PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

4月1日
 残業の帰り、ギリギリで間に合った終電に飛び乗って車窓を見つめた。
 まわりは自分と同じように疲れ果て、覇気のない顔ばかりだからだ。
 しかし、私は違う。こんな荒んだ生活でも癒しと潤いはある。
 それは……──。

 次に起きた時は、見知っている気はする部屋だった。
 ……いや、確かに知っている部屋だ。もう何度も通っている。
「『アンナ』の部屋だわ……。えっ、でもどうして…………?」
 私の癒し、大好きな乙女ゲームたち。
 その中で『護りの剣たちと運命の姫』を私はプレイ途中だった。
 もしかして、と思ってドレッサーへ駆け寄るとやはり私はゲームの主人公で姫、『アンナ』になっていた。
(うそ……どうしよう。つまりここは、ゲームの世界なの?)
 私がプレイした限りでは、この世界では結婚相手は運命力によって決まる。
 ゲームではそれを提示される選択肢によって愛情力と共に貯めるシステムだった。
「でもこれ、ゲームの中ってことは……選択肢がないんじゃ…………?」
 どうしよう、詰んだかもしれない。
 常に新鮮な気持ちでプレイしたくて攻略は見ないでやって来た。
 小説版もネタバレ回避で全編クリア後に読むのがマイルールだ。
「……………………こうなったら!」
 本物のアンナにごめんなさい、と謝ってから私は部屋中を探りに探りまくった。
……………
…………
………
……
(全く進行度が分からないわ! 泊まったことないけど豪華なホテルの部屋って感じでしかない!!)
 荒らした部屋を泣きたい気持ちで片付けてると、控え目なノックがされた。
「はあい、どなた?」
「やあ、姫。ヴェルグリーズだけど今、良いかな?」
(!! さ、最推し!?!!!! )
 私は大慌てで部屋を見れる状態にし、身支度を整えてから迎える。
「……ちょっと顔赤い? 朝から姿が見えないから心配してたんだ」
 そう言いながら顔の横の髪を優しく払うヴェルグリーズ。本物のヴェルグリーズの体温は低めだった。
 優しいヴェルグリーズに話を合わせつつ、進行度のヒントを探す。
「ところで部屋が少し散らかっているけど、どうしたんだい?」
 ふ、とベッドへ目線をずらしたヴェルグリーズに指摘されて、ちょっと探し物をと誤魔化すように笑う。
「そう? なら良いけど……ねえ今日は二人でごろごろしない?」
 言いながらヴェルグリーズにベッドに誘われ……ってえ?!
 こんな展開、知らないけど??? 私、どうなっちゃうの──!?



 『護りの剣たちと運命の姫』の公式スピンオフ小説、ついに発売!
 この続きは、君たちの目で確かめよう!!
「姫、待っているよ。君からの、愛を」
執筆:桜蝶 京嵐

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