PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

助けられた人の話
 その日、ヴェルグリーズが依頼で立ち寄ったバーには歌手がいた。
 店に置かれたピアノを弾きながら、ありとあらゆるシャンソンを歌う人だった。
 ピアノに寄り添うような黒い服と、女声から男声まで変幻自在に使い分けて奏でる姿は神秘的だ。
 一曲歌うごとに客は彼ないし彼女へ惜しみない拍手とチップを捧げた。
「素敵な歌声でした」
 その人が一休みに入ったタイミングで話し掛けると、その姿同様に曖昧な笑みを向けられた。
「この声だけが、音楽だけが私の生きる道、少なくても今は。だから嬉しいよ、褒められて」
 それでお兄さん、どこから来たのだいと聞かれ、素直に答える。
 この店自体が初めてだと含めて伝えれば、それなら『とびきり』をあげようと、再びその人はステージへ向かった。
「今日はイレギュラーズのお兄さんが来てくれたからねえ、ちょいと張り切るよぉ」
 一気に歓声に包まれる店内、それをその人の深い深呼吸で止めて。
 ぽろ、ぽろぽろ……ん。
 切ない泣き声みたいな前奏から一気に激しい音の洪水が巻き起こった。
 ──シャンソンじゃない。ロックだ。
 前を向けと、反省はしても振り返ってやるなと励まし続ける歌詞だった。
 ロックでも歌い終わりは歓声に満ちていた。
 その中、その人は自分へ渡されていた花束から一本をヴェルグリーズへ差し出した。
「勇敢果敢なるイレギュラーズ、私はあなた達に助けられた側の人間なんだ」
「……そっか、なら有り難く。ねえ、もう少し話せない?」
 それならヴェルグリーズと歌手は閉店まで食事をしながら話していた。
 音楽の話から、他愛ない日常まで。
 とても幅広く充実した時間だった。
 歌手はバーの上に住んでいるし、そもそもバーのオーナーは自分だと言っていた。
「だからまた来てくれ。昼でも腹ぁ空かせたイレギュラーズなら開けてやるさ」
「ふふ、それは本当に助かるなあ」
 そんな風に見送られ、ヴェルグリーズはこれからもブレずに行こうと思ったのだった。
執筆:桜蝶 京嵐

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