PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

あなたが欲しい(物理で)
「ヴェルグリーズ、店長にお願いして欲しいことがあるんだ」
 駆け付けのボトルを一本頼んだ客の女性は大理石のテーブルに組んだ手を置いて話を切り出した。
 パンツスーツを綺麗に着こなした真面目そうな彼女と、ヴェルグリーズがいる場所がホストクラブじゃなかったら、深刻な話だと思ったことだろう。
(いや、もしかしたら深刻な話かも知れないけど……)
 内心で独り言を漏らしつつ、取りあえずヴェルグリーズは柔らかく微笑みながら姿勢を正した。
「なんだい、改まって」
「物理的なあなたのグッズを出して欲しいアクスタは必須で缶バとタペストリーはマストじゃん?!」
「待って、一息が長すぎて聞き取れない! 俺がなんだって?」
 急に色々言われて急いで止める。
 彼女は「ああ、ごめん……オタクの性が……」と謎の謝罪をしてきた。
 お冷やを飲んで落ち着いたのか、改めて話をする姿勢になる。
「だからね、グッズが欲しいのよ。どうしても残業とかで行けない時や、余裕ない時の心の支えとして。必要なのよ、グッズが」
 ……ゆっくり話して貰っても分からなかった。
 グッズ? アイドルが出すようなものを、ホストのヴェルグリーズが?
「それは何て言うか……お店をお間違えでは?」
「いいや、合ってる。推しグッズを持ち歩く文化が練達に定着した今、ホストクラブだってそれをしたって良いじゃない! だって欲しいもん、担当のアクスタアクキー、缶バ!!」
「そ、そっかあ……」
 その後も彼女は推しグッズ文化の素晴らしさを熱弁し、異変を聞き付けた店長に直談判して帰った。
 このホストの推しグッズ化がスタッフ達に回り、会議議題になったかは…………後の話である。
執筆:桜蝶 京嵐

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