PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

窓際族生存記

関連キャラクター:回言 世界

ディス・ワールド
「それで、ソイツらを殺せば依頼は達成か?」
「そうだ――が、無力な人間を殺すことになる。気にならないのか?」
「気にならないって云えば、そりゃ嘘になるだろうな」
「じゃあ、なんで何も言わない?」
「……俺がこの依頼を蹴ったとして、その後どうなる」
「っ……別の人間、イレギュラーズに依頼がいく」
「だろ? どうせ誰かがやらなきゃいけねえ。なら――」

 そんな、ろくでもない依頼でも受けるようになったのはいつからだったか。
「こんな依頼、誰もやりたくないだろう。俺一人でやるから、下がってろ」
 無辜なる混沌を舞台に行われる依頼でさえ、こういった仕事内容はよくある話だが、世界は其方よりも境界図書館で発行される依頼の方が幾分もやりやすいと思う。
 その異世界へ関わるのが一回きりとは限らないが、本来自分が存在しなかった世界、自分が関わったことも、今後関わることもないだろう人々が苦しむことに、何の躊躇いが生まれようか。
「悪いな、仕事なんだ。恨むなら依頼人を恨んでくれ」

 ――それが只の言い訳に過ぎなかったことを、彼は気付いていただろうか?

「依頼の方は、首尾よく完遂したみたいだな」
「ああ、弱い俺でも難なく熟せる簡単な仕事だった」
「…………」
 合理的な話にまみれたお人好しは、回言 世界を変えた。
 数多の世界(world)を渡り、時には善行で人を助け、時には悪行で人を苦しめた世界(who)は、いつからか全てを諦めてしまった雰囲気、残香を漂わせるようになったのだ。
「なあおい、世界」
 昔助けた、よく知る境界案内人が心配そうな表情を向けても、世界は表情を変えない。
 そこから先に続く言葉に、何かを期待することはない。

「シケた顔してんなお前。俺の顔に何か付いてるか?」
「……いいや、何でもない」
 身体の何処かにぽっかりと開いた穴を埋めるように、今日もいつも通りの自分を演じ続ける。
 自分が自分であるために、世界(who)が世界(world)を渡るために。
執筆:牡丹雪

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