幕間
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妖怪の見る夢
妖怪の見る夢
関連キャラクター:鏡禍・A・水月
- オマエハダレダ
- ふふふ。今日はルチアさんとちょっとお高いレストランに来てみました。
「こうして、ルチアさんと一緒に美味しいものを食べられて僕は幸せです」
「もう、いきなりなに? ……私もよ、鏡禍」
あぁ、ルチアさんのそのちょっと照れたような顔。とても素敵です。
「ところで、次の料理は何かしら? 本日のスペシャリテってあるけど……」
「分からないですけど、こんなに美味しいと期待しちゃいますね」
どんな料理が出てくるのでしょう?
「あ、来たみたいですよ」
「本日のスペシャリテはお客様の手によって完成します。どうぞお楽しみください」
「私たちで? なんだか楽しそう!」
「何をするんでしょ……う?」
手錠……? なんでこんな時に……?
「え? いや、何するの!? 放して!!」
ルチアさん!? ちょっと! 悪ふざけでも許しませんよ! 今すぐルチアさんを放してください!
あれ? 声が出ません!? 体も動きません! 何が起きているんですか!?
「こちらをどうぞ」
「あぁ」
ナイフ!? ちょっと待ってください、何をさせるつもりですか! くっ、体が勝手に……!
「それでは料理をテーブルに……」
「痛っ! なんで私が……! ってちょっとまって鏡禍! なんでナイフを私に向けているの!? 嫌っやめて!」
僕だってやめたいんです! でも、体がいう事を聞いてくれなくてっ! ルチアさん、逃げて!
「おい、暴れるなよ。ウェイター、悪いけど抑えておいてくれないか?」
「畏まりました」
「いや……やめてっ! 正気に戻って! お願い、鏡禍ぁ!」
止まってください、僕の体! それ以上動かないで!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ!!」
ルチアさん!!
「はははっ! やっぱりいいねぇ。悲鳴を聞きながら生身の人間の腹を掻っ捌くこの感覚。クセになる」
あ、あぁ……。僕は、僕はなんてことを……。
「痛い……。痛いよぉ……。どうして、鏡禍。どうしてなの……」
「そりゃあ、今日のスペシャリテがお前だからさ」
もう止めてください! 早くルチアさんを治療しないと!
「あがっ! ぎっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ!!」
「ほうら、こうして生きたままはらわたを蕎麦みたいに啜るのが絶品なんだよ」
やめっ……! なんなんです、これは……! 口の中に血の味と柔らかいものを噛んでいるような食感がっ! まさか!?
「あぁ、旨いよルチア。お前のはらわたは今まで食べてきたどんなニンゲンより旨いよ」
何を言ってるんですか! 今すぐ食べるのをやめてください!
「でも、同じ味ばかりだと飽きるからさ。別の味を挟むと長く楽しめるんだ」
フォーク!? 今度は一体――
「いやぁあああっ!!」
「お、いい感じに目玉をくりぬけたな。このぷちゅりとした触感がたまらないんだ」
うぐっ! 目玉を嚙み潰した触感が、僕にも伝わって……。
こんな狂ったこと、早くやめさせないと……!
「さぁ、最後はデザートだ」
「既にご準備しております」
「気が利くじゃないか、流石は高級店。んじゃ、やるか」
え、鋸……? まだ何かするつもりなんですか!?
「ん~。首から下が邪魔だな。とりあえず切り落としておくか」
「がはっ! いだっ! やめっ!」
「頭だけにすると持ちやすくていい。で、今度はここを……」
やめてください! お願いします! もうルチアさんを傷付けないでください!
「頭蓋骨がぱっくり開いて、脳みそが器に盛られたプリンみたいだろう?」
あ、あぁ……。ああああああぁっ! ルチアさんになんてことを……!
「血と脳漿はカラメルソースの代わりかな。最高に美味しかったよ、ルチア」
「……して。……ろして」
ルチアさん! ルチアさん! どうして……どうしてこんなことに……!
「ったく、さっきからうるせぇな。ルチアさん、ルチアさんってよぉ」
え……?
「食べてるときはいい感じのスパイスになってたから放置してたけど、食べ終わった後まで騒がれたらうるさくて敵わねぇ。”お前”、もう黙れよ」
え……? なんで”僕”が僕を見ているんですか…? 貴方は一体……一体何者なんですかっ!?
「何者ってそりゃあ、僕は水月・鏡禍さ! それよりも――オマエハダレダ?」 - 執筆:東雲東