PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

ちかよらないで
「こんばんは、今日も俺はちょっと離れた方が良い?」
「っはぃ……」
 ホストクラブ『シャーマナイト』の内装は高級品ばかりだ。
 玄関マットから呼び鈴に至るまでハイブランドの名品たちで、足を乗せるだけでも緊張しがちだ。
 客とホストが座るソファだって黒革の立派なもので統一されている。
 ……そのソファの隅へ自らを追いやる女性。
 小柄な体躯を可哀想なくらいに縮めて座るので、ヴェルグリーズは覚えなくても良いはずの罪悪感を覚えてしまう。
「……ぁ、お酒。す、好きなの、どぞ……………」
「うん、ありがとうね。……今日はちょっとお話出来そう?」
「ひゃっ! ぁ、はひ。がん、頑張る…………」

 ご覧のとおり、とてもシャイであまり会話らしい会話は出来たことはない。
 それでも推しだからと、健気に来ては一言二言、言葉を残してくれる。
 人好きなヴェルグリーズとしてはゆっくりでも嬉しそうに話してくれる方が良いから急かしたことはなかった。
「……あのっ、これ貰って下さいぃ…………!」
 差し出されたのは、ミニハットだった。
 黒いシルクハットに歯車や錨のモチーフ、鎖にレースが靡くパンクなデザインだ。
「わあ、ありがとう。すごいね、これ。カッコいい」
 ピンで固定するタイプだったので、ヴェルグリーズはその場で付けて「似合う?」と、目の前の彼女に聞く。
 女性はコクコクといっぱい頷き、照れたように、でもこの日はじめて笑った。
「ああ、良かった。イメージ通りです………。…………は、はじめて作ったから、自信なくって………」
「え?! 手作り? 本当に凄いね」
 照れながらも、ヴェルグリーズを見つめながら笑った彼女との距離はまだ遠い。
 でも、心の距離はほんの少し近づいた気がして、暖かだった。

執筆:桜蝶 京嵐

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