PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

サイボーグ

関連キャラクター:チャロロ・コレシピ・アシタ

自分は自分、オイラはオイラ
●依頼の帰り道
「今日は結構単純な依頼だったなぁ」
 チャロロ・コレシピ・アシタは海の近くの道をパーティと一緒に歩いていた。今日の依頼はいわゆる雑魚な奴らの討伐で、数も多くなかったのでそこまで張り合いのある内容ではないと感じていたチャロロ。
「まぁそう言うなって」
 依頼を受けたパーティリーダーが苦笑いする。
「あ、ごめん!」
 うっかり口からこぼれた愚痴に慌てて手で口を塞いだチャロロ。

 ――海の近くには崖があった。

「あれ、小石が落ちて来た」
 チャロロは崖の上から落ちて来た小石を摘まんで拾い上げる。特に大した石ではない。何だろう、転がってきたというか――そこで嫌な音が聞こえた。この小石が落ちて来たのは、落石の前触れだったのだ。
「転がって落ちて来る!!」
 勢い良く転がりスピードを増す落石。ぶつかったら大怪我は避けられない。
「みんな、下がって!!」
 チャロロは――両手で落ちて来た岩を受け止めた。

「チャロロ!!」
 パーティの仲間達が心配そうにチャロロを見つめる。指の先は機械が露出し、腕も少し肌が壊れていた。
「みんな――今のうちに通って!! 早く!!」
 上を見るとまだ落石は続いている。偶然にも、全てチャロロに向かって落ちて来るように見えた。
「し、しかしそれだとチャロロが!」
 心配するパーティリーダー。
「オイラの事はいいから!!」
 そう言っている間に次の岩がチャロロにぶつかる。耐えるチャロロ、剥ける肌。機械がどんどん露出する。
「――っ、すぐ助けを呼んでくるからな!!」

 パーティーリーダーは次の岩が落ちて来る前にチャロロ以外を引き連れて即座に通り抜けた。

「はぁ、はぁ……」
 この時のチャロロは集中していた。『絶対に止める』意志があった。

 落石が収まった頃、パーティーメンバーが増援を呼んできた。
「あれ、チャロロは……」
「まさか、海の下に落ちたんじゃ……」
 心配するパーティをよそに、チャロロは岩の中からひょっこり手を出した。
「おーい! オイラはここだよー!」
「無事だったのか! 良かった……」

 全員で力を合わせてチャロロを引っ張り出すと、チャロロの体はボロボロだった。それでも耐えていたのは、彼が機械の身体だったから――なのだろう。

「まったく、一人で無茶するなと出発前に言っただろう!」
「ごめんよ、すぐにメンテナンスするからさ」
 後ろの呼ばれて来た人々は、チャロロの露出した機械を見て驚愕しているようにも見えた。

(――ああそっか、普通の人には怖いかな。オイラが機械だっていう事)
 顔をうつむけたチャロロ。

「いやぁ、凄いですよ!」
「え?」
 逆に驚愕したのはチャロロだった。
「あの量の落石を止めるなんて! 下の海岸には人も居ましたし」
「えっ!? そうなの!?」

 実は岩を塞ぎ止めた時、パーティだけではなく、人知れず幾つもの人命を救っていたのだった。

「そ、そっかぁ……!!」
 思わず笑って、地面に寝そべったチャロロ。
(そうだよね。怖がられるような事をしたんじゃない。きっとオイラはとっても勇敢な事をしたんだよね)

●夕刻
 メンテナンスには少し時間がかかったが、今日中に何とか終わらせる事が出来た。酒場に集まるパーティメンバー。
「それじゃあチャロロの快復を祝って、カンパーイ!!」
「カンパーイ!!」
 と、乾杯する時にうっかりチャロロの握っていたグラスが割れた。力を込め過ぎたようだ。
「あっ……」
「良いって良いって、心配するな」
 リーダーがグラスの破片を片付ける。

「何か……オイラって、人っぽくないよ、ね?」
 うつむきながら、恐る恐る聞いてみるチャロロ。
「? チャロロはチャロロだろ。それ以外の何物でもないさ」
 リーダーは突然の質問にも普通に答えてくれた。
「そっか……オイラはオイラ、かぁ」
 今日は色々あったけれども。人間らしいかそうでないかは、この際、関係ないのかもしれない。そう胸に刻んで、ついでにペンを取り出しメモを取って。

『オイラはオイラ!』
 そう、ノートに書き記したのち、今度は慎重にグラスを触って乾杯をしたのだった。
執筆:椿油

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