめんね、冷えたでしょ」
寒空の下、雪の降る街を小走りで走るヴェルグリーズ。両手に持ったホットドリンクのカップを愛しいひとへと渡しながら、その帽子に積もった白を払う。
ふ、と笑う彼女の口元からも白い息が零れているのだから心配せずにはいられない。なんたって精霊というものはそういうことには疎いのだから。
「少しの時間ですから、気にするほどでもありませんわ」
「女の子なんだからさ。大事にしてよ。俺の為にも」
「……はぁ、全く。だったら貴方も、私の為に暖かくしておいてくださいな」
「ふふ、うん。そうしようか」
紺色のマフラーをヴェルグリーズへと巻きながら、小さく頷いた彼女。
口ぶりこそ冷たいのだけれど、行動は何よりも温かくて愛らしいのだから、ああ好きだなあなんて、今更言わずともわかるのについ口から漏れてしまう。
「好きだな」
「何が?」
「星穹が」
「……」
「どうして黙っちゃったのかな?」
「よく回る口だと思いまして」
「じゃあ俺に好かれるのは嫌?」
「嫌とは、申しておりません」
「ちゃんと言ってくれないと、わからないかもしれないね?」
少し意地悪だっただろうか、なんて口元を歪ませながら彼女の紺を覗き込む。
「じゃあ、教えて差し上げますよ」
マフラーを直すように二人の口元を隠して、それから小さく口付けを落とす。
そういえば冷えていたのだったっけ、彼女の唇といえば熱いのに自分のは冷たいから、より彼女のぬくもりが伝わってくる。
「これで……わかりました?」
「はは、うん。とっても」 - 執筆:染