PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

あなたがほしい
 シルバーアッシュの髪、ハイブランドの鞄。
 それから服はだぼっとしたデザインの、けれどちゃんとしたブランドのもの。靴は絶対厚底。
 ──それが彼女が彼女たるシルシだ。

「ヴェルグリーズ~~~!」
 明るく黄色い声をあげて両腕を前へ付きだせば軽く片手を握って席へ誘導される。
 席に付けばさっそくシャンパンを降ろして周囲の女からの視線を貰う。
 それらを気持ち良く浴びた所で「ねえ、大丈夫かい?」と声を掛けられる。ヴェルグリーズだ。
「学生なんでしょ? 俺を推してくれるのは嬉しいけど、ほどほどにね」
「全然ヘーキですけど! うへへ、ヴェルグリーズは優しいね」
 他にいないってくらい顔が綺麗で、とびきり優しい″あーしの未来のだぁ″。
 バカみたいって言われても、ホストだって分かってても止まっていられない。辞められない。
 これはガチ恋のときめきだから、ガルバとコンカフェを掛け持ちしてでも彼を1番にして彼女になる。
 だから、ずっと。ずうっと、あーしの隣に座って、あーしだけを見て?

 その日はコンカフェの帰りだった。
 テナントの入るビルの定期点検日だとかで、午前終わりだから気合い入れた格好で会いに行けるとワクワクしていた。

 ──知らない女と買い物をしているヴェルグリーズを、見た。

 顔はちょっと可愛いかも知れない。でもあーしの方が全然オシャレだし可愛い。
 あんな安っぽい服で満足できる女なんて、世界一のイケメンには勿体ない。
 ヴェルグリーズだってあんな奴の隣で買い物は苦痛だろうな。
(同伴? 邪魔してやろうかな)
「これで1週間は持つとして。相棒、日用品は大丈夫?」
「子供たちのもので少し足りないのが。……買い物袋、余裕ありますか?」
「大丈夫だよ、任せて」
 ………なに、今の会話。キャバの歳食った奴でもないでしょ、なのにまるで。まるで結婚でもしてるみたいな。
「~~~っ、ぜぇ、ったい! 奪ってやる!! あーしの彼だもん!!」
 あーしがNo.1にしてあーしだけが分かってる女になってやる。
 そんで一緒に住んであんな女より可愛い子供を生んでやるんだから!

 ──それなら、私と来ませんか? あの女より愛しの彼に見て貰える女にしてやりますよ。
「え……」

………
…………
「ヴェルグリーズ、あーしだけの彼。早くあーしに会いに来て。
とってもとっても、キレイになったのよん。
とってもとっても、美しい身体になったのよん。
とってもとっても、イイ女でしょお?」

 色欲の罪に飲まれた女は、世界一の美男を今日も待っている。
 銀に青い瞳の女をなぶり殺しながら。
執筆:桜蝶 京嵐

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