PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

本日のゆづさや

関連キャラクター:結月 沙耶

リトル・リトル・サン。或いは、ヒマワリの妖精…。
●常夏の畑
 再現性東京。
 とある川辺に少女が1人、佇んでいる。
 彼女の名は結月 沙耶。冷たい風に踊る髪をそっと抑えて、彼女は虚空へ手を伸ばす。
 ふわり、と。
 指し伸ばされた手の平に、ぽうと淡い光が乗った。
 それは風に運ばれやって来た。淡い燐光の向こう側に、太陽のように広がる黄色い花弁が見えた。腕のように左右に広がる葉を揺らし、黄色い花をきょろきょろと左右に動かして、それは……ヒマワリの妖精は、自分の居場所を確認しているようだった。
「ようこそ、私の領地へ。夏の終わりから、長い旅を続けて来たんだろうね」
 細い指で、そっと妖精の花弁を撫でる。
 それから沙耶は踵を返し、川辺の隅に作られた小さな畑へ妖精を運んだ。
 畑の周辺は温かい。
 当然だ。畑一杯に飢えられた、ヒマワリの妖精が夏の間に蓄えた陽気を発散しているのだから。
 太陽にも似た暖かな光に誘われて、沙耶の手からヒマワリの妖精が飛び立った。仲間たちのいる小さな畑に、その根を降ろすつもりなのだろう。
 けれど、しかし……。
「おっと、待ってね」
 沙耶は慌ててヒマワリの妖精を捕まえる。
 それから彼女は、ヒマワリの妖精に顔を寄せ、囁くようにこう言った。
「ここは私の畑なんだよ。根を張りたいって子には、太陽の種を提供してもらうことになっているんだ」
 持ってるよね?
 そう問う沙耶の手の平に、ヒマワリの妖精は小さな種を幾つか零した。
 以上のようにして“リトル・リトル・サン”は補充されているのである。
執筆:病み月

PAGETOPPAGEBOTTOM