幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
あーまでるこれくしょん
あーまでるこれくしょん
関連キャラクター:アーマデル・アル・アマル
- 褐色と錆色
- (何だあれは?)
幽霊の大きな叫び声を感じ取り、アーマデルは橋の下へ顔を向けた。
ガチャガチャとせわしなく鳴る金属音。パイプの様な頭をした青年の霊が河原で慌てている。
その原因は川にあった。猫が両手を振って溺れながらも、必死に足掻いているのだ。
『誰か! あの猫っちを助けてやってくれー!!』
「仕方ないな」
えっ、と幽霊は驚いた。
ここは練達、ありふれた人間種が平和に暮らす場所だ。返事がかえってくる事なんて全く予想していなかったのだろう。
目を見開く彼の前でアーマデルはバッグを脱ぎ捨て、川へ飛び込み、溺れている猫を抱え上げる。
「…何だ。意外と浅いじゃないか」
『俺達の身長ならな。猫っちにとってはバリ深かったと思うぜ?』
濡れた猫を川べりに離してやると、ぶるると水を跳ね飛ばされていっそう濡れ鼠になってしまう。アーマデルは眉を寄せながらも、服を乾かす間に金属頭の青年から色んな話をきいた。
やりたい事があってまだ現世にいる事、自分の墓はあるが、今日はちょっと帰りにくい事。そういう事情で川辺を彷徨っていたら猫が溺れていた事――
(そういえば、弾正を尾行していたんだったな。花束を持って何処へ行くつもりだったんだろう)
『なぁ、猫のヒーロー君の名前は?』
「アーマデルだ」
『俺は順慶。宜しくぅ!』 - 執筆:芳董