PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

あーまでるこれくしょん

関連キャラクター:アーマデル・アル・アマル

冷めない熱を分け合って
 曇天の空が泣き出したのは、校舎を出て暫く後だ。
 外れた天気予報に悪態をつくサラリーマンの隣を横切り、アーマデルは傘もささずに歩いていた

(師兄と離別したあの日も、雨に降られていたな)

 往くべき処へ逝けたのだろうか。その答えを永遠に知る事はない。

『お前はもう助からない』

 運命の糸を振り払った瞬間の生々しい感覚は、今も身体に染み付いたままで、思い出す度に血の気が引く。

「アーマデル」

 ふっ、と大きな影がアーマデルの背中に落ち、黒い傘が天を覆った。声の主を見上げ、掠れた声で名前を呼ぶ。

「……弾、正…?」

 どうしてここに、と続ける前に足が地面から離れた。傘を肩にかけてバランスを取り、弾正はアーマデルをしっかりと抱え上げる。

「よっ、と。っ……前より重くなったな、アーマデル」
「服が雨を吸ったら、当然重いだろう」
「雨は差し引いてだ。派手な喧嘩をしたあの時より重く感じる」

 降りしきる雨の中、ずぶ濡れのアーマデルはいつもの顔で振り向いた。
 感情の起伏が少しずつ分かりやすくなっているものの、まだ表現力の拙い顔。
 その微かな表情を感覚で読み取り、弾正は彼に足りないものを――ひと肌の温もりを、濡れる事を厭わず分け与える。

「嬉しい重みだ、一緒に過ごして成長した分だからな」
「成長期の子供とは違うんだぞ」
「子ども扱いしてる訳じゃない。素直に受け取れ」

 口角を下げたアーマデルの額に、こつんと弾正の額が重なる。
 じんわりと伝わる温もり。間近に見える恋人の顔に、不思議と心の奥底から温かさが広がって、アーマデルは目を細めた。

「……弾正、ひとつ頼まれてくれるだろうか」
「何だ改まって。悪いが、家まで降ろす気はないぞ」
「そこはもう諦めてる。……大雨の日に、2人で楽しい思い出を作りたい」

 願いを口にした後、追及から逃れる様に胸板に顔を埋める。
 雨の匂いに混じって、弾正のYシャツからは|柔軟剤《スズラン》の甘い香りがした。


――数日後。

「それで、思い出作りに大雨の異世界に行きたがったのは納得がいったけどさ……これデートじゃなくない!?」

 傘をさし、心からの叫びをあげた蒼矢を、ずぶ濡れになりながら魔物を抜群のコンビネーションで倒し続けていたアーマデルと弾正は不思議そうに見つめた。

「最近死線を潜ってばかりだったから、これぐらいの難易度の敵と戦った方が違いの成長を体感できていいデートだと思ったんだが」
「僕の描いてる弾アマ本はもっと甘いデートするから! 公式が解釈違いだよ!」
「そうか、蒼矢殿の作品のデートをなぞれば、普通のデートとやららしく……」
「その前に薄い本を出されてる事にツッコまなくていいのか?」
執筆:芳董

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