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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

鉄と水モノ
 朝焼けを窓の外に認めて、青年──ヴェルグリーズは新しい1日を知る。
 冷えきった世界、キンと張り詰めた音を立てる身体を気遣って起きるようになったのは何時からか。
 洗面所の鏡に薄く映る自分に欠けがないことを確認して、やっと呼吸を楽にする。
 刀の精霊種だから、多少の寝不足にも対応できるが、今は少しも眠れてなかった。
 他のどんな時間よりも自分の意識がない時間が空恐ろしい。
 フェザークレスと激しく撃ち合った後、本体が受けた傷がそのまま人間体にヒビを刻んだ。
 寝相が悪い自覚も指摘も受けたことはないが、それでもヒビを見るのが怖い。
 意識のない内に傷が広がっていたら?
 微量な欠けが起きていないか?
 堪らなく不安で、足下が揺らぐようだった。
 今、この状態で戦場へ参じれば、どうなるか。
 ヴェルグリーズ自身が理解しているからこそ、誰に頼れば良いかすら思いつかなかった。
 水すら飲んでいないのに吐き気を感じて、口を抑え込んだ。
 ──その瞬間、『喚ばれた』と直感した。
 勢い良く顔をあげて振り向く。
 誰に。誰に喚ばれた。
 良く知るモノ、この世とあの世の狭間を歩くような魔力。
 絹糸の銀髪を背に視てはならぬ次元へ微笑むモノ。
 思い至ったその瞬間、ペンを指先へ触れさせる直前、招待状が届いた。
執筆:桜蝶 京嵐

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