PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

貴方の美しさに甘いカクテルを
「や、なんかごめんね。初見なんだけど男も良いって言われて」
「もちろん。うちのホストクラブは店長の方針で男性客もおもてなしするよ」
「そうなんだぁ。嬉しいなあ」
 仕事帰りにふらふらしてたら、君の写真が見えて、それで来ちゃったと男性は朗らかに笑っていった。
 まっすぐ帰るつもりだったが、綺麗な顔に惹かれたんだと事も無げに告げる。
 綺麗なものを愛でてみたくなった、その程度のことなのだろう。
 刀であるヴェルグリーズにとって、「綺麗」という評価はかなり喜ばしいことかもしれなかった。
 ──何故ならヴェルグリーズは、とある刀鍛冶が遺した世界で1番の良い刀(男)だ。

「あんまり懐に余裕ないから、カクテルくらいしか奢れなくてごめんね」
「全然。俺としてはこの顔を気に入ってくれた貴方がどんな人か知りたいな」
 おちゃらけて両頬に指先をあてて可愛く言ってみると男性はやはり、穏やかな性質であるようだ。
 のほほんと、いっさいの照れも恥ずかしげもなく可愛いねえと、言ったのだ。
 泰然自若という古い古い四字熟語がそのまま姿を取ったら、おそらくこの男性になる。
 それくらい男性の態度は穏やかで波がゆったりだった。
 結局、男性はカクテル2杯でヴェルグリーズの話を聞き、自分の話を少しだけして帰っていった。
「なんだか、不思議な人だったなあ。接客をしている俺の方が癒されたかも」
執筆:桜蝶 京嵐

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